「仕事の大変さに見合ったやりがいを感じられる仕事です。消防という職業に興味があるなら、ぜひ挑戦してみてください」
そう穏やかに語るのは、生駒市消防本部に2024年度に入庁した髙木さん。大学卒業後、新卒で生駒市消防本部に飛び込んだ3年目の消防士だ。
現在は本署の専属消火隊に配属され、火災対応をメインに日々訓練と実務に向き合っている。今回は、消防士を志した理由から職場の雰囲気、日々感じるやりがいまで、率直に話してもらった。
- 小さい頃からの憧れ。「人を助けられる仕事に就きたい」という思いが道を決めた
- 配属後の驚き。緊張の仮眠と、初めて命の現場に立った日
- 地域と”一緒”に守る仕事。企業・施設との合同訓練が教えてくれたこと
- 130人全員の顔が分かる組織。メンター制度が支えた「なじみやすさ」
- 消火のプロフェッショナルを目指して。「やってみたい」と思ったら、飛び込んでみてほしい
小さい頃からの憧れ。「人を助けられる仕事に就きたい」という思いが道を決めた
ーなぜ消防士を目指されたのですか?
髙木:小さい頃から消防士という仕事に憧れはあったのですが、就職活動でどんな職業に就きたいかを本気で考えた時に、「人の助けになれる、人を助けられる職業に就きたい」という気持ちが出てきました。色々な職業を考えたのですが、やはり昔から憧れていた消防士が一番最初に選択肢として上がってきたのです。
ー警察官など他の職業と迷ったりはしましたか?
髙木:もちろん考えはしましたが、直接的に人助けができる消防士が一番しっくりきました。体を動かす仕事がしたいという気持ちも強くて。小学校6年間は水泳選手として、中学から高校まではスポーツクライミングを競技でやっていましたので、ずっと机に向かって事務仕事をするよりは体を動かせる仕事の方が自分に合うとも思っていましたね。
ーなぜ生駒市消防本部を選んだのですか?
髙木:地元が奈良市であり、奈良県内で地元に貢献したいという気持ちがありました。その中で生駒市消防本部は、全国的に見たら小規模な部類に入るのですが、だからこそ地域との距離感が近くてやりがいを感じやすいと思って、第一希望で受験しました。
ー奈良市消防局ではなく生駒市を選んだ理由は?
髙木:奈良市だと管轄が広くなるので、地理への知識が薄まってしまう懸念がありました。生駒市ぐらいの規模感であれば、地域全体に精通した、より地域に近い消防吏員になれるのではないかと。大学生の頭で考えた結果ではあるのですが(笑)、実際に入ってみてその選択は間違っていなかったと思っています。
ー採用試験はどうでしたか?
髙木:当時の生駒市の最終面接には市長が同席されていたのが印象的でした。消防に対する質問は自分なりに準備していたのですが、市長ならではの視点で「働きやすいまちづくり」についての質問があって、予想していなかったので少し戸惑いましたね。生駒市消防本部を受けているのに、まちづくりという大きな視点で問われたのが新鮮でした。

配属後の驚き。緊張の仮眠と、初めて命の現場に立った日
ー消防学校での過ごし方はいかがでしたか?
髙木:奈良県の消防学校は8か月間で、全寮制です。消防の基礎を徹底的に身につける期間で、実際の現場に出る前に必要なことをすべて叩き込まれる感じでした。消防学校を経て配属された後は、その基礎をもとに生駒市消防本部のやり方に慣れていくという流れになります。
ー配属後、最初に戸惑ったことはありますか?
髙木:24時間の泊まり勤務に慣れるまでが大変でした。夜間に出動指令が来るかもしれないという緊張感の中で仮眠をとるのですが、指令音に気づかずに起きられないのが一番怖くて。指令があれば1分1秒でも早く出動したいのに、それで遅れてしまったらと思うと、完全には眠れない。慣れるまでは緊張しながら浅い眠りで過ごしていました。
ー印象に残っている出動経験はありますか?
髙木:最初に心肺蘇生が必要な方への救急要請に出動した時のことが今でも印象に残っています。現場活動中は助けることに必死であり、あまり実感はないのですが、その日の仕事が終わった後に「今自分は初めて人の命に直接関わったのだ」ということが、じわじわとやってきて。覚悟のいる仕事だと、その時に強く実感しました。
ー3年目の今、日々の仕事で意識していることは?
