「その年は完全に練習のつもりで。本番は次の年だと思っていたぐらいです」
そう笑いながら話してくれたのは、生駒市消防本部に2022年度(令和4年度)に入庁した濵田さん。小学校教員として3年間勤務したのち、消防士へとキャリアチェンジした5年目の救助隊員です。
本署警備係、北分署警備係、本署予防係と経験を重ね、現在は救助第2係に所属する。転職の経緯から、5年間を経て見えてきた生駒市消防本部を選んでよかった理由まで、率直に語ってもらった。
「一度やってみたかった」教員を経て、消防士の道へ
ー教員から消防士という経歴は、かなり珍しいですよね。
濵田:珍しいとよく言われます(笑)。教育大学を出て新卒で小学校の先生になったのですが、大学時代の就活の段階から消防士への興味はずっとありました。なぜかはもう覚えていませんが、ふと見た生駒市の職員採用情報で消防職に年齢制限があると知り、勢いで応募していました。
ーなぜ消防士に興味があったのですか?
濵田:純粋に体験してみたかった、というのが一番しっくりくる気がします。火災、救急、救助など、人が逃げ出したくなるような場面にこそ活躍できる仕事じゃないですか。正義感、というわけではないですが、他の人が絶対に経験できないような世界を一度体感してみたいという思いがありました。
ー転職を決めた経緯を教えてください。
濵田:教員免許の更新制度がなくなって、いつでも戻れる資格になったことが背景にあります。正直に言えば軽い気持ちで、その年は練習、次が本番くらいのつもりで出願したのですが、補欠合格し繰り上がりました。
ただ、出身も生駒市でせっかく受けた試験で合格し、これは縁だなと思い、チャレンジすることに決めました。
教員と消防士、2つの仕事を経て分かったこと。「相手を育てる」から「自分を磨く」へ
ー教員と消防士、2つの仕事を経験されて、仕事の性質の違いを感じることはありますか?
濵田:教員というのは、どちらかというと相手、つまりこどもを成長させる仕事です。一方で消防士は、自分自身の技術や知識を磨いていく、自分を育てていく仕事だと感じています。根本的に違う仕事ですね。教員をやっていたからこそ、その違いがはっきりと分かる部分があります。
ーそれぞれの仕事の「大変さ」も違いますか?
濵田:種類が違いますね。消防士の仕事は命に直接関わる場面に立ち会うこともあって、一つのミスが危険に直結する緊張感があります。どちらが楽とか、どちらがしんどいというより、それぞれに覚悟のいる仕事だと思っています。
ー消防士として、成長を実感するのはどんな時ですか?
濵田:最初は現場で視野が狭くて、慌ててしまう場面がありました。今は以前より落ち着いて、冷静にものを見られるようになってきたと感じます。知識が増えることで気づける範囲が広がっていく感覚というか。
自分の技術や知識が積み上がっていくこと自体が楽しいですし、それが自信にもなっていく。そういう意味では、自分を磨き続けることそのものがやりがいになっている仕事だと思います。
5年間で見えてきた、生駒市消防本部を選んでよかった理由
ー入庁5年目の今、生駒市消防本部を選んでよかったと感じることはありますか?
濵田:地元出身者として、自分が育った地域を守っているという実感が持てることです。生駒市消防本部は奈良県全体をカバーするような大きな組織ではなく、生駒市というエリアに絞って深く関われる規模感です。5年間で地域の道や施設に精通していくにつれて、この場所で働いていることの意味を感じるようになってきました。
ー職場の雰囲気についてはいかがですか?
濵田:向上心がある人が多いですね。こういうキャリアを歩みたい、この分野を突き詰めたいという思いを持って働いている先輩も身近にいますし、そういうモチベーションを持った人たちに囲まれていると、自然と切磋琢磨できる雰囲気があります。
風通しもよくて、下から意見を上げると検討してもらえることもありますし、相談しやすい環境です。
ー異動の希望は出せますか?
濵田:希望は出せます。もちろん全部通るわけではないのですが、声は上げられます。私自身は今後、防災航空隊に行きたいと思っています。奈良県に1つだけあるヘリコプターで出動する部隊で、生駒市消防本部からも派遣されるので、そこに選ばれるように、今は目の前の仕事をしっかりと対応しています。
ー教員時代と比べて、働き方の変化はどうですか?
濵田:24時間の泊まり勤務と非番・週休が繰り返されるサイクルに慣れるまでは少し時間がかかりましたが、今は自分なりのリズムができています。カレンダー通りの休みではないので家族の休みとはずれることもありますが、逆にそれぞれの時間も生まれてよかったとも思っています。
今年4月にこどもが生まれましたので、これからまた生活も変わっていくのかなと楽しみにしています。

ー最後に、転職で消防士を考えている方へメッセージをお願いします。
濵田:軽い気持ちで受けてみてもいいと思っています。年齢制限もあり、受けられるタイミングは限られているので、チャレンジすればいい。
消防士が面白かったら続ければいいし、合わなければ別の道もある。私みたいに「来年のための練習で受かる」というケースもありますので、まずは飛び込んでみるという選択肢も考えてみてください。
ー本日はありがとうございました。
「来年のための練習だったが、滑り込みで合格できた」と笑って話す濵田さんだが、5年をかけて本署警備係、北分署警備係、本署予防係、そして救助係と幅広いキャリアを積んでこられ、今は防災航空隊という明確な目標を見据えながら、今日も現場に向き合っている。軽い一歩が、いつの間にか確かなキャリアになっている。そんな濵田さんの歩みが、就職や転職を迷っている誰かの背中を押してくれるかもしれない。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年6月取材)



