山口県萩市で看護師として働く水津さんのインタビュー記事です。12年間美容師としてキャリアを積んだ後、結婚・出産を機に看護師への転身を決意。子育てをしながら看護学校に通い、現在は萩市民病院で地域医療に貢献しています。
異色の経歴を持つ水津さんが語る、仕事のやりがいや職場の魅力、そして今後の目標とは。キャリアチェンジやUターンを考えている方、子育てと仕事の両立に悩む方にとって、多くのヒントが詰まったインタビューです。
- 美容師から看護師へ。異色のキャリアチェンジ
- 家族の支えを力に。子育てと学業の両立
- 実習での出会いが決め手。萩市民病院で働くということ
- 患者さんの回復が何よりの喜び。命と向き合う現場でのやりがい
- 新人もベテランも関係ない。チームで支え合う温かい職場
美容師から看護師へ。異色のキャリアチェンジ
ーまずは自己紹介と、これまでの経歴について教えてください。
水津:萩市で生まれ育ち、高校卒業までをここで過ごしました。高校卒業後は、全く違う分野である美容の専門学校に進学し、美容師として12年間働いていました。地元にUターンしてからも美容師を続けていたんです。
その後、結婚と出産を経て、一念発起して看護の道へ進むことを決意しました。萩の准看護学校と看護学校に計5年間通い、2023年4月から萩市民病院で看護師として勤務しています。
ー12年間も美容師として働かれた後、なぜ看護師という全く違う道へ進もうと思われたのですか?
水津:実は、高校生の時に進路で美容師か看護師かですごく迷ったんです。その時は美容師の道を選び、仕事も大好きで、お客様の人生の大切な瞬間に立ち会えることに大きなやりがいを感じていました。転機になったのは、やはり出産と育児の経験ですね。
妊娠中や子どもが小さい頃に、親子ともども病院にお世話になる機会が本当に多くて。自分自身も入院した経験があります。その時に、看護師の方々が親身に寄り添い、支えてくださる姿を間近で見て、改めて「すごい仕事だな」と感銘を受けました。
元々、私の母が看護師だったこともあり、医療の現場は身近な存在でした。そうした原体験に加え、自分がお世話になった経験から「今度は自分が地域の人々を支える側になりたい」という気持ちが強く芽生えたんです。
人の人生を彩る美容師の仕事も素晴らしいけれど、命に直接関わり、心と体の両面から人を支える看護師の仕事に、より強い使命感と魅力を感じました。この先、長い人生を考えた時に、本当にやりたいことは何かを突き詰めた結果、看護師になるという決断に至りました。

家族の支えを力に。子育てと学業の両立
ーお子さんが2歳の時に看護学校に入学されたとのことですが、子育てと学業の両立は大変だったのではないでしょうか?
水津:正直、大変でした(笑)。夫は最初、私の決意に少し驚いて反対していましたね。でも、私の本気度が伝わったのか、最終的には「頑張って」と一番の理解者として応援してくれました。学業と子育ての両立は、確かに時間の制約も多く、体力的にも精神的にもハードな日々でした。
でも、保育園の先生方をはじめ、萩で暮らす私の両親も全面的に協力してくれて。本当に周りのみんなに支えられて、5年間の学生生活を乗り越えることができました。家族や地域の温かいサポートがあったからこそ、夢を諦めずに進むことができたと心から感謝しています。

実習での出会いが決め手。萩市民病院で働くということ
ー数ある病院の中から、萩市民病院を就職先に選んだ理由を教えてください。
水津:准看護学校時代に、実習で萩市内のいくつかの病院を回らせていただいたのが大きなきっかけです。萩市民病院は、地域の中核を担う急性期病院であり、そこにまず興味を惹かれました。そして、実習でお世話になった指導者の方や先輩看護師の方々が本当に親切で、熱心に指導してくださったんです。その時の良い印象が強く心に残っていました。
その後、看護学校に進学するタイミングで、思い切ってそれまで働いていたクリニックを辞め、萩市民病院が募集していた学生アルバイトに応募しました。学生時代から実際に現場で働きながら学べたことは、私にとって非常に大きな経験になりました。
実習で感じた温かい雰囲気はアルバイトになっても変わらず、「卒業したら絶対にここで働きたい!」という気持ちは日に日に強くなっていきました。

