和歌山県田辺市役所農業振興課で土木技術職として働く沖見さんのインタビュー記事です。
中学生の頃に経験した大きな震災をきっかけに「まちづくり」と「防災」への思いを胸に土木の道を選び、現在は市民の生活を支えるインフラ整備に尽力されています。
公務員としてのやりがい、キャリアアップ、そして風通しの良い職場の魅力について、沖見さんにお話を伺いました。土木技術職を目指す方必見の内容です。
- 地域への貢献を胸に、土木技術職の道へ
- 田辺市の暮らしを守る、多岐にわたる仕事内容
- 形に残る喜びと、キャリアを拓く挑戦
- 温かい人間関係と、意見を出しやすい風通しの良い職場環境
- プライベートも充実!理想のワークライフバランス
- 未来の仲間たちへメッセージ
地域への貢献を胸に、土木技術職の道へ
ー沖見さんが土木職を目指されたきっかけや、田辺市役所を選んだ理由について教えてください。
沖見:私が土木の道に進もうと思ったきっかけは、中学生の頃に発生した東日本大震災です。テレビ越しでその状況を目の当たりにし、自然災害の脅威を改めて実感しました。
この経験から、将来はまちづくりや防災に貢献できる仕事に就きたいと考えるようになり、高専で土木を学ぶ道を選びました。
また、公務員であれば、日常的に地域の方々に寄り添い、まちづくり、防災、そして災害復旧といった幅広い分野で直接的に貢献できると考えました。
就職活動では「地元に貢献したい」という思いが強く、みなべ町出身の私にとって、隣接する田辺市は馴染み深く、祖父母や親戚が住んでいることもあり、以前からよく訪れていました。
そんな中で田辺市役所の土木技術職の募集を見つけ、迷わず応募しました。

田辺市の暮らしを守る、多岐にわたる仕事内容
ー現在所属されている農業振興課での土木技術職の具体的な仕事内容について教えていただけますか?
沖見:現在の農業振興課、以前所属していた土木課、どちらも業務内容は似ており、主に道路や農業用水路といったインフラの維持管理、公共工事の発注、そして災害が発生した際にはその復旧業務に携わっています。
農業振興課では、特に農道や農業用水路、農業用溜池、頭首工、揚水機場といった農業に不可欠な農業用施設の工事発注業務などを担当しています。
ー1日の業務の流れや1年間のサイクルはどのような感じでしょうか?
沖見:1日を通して見ると、基本的には午前か午後のどちらか半日くらいは現場に出て、もう半日はデスクワークということが多いです。
現場では、地元の方々からの要望があった箇所の確認や、私が発注した工事の進捗状況を確認したりします。
デスクワークでは、測量したデータをもとに設計図を作成するなどの事務作業を行っています。
1年間の業務サイクルは、完全に決まったスケジュールがあるわけではありませんが、大まかな流れはあります。
例えば、4月から5月にかけては、国からの補助金をもらう公共工事の要望をまとめたりします。
7月頃には来年度の予算に向けた実施計画を作成し、並行して災害が発生した際の対応も行います。予算要求自体は10月頃に行われます。
年度末の1月から3月頃は、発注した工事の検査業務や完成書類の確認作業などで忙しくなることもあります。
工事の発注時期については、地元の方々との調整をしながら、その都度最適な時期を決めています。


形に残る喜びと、キャリアを拓く挑戦
ー仕事の中でやりがいを感じる瞬間や、特に印象に残っているエピソードがあれば教えてください。
沖見:一番のやりがいは、やはり「形に残る仕事」であることです。
道路や水道といった生活に欠かせないインフラを整備し、維持していくことで、地域住民の皆さんの安全で快適な暮らしを守れることに大きな喜びを感じます。
また、市民の方々の要望を直接お聞きし、それが実際の政策や設計に反映されていく過程を目の当たりにできることも、大きなやりがいです。

特に印象に残っているのは、私が初めて発注業務を担当した時のことです。それは、道路拡幅工事が完了した現場で、最後の仕上げとなるアスファルト舗装だけを発注するというものでした。
右も左も分からず、一から先輩方に指導を受けながら、図面の作成から発注準備まで全てを行いました。
そして、ついに未舗装だった部分がアスファルトで覆われた瞬間は、感動で胸がいっぱいになったのを今でも鮮明に覚えています。「うわぁ!」と思わず声を上げてしまうほどでした(笑)。

