萩市役所で電気技術職として働く田才さんのインタビューです。国家公務員として全国を飛び回るキャリアから一転、萩市への転職を決めた田才さん。
彼の転職の背景にあった思い、現在の仕事のやりがい、そして萩市で手に入れた理想のワークライフバランスについて、お話を伺いました。
- 国家公務員から地方公務員へ。偶然見つけた「萩市」という選択肢
- 市民の暮らしを支える。浄化センターでの電気技術職の仕事とは
- 学び続けることが、仕事の楽しさになる。電気のプロフェッショナルとしての探求心
- 少人数だからこその風通しの良さ。家庭と両立できる理想のワークライフバランス
- 都会を経験したからこそわかる魅力。萩市で実現する、心豊かな暮らしと働き方
国家公務員から地方公務員へ。偶然見つけた「萩市」という選択肢
ー田才さんのこれまでのご経歴と、萩市役所に入庁された経緯について教えていただけますか。
田才:大学でも電気工学を専攻し、電気技術職として国土交通省で働いていました。
主な業務は、滑走路の航空灯火や航空機を安全に誘導するための無線機器、それらに電源を供給する施設など、空港の電気施設の維持管理・運用です。研究や設計というよりは、既存のインフラを安定的に動かし続けるための業務でした。
その後、平成31年(令和元年)に萩市役所へ入庁しました。
ー転職を考えられた理由は?
田才:働き方が大きな理由です。2年ほどのペースで全国転勤を繰り返す多忙な日々で、将来的に家庭を持つことも考えたときに、一つの場所に腰を落ち着けて安定して働きたいと思うようになりました。
ーそこから、なぜ萩市を選ばれたのでしょうか。
田才:本当に偶然の出会いでした。ちょうど転職を考えていた時期に、休暇で福岡の実家に帰省する道中、何気なくスマートフォンで求人情報を見ていたら、たまたま萩市の職員募集が目に留まって。締め切り直前だったので、思い切って応募しました。
大学時代を山口県で過ごしていたので、山口県で暮らすことに抵抗はありませんでしたし、萩市なら福岡の実家にも帰りやすい。妻に相談してみたら「いいね、行きたい」と前向きな反応だったことも後押しになりましたね。
地元に戻る選択肢もありましたが、全く新しい環境で心機一転スタートを切るのも良いなと思ったんです。それで、萩市一本に絞って応募しました。

市民の暮らしを支える。浄化センターでの電気技術職の仕事とは
ー市役所の電気技術職というと、入庁前はどんな仕事をイメージされていましたか?
田才:漠然とですが、道路の街灯管理や電柱に関わる仕事をするのかな、と思っていました。市役所の本庁舎で働くものだとばかり考えていましたね。
しかし実際は全くイメージと違いました。配属されたのは本庁舎ではなく、下水道施設である「萩浄化センター」です。主な仕事は、市内にある浄化センターやポンプ場の電気・機械設備の維持管理、そして老朽化した機器を更新するための設計や工事監理です。
ー浄化センターとはどういった施設なのですか?
田才:家庭から出る汚水をきれいにして川や海に放流する施設です。萩市内には、私が勤務する萩浄化センターを中心に25箇所の処理施設があります。これらの施設が24時間365日、正常に機能し続けることで、市民の衛生的で快適な生活と、地域のきれいな水環境が守られています。その重要なインフラを、電気技術の専門家として支えるのが私の役割です。
ー25箇所も!全て田才さんが見ているのですか?
田才:日常的な管理や点検は委託先の維持管理業者が行います。そこで連絡を受ける場合や、遠隔監視システムからの異常を感知すれば、現場に駆けつけて原因調査し、応急処置や本格的な修繕を行います。工事に向けての設計や発注、工程監理も行います。
ー入庁されて、まず何が大変でしたか?
田才:これまでのキャリアで電気に関する知識はありましたが、「水処理」の仕組みについては全くの素人でした。そもそも汚水がどういうプロセスを経てきれいになるのか、そのためにどれだけ多くの機械が使われ、専門的な用語があるのか、最初の頃は学ぶことばかりで。
目の前にある巨大な設備と専門書の内容を結びつけながら、一つひとつ知識を吸収する毎日でした。分からないことは先輩方に積極的に質問し、半年も経つ頃には全体の流れがぼんやりと見えてきて、仕事の勘所が掴めるようになってきたと感じます。

