三好市役所には、保健師として働く職員が20人ほど在籍しています。今回お話を伺ったのは、その中でも入庁年数が若い4人。新卒で入庁して12年目、健康増進・精神保健事業を担当する山下さん。看護師を経験したのちに他町での会計年度任用職員を経て本市の保健師になり、7年目で特定健康診査・保健指導を担当する井原さん。大学院で学校教育を学んだのち入庁し、10年目で母子保健を担当する梶芳さん。市内の基幹病院で看護師を10年間務めたのち3年前に転身し、高齢者の保健事業を担当する森さん。
それぞれ異なる経歴を持つ4人が、なぜ保健師という仕事を選び、三好市でどのように働いているのか。今回は、その仕事のリアルを、たっぷりとお話を伺いました。
- きっかけは同級生の母、時にはハローワーク。4人4様の保健師への道
- 地区担当制とチームプレー。「自分の担当」に責任を持ちながら、相談しながら進める仕事
- 「全部がむずかしかった」1年目。プリセプター制度と先輩たちの支え
- 育休も残業配慮も。地域に育てられる保健師の日常
きっかけは同級生の母、時にはハローワーク。4人4様の保健師への道
ー保健師という仕事を選んだきっかけは。
山下:実習で三好市を訪れたことがあり、地域の雰囲気をあらかじめ知っていたのが大きな理由です。応募時に募集のあった市町村のうち、のどかで温かい住民性に惹かれ三好市を選びました。
井原:看護師を辞めて実家に戻った際、看護協会の方から保健師の仕事を紹介されたのがきっかけです。もともと保健師になることを決めていたわけではありませんでした。
ただ、勧められてみて、患者さんが病院で過ごす期間は人生のほんの一部にすぎず、退院後は地域で生活する時間のほうがはるかに長いと気づきました。退院後の暮らしぶりが気になったことと、予防的な活動に携わりたいという思いから、保健師の道を選びました。

梶芳:きっかけは、同級生のお母さんです。地元の保健師として働き、地域の方からも慕われている姿を見て、こういう人になりたいという思いが、ずっと頭の片隅にありました。
森:元々10年間看護師として勤めてきましたが、長く入院する患者さんを見てきて、命を救えても、その後元気に過ごしてもらえるかどうかは別の問題だと感じるようになりました。
例えば退院後に飲み込む機能が落ち、食事が取れなくなる方など、生活が大変になる方を何人も見てきたこともあり、地域に出て予防的な活動ができる保健師という仕事を選びました。

地区担当制とチームプレー。「自分の担当」に責任を持ちながら、相談しながら進める仕事
ー今はどんな業務を担当していますか。
山下:健康増進事業の一部と、精神保健事業を担当しています。健康増進ではがん検診など、精神保健では自殺予防対策などに携わっています。
井原:特定健康診査と特定保健指導を担当しています。
梶芳:母子保健を担当しています。乳幼児健診や、相談事業などです。
森:高齢者の介護予防と、保健事業の一体的実施事業を担当しています。

ー業務の分担のほかに、地域担当もあるとお聞きしました。
森:地区担当は全員が持っていて、自分の担当地区にいる妊婦さんや赤ちゃんからお年寄りまですべての人を対象に、個別訪問を行っています。事業の枠を越えて、担当地区として関わる形です。
井原:自分の地区で赤ちゃんが生まれたら、家庭訪問も健診のフォローも担当します。特定健康診査の結果が返ってきた際に地域担当へカルテを渡すのは特定担当の仕事なので、そちらも自分が行います。
ー事業と地域、どちらのウエートが大きいですか。
山下:時期によって変わります。総合健診やがん検診は7月から12月にかけて集中するため、その時期は案内や結果発送などの事務作業に比重がかかり、地域に出る機会は少なくなってしまいますが、できるだけ地域に赴くように意識しています。
梶芳:乳幼児健診は通年で月に1、2回はあるため、どうしても健診担当の業務に比重がかかりがちです。それでも、なるべく地域にも出るよう意識しています。
ー一人で判断することも多いのでしょうか。
梶芳:母子担当は現在5人いるため、チームで動くことが多いです。個別訪問は基本一人ですが、担当としての業務はチームで相談しながら進めています。
井原:私も、すぐ相談できる先輩が近くにいるので、基本的には先輩に相談しながら業務を進めています。

