愛知県豊田市役所で働く北田さんのインタビュー記事です。
昔からサッカー一筋、高校卒業後は大学でサッカーを続けることを考えていた北田さんでしたが、恩師の一言で急遽そのまま公務員の道へ。当初はサッカーを続けるための選択でしたが、入庁後は周りの温かさや仕事の面白さに触れ、充実した日々を送っているようです。高卒で市役所に入庁するという選択、そのリアルな声と魅力を伺いました。
- サッカーに明け暮れる日々。公務員へのきっかけはほんの一言
- 高卒でいざ市役所に。不安と実情
- 税もスポーツも。仕事の幅広さとやりがい
- 仕事もプライベートも全力!充実のワークライフバランス。
- 「高卒で市役所」という選択。振り返って思うこと
サッカーに明け暮れる日々。公務員へのきっかけはほんの一言
ーまずは、簡単な経歴を教えていただけますか?
北田:生まれも育ちも豊田市で、高校はサッカーがそれなりに強い地元の高校に進学しました。学生時代はずっとサッカーに明け暮れていましたね(笑)
高校卒業後、平成31年に豊田市役所に入庁し今年で7年目となります。現在はスポーツ振興課で勤務しています。

ーサッカー一筋だった北田さんが、公務員という全く違う道を選んだきっかけは何だったのでしょうか?
北田:実は、元々公務員を目指していたわけではないんです。本当は県外の大学に進学して、もっと高いレベルでサッカーを続けたいという希望を持っていました。ただ、家庭の事情もあり、サッカーだけを考えた進路選択は難しいというのが現実でした。
そんな高校3年の夏、進路に迷っていた時にサッカー部の外部コーチから「悩んでるなら公務員になっときん。土日も休みで、サッカーも続けられるぞ」って言われたんです。その一言で「じゃあ、とりあえずやってみよう!」と、締め切りの1週間前に願書を出して、そのままの勢いで豊田市役所を受験することになりました。
きっかけと言われれば、本当にそのコーチからの一言でしたね(笑)

ー人生を変えるような一言だったのですね。急な決断だったと思いますが、試験勉強は大変でしたか?
北田:そうですね。とにかく時間がなかったので、SPIなどの参考書を買い漁って、ひたすら勉強しました。
自分は冬季の大会まで出るつもりだったので、部活動もまだ引退しておらず、学校、部活動、勉強、試験対策と、とにかく忙しかったです。
もともと人と話すことは好きで、面接には苦手意識を持っていなかったため、筆記試験の対策に集中していました。
ー面接では、どのようなことをアピールしたのでしょうか?
北田:サッカーは誰よりも打ち込んできた自負があったので、ほとんどサッカーに絡めたアピールをしました! 高校ではキャプテンをしていたので、チームを牽引してきた経験や、サッカーに対する真摯な姿勢を伝えました。
自分の経験をそのまま語るだけで大丈夫だと思っていたので、どんな質問がきても自分の言葉で話せる自信がありましたね。
高卒でいざ市役所に。不安と実情
ー高校を卒業してすぐの入庁ですが、不安はありませんでしたか?
北田:不安というより、正直なところ現実味が全然湧いていなかったです。
自分が通っていた高校は進学校だったこともあり、そもそも学年で卒業後に就職したのは自分1人だけだったんです。周りが大学生活に胸を膨らませる中、自分だけが働くという状況で、「これからどうなるんだろう」と、とにかく全く先がイメージできない状態でしたね。
ただ、自分だけが就職するということに対してはネガティブな気持ちはなくて、むしろ「俺だけ先に社会人だぜ!」という具合にポジティブに捉えていました(笑)
ーでは、入庁後に大変だったことなどはありますか?
北田:入庁後、まず直面したのが年齢の壁です。課では自分が最年少で、周りは大きく年上の方ばかりでした。
市役所には社会人経験者も多く入庁するため、同期ですらほとんどが4歳以上年上で、同年代はほとんどいなかったんです。
これまでの学生生活では、せいぜい2つ上の先輩としか関わった経験がなかったため、年の離れた方々との接し方に戸惑い、当初は非常に緊張していました。
ただ、実際に働いてみると、周りの先輩方はもちろん、特に年上の同期たちが本当に優しくて、温かく迎え入れてくれたんです。業務面では職場の先輩方が、社会人経験ゼロの自分に、業務のことを親切に教えていただき、業務外でもとてもフランクに接してくれました。本当に、周りの人の寛容さに救われましたね。
同期も今ではすっかり仲良しで、同年代の友人たちと同じくらいに気を遣わずに接することができる存在となりました。

ーとても素敵な方々に支えられてきたのですね。入庁してから今までで、何か印象に残っているような業務やエピソードはありますか?
北田:業務とは全く関係ない話になってしまいますが、市役所に入ってから迎えた、20歳の誕生日のことがすごく印象的です。
課の皆さんや同期の先輩たちが、20歳を迎えたことを盛大にお祝いしてくれたんです。それまでお酒を飲んだことがなかった自分のために飲み会を開いてくれたり、手作りのケーキで祝ってくれたりと、今思い返しても本当に嬉しかったですね。
就職後に20歳という節目を迎えるという、高卒ならではの特権かもしれないですね(笑)心から、良い先輩や同期に恵まれているなと感じることができた瞬間でした。