ー実際に職員として入職してみて、学生時代とのギャップはありましたか?
水津:いい意味でのギャップはたくさんありますが、悪い意味でのギャップは全く感じませんでした。学生時代からずっと「ここで働きたい」という強い思いがあったので、念願が叶ったという気持ちが大きいです。
もちろん、学生アルバイトと正規の看護師とでは、責任の重さが全く違います。それでも、周りの先輩方が温かく見守り、サポートしてくださるので、安心して業務に取り組むことができています。

患者さんの回復が何よりの喜び。命と向き合う現場でのやりがい
ー看護師の仕事のどんなところにやりがいを感じますか?
水津:やはり、患者さんが回復されていく姿を間近で見られることですね。入院される時は、心身ともに一番辛い状態の方がほとんどです。最初は動くことも、話すことも、食事を摂ることもままならなかった方が、日々のケアを通して少しずつ元気を取り戻し、笑顔で退院されていく。その過程に立ち会えることは、何物にも代えがたい喜びであり、この仕事の醍醐味だと感じています。
患者さんやご家族から「ありがとう」という言葉をいただいた時には、この道を選んで本当に良かったと思えます。
ー仕事で特に意識していることはありますか?
水津:一番は、患者さんの「いつもと違う」という小さな変化に気づくことです。特に急性期の病棟では、患者さんの状態が急変することも少なくありません。バイタルサインの数値だけでなく、表情や言動、雰囲気など、五感をフル活用して観察し、異変の兆候をいち早く察知することが求められます。新人だからこそ、常にアンテナを高く張り、少しでも気になることがあればすぐに先輩に相談・報告するように徹底しています。
また、患者さんは病気や怪我で辛い思いをされているので、時には治療に対して消極的になったり、私たちに厳しい言葉を向けられたりすることもあります。ですが、それは患者さんの心の叫びでもあると受け止め、なぜそう思われるのか、その背景にある不安や苦痛に寄り添うことを大切にしています。
まだまだ知識も技術も未熟ですが、一つひとつの経験を次に繋げていけるよう、日々勉強の毎日です。

新人もベテランも関係ない。チームで支え合う温かい職場
ー職場の雰囲気や、人間関係についてはいかがですか?
水津:本当に温かくて、働きやすい職場だと思います。新人だからと遠慮することなく、分からないことはいつでも先輩方に質問できますし、皆さん丁寧に教えてくださいます。例えば、珍しい処置や検査がある時には、たとえ担当チームが違っても「良い経験になるから見てみない?」と声をかけてくださるんです。そうやって、病院全体で新人を育てようという雰囲気があるのは、本当にありがたいですね。
ー先輩や後輩との関係性も良好なんですね。
水津:はい、とても良い関係を築けていると思います。休憩時間には仕事の話だけでなく、子育ての悩み相談をしたり、プライベートな話で盛り上がったり(笑)。
私も子育て中の身なので、同じ母親という立場の先輩とお話しできるのは心強いです。年齢やキャリアに関わらず、お互いを尊重し合えるフラットな関係性が、この病院の魅力の一つだと思います。
ー最後に、今後の目標と、これから萩市で働くことを考えている方へのメッセージをお願いします。
水津:今はまだ目の前の業務で精一杯ですが、今後は退院後の生活まで見据えた関わりができるようになりたいです。患者さんがご自宅に帰られた後も、その人らしい生活を送れるように、多職種と連携しながら最適なサポートを考えられる看護師になるのが目標です。
美容師として12年間働いた経験は、決して無駄ではなかったと思っています。そこで培ったコミュニケーション能力や観察力は、患者さんの心に寄り添う上で、今とても役立っています。遠回りしたかもしれませんが、全ての経験が今の私に繋がっていると実感しています。

ー本日はありがとうございました。
美容師という専門職を辞めて新たな道へ。水津さんのお話からは、全く新たなチャレンジへの覚悟と、そこで感じる充実感を強く感じました。全く異なるキャリアも今の自分につながっているという言葉も印象的です。
異業種からの転職も多い公務員・公共領域の仕事において、きっと水津さんの考えや働き方は参考となるはずです。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年9月取材)



