能登町役場で働く保健師、坂本さん、出村さんのインタビュー記事です。保健師として新卒で入庁し、長年キャリアを積んできたお二人に、具体的な仕事内容から異動を経て得た成長、チームの雰囲気、仕事のやりがいまで、幅広くお話を伺いました。
- 新卒から能登町一筋。ベテラン保健師のキャリアの始まり
- 事業担当と地区担当の二本柱。能登町の保健師業務の全体像
- 多彩な業務経験が成長の糧に。異動から得た視点とスキル
- ベテラン中心のチームで、とことん話し合う。能登町の保健師の働き方
- 新人の「どうしたい?」を尊重する。未来の仲間と共に創る職場
- 目標達成の喜びと、住民一人ひとりの人生に寄り添うやりがい
- 休みは計画的に。仕事と生活を両立できるワークライフバランス
- 災害を乗り越えて。住民の「もしも」に備える保健師の新たな役割
新卒から能登町一筋。ベテラン保健師のキャリアの始まり
ーまずはお二人の経歴を教えてください。
坂本:坂本です。入庁は平成13年で、新卒採用からずっとこちらです。入庁当時は旧能都町役場に入り、その後、現在の能登町役場になりました。
出村:出村です。平成19年入庁です。学校卒業後すぐ、保健師として勤務しています。
ーお二人とも新卒で入庁されて、キャリアを重ねてこられたのですね。能登町は地元でいらっしゃるんですか。
坂本:出身は隣の町で、生活圏として馴染み深い場所でした。
出村:私も隣の輪島市出身で、能登町は身近な存在でしたね。

事業担当と地区担当の二本柱。能登町の保健師業務の全体像
ー現在の保健師の体制と、お二人の担当業務について教えていただけますか。
出村:能登町の保健師は再雇用の方も含め8名体制です。私と坂本さんは成人保健分野の健(検)診関係を担当しています。
坂本:私は主にがん検診、出村さんは特定健診や後期高齢者の健診などを担当しています。
ー健(検)診担当以外には、どのような担当があるのでしょうか。
出村:母子保健、予防接種の担当がいます。その他、総括的な保健師が一人。地域包括支援センターにも保健師が配置されています。
ー事業ごとに担当が明確に分かれているのですね。
坂本:はい。保健師と管理栄養士は、事業担当に加え、それぞれが地区担当も持っています。能登町には15の地区があり、それを分担しています。
坂本:例えば事業担当が情報を取りまとめ、地区担当に課題の共有やケースの振り分けを行い、地区担当として家庭訪問に行く形です。健診結果で保健指導が必要な方も同様ですが、内容によって管理栄養士と一緒に訪問することもあります。
ー事業という「縦割り」と、地区という「横割り」が組み合わさっているイメージですね。日々の業務は、住民の方への訪問などが多いのでしょうか。
出村:時期によりますが、健(検)診業務では、実施時期や業者との契約といった調整業務から始まります。健診期間中は健診会場や医療機関へよく出かけます。
坂本:健(検)診後、結果の処理も机上の作業です。結果を整理し、地区担当へ振り分け、ようやく保健指導に移れます。結果説明会や訪問で月に10日以上出ることもあります。指導後は内容を記録し、取りまとめる作業もあります。

多彩な業務経験が成長の糧に。異動から得た視点とスキル
ーお二人はこれまで、どのような部署を経験されてきたのでしょうか。
坂本:私は入庁後、母子保健を担当し、合併後は支所の窓口業務を経験しました。その後、成人保健、産休・育休後に地域包括支援センターに配属になりました。
介護予防や介護相談の業務に、産休・育休を含め10年近く関わりました。そして令和元年に現在の成人保健担当になりました。
ー出村さんはいかがですか。
出村:私は入庁後、予防接種、がん検診や新規事業を担当しました。その後、母子保健を1年経験し、次に介護保険の要介護認定を担当する部署に異動しました。ここでは産休・育休も挟みながら、10年ほど勤務しました。そして今の健診担当に戻ってきて4年目になります。
ーお二人とも10年単位での長い経験がキャリアの軸になっているのですね。異動はご自身の成長にどのようにつながっていると感じますか。
出村:特に介護認定の部署での10年間は、大きく成長させてくれました。保健師が周りにいない環境で、自分で判断して物事を進める必要がありました。社会人としての基礎が徹底的に鍛えられました。今のチームに戻ってきた時、戸惑いもありましたが、4年目になってようやく慣れてきました。
ベテラン中心のチームで、とことん話し合う。能登町の保健師の働き方
ー現在の職場は40代、50代の職員さんが中心だと伺いました。どのような雰囲気なのでしょうか。
出村:年代が近く、チーム業務が多いので、コミュニケーションは密に取るようにしています。
坂本:私がいた地域包括支援センターは保健師がほぼ一人だったので、自分のペースで進められました。今の部署は、常に相談できる安心感がある一方で、決めるのに話し合いが必要で、時間がかかる側面もあります。
ーそれぞれに良さがあるということですね。
出村:はい。みんなで一つの目的に向かうにはこのプロセスが不可欠です。事業が多いので、話し合いを通じて何度も目的を確認し、方向性がブレないように意識しています。
ー意見交換は活発に行われるのですか。
坂本:そう思います。みんな長年の経験があり、それぞれの考えを遠慮なく出し合える雰囲気はあります。一人での業務経験を活かし、お互いの考えをすり合わせています。

