学生時代は看護師を志していましたが、コロナ禍の実習を経て気持ちが変わり、保健師の道へ。新卒で山梨県中央市役所へ入庁した一瀬さんは、今年で入庁3年目、現在は子育て支援課で子育てサービス利用にかかる相談や、子育てに悩みを抱える家庭を支援する仕事をしています。
同じく入庁3年目で、健康増進課に所属する笠井さんは、保健師として働く母の背中を追いかけてきました。地元・山梨に戻り、中央市役所を選んだのは、実家からの通いやすさだけが理由ではなかったそうです。
今回は、お二人に入庁前に思い描いていた市役所のイメージと実際の違い、そして「市民との距離が近い」からこそ生まれるやりがいと難しさについて、お話を伺いました。
- 健診の企画から子育て支援まで。二人の保健師が担う「今の仕事」
- 母への憧れと、実習を経て保健師を志した理由
- 決裁は安心の裏付け。入庁前後で変わった市役所のイメージ
- 「近いからこそ」の難しさとうれしさ。市民との距離が生む、やりがい
- やってみればどうにかなるもの。これから保健師を目指す方へ
健診の企画から子育て支援まで。二人の保健師が担う「今の仕事」
ーまず、お二人の入庁年度と現在の所属について教えてください。
笠井:入庁は令和6年度で、健康増進課に配属されてから今年で3年目になります。異動はなく、ずっと健康増進課で働いています。
一瀬:私も入庁は令和6年度です。昨年度までは笠井さんと同じ健康増進課にいましたが、今年度から子育て支援課に異動しました。笠井さんとは年齢も入庁年度も同じなんです(笑)
ーそれならば緊張も和らぐかもしれないですね。笠井さんは、どのようなお仕事を担当されているのですか?
笠井:健康増進課の健康増進担当として、予防的観点でのかかわりが多いです。成人・老年保健を担当し、主に住民向けの総合健診や健診が終わった後の健診結果説明会や健康相談、健康教室も担当しています。健診や相談を通して、病気を予防して地域で健康に生活できるお手伝いができればと思っています。
また地区担当制として、赤ちゃんの訪問など母子保健に関わる業務も行っています。
ー総合健診は年間でどのくらい実施されているのですか?
笠井:ちょうど今の時期、7月と8月に実施しています。この夏の時期が中心ですが、夏に受けられなかった方のフォローとして、冬にも一部健診を行っているので年間で16日ほど実施しています。
ー健康教室ではどのようなことを行っているのですか?
笠井:教室では講師の先生を招いてウォーキング教室、姿勢改善教室、腎臓病の教室の3つの教室の企画・運営を行っています。ウォーキングと姿勢改善の教室は、広報などで周知を行い、腎臓病の教室は、健診の結果の判定から必要な方へ通知を送っています。

ー笠井さん自身が住民の前で直接レクチャーする機会もあるのですか?
笠井:教室では参加者の健康チェックや講師の補佐、アンケートや資料の配布をします。
健診当日の問診には私も含めて保健師が入りますし、健診後の健診結果説明会では、特定健診で拾い上げた方に健康に向き合ってもらうためのフォローとして生活改善の話や受診の案内をお伝えしています。市民の方と直接お話しする機会は多いですね。
健康教室は繰り返し参加いただける方もいるので、特に距離が近く感じます。
ーでは、一瀬さんはどのようなお仕事を担当されているのでしょうか?
一瀬:子育て支援課の子育て支援担当として、子育てサービス利用にかかる相談や、子育てに悩みや不安を抱える家庭を支援する仕事をしています。
健康増進課にいた頃よりも、より深く向き合う機会が多くなったと感じています。
ー具体的にはどのような対応をされているのでしょう。
一瀬:保護者の方に連絡したり、直接家庭へ訪問したりすることで、お子さんの様子を確認し、困り事を改善できるように一緒に考えます。支援にあたっては、多くの機関が携わっている場合もあるため、同じ方向を向いて支援できるようにしています。