税もスポーツも。仕事の幅広さとやりがい
ーこれまで、どのようなお仕事を担当されてきましたか?
北田:最初の5年間は資産税課で、固定資産税の算定業務を担当していました。新しく建てられた家屋を訪問して、図面と照らし合わせながら評価額を計算する仕事です。
その後、昨年度スポーツ振興課に異動になり、現在に至ります。税務とは全く違う分野なので、最初は戸惑いました。
ースポーツ振興課では、どのような業務に携わっているのですか?
北田:昨年度は「部活動の地域移行」という、全く新しい事業の立ち上げを担当しました。自分が打ち込んできた「部活動」に直結するような事業だったため、とてもやりがいがあったのですが、その反面、自分の価値観と今の現実との間でギャップを感じることも多かったです。
例えば、自分が中学生だった頃は、週5日、土日も練習や試合があるのが当たり前という環境でしたが、今は猛暑などの影響もあって、活動が週3日、土日は片方だけ活動をするという学校がほとんどです。
最初は「もっと練習したい子もいるんじゃないか」「自分たちの頃はもっとやっていたのに」という気持ちが正直なところありましたが、それは自分の経験に基づく一方的な考えであって、今の子どもたちにとっては、この環境が当たり前で、これがベストなのかもしれないと、自分に言い聞かせてきました。
自分の経験だけにとらわれず、子どもたちの目線に立って考えることの難しさと大切さを学んだ、貴重な経験でしたね。
今年度からは「障がい者スポーツの振興」と「eスポーツの活用」を主に担当することとなりました。どちらも前例がない、ゼロからイチを生み出す仕事です。
特にeスポーツは、これまでサッカー一筋だった自分にとっては、まったく触れたことのない新しい世界です。だからこそ、ゼロから知識を吸収していく過程が新鮮で、とても刺激的ですね。豊田市の未来の“楽しい”を、自分の手で創っていくような感覚ですね。

ー税やスポーツ、分野も全く異なる経験だったかと思いますが、北田さんはこれまでどのような時に働くやりがいや魅力を感じましたか?
北田:ありきたりかもしれませんが、やはり市民の方からいただける、ちょっとしたお礼の一言や心遣いですね。
資産税課の時、固定資産税の算定をやっていたのですが、税金を算定する仕事は、市民の方からすればお金を徴収されるわけですから、決して喜ばれるものではないと思っていました。そのため、調査で伺う際も「歓迎はされないだろう」と、少し身構えてしまうことがあったんです。
でも、そんな中でも「暑い中ご苦労様です」と温かい言葉をかけてくださる方がいて、その一言が本当に嬉しくて、励みになりましたね。
自分の仕事が誰かの生活に繋がっているんだと実感でき、大きな支えにもなりました。
仕事もプライベートも全力!充実のワークライフバランス。
ー「サッカー」を念頭に置いた就職だったとのことでしたが、実際に働いてみて、ワークライフバランスはいかがですか?
北田:この仕事を選んで一番良かった点かもしれません。
大学に進学する仲間と、会える機会が少なくなってしまうのではないかと思っていたのですが、周囲が予定を土日に合わせてくれたり、逆に自分が平日休暇を取得するなどして調整ができたため、高校時代の友人とも大きな制限なく会うことができました。
また、サッカーについても、勤務後の時間や休日を活用して、納得がいく形で続けられています。最近は市役所のサッカー部に入部し、練習や試合に参加しています。

部活動では、普段の業務では関わらない部署の先輩たちとも、仕事とは全く違うコミュニケーションが生まれます。特に試合中は、年齢や役職は関係ありません。お互いに「こうしろ!」「あそこだ!」と指示を出し合うフラットな関係になるんです。そうやって汗を流した仲間だからこそ、仕事でもより円滑なコミュニケーションが取れるようになったと感じています。
ーお休みは取りやすいと感じますか?
北田:すごく取りやすいですね。高校の同級生も今では社会人になっているのですが、民間企業に就職した同級生の話を聞いていても、豊田市役所は休暇制度に恵まれているなと感じますね。
土日はもちろん、年次休暇を組み合わせてしっかり休めるので、友人と旅行に行ったり、自分の時間を満喫したりできています。仕事に打ち込みながら、大好きなサッカーも続けられる。まさに、コーチが言ってくれたとおりの環境でした。

「高卒で市役所」という選択。振り返って思うこと
ー高校卒業後、就職という道を選んだことを、今どう思いますか?
北田:就職して本当に良かったと思っています。
もちろん、大学でサッカーを続けている友人を見て、羨ましく思うこともありました。でも、自分たちの世代はコロナ禍で、大学生活を思うように送れなかった友人も多かったんです。
結果論になってしまいますが、そういった背景も含め、早くから社会に出て、多くの経験を積めた自分の選択は間違っていなかったと思います。
仕事のこと、サッカーのこと、そして友人との関係性などを振り返っても、就職という選択に全く後悔はありません。
ー最後に、これから就職を考える学生にメッセージをお願いします。
北田:高卒で働くこと、そして公務員という選択に少しでも迷いがあるのなら、まずは一歩踏み出してほしいです。
もちろん、働くことは楽なことばかりではありません。市民の方から厳しい言葉をいただくこともあれば、困難な壁にぶつかることもあります。でも、支えてくれる温かい仲間や、やり遂げたときの大きなやりがいが待っています。
自分自身、最初は「サッカーを続けるため」という軽い気持ちで踏み出しましたが、今ではこの仕事に誇りを持っていますし、毎日が本当に充実しています。
休みもしっかり取れるので、プライベートの時間も大切にできます。人生の経験を積む上で、豊田市役所は本当に素晴らしい場所です。
少しでも迷っているなら、ぜひ挑戦してみてください。皆さんと一緒に働ける日を楽しみにしています!

ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年8月取材)