新人の「どうしたい?」を尊重する。未来の仲間と共に創る職場
ー新しく職員さんが入ってきた場合、どのような体制で受け入れるのでしょうか。
坂本:私たちがいる健康推進のグループに入ってもらうことが多いです。先輩が周りにいる環境で、前任者から業務を引き継ぎ、周りの職員もサポートします。いきなり一人で担当させられることはありません。
ー後輩を指導する上で、心掛けていることはありますか。
出村:教えるだけでなく、「新しいやり方ある?」と、こちらが情報を求めながら、一緒に仕事を進めていきたいです。
坂本:保健師の仕事は、「こんな風にしたい」という個人の思いが活かせる部分が大きいです。新しく来た方にも、「保健師として、あなたはどうしていきたい?」という思いを聞きながら、その考えを尊重して仕事ができたらいいなと考えています。
目標達成の喜びと、住民一人ひとりの人生に寄り添うやりがい
ー保健師という仕事のやりがいや面白さは、どのような部分に感じますか。
出村:やはり数字で成果が見えると嬉しいですね。検診のWeb予約システムの利用率が目標通りに上がった時などは、達成感があります。目的達成のためのアプローチの自由度が高いのが、面白い部分です。
坂本:私は、住民お一人お一人との関わりにやりがいを感じます。自分が関わった方の行動が少しでも良い方向に変わった時に、この仕事をしていて良かったなと思います。
ー何か印象的なエピソードはありますか。
出村:以前、保健指導をした方がいました。数年後、「血糖値はね…」と、まるでご自身の知識であるかのように、私に説明してくれました。私が話した言葉が、その人の健康を守る知識として根付いてくれたことが、何より嬉しかったですね。

休みは計画的に。仕事と生活を両立できるワークライフバランス
ーワークライフバランスについてもお伺いします。お休みは取りやすい環境ですか。
出村:育休を1年半以上と長くいただきましたが、職場は受け入れてくれました。休暇についても、業務を計画的に進めれば、比較的希望通りに休めると思います。
ー残業についてはいかがでしょうか。
坂本:ゼロではありません。検診事業が始まる前など、時期によっては忙しくなることはあります。ただ、それが常態化しているわけではありません。
災害を乗り越えて。住民の「もしも」に備える保健師の新たな役割
ー昨年の地震は、業務にどのような影響がありましたか。
坂本:発災当初は、避難所の巡回や被災者への個別訪問など、災害対応業務が増えました。この経験を経て、私たちの意識は大きく変わったと感じています。
出村:普段の業務の中で、「もしまた災害が起こったらどう動くべきか」を考えるようになりました。保健指導の際に、「お薬手帳は持ち歩けるようにしておきましょうね」といった、日頃からの防災意識を高めるような声かけを自然とするようになったんです。
出村:今、まさに災害時要援護者のリスト化など、次の「もしも」に備えるための体制づくりを進めているところです。新しい方が来てくれたら、ぜひこの部分も一緒に考えていってほしいと思っています。
ー本日はありがとうございました。
穏やかな口調の中に、保健師としての信念と、能登町の住民一人ひとりへの深い愛情を感じたインタビューでした。特に印象的だったのは、お二人が語る「チームで働くこと」のリアルさです。一人で判断し、スピーディーに進めることのできる業務を経験したからこそわかる、チームでとことん話し合い、一つの目的に向かうことの難しさと尊さ。その両方を率直に語ってくださる姿に、誠実なお人柄を感じました。



