県外での大学生活を経て、改めて気づいた「地元の温かさ」。山梨県の中央に位置し、豊かな田園風景と都市の利便性が調和する中央市。ここに、幼い頃からの「憧れ」を自身の職業に変え、地域の子どもたちと真摯に向き合う一人の保育士がいます。
今回お話を伺ったのは、中央市職員として市内の保育園で活躍する田草川さん。 「きょうだいが欲しかった」という幼少期の原体験から、どのように保育の道を志し、なぜ生まれ育ったこのまちを選んだのか。
憧れだけでは語れない現場のリアリティや、かつての恩師と職場で再会するという地元就職ならではのエピソード、そして中央市だからこそ実現できる自然と触れ合う保育の魅力について、等身大の言葉で語っていただきました。
- 生まれ育った「中央市」へUターン。このまちを選んだ理由
- 憧れと現実のギャップ。命を預かる責任と、それを上回る「癒やし」
- 園の目の前に広がる田んぼ。中央市ならではの「食育」と豊かな自然
- 保育士の働き方と「地元で働く」という魅力
- これから保育士を目指すあなたへ
生まれ育った「中央市」へUターン。このまちを選んだ理由
ー田草川さんは、生まれも育ちも中央市とお聞きしました。やはり、特別な愛着があったのでしょうか?
田草川:そうですね。私は中央市の保育園から小・中学校と、ずっと地元で育ちました。高校は市外に通っており、大学進学を機に一度神奈川県へ出たんです。相模原にある大学で学んでいたのですが、就職を考えたときに、やっぱり地元が好きだな、戻りたいなという思いが強くなりました。
ー県外に出たからこそ、地元の良さを再確認されたのかもしれませんね。保育士は昔から目指していたのでしょうか?
田草川:保育士は小さい頃からの夢でした。
実は私、きょうだいがいなくて、周りに小さい子もいなかったんです。だからこそ、いとこや友達がきょうだいと遊んでいる姿を見て「羨ましいな」とずっと思っていました。
その憧れが、子どもに携わる仕事に就きたいという気持ちに繋がったんだと思います。小学校の高学年くらいにはもう保育士になることを意識していましたね。

ー憧れが原動力だったのですね。子どもに関わる仕事といえば幼稚園もありますが、なぜ保育園だったのでしょう?
田草川:私自身が、保育園出身だったことが大きいですね。また、実習に行ってみて改めて感じたのが、幼稚園はどちらかというと「お勉強」や設定保育の時間がしっかりあるイメージであるのに対し、保育園は、生活の中に遊びがあって、一人ひとりとゆったり関われる時間が長いと思っていました。
その雰囲気が、自分の性格には合っているなと感じて、保育士になることを選びました。
ー「生活の中に遊びがある」素敵な視点ですね。公立の園を選んだのにも理由があるのですか?
田草川:公立園ならではの「異動」に魅力を感じていました。中央市にはいくつも園がありますが、異動することでいろいろな地域の園を知ることができますし、多くの先生や子どもたちと関われるのがいいなと思っていました。
ー異動は大変そうなイメージもありますが、むしろポジティブに捉えていたのですね?
田草川:そうですね。ずっと同じ場所よりも、いろいろな環境で経験を積める方が自分には合っているかなと思っていました。
実際に今は玉穂保育園で働いていますが、ここは3園目になります。入庁6年目ですが、異動があることで新鮮な気持ちで働けています。
憧れと現実のギャップ。命を預かる責任と、それを上回る「癒やし」
ー入庁前に憧れていた「保育士」と、実際に働いてみて感じたギャップはありましたか?
田草川:正直に言うと…想像以上に大変でしたね(笑)
子どもたちと遊ぶだけではなく、行事に向けた準備や、その過程で子どもたち一人ひとりにどう関わっていくかの計画など、外からは見えないような業務がたくさんあります。
何より一番感じるのは「責任の重さ」ですね。命を預かっている仕事なので、楽しいだけではありません。子どもが怪我をしてしまった時などは、本当に血の気が引く思いで「どうしよう」と青ざめることもあります。
子ども同士のトラブルも日常茶飯事ですし、常に気を張っていないといけないので、そこはやはり、憧れとは違った現実かもしれないですね。

ー本音を教えていただきありがとうございます。では、それでも「続けてよかった」と思える瞬間は、どんな時でしょう?
田草川:月並みかもしれませんが、やっぱり子どもたちの笑顔ですね!
「先生大好き!」って駆け寄ってきてくれたり、屈託のない笑顔を向けられたりすると、大変だったことも全部吹き飛ぶくらい癒やされます。毎日何かしら「可愛いな」と思う瞬間があるんですよ。
ー「毎日何かしら可愛い」その言葉にすべてが詰まっている気がしますね。
田草川:子どもたちの成長を一番近くで見守れるのは、この仕事ならではの特権だと思います。「昨日できなかったことが、今日できるようになった」という瞬間に立ち会える。その達成感や喜びは、何物にも代えがたいですね。
ー職場の環境についてもお伺いしたいのですが、先生同士の雰囲気はいかがですか?
田草川:園によってカラーは違いますが、全体的に明るくて働きやすいと思っています。公立園だとベテランの先生も多いのですが、昔も今も、多くの先生方にたくさん助けていただいています。
右も左も分からない中で、先輩方に優しくフォローしていただけるような環境ですし、悩みを相談し合えるので、人間関係で孤立するようなことはなかったですね。