学び続けることが、仕事の楽しさになる。電気のプロフェッショナルとしての探求心
ー仕事のやりがいを感じるのはどんな時ですか?
田才:下水処理と聞くと、あまり華やかなイメージはないかもしれません。でも私にとっては、前職とはまた違う角度から「電気」という専門分野を深く見つめ直し、学び続けられることが純粋に楽しいと感じます。
市内に25箇所も処理施設があれば、それぞれ処理方式や導入されている設備も異なります。仕事をすればするほど、新たな機械、見知らぬ仕組みと発見が次から次へと出てくるんです。その一つひとつを理解し、自分の知識として蓄積していく過程に、技術者としての面白さを感じます。水処理という分野は本当に奥が深く、まだまだ知らないことばかりです。
ー今後の目標や、挑戦してみたいことはありますか?
田才:具体的な計画というわけではありませんが、最近、下水が持つエネルギーの可能性に興味を持っています。例えば、下水処理の過程で発生する消化ガスを利用して発電する取り組みはすでに行われていますが、それ以外にも、下水から熱エネルギーを取り出したり、資源を回収したりと、様々な技術が研究されています。
そういった最新の技術や情報を常にインプットしておき、提案できるタイミングが来れば、積極的に挑戦してみたいと思っています。自分の興味が、市の新たな取り組みに繋がったら面白いですよね。

少人数だからこその風通しの良さ。家庭と両立できる理想のワークライフバランス
ー職場の雰囲気について教えてください。萩浄化センターには何人くらいの方がいらっしゃるのですか?
田才:浄化センターの職員は私を含めて5人です。少人数なので、その分風通しは抜群に良いですね。普段から何気ない会話が多いですし、だからこそいざ仕事で分からないことや相談したいことが出てきたときも、改まって聞くのではなく、会話の延長線上で気軽に「これってどう思います?」と聞けるんです。このやりやすさは、少人数ならではの魅力だと思います。
ー働き方についてはいかがですか?転職理由の一つにワークライフバランスを挙げられていましたが、その点は実現できていますか?
田才:はい、期待以上に実現できています。休暇も非常に取りやすいです。5名のうち電気職が2人しかいないので一人が休んだら大変じゃないか、と思われるかもしれませんが、緊急時には携帯に連絡が入りますし、遠隔で状況を確認したり指示を出したりすることも可能です。
それに、何かあれば車で約10分で駆け付けられる距離なので、休みの日だからといって常に気を張っている必要はありません。
ー緊急の呼び出しは頻繁にあるのでしょうか?
田才:いえ、そんなに多くはありません。機器が故障しても、2台ある機器などは緊急対応の必要はなく、翌日に対応することもあります。もちろん、停電で処理場の機能が止まってしまうといった大変な事案が起こる場合もありますが、それは夜間や休日に発生するとは限りませんし、平日昼間かもしれません。市民の生活を守るインフラを預かる仕事なので、365日対応できる体制と責任感は必要ですが、過度に心配することはないですね。
ー残業についても気になります。
田才:残業もほとんどありません。小さい子どもがいるので、保育園のお迎えなど、どうしても決まった時間に帰らなければならない日が多いんです。だからこそ、限られた時間の中でどうすれば仕事を終わらせられるか、常に逆算して考えるようになりました。前もって段取りを組んだり、効率を意識したりすることで、定時で帰るのが基本です。
転職時に望んでいた、仕事と家庭を両立できる働き方が、今まさにできていると実感しています。この点に関しては、何の不満もありません。

都会を経験したからこそわかる魅力。萩市で実現する、心豊かな暮らしと働き方
ー実際に萩市で暮らしてみて、いかがですか?
田才:生活に必要なものは市内でほとんど揃いますし、足りないものがあればインターネットで注文すればすぐに届きます。子どもとの時間を大切にして、休みの日はほとんど萩市内で過ごしていますね。
萩市は、「一度、都会を経験した人」にこそ魅力的な場所ではないかと思います。都会に憧れ、刺激的な環境に身を置きたいという考えもあるでしょうが、そういった環境の都会で働いた方ならば、萩市が持つ穏やかな空気や、ワークライフバランスの整った環境の価値をより深く理解できると思います。
もちろんそういった方ばかりではありませんが、人生の次のステージとして萩市を選んでくれたら、きっと長く、充実した働き方ができるのではないでしょうか。
ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年7月取材)