「全部がむずかしかった」1年目。プリセプター制度と先輩たちの支え
ー1年目は、どんなサポート体制でしたか。
森:1年目は、プリセプターという先輩が一人付いてくれて、地区も一緒に担当させてもらいました。何でも相談できる環境で、業務も一緒に行ってもらえたので、安心して仕事に向き合えました。先輩からは「1年目は地区に出て、住民さん一人ひとりの中でしっかり学んできて」と言っていただき、住民さん一人ひとりとの関わりが地域をみていく基本であることを教えてもらいました。一人で責任を持って地区を持つようになった今も、この言葉は大切に持っています。
ー実際に大変だったことは。
森:すべてが大変でした。病院にいたときは、看護師というだけで信頼されていた部分があったのだと、今になって思います。しかし保健師の仕事は、初対面から信頼関係を築き、顔を知ってもらうところから始まります。事務仕事も、国の制度改正などを踏まえて理解する必要があり、そこにもかなり苦労しました。

ー看護師時代との一番の違いは。
森:看護師のときは、病院のルールが第一でした。しかし保健師は、住民さんの生活そのものが第一です。こちらの方が良いと言っても、知識を伝えるだけでは信頼関係は築けないので、住民さんの気持ちや生活背景をお聞きすることを意識していますが、うまくいかないときも多々あります。
ただ、だからこそ繰り返し関わるうちに、色々な話をしてくださるようになる方もいて、人間関係を築き色々な保健指導ができるようになります。そういった対応にこそ、やりがいを感じています。
井原:私も森さんと同じように感じる部分があります。入った当初は、何が分からないのかも分からない状態でした。ただ、先輩たちが困りそうな点を予測して事前に教えてくれたほか、特定健康診査の結果の読み取り方や保健指導の仕方を学べる学習会もあり、そこに参加しながら学びました。看護師時代に学んだ疾患や薬の知識も、保健師になってから役立っています。
ー職場の雰囲気はどうですか。
山下:気軽な雑談もできる雰囲気です。先輩たちは仕事への熱意が強く、その分「やらなければ」と気が引き締まる場面もありますが、ピリピリした雰囲気ではありません。資料の作り方など、こうした方がいいよと具体的に見せてくれることもあります。月1回開催される保健事業連絡会では各担当が事業の報告をし状況を共有したり、難しいケースは事例検討会を開いたりもしています。
育休も残業配慮も。地域に育てられる保健師の日常
ーワークライフバランスについては。
井原:私と森さんは、今どちらも小さい子どもがいます。保育所へのお迎えがあり残業できないときもありますが、先輩たちは嫌な顔をせず、早く帰るよう声をかけてくれます。私は去年、育休から復帰しましたが、休みも取りやすい環境だと感じました。
森:まず感じたのは、夜勤がないので、夜にきちんと眠れるありがたさです。子どもの熱をもらって私も一緒に体調を崩すことがありますが、気にせず休んでいいと先輩がフォローしてくれます。土日が休みになったことで、子どもとの時間も増えました。私も、誰かが困ったときにフォローできる存在になりたいと思っています。

ー三好市の魅力を感じる場面はありますか。
梶芳:住民の皆さんは優しい方が多いです。訪問の時は道に迷ってしまったりして難しさを感じる部分もありますが、顔見知りになると、地域に温かく迎え入れてくれます。健診で会ったときに、家庭で測った検査結果などをふとした形で相談してくれることもあり、そこから関わりを深めていけるのがありがたいです。地域に根付いているからこその魅力だと思います。
井原: 三好市は、市街地から山間地域まで広大な面積を有しており、地域によって健康課題や住民ニーズが大きく異なります。以前は各支所に地区担当保健師が配置されていましたが、現在は保健センターに保健師が集約され、情報共有や相談がしやすくなりました。
職員の方々も、とても優しい人ばかりです。年上ばかりの環境に不安を感じる方もいるかもしれませんが、心配しなくて大丈夫だと思います。
―ありがとうございました。
4人の語り口には、それぞれの歩んできた道のりがそのまま表れていた。看護師として病院で長く働いた末に地域へ出ることを選んだ人、資格を活かせる仕事をと勧められて保健師になった人。きっかけは様々でも、「住民さんの生活が第一」という感覚は、4人に共通していた。
事業と地域、一人とチーム。その間を丁寧に往復しながら、住民との距離を少しずつ縮めていく。それが、三好市で働く保健師の日常なのだと感じた取材でした。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年7月取材)