ーそうすると、日々の業務の中でも訪問する機会が多いのでしょうか?
一瀬:毎日訪問するわけではありませんが、定期的に保護者の方に連絡をして訪問しています。緊急で対応しなければならない場面もあるので、今日は予定がなかったのに急遽訪問することになる、というようなイレギュラーな対応も少なくありません。
母への憧れと、実習を経て保健師を志した理由
ーここからは少し遡って、保健師を目指したきっかけを教えてください。
笠井:出身は山梨県です。生まれは合併前の旧玉穂町でしたが、幼いころに市外に引っ越しています。
地元の小中高を出て、県内の3年制の看護専門学校で看護師の資格を取り、その後、県外にある専門学校で保健師の資格を取りました。
ー最初は看護師を目指していたのでしょうか?
笠井:最初から保健師を目指していたんです。
一番のきっかけは、母が別の市町村で保健師として働いていたことです。近い距離でその姿を見ていたので、憧れの職業でした。4年制の大学で保健師と看護師の両方を取るよりも、別々に学ぶ方が自分には合っていると感じたので、看護師と保健師では区切りをつけて資格を取得しました。
ー一瀬さんはいかがですか?
一瀬:私の出身は栃木県で、高校まで栃木で過ごしていました。国公立の大学に進学したいと考えていたのですが、栃木には国公立の看護系の大学がなかったため、推薦枠の対象でもあった山梨県の大学を受験しました。
私は最初、看護師になるつもりで進学をしたんです。
ー保健師になろうと思ったのは、どのようなタイミングだったのですか?
一瀬:大学3年生の頃、コロナ禍で感染症対策をしながら実習に入らせてもらう機会がありました。
その実習の中で、退院して地域の施設に移る患者さんと関わらせてもらい、退院後も自分で服薬管理をしていかなければならない状況のため服薬指導をしました。病気と付き合いながら地域で暮らす人という視点にだんだん目が向くようになり、保健師を目指すゼミに入ったり、実習を重ねたりする中で、保健師になりたいという気持ちが固まっていきました。
ーお二人とも地元ではないようですが、なぜ中央市を選ばれたのでしょうか?
一瀬:実習で中央市に来ていたこともあり、ほかの自治体よりも働くイメージが湧きやすかったです。もちろん栃木県での就職も考えたのですが、試験日が重なっていたため、中央市を選択しました。
また、私たちが受験するタイミングで中央市の試験内容から教養試験がなくなったことも後押しとなりました。国家試験の勉強もある中で教養試験の対策をするのは難しいと感じていたので、受験しやすさという観点も魅力に感じました。
笠井:私は通っていた学校が県外だったのですが、もともと山梨に戻りたいと思っていて、実家から通える自治体を探していました。地元は当時募集がなかったため、近くの中央市を考えました。
幼少期に少しだけ住んでいた記憶もあったので、まったく知らない土地ではないという安心感もありましたね。
決裁は安心の裏付け。入庁前後で変わった市役所のイメージ
ー実際に働いてみて、入庁前にイメージしていた保健師の仕事とのギャップはありましたか?
笠井:母から話は聞いていたものの、思った以上にやることが、責任のある仕事だと感じました。公務員という職業柄、スピーディーに進めながらも1人の責任にせず、組織として物事を決めているというイメージを持つようになりました。
最初は決裁の度に「時間がかかるな」と感じていたこともあるのですが、今思えば、組織として確認するというこの決裁の仕組みは、とても大事なことだと感じています。
ー決裁は1人に責任を押し付けないという安心感でもあるのですね。一瀬さんはいかがですか?
一瀬:事務仕事や、市役所全体のイベントへの動員といった、保健師としての業務以外も多いということがギャップでしたね。実習では訪問や健診の場面しか見えていなかったので、市職員としての業務がこんなにあるということは知りませんでした。
ただ、事務仕事も自分の業務に関係することなので、特に苦には思っていません。イベントに関しても、普段関わる機会の無い職員と話す機会になるので、率直に楽しいですね。
ー職場の雰囲気についてはいかがでしょうか。
一瀬:実習のときは学生という立場だったので、職員の方と深く話すような機会も少なかったのですが、実際に職員になると、仕事のこともプライベートのこともいろいろな話ができて、アットホームな雰囲気があって働きやすいと感じています。
入庁当時はどこまで相談していいのか戸惑う部分もあったのですが、慣れてからは気軽に相談できるようになり、とても働きやすくなりました。
ー笠井さんもアットホームな雰囲気は感じられますか?
笠井:感じますね。入る前は「縦割りでギスギスしてるのかな」という勝手なイメージを持っていたのですが、実際は全然そんなことがありませんでした(笑)
気にかけて声をかけてくれる方も多く、相談しやすい環境があると感じています。
「近いからこそ」の難しさとうれしさ。市民との距離が生む、やりがい
ー保健師として、思い描いていたような距離感で市民の方と接することができていますか?
一瀬:とても近い距離で関わることができていると思います。
健診や電話でやり取りをして親しくなった方が窓口に来てくれたり、近況を教えてくれたりして、「相談してよかった」と言ってもらえるのはとてもやりがいに感じます。一方で、近いからこその難しさも感じています。
保健師は一時的ではなく、長く支援をすることが多い仕事です。一度関わりを間違えれば、以降信頼していただけなくなることも考えられます。日頃のコミュニケーションの中でも、伝え方や関係構築には特に気を配っています。

