高校・大学時代には公務員の選択肢が全くなかったというMさん。地元の先輩からの厳しい言葉をきっかけに建築の道に進み、一級建築士の資格を取得します。
その後、故郷の島に戻りたいという思いと絶妙なタイミングが重なり、妻の出身地である宮古島市役所へ転職しました。
建築職の醍醐味は、「発注者・設計者・施工者という三者が一丸となって困難を乗り越え、一つの建物を完成させる過程」と語るMさん。特に、児童館建設事業にまつわるエピソードは必見です!
- 建築職を志した「意外な」きっかけ
- 宮古島市役所へ。離島で建築職として歩んだ道
- 街の未来を築く!宮古島市「建築職」の仕事内容とスケール
- 三者が一丸となる!宮古島市建築職の「やりがい」と「魅力」
- 風通しの良い職場環境と、建設職を目指す方へのメッセージ