長野県伊那市役所で土木技術職として働く山口さんのインタビュー記事です。大学時代から地元で働くことを志し、新卒で入庁して6年目。
市民の生活に不可欠な水道インフラの維持管理から、現在は国家プロジェクトにも関わる国道のバイパス整備事業まで、幅広い業務に携わる山口さんに、伊那市で土木技術者として働くやりがいや、職場の雰囲気、ワークライフバランスについて語っていただきました
地元へUターンし就職
ーこれまでのご経歴を含めて自己紹介をお願いします。
山口:伊那市役所の山口です。出身は長野県伊那市で、高校卒業後は群馬県前橋市の大学で土木を学びました。大学卒業後に伊那市へUターンし、市役所に入庁して今年で6年目になります。
最初の5年間は水道関係の部署におり、今年の4月に異動で現在の「建設部伊駒アルプスロード推進課」に来ました。部を跨いでの異動という形になります。
ー伊那市役所を目指した経緯も教えて下さい。
山口:高校在学中理系の分野で進路を考えていましたが、当初から地元伊那市で働きたいという思いが強くありました。その上で、どんな仕事があるかを考えたときに、インフラを支える土木技術職という仕事に興味を持ちました。まちづくりにも興味があり、人手不足な業界でもあり自分も貢献できるのではと考えたためです。
ー公務員の仕事について、入庁前から具体的なイメージはありましたか?
山口:正直なところ、そこまで具体的なイメージは持てていませんでした。
ただ、大学3年生で、伊那市役所のインターンシップに1週間ほど参加しました。水道と建設の両方の部署で、簡単な業務を体験させてもらいました。設計や住民との対応現場に同行させてもらい、市役所の仕事のイメージが少し具体的になりましたね。

市民の生活に直結するインフラを支えた5年間
ー入庁後、最初の配属先は水道の部署だったのですね。具体的にはどのようなお仕事をされていたのですか?
山口:はい、上水道の工事を担当する係に5年間所属し、老朽化した水道管の更新が主な業務でした。職員自ら設計を行い、業者さんとの折衝、現場管理から精算まで一貫して携わります。年間1人あたり5件ほどの工事を担当し、道路工事に伴う急な案件に対応することもありました。
ー仕事を進める上で、特に大変だったことは何ですか?
山口:入庁当初は、業者さんとの会話で飛び交う専門用語が分からず、話についていくのが大変でしたね。現場での苦労で言うと、工事後に水道施設のサビが原因で「濁り水」が発生し、住民の方にご迷惑をおかけしてしまうことがありました。
ーそういったトラブルには、どのように対応されたのでしょうか。
山口:水の流れをコントロールすることが重要になります。濁った水が広がらないよう、排水方法を工夫するなど、現場ごとに業者さんと知恵を出し合って対応しました。市民の生活に直結する仕事なのでプレッシャーは大きいですが、無事に工事を終えられた時の達成感は格別です。
ー伊那市ならではの苦労はありましたか?
山口:冬の寒さですね。伊那市は冷え込みが厳しく、工事中に使う仮設の水道管が凍結してしまうリスクがあります。そのため、できるだけ暖かい夏の間に工事を終えられるよう、年間のスケジュール管理が非常に重要でした。

国家プロジェクトにも関わる。まちの未来を描く現在の仕事
ー今年の4月からは「伊駒アルプスロード推進課」に異動されたとのことですが、こちらはどのような部署なのでしょうか。
山口:現在、伊那市内を通る国道153号伊駒アルプスロードを造る計画が進んでいます。これは国の事業として国土交通省が主体となって進めている大規模なプロジェクトで、私たちの課は国交省と連携しながら、その事業を推進する役割を担っています。
ー具体的にはどのような業務をされているのですか?
山口:まだ事業は計画段階で、本格的な工事には入っていません。現在は、伊駒アルプスロードを建設するために必要な用地の取得交渉が主な業務になっています。また、伊駒アルプスロードと既存の国道153号をつなぐ接続道路の整備も市の事業として計画しており、そのための用地取得や、すでに市が取得している用地の草刈りなどの維持管理も行っています。
ー水道の部署とはまた違った専門性が求められそうですね。
山口:そうですね。4月に異動してきたばかりなので、今はまだ上司に同行して勉強させてもらっている段階です。用地交渉では、地権者や耕作者の方に事業の計画を丁寧に説明し、ご理解をいただく必要があります。
その際には、道路計画そのものの知識はもちろん、用地買収に伴う税金の話や、対象が農地であれば農地法に関する手続きなど、【多岐にわたる専門知識が求められます。】これまでの業務とは全く違う知識が必要で、その幅広さと奥深さに日々驚いています。覚えることが多くて大変ですが、非常にやりがいを感じています。
ー現在の部署の体制と、山口さんの役割を教えてください。
山口:課は課長を含めて4人体制です。係長と、私を含めた職員2名という構成で、職員のうち1名は事務職の方です。用地交渉は技術職の私たちが中心となって進めていますが、事業を推進するための要望活動や、国道153号バイパス沿線への「道の駅」の整備検討などは事務職の方が主に担当されています。少人数の部署なので、担当をきっちり分けるというよりは、全員で協力しながら事業全体を進めているという感じです。
ー仕事のやりがいは、どのようなところに感じますか?
山口:これまでとは関わる人の数と種類が劇的に増えました。水道の部署では主に市内の工事業者さんや住民の方が相手でしたが、今は国交省や県の職員の方をはじめ、様々な分野の方々と一緒に仕事をしています。そうした方々と話をする中で、それぞれの立場での考え方や大変さを知ることができ、一つの大きな事業が本当に多くの人たちの力で成り立っているのだと実感します。この伊駒アルプスロード事業は、伊那市の未来にとって非常に重要な事業です。その一端を担えていることに、大きな責任とやりがいを感じていますね。

ワークライフバランスと、風通しの良い職場環境
ー働き方についてもお伺いします。ワークライフバランスはいかがですか?
山口:前の部署も今の部署も、非常に働きやすい環境だと感じています。休暇は自分のタイミングで取得できますし、残業もそれほど多くはありません。もちろん、部署によっては繁忙期があると思いますが、全体的にワークライフバランスは取りやすい職場だと思います。
現在の部署では、用地交渉で地権者の方のご都合に合わせるため、休日に対応が必要になることもありますが、それも頻繁にあるわけではありません。プライベートの時間もしっかり確保できています。
ー職場の雰囲気はいかがでしょうか。
山口:今の課は4人だけということもあり、とても和やかで雰囲気はすごく良いです。仕事で分からないことがあればすぐに聞けますし、雑談もよくしますよ。
ーどのようなお話をされるのですか?
山口:実は、私を含めて課の先輩も市の消防団に入っているんです。なので、消防団の活動の話をしたりすることが多いですね。そういったプライベートな話ができる関係性があるからこそ、仕事の相談もしやすいのだと思います。業務で困ったことがあっても、一人で抱え込まずにすぐに情報共有できるので、とても助かっています。

ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年8月取材)