ーベテラン層が厚いというのは、公立園の強みかもしれませんね。
田草川:本当にそう思います。私より年齢も経験も上だけど、中途採用として後から入ってくる、という方もいるのですが、お互いに尊重し合いながら働くことができています。
意見も言いやすい環境ですし、チームワークはとても良いと感じています。
園の目の前に広がる田んぼ。中央市ならではの「食育」と豊かな自然
ー続いて「中央市ならではの魅力」をお聞きしたいのですが、田草川さんが働いてみて感じる、他の地域にはない特徴はありますか?
田草川:やっぱり「自然の豊かさ」ですね。特に私がいる田富地区は、お米や野菜の栽培がすごく盛んなんです。トマト、キュウリ、ナス…本当に美味しいものがたくさん採れます。
実は、田富第一保育園の目の前には、地域の方が貸してくださっている田んぼもあるんです。「食育ファーム」のような形で、保育でも活用させていただいています。
そこで年長さんになると園児たちが泥んこになりながら田植えをしたり、稲刈りを体験したり。今はもうないですが、以前は自分たちでかかしを作って立てたりもしていました。
ーそれは素敵な体験ですね。実際に土に触れて作物を育てる経験ができるのですね。
田草川:そうなんです。自分たちで植えたお米や野菜がどう育つのかを見ることができますし、収穫の喜びも味わえます。中央市は、そういった「自然と触れ合う機会」が日常的にあるのが大きな特徴だと思います。
ー自然豊かでありながら、生活環境としてはどうですか?
田草川:すごく住みやすいですよ。甲府市や昭和町といった商業エリアも近いですし、環状線が通っているので車での移動も便利です。
それでいて、まちはガヤガヤしすぎていなくて、ゆったりとした時間が流れている。子育てをするにも、生活をするにも、ちょうどいいバランスの場所だと思います。
保育士の働き方と「地元で働く」という魅力
ー働き方についても少し突っ込んでお聞きしたいのですが、残業やお休み事情はいかがですか?
田草川:残業に関しては、昔に比べるとかなり減ったと思います。「当番制」がしっかりしているので、遅番や早番といったシフト上の勤務はありますが、定時で帰れないということはあまりないですね。
お休みもしっかり取ることができます。年休とは別で夏季休暇も付与されるのですが、それも計画的に取得することができます。
保育士と聞くと「休みにくい」というイメージがあるかもしれませんが、旅行に行きたい時なども、他の先生と調整して休むことができます。若いから言い出しにくいという雰囲気も全くないですね。
ー話が変わりますが、地元で働くことの魅力として、何か印象的なエピソードはありますか?
田草川:一番印象に残っているのは、私が保育園の年長さんだった時の担任の先生と、大学の保育実習の時に中央市の園で再会できたことです。
もう園長先生になられていたのですが、私のことを覚えていてくれて「こうして先生になって戻ってきてくれたんだね」って声をかけていただきました。
そういう方と一緒に働けるのも、地元就職ならではの魅力だと思います。いつか自分の教え子も一緒の職場に来てくれたらと思うと最高ですよね。そんな日が来るのを楽しみに、これからも頑張りたいなと思います。
これから保育士を目指すあなたへ
ー最後に、これから保育士を目指す方や、働く場所に迷っている方へメッセージをお願いします。
田草川:保育士の仕事は、正直大変なことも多いです。責任も重いですし、体力も使います。
でも、「子どもが好き」という気持ちさえあれば、どんな大変さも乗り越えられるくらいの喜びや達成感が待っています。子どもの成長という貴重な瞬間に立ち会い、その人生の一部に携われることは、本当に素晴らしい魅力です。
特に中央市は、温かい地域の方々と、豊かな自然に囲まれて、とてものびのびと保育ができる環境です。もし迷っているなら、ぜひ一度見学に来てみてください。
一緒に働ける日を楽しみにしています!

ー本日はありがとうございました。
「私が年長さんの時の担任の先生と、一緒に働いたことがあるんです」 取材の終盤、嬉しそうに語ってくれたこのエピソードが、とても心に残りました。かつて自分に向けられた温かな眼差しを、今度は自分が子どもたちへ注いでいく。そんな愛ある優しさの循環が、ここ中央市には確かに息づいています。
「命を預かる責任は重い」と率直な葛藤を明かしてくれたからこそ、「毎日何かしら可愛い瞬間がある」という言葉の重みがより一層響きました。憧れと現実の狭間で、それでも子どもたちの笑顔を糧に成長し続ける田草川さんの姿は、これからこのまちで働く誰かにとっての、新しい「憧れ」になるのだと思います。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年11月取材)