髙木:先入観を持たないようにすることです。災害対応は、予想外のことが次々と起こるものです。「このくらいで大丈夫だろう」という予測を立ててしまうと、本当に予想外のことが起きた時にフリーズしてしまう。3年も経つと経験から物事の予測ができるようになってくるのですが、慣れてきた今こそ、先入観を持たないことが大事だと最近特に思っています。
地域と”一緒”に守る仕事。企業・施設との合同訓練が教えてくれたこと
ー消防の仕事はいわゆる出動だけではないのですね。
髙木:そうですね。市内の企業や施設との合同訓練というものがときどきあります。実際に印象に残っているのが、近畿日本鉄道㈱の駅舎を使った夜間の合同訓練です。終電が終わった後に、駅舎で火災が起きたという想定で、近畿日本鉄道㈱の社員の方、奈良県生駒警察署員の方と生駒市消防本部が一緒に訓練を行いました。消防本部だけで訓練をしているイメージがあったので、企業と一緒に訓練するというのは入ってから驚きました。
ーそういった経験を通じて感じることはありますか?
髙木:地域のお祭りで出店がある際に、火災危険がないかどうかの消防検査に行くこともあるのですが、そういう時に地域の方々と直接会話する機会があって。まちを一緒に守っているという実感を得ることが定期的にあります。生駒市という規模だからこそ、地域との距離感を近くに感じながら働けているのだと思います。
130人全員の顔が分かる組織。メンター制度が支えた「なじみやすさ」
ー職場の雰囲気はどうですか?
髙木:本署と南・北の2分署を合わせて130〜140人ほどの規模で、顔と名前が分からない職員がいないのです。それが組織内の風通しの良さにも繋がっていて、悩みを抱え込まずに済む組織風土だと感じています。相談しやすいというか、何かあっても話せる人がいるという安心感がありますね。
ー上下関係については、外から見ると厳しいイメージもありますが…
髙木:確かに消防士は階級社会で、命令系統という意味では上下関係はしっかりしています。ただそれが本当に機能するのは災害現場での話です。普段の事務仕事やパトロールの時は、もちろん上司への敬意は持ちながらも、和やかに公務にあたっていますよ。部活のような上下関係とはちょっと違うかな、という感じです。
ー新人の頃、なじむのは大変でしたか?
髙木:生駒市消防本部にはメンター制度というものがあって、消防学校から戻ってきた職員に若手の先輩が1人ついてくれます。何かあったらこの人に相談してね、という相談役のような形で、消防署での勤務のいろはを教えてくれます。指定された相談役がいることで安心して勤務できましたし、職場にも早く馴染むことができました。
ー若手から意見を上げられる雰囲気はありますか?
髙木:あります。もちろんすぐに何でも変わるわけではなくて、ある程度の検討は必要ですが、若手から「こういう点を変えた方が良くないですか」と意見を上げると、先輩や上司が検討してくださって実際に組織に反映されることもあります。そういった点も、いい職場だと思うところの一つです。

消火のプロフェッショナルを目指して。「やってみたい」と思ったら、飛び込んでみてほしい
ー今後の目標を教えてください。
髙木:今配属されている専属消火隊は、消火だけをメインに活動する部隊です。他の部隊だと救急隊と消火隊を兼任しているところもあるのですが、私たちは生駒市内で火事が起きればどこでも出動します。その分、消火への意識や知識の配分が多くできるのが今いる部隊のメリットだと思っていて。訓練を重ねて、火災対応のプロフェッショナルになれるようになっていきたいです。
ー最後に、消防士を目指している方へメッセージをお願いします。
髙木:消防士は心身ともにハードな仕事ではあるのですが、その分、現場で市民の方から直接感謝の言葉をいただけることもありますし、チームで動いた後の達成感も大きい。訓練して身につけたことが全て人命救助に直結しているという実感が、モチベーションを高く保てる理由でもあります。仕事の大変さに見合ったやりがいを感じられる仕事ですし、消防という職業に興味が少しでもあるなら、ぜひ挑戦してみてください。
ー本日はありがとうございました。
消防士になりたかった、ただそれだけ。そのシンプルな動機を持ち続けながら、髙木さんは今日も生駒のまちを守る現場に立っている。地域との距離の近さを自ら選んで入った場所で、消火のプロを目指してひたむきに積み上げていく姿が印象的だった。規模感のある大きな組織ではなく、顔の見える仲間たちと共に地域に根ざして働きたいと思っている方には、ぜひ生駒市消防本部という選択肢を検討してみてほしい。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年6月取材)



