「自分が担当した建てものの中で働けてるんです。それがうれしくて」
そう笑顔で語るのは、萩市役所土木建築部建築課で建築技術職として働く入庁9年目の田中さん。萩市出身の26歳。幼い頃から家庭で建築の図面が身近にあり、小学生のときから「一級建築士になりたい」という夢を持ち続けてきた。昨年度は市の資格取得助成制度の第1号利用者として1級建築士免許を取得し、いまは公共施設の設計・積算・工事監理を一貫して担っている。
今回は、建築技術職として萩市役所で働くことを考えている方に向けて、仕事の内容や職場の雰囲気、資格取得の道のりについてお話を伺いました。
小学生から描いた夢。設計を選んで、地元の市役所へ
ーまず、萩市役所を志望されたきっかけから教えてください。
田中:母が建築関係の仕事をしていて、小さい頃から建築の図面が身近にある環境でした。それを見ているうちに、自然と「建築士になりたい」と思うようになりました。それで建築科のある萩商工高校に進学しました。
ーでも、建築科の就職先といえば、民間企業が多いのではないですか。
田中:そうなんです。求人として来るのは施工現場の施工管理が多いんです。でも自分がやりたいのは設計のほうだったので、高校の先生や両親のすすめもあって、設計ができる市役所を選びました。

年間10〜20件。設計から積算、現場監理まで一貫して担う
ー現在の仕事内容を教えてください。
田中:私の所属する建築係は、公共施設の新築・改修・解体の設計と、工事にかかる費用や数量を出す積算、それから現場の工事監理をしています。業務は係員で分担するので、1人あたり10件から多いときは20件前後を担当します。
ーどんな施設を担当されていますか?
田中:学校や公民館、総合事務所、庁舎、市営住宅などですね。新築よりも改修が多くて、屋根や防水・外壁の改修、内装の改修なども担います。今年は消防庁舎の改修も担当していて、人員体制の変化に合わせて間取りを変える内容です。
ー案件の振り分けはどのように決まるんですか?
田中:翌年度にどんな事業があるか事前にわかるので、その中から「これをやりたい」と希望を出すこともありますし、工事規模のバランスで割り振ることもあります。以前、消防器庫の新築と住宅の新築のどちらを担当するか選ぶことがあって、消防器庫はすでに経験していたので住宅を選びました。
入庁前は、市役所にこんなに設計の案件があるとは思っていませんでしたね。機械設備や電気設備の工事も担当するので、高校で学んでこなかった分野も多いですが、いろんなジャンルを経験できるのはありがたいです。

発注側と受注側で再会した、第3庁舎建設工事の思い出
ーこれまでの案件で特に印象に残っているものはありますか?
田中:自分が工事監理を担当した、今いる萩市役所の第3庁舎の建設工事です。入庁してから初めて担当した大型の建設工事だったのですが、現場の担当者の中に高校のときの同級生がいたんです。
ーそれは偶然ですね。
田中:クラスで地元に就職したのが2、3人しかいなくて、その中の1人でした。就職先を決めるときに「地元に残るから、いつかどこかで一緒に仕事できたらいいね」と話していたんですが、それが思ったより早く実現しました。
ー業者さんとのやり取りはどんな感じですか?
田中:基本的に相手は自分の親世代以上の方が多くて、経験値では絶対に及ばない。最初は指示を出すのが大変でした。でも何年かするとまた同じ業者さんと仕事することが増えてきて、最近は頼みやすくなってきました。

助成制度の第1号利用者として、1級建築士免許を取得
ー昨年度、1級建築士を取得されたとのこと。もともと目指していたんですか?
田中:そうですね、入庁したときから目指していました。自分は高校卒業後すぐ就職したので、まず2級建築士を取得することで1級建築士の受験資格を得ることができます。どちらも資格の専門学校に通って勉強しました。
ー学習のペースはどれくらいでしたか?
田中:11月末から授業が始まって、学科試験が7月末にあります。最初は週2回、仕事終わりと日曜日に通って、学科試験の1か月前からは平日3日と日曜日に授業がありました。専門学校まで片道1時間かかるので、なかなか大変でしたね。
ー試験期間中、職場からサポートはありましたか?
田中:気にかけてもらえていました。自分でも7月に仕事が集中しないようにスケジュールを最初から組んで調整しました。建築技術職として取ってもらいたいというチームの雰囲気があって、取りやすい環境を整えてもらえたと思います。
ー萩市では今年度から資格取得助成制度が始まったと聞いています。
田中:令和7年度からの制度で、自分が第1号の利用者になりました。1級建築士の受講料は100〜150万円ほどかかるのですが、受講料の3分の2程度と登録免許税と受験手数料を助成してもらえます。
ー取得してから変化はありましたか?
田中:業者さんから『取ったらしいね』と声をかけてもらうことが増えて、求められるものが高くなった感じがします。いまはまだ大型の新築工事を1人で主担当として担当したことがないので、いずれはそれをやれるようになりたいですね。
―ありがとうございました。
「設計がしたかった」という高校生のときの思いが、地元・萩市の公共施設というかたちで積み重なっている。庁舎の建設工事を担当し、いまその庁舎で日々図面に向かっているという話を聞いたとき、建築という仕事の手触りがこれ以上ない具体性で伝わってきた。

取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年6月取材)