ー土木技術職として難しいと感じることや、それをどのように乗り越えてきたか教えてください。
沖見:公務員の土木技術職として難しいと感じるのは、日常的な維持管理から測量設計まで、非常に幅広い業務に携わるため、幅広い知識が求められる点です。
これは仕事の魅力の一つでもありますが、常に新しいことを学び続けなければならない難しさもあります。
また、自己成長のために資格取得にも挑戦しており、最近では土木施工管理技士1級を取得しました。
資格取得に関しては、技術職員で構成される「技術互助会」からのサポートもあり、とても助けられています。
温かい人間関係と、意見を出しやすい風通しの良い職場環境
ー入庁前と後で、田辺市役所の職場のイメージにギャップはありましたか?また、職場の雰囲気はどのような感じでしょうか?
沖見:入庁前は「公務員」という言葉から、少しお堅いイメージを抱いていました。しかし、実際に入庁してみると、そのイメージは良い意味で完全に覆されました。
皆さんとても温かくて優しく、想像以上に働きやすい職場です。
上司の方々にも気軽に相談できる環境が整っていて、若手職員でも色々なことに挑戦させてもらえる機会が多く、風通しの良さを感じています。
また、公務員は女性が少ないというイメージがあり、入庁前は少し不安もありましたが、実際に入ってみると全くそんなことはなく、むしろ周りの方々が気を遣ってくれていると感じるほどです。
田辺市役所には他にも女性の土木技術職が在籍しており、皆で協力しながら業務に取り組んでいます。
仕事内容で男性職員と比べて重いものを運べないといった物理的な制約がある場合でも、例えば水路の溝蓋(コンクリート製の蓋)を上げるような作業では、男性職員と協力して現場に行くなど、お互いに助け合いながら業務を進めています。
ー職場の人間関係について、何かエピソードはありますか?
沖見:田辺市役所には私を含め同期が30名ほどいます。特に女性職員の同期とは「同期女子会」を定期的に開催するなど、とても仲が良いです。
このように業務外での交流も活発で、上司や先輩方とも食事に行く機会が多く、良好な人間関係が築けています。
また、挑戦を後押ししてくれる文化も田辺市の魅力です。新しい事業が始まる時に「この事業を担当してみたい」と伝えたら、実際に担当させてくれたこともありました。
例えば、橋梁の修繕工事や歩道の整備業務などを経験させてもらい、皆さんに助けていただきながら経験を積むことができました。
プライベートも充実!理想のワークライフバランス
ー仕事とプライベートのバランスについてはいかがですか?残業や休暇の取得しやすさについて教えてください。
沖見:最近は、残業はほとんどなく、基本的に定時で帰れています。これは所属部署によって多少異なる場合もありますが、私の部署ではプライベートの時間も大切にできています。
休暇については、自分の現場での予定がない日であれば、非常に取得しやすい状況です。周りの先輩方からも「休みもちゃんと取ったらいいよ」と声をかけてもらえるので、遠慮なく休暇を申請できます。
夏季休暇も5日間しっかりと取ることができ、今年度も現時点ですでに4日取得済みで、残りの1日も消化できる予定です。
仕事とプライベートのメリハリをつけて充実した日々を送ることができています。
未来の仲間たちへメッセージ
ー最後に、これから田辺市役所の土木技術職を目指す方へメッセージをお願いします。
沖見:田辺市は5市町村が合併した広大な面積を持つ市で、和歌山県内でも有数の広さを誇り、近畿圏内でもトップクラスです。そのため、龍神、中辺路、大塔、本宮といった様々な地域に現場があり、多岐にわたる仕事内容を経験できます。
特に山間部も多いため、災害も多い地域ではありますが、どのような工法で復旧させるかなど、様々なケースを検討し、新しい知識を学ぶ機会も豊富です。
そして、何よりも職場の皆さんがとても優しく、働きやすい雰囲気です。若手職員の意見にも耳を傾けてくれる風通しの良い環境で、私も日々成長を実感しています。
田辺市は本当に魅力的な場所ですので、ぜひ皆さんも田辺市役所の土木技術職として、私たちと一緒に地域を支え、未来を創っていきませんか?
皆さんと一緒に働けることを楽しみにしています!

ー本日はありがとうございました。
沖見さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。
東日本大震災をきっかけに「人の役に立ちたい」と土木の道に進まれたというお話に、真摯で優しいお人柄が伝わってきました。
また、ご自身が初めて発注業務を担当したアスファルト舗装の工事が完成した時のエピソードに、お仕事に対する熱意と深い喜びを感じました。
女性の技術職員として、職場の方々と助け合いながら、お互いの強みを活かして働くお話も素敵でした。温かい人間関係の中で、いきいきと働く沖見さんの姿は、これから公務員を目指す女性にとって大きな励みになるのではないでしょうか。
田辺市で人々の暮らしを守る沖見さんの、今後のご活躍を心から応援しています。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年9月取材)



