子どもたちの元気な声が響き渡る保育の現場―。
そこは、未来を担う小さな命を育む、責任と喜びに満ちた場所です。しかし、理想と現実のギャップに悩む人も少なくありません。「本当に自分らしく働ける場所はどこだろう?」そんな問いを抱える保育士や学生の方へ。
今回は、愛知県豊田市で働く現役保育士、加藤さんにお話を伺いました。
幼い頃からの夢を叶え、生まれ育ったまちで働く加藤さん。その言葉の端々から溢れ出るのは、子どもたちへの深い愛情と、温かい職場への感謝の気持ちでした。
加藤さんが語る「豊田市で働く魅力」とは、一体どのようなものなのでしょうか。
- 幼い日の憧れから、揺るがぬ夢へ。私が保育士になった理由
- 数ある選択肢の中で「一択」だった。私が豊田市を選んだ理由
- 人柄を丁寧に見つめる採用試験。緊張をほぐしてくれた面接官の言葉
- 「できない」が「できた!」に変わる瞬間。子どもたちの成長が私の原動力
- 未来の後輩たちへ。安心して、自分らしく輝ける場所がここにある
幼い日の憧れから、揺るがぬ夢へ。私が保育士になった理由
―まず、保育士を目指されたきっかけを教えていただけますか?
加藤さん:幼稚園の頃、大好きだった先生への憧れが、私の夢のはじまりでした。「保母さんになりたい」という気持ちは、物心ついた時からずっと心の中にありました。もちろん、「ケーキ屋さんになりたい」といった子どもらしい夢もありましたが、「保母さん」はいつも特別な存在でしたね。
その思いが確固たるものになったのは、中学校の職場体験でこども園を訪れたときです。子どもたちと触れ合う中で、「やっぱりこの仕事がしたい」と強く感じ、私の夢ははっきりと定まりました。
―高校卒業後は、どのような進路を歩まれたのでしょうか?
加藤さん:出身は豊田市で、高校卒業後は岡崎市の短期大学に進学しました。大学に通いながら、豊田市で会計年度任用職員として、主に延長保育の仕事を担当させていただきました。学校で学んだことをすぐに現場で実践できる、とても貴重な経験でした。短大卒業後、1年間の任期付職員を経て、正規の保育士になりました。豊田市の職員としては、今年で2年目になります。
数ある選択肢の中で「一択」だった。私が豊田市を選んだ理由
―地元である豊田市で働くことを選んだ、決め手は何だったのでしょうか?
加藤さん:会計年度任用職員として働いた経験が、何よりも大きかったです。実は、この仕事をはじめたのは高校の先輩から「保育園の仕事があるよ」と誘っていただいたのがきっかけでした。実際に働いてみて、豊田市の公立園の「温かさ」に深く心を動かされたんです。
就職活動では、他の保育園なども見学しました。でも、どこを訪れても、豊田市で感じたあの温かい雰囲気を超える場所はありませんでした。だから、私の中では豊田市で働くことは「一択」でしたね。
―その「温かさ」とは、具体的にどのようなものでしたか?
加藤さん:会計年度任用職員で働きはじめたばかりの頃から、先輩方は本当にイチから優しく教えてくださいました。何かわからないことがあれば、どんな些細なことでも丁寧に答えてくれますし、たわいもない話も気軽にできる雰囲気がありました。
常に誰かが気にかけてくれて、困ったときにはすぐに手を差し伸べてくれる。そんな環境だったので、「ここで新人として働きはじめても、きっと大丈夫だ」という安心感がありました。
実際に正規職員になってからも、その印象は全く変わりません。むしろ、新人へのサポートの手厚さには驚かされました。例えば、私のいた園では、クラス担任の中に「マンツーマン指導員」という先輩がついてくださり、保育の計画案を作成する際には必ず一緒に内容を確認してくれます。
「ここはこういう言葉遣いのほうが、子どもたちに伝わりやすいよ」といった具体的なアドバイスをいただきながら、二人三脚で進めることができたのは、本当に心強かったです。
人柄を丁寧に見つめる採用試験。緊張をほぐしてくれた面接官の言葉
―豊田市の採用試験はどのような内容だったか、覚えていますか?
加藤さん:はい、鮮明に覚えています。一次試験は集団面接で、二次試験はグループでの実技試験でした。実技試験は、その場で与えられたお題に沿って、初対面の5人のメンバーと協力して発表するという内容です。
私のときは「ペープサート」がお題で、テーマは「食事」でした。みんなで話し合って、「好き嫌いをなくす」という目標を立て、「ピーマンが嫌いな子でも、これを見たら食べてみようと思えるようなペープサートをつくろう」と決め、発表しました。そして、三次試験が個人面接と5分間のプレゼンテーションでした。
―試験に向けて、どのような準備をされたのでしょうか?
加藤さん:豊田市の試験は面接が中心だったので、筆記試験の対策というよりは、まず「自分と向き合う」時間を大切にしました。自分のことを深く理解していなければ、自分の言葉で思いを伝えることはできないと思ったからです。自分の考えやこれまでの経験をノートに書き出し、整理しました。
自己PRは、大学の先生に何度も相談に乗っていただき、一緒に内容を練り上げました。内容が固まったら、あとは自信を持って、相手の心に届くように話す練習を繰り返し行いました。
―人柄を重視する豊田市の選考について、当時はどのように感じていましたか?
