兵庫県香美町役場で働く大林さんのインタビュー記事です。大学で社会福祉を学び、利用者と直接関わる「個別支援」を求めて地元へUターン入庁。高齢者支援の最前線で地域性の違いに戸惑いながらも、100人の前での講話などを経て町民との絆を深めてきました。手厚い決裁ルートの安心感、そして行政ならではのキャリアアップを熱く語っていただきました。
- インターンを経て気づいた「個別支援がしたい」という思い
- 初めての高齢者支援。手探りの1年目と「守られている」安心感
- 100人の前での講話で得た「役場の大林」という認知
- 会議運営で磨かれる社会福祉士の新たなキャリア
インターンを経て気づいた「個別支援がしたい」という思い
ーまずは簡単な自己紹介と、香美町役場に入庁した経緯を教えてください。
大林: 令和6年度に香美町役場に新卒入庁し、現在2年目になります。地元は香美町の村岡地区です。高校卒業後、4年制大学の社会福祉学部に通い、社会福祉士の資格を取得しました。
ー就職活動では、どのような進路を考えられていたのですか?
大林: 大学に入った当初から「将来は地元に戻って仕事がしたい」と思っていました。資格を活かせる地元の職場を探した時に、役場と社会福祉協議会(社協)が候補に挙がりました。大学在学中に、東大阪市の社協で1週間ほどインターンシップを経験したんです。
ーインターンシップの経験は、進路選択にどう影響しましたか?
大林: インターンを通して、私自身のやりたいこととの違いに気づくことができました。私は高齢者や障害のある方の自宅を訪問して直接お話をする「個別支援」がしたいという思いが強かったんです。
しかし、社協の仕事は団体を縁の下から支える地域福祉の役割が大きく、「私には合わないかもしれない」と感じました。 一方で役場には、一対一で訪問支援を行ったり、権利擁護の仕事に携わったりする部署があります。「私がやりたい個別支援ができるのは役場だ」と確信し、香美町を受験することに決めました。
初めての高齢者支援。手探りの1年目と「守られている」安心感
ー入庁後は福祉課に配属されたとのことですが、具体的な業務内容を教えてください。
大林: 福祉課には「社会福祉係」「地域包括支援係」「介護保険係」の3つがあり、私は高齢分野の「地域包括支援係」に所属しています。この係は国が定めた基準により、社会福祉士、保健師、主任ケアマネージャーが必ず在籍しなければなりません。課長の特色として理学療法士さんも1名在籍しており、在宅での介護予防や転倒予防のリハビリにも力を入れています。
ー高齢者の個別支援を担当されてみて、いかがでしたか?
大林: 実は大学時代は低所得の方や生活保護などに関わる地域福祉の支援に興味があり、高齢分野の進路は考えていませんでした。実際に関わる当事者の方のイメージも異なっていたため、最初は関わり方にとても悩みました。これまでの経験をそのまま活かすことは難しく、入庁してからはとにかく新しい知識を必死に勉強する毎日でした。
ー1年目はどのように仕事を覚えていったのですか?
大林: 最初の3ヶ月間は先輩の訪問に同行して仕事の流れを教わりましたが、周りも非常に忙しい時期だったため、その後は「とりあえず自分でやってみて」と任されることが多くなりました。アポ取りの頻度やケアプランのスケジュール感も分からず、初めて聞く病名もたくさんありました。まるで看護学生のように必死に病気を調べながら、手探りで感覚を掴んでいく1年間でしたね。
ープレッシャーも大きかったのではないでしょうか?
大林: はい。さらに、個別支援だけでなく町内の約80の地区で行われている「元気体操サークル」の取りまとめという事業も任されていました。1日でケアマネ業務、社会福祉士業務、そして「体操のお姉さん」と、いくつもの顔を使い分けなければならず無我夢中でした。
ただ、役場ならではの「絶対に一人で失敗させない環境」にとても助けられました。役場には厳格な決裁ルートがあり、私が作成した文書は必ず二重、三重のチェックが入り、最終的には課長が承認の印をもらいます。責任の重い仕事だからこそ、組織全体でしっかりと守られているという安心感があり、思い切ってチャレンジすることができました。

100人の前での講話で得た「役場の大林」という認知
ー香美町内で働く中で、地域ごとの違いなどを感じることはありますか?
林: 香美町は香住区、村岡区、小代区という3つのエリアからなり、私は毎日公用車でこの3区を走り回っています。 私は村岡出身なので、香住の方との交流がこれまで全くありませんでした。実際に接してみると、香住の方は距離感が近く、アットホームな感じです。一方、村岡の方は柔和で、あまり自分を前に出さない方が多いんです。方言も違いますし、地域によって気質が全く異なるのがとても面白いですね。【地域性に合わせ、距離の詰め方や話し方を工夫しながら関わるようにしています。】
ーこれまでのお仕事の中で、特に印象に残っているエピソードはありますか?
大林: 1年目の11月に、高齢者の方が100人ほど集まる場で講話をしたことです。 私は極度の上がり症なので前日は一睡もできませんでしたが、当日会場に行くと、かねてから支援で関わっていた方が「大林さん!」と声をかけてくださり、講話が終わった後にも数名の方が話しかけに来てくださいました。
ーそれは嬉しい経験ですね!
大林: はい。内容がどこまで伝わったかは分かりませんが、「役場の大林だ」と顔と名前を覚えてもらえたことが大きな収穫でした。社会福祉士として相談を受けるためには、まず自分を知ってもらうことが第一歩です。「役場の大林に相談してみよう」と思ってもらえる関係づくりの大切さに気づくことができました。
会議運営で磨かれる社会福祉士の新たなキャリア
ー残業やお休みなど、ワークライフバランスはいかがですか?
大林: 普段は残業もほぼなく、18時までには帰宅できています。高齢者虐待などイレギュラーな緊急対応が発生した際には、瞬時に書類を作成して決裁を上げなければならないため残業することもありますが、「社会福祉士として大切な仕事をしている」という実感があるので全く苦になりません。土日もしっかり休めますし、有給休暇も取りやすい非常に働きやすい環境です。
ー最後に、これから香美町役場の社会福祉士を目指す方へメッセージをお願いします。
大林: 社会福祉士の資格を活かして働く場所として、役場は本当にお勧めです。
個別支援のスキルと、地域全体を動かす行政のスキルの両方を磨ける素晴らしい環境があると思います。少しでも興味を持っていただけた方は、ぜひ香美町役場に来てください!
ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年3月取材)
「個別支援がしたい」という真っ直ぐな思いで地元・香美町へUターンした大林さん。厳格な決裁ルートが「一人で失敗させない」という安心感に繋がり、若手のチャレンジを後押ししている点も行政組織ならではの大きな強みだと感じるインタビューでした。