笠井:私も一瀬さんと同様に、市民の方とはとても密に接することができると思っています。赤ちゃん訪問で伺ったお宅のお母さんと赤ちゃんが窓口に来てくれて、「歩くようになったんです」と話をしてくれたりすると、とてもやりがいを感じますね。
難しさとしては、距離が近く信頼していただけているからこそ、自分一人の力では対応できないような相談を受けることもあります。自分だけで何でも抱え込むのではなく、時には関係職種や機関としっかり連携して進めることが求められます。

ー「近いからこそ」というのは、お二人にとって共通のキーワードのようですね。
笠井:そうですね。地区担当として同じ地域の方に何度もお会いすることが多かったので、距離の近さはずっと感じてきました。
一瀬:私も、近いからこそ気を配ることも多いですが、その分やりがいも大きいです。
やってみればどうにかなるもの。これから保健師を目指す方へ
ー働き方やワークライフバランスについても教えてください。
笠井:土日祝日は基本的に休みなので、予定は立てやすいと思います。総合健診などで土日に出勤することもありますが、その分は振替休日を取得することができます。
周囲の人も「代休取れた?」と声をかけてくれるので、取れずに終わることはなく、きちんとリフレッシュできる状況だと感じます。
一瀬:年休についても、健診などは年間のスケジュールが決まっているので、予定が入っていない時期を狙って計画的に長めに休みを取り、旅行に行くこともできます。
ーでは最後に、中央市役所に保健師として入った感想と、これから受験を考えている方へメッセージをお願いします。
一瀬:私は県外出身ということもあって、入庁当初は不安も多く「合わなかったら地元に帰ろう」くらいの気持ちでいました(笑)
ですが、周囲の方々に本当によくしていただいて、当時のような不安は全くありません。大変なことももちろんありますが、それ以上にやりがいが大きい仕事だと思っています。
この市の規模感だからこそ、保健師として幅広い業務に関わる機会もあり、とても魅力を感じています。今では中央市で働くということにとてもやりがいを感じていて、「少しでも長くここで働いていたい」と考えているくらいです。
笠井:私は一瀬さんとは反対で、地元に近いからこそ、「簡単には辞められないぞ」というプレッシャーを感じていました(笑)
実際に働いてみると、先輩方も庁舎内の雰囲気もとても明るく、そこまで不安に感じる必要はなかったのだと思っています。
これから保健師を目指す方にとっては、まだまだわからないことだらけかもしれませんが、自分で勉強しつつ、周りに聞けば誰でも快く教えてくれる環境があるので、安心して働くことができます。
「やってみれば意外とどうにかなるよ」と言うことを伝えたいですね!

ー本日はありがとうございました。
「担当ごとにギスギスしてるのかな」と笑いながら振り返る笠井さんと、「合わなかったら地元に帰ろう」と思っていたと明かす一瀬さん。二人とも、入庁前に抱いていた不安は、今ではすっかり笑い話になっていました。
市民との距離が近いからこそ生まれる難しさを口にしながらも、保健師として喜びを感じる瞬間や、それを支える周囲の環境についてなど、お二人には確かなやりがいがにじんでいました。「近いからこそ」の悩みも喜びも引き受けながら働く二人の姿に、中央市役所という職場の温かさを感じた取材でした。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年7月取材)