加藤さん:一人ひとりの内面を丁寧に見つめてくれるからこそ、あの温かい職場環境が生まれるのだと、今になって改めて感じます。受験生の時は、「一体、私の何を見られているのだろう」と不安に思うこともありましたが、実際に働いてみると、その理由がよくわかります。
面接の雰囲気も、とても温かかったのが印象的です。三次試験の個人面接で、私がガチガチに緊張していたら、面接官の方が「緊張してるでしょう。そんなに緊張しなくていいんだよ」と優しい言葉をかけてくださって。その一言で、すっと肩の力が抜け、自分らしく話すことができました。
「できない」が「できた!」に変わる瞬間。子どもたちの成長が私の原動力
―実際に保育士として働いてみて、理想と現実のギャップや、大変だったことはありますか?
加藤さん:大学で学んだ知識や事例だけでは、到底対応しきれないということですね。子どもたちは一人ひとり全く違う個性を持っていますから、毎日が新しい発見と挑戦の連続です。特に1年目は、子どもたちへの声かけの引き出しが少なく、とても苦労しました。
先輩の先生が声をかけると、子どもたちは素直に動いてくれるのに、私が同じように声をかけても、なかなか伝わらない。そんな自分の未熟さに、落ち込むことも少なくありませんでした。
―先輩方の姿から、どのようなことを学ばれましたか?
加藤さん:先輩方の言葉は、まるで「魔法の言葉」のようでした。1年目に担当した乳児クラスでは、イヤイヤ期の真っ最中の子が多く、「トイレに行こう」と誘っても、「いや!」の一言で終わってしまうことがよくありました。でも、先輩が声をかけると、子どもたちはまるで引き込まれるように、すっとトイレに向かうんです。
最初はただ「すごいな」と尊敬するばかりでしたが、今はその背景に、子どもたち一人ひとりとの深い信頼関係があるのだと分かります。
まだまだ未熟で、すぐに子どもたちと心を通わせられない自分に悔しさを感じることもありますが、それ以上に、先輩方への尊敬の気持ちと、「私もいつかあんな風になりたい」という目標になっています。
―仕事のやりがいを最も感じるのは、どんな時ですか?
加藤さん:日々の子どもたちの、本当に小さな成長を感じられる瞬間が、何よりのやりがいです。今年は4歳児を担任しているのですが、4月の頃は新しい環境に不安でいっぱいで、「できない、できない」と言っていた子たちが、今では驚くほどたくさんのことができるようになりました。
例えば、自分で脱いだシューズを、次の子のためにきれいに揃えられるようになったり、それを忘れているお友達に「忘れてるよ」と優しく教えてあげたり。大人にとっては当たり前の動作でも、子どもにとっては大きな一歩です。
なかなかシャツをズボンに入れることができなかった子が、先日、「先生、見て!全部自分でできるようになったんだよ!」と、満面の笑みで報告してくれた時は、胸がいっぱいになりました。
私が伝えてきた一つひとつのことが、子どもたちの力になっているんだと実感できる瞬間。それこそが、この仕事の最大の喜びです。

未来の後輩たちへ。安心して、自分らしく輝ける場所がここにある
―職場の人間関係や、お休みの取りやすさについてはいかがですか?
加藤さん:職場の人間関係はとてもいいです。もちろん、より良い保育を目指すために、先生同士で真剣に意見をぶつけ合うことはあります。でも、それはすべて子どもたちのための前向きな議論です。
お休みも、とても取りやすい環境だと思います。月に一度、シフト表が回ってきて、そこに希望の休みを書き込む形なので、私のような若手でも気兼ねなく申請できます。先輩方も「休めるときにしっかり休んでね」と背中を押してくださるので、連休を取って趣味のキャンプに出かけることもできています。
―最後に、これから保育士を目指す方々へメッセージをお願いします。
加藤さん:保育士の仕事は、大変なこともありますが、それ以上に大きなやりがいと喜びに満ちています。子どもたちと過ごす毎日は、本当に楽しく、かけがえのない時間です。
そして、豊田市には、私が1年目に身をもって感じたように、新人職員を手厚くサポートしてくれる温かい文化があります。安心して、自分らしく輝ける場所が、ここにあります。ぜひ、皆さんと一緒に働ける日を、心から楽しみにしています。
―今日はありがとうございました。
取材中、終始にこやかに、丁寧に質問に答えてくださった加藤さん。
その言葉の一つひとつから、子どもたちへの深い愛情と、温かい職場への感謝の気持ちが溢れ出ていました。
特に印象的だったのは、ご自身の経験を振り返り、「温かい雰囲気」という言葉を何度も口にされていたことです。それは、単に優しいというだけでなく、新人職員を皆で支え、それぞれの個性を大切に育もうとする、豊田市全体に流れる空気のようなものだと感じました。
「安心して、自分らしく輝ける場所がここにある」
そう語る加藤さんの姿は、これから保育士を目指す人にとって、何よりも心強いメッセージなのではないでしょうか。子どもたちとともに成長する喜びを、豊田市で感じてみませんか。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年9月取材)