能登町役場で栄養士として働く松本さんのインタビュー記事です。民間企業での経験を経て、地元である能登町の正規職員となった松本さん。管理栄養士として「幅広い世代の食に関わりたい」という想いを実現できる行政の仕事の魅力や、想像とは違った業務内容、子育てと両立できる職場の雰囲気、そして能登町ならではのやりがいについて、詳しくお話を伺いました。
- 民間企業からキャリアアップを経て見つけた「行政の栄養士」という道
- デスクワークだけじゃない!町民と直接関わる、行政栄養士のリアルな仕事
- 子どもの成長や住民の健康改善が、日々の大きなやりがいに
- 子育て世代も安心。お互いをサポートしあう温かい職場
- 役場で働いて再発見した、能登町の「食」と「人の温かさ」
民間企業からキャリアアップを経て見つけた「行政の栄養士」という道
ー松本さんのこれまでのご経歴を教えていただけますか?
松本:栄養の短期大学を卒業後、栄養士として民間の給食受託会社に3年ほど勤め、老人保健施設の給食を担当していました。別の働き方を探していた時に、ちょうど能登町の小学校で栄養士の募集を見つけ、応募しました。そこでは1年半勤務し、管理栄養士の資格を取得しました。
そして、能登町役場の管理栄養士の募集に応募し、平成24年に入庁したという経緯です。
ーなぜ行政の管理栄養士へ応募しようと思われたのですか?
松本:これまで私が働いてきた環境では、関わる対象者が限定的でした。もちろん、特定の対象者と深く関わる面白さもあります。ですが、「食」は人が生まれてから亡くなるまで生涯にわたって関わるもの。
行政という広いフィールドであれば、あらゆる世代の町民の方々と関われるのではないか。そこに大きな可能性と魅力を感じ、挑戦することに決めました。
デスクワークだけじゃない!町民と直接関わる、行政栄養士のリアルな仕事
ー入庁されてからは、どのようなお仕事をされてきたのですか?
松本:最初の数年間は保育所の給食業務など、主に子どもたちと関わることが多かったです。その後、現在の健康推進係に異動し、今は母子保健をメインに、成人の特定健診や高齢者の低栄養予防事業などにも関わっています。入庁当時に思い描いていた「幅広い世代と関わる」という働き方が、今まさに実現できていると感じます。
ー1日の業務スケジュールはどのような感じなのでしょうか?
松本:業務の割合で言うと、給食関連が3〜4割、食育活動が3割、成人・高齢者関連が3割といったところでしょうか。ただ、これは月や時期によって変動しますし、どの業務も満遍なくあります。
ー働き方について、入庁前のイメージと違った点はありましたか?
松本:想像とは全く違いました。行政の栄養士は、もっとデスクに座って事務作業をする仕事だと思っていたんです。でも実際は、教室の開催や家庭訪問などで外に出る機会が非常に多いです。
時期によって異なりますが、1日を通して役場内にいる日は、月に10日程度になることもあります。ここまで町民の方々と直接お会いする機会が多いとは思っていませんでした。
ー他に「こんな仕事もあるんだ」と驚いた経験はありますか?
松本:災害時、自衛隊の方々が炊き出しに来てくださったのですが、その献立を考えるのが私たち行政栄養士の役割でした。限られた設備と食材の中で、衛生管理を徹底し、被災された方々に少しでも栄養のある温かい食事を届けられるよう、必死で献立を考えました。
平時とは全く異なる状況下で、自分たちの専門性がどう活かせるのかを問われる、非常に貴重で責任を感じる経験でした。

子どもの成長や住民の健康改善が、日々の大きなやりがいに
ー自治体の栄養士として働く中で、どのような時にやりがいを感じますか?
松本:やはり、幅広い世代の方々と継続的に関われることですね。例えば、保育所で食育のお話をした子と、数年後に小学校で再会した時に「保育所の時のクッキング、楽しかったよ!」と覚えていてくれると、本当に嬉しい気持ちになります。子どもの成長を食という側面から見守れるのは、この仕事ならではの喜びです。
また、特定保健指導などで関わる方々の生活習慣が改善され、健康になっていく過程を一緒に喜べることも大きなやりがいです。「あなたと話せて良かった」と言っていただけた時は、この仕事をしていて本当に良かったと心から思います。
ー仕事を進める上で、保健師さんなど他の職種の方との連携も重要になるかと思いますが、どのような関わりがありますか?
松本:私は母子保健を担当しているので、保健師さんとの連携は日常的に行っています。離乳食教室なども一緒に行うのですが、事前にカンファレンスを開き、参加されるお子さんの発達状況やご家庭の様子について情報共有してもらっています。専門職同士で多角的な視点を持つことで、より一人ひとりに寄り添った支援ができるので、本当に助かっています。
子育て世代も安心。お互いをサポートしあう温かい職場
ーワークライフバランスについてはいかがですか?
松本:とても働きやすい環境です。子どもの急な発熱で保育園にお迎えに行かなければならない時も、周りの皆さんが「大丈夫だよ、早く行っておいで」と快く送り出してくれます。職場には同じように子育て中の職員も多く、子育てを経験されてきた先輩方もいるので、理解してサポートしてくれる雰囲気が根付いています。
ー職場の雰囲気はどのような感じですか?
松本:すごく話しやすい雰囲気だと思います。分からないことがあっても、周りの先輩方が親切に対応してくれますし、一人で抱え込まずに仕事を進められる、風通しの良い職場です。
ー残業についてはいかがでしょうか?
松本:夜遅くまで残業が続くということはありません。平日は子どものお迎えなどがあるので、ほとんど残業せずに帰らせてもらっています。その分、業務が立て込んでいる時期には土日に少し出勤することもありますが、無理なく働けていると思います。

役場で働いて再発見した、能登町の「食」と「人の温かさ」
ー最後に、松本さんが能登町役場で働いて良かったと思うことを教えてください。
松本:この町で生まれ育った私ですが、役場で働くようになってから、能登町の本当の魅力を再発見できたことです。特に、町民の方々との関わりを通じて、人の温かさに触れる機会が格段に増えました。
ー具体的にはどのような場面で感じますか?
松本:食に関するボランティア活動をされている方々と関わる中で、私が知らなかった郷土料理や、食材の美味しい食べ方をたくさん教えていただきました。能登町には美味しいものがたくさんあり、その知識を惜しみなく教えてくれる親切な方々がたくさんいることを改めて実感しました。
役場で働くことで、こんなにも素敵な人たちと繋がることができました。能登町の人々の優しさや温かさに気づけたことが、この仕事をしていて一番良かったと感じることです。
ー本日はありがとうございました。
柔らかな語り口からは、町民一人ひとりの食と健康に真摯に向き合う姿勢が伝わってきました。デスクワークだけでなく、現場に出て直接住民と関わることの多さ、そして子育てと両立できる職場環境は、行政の栄養士として働く大きな魅力だと感じます。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年9月取材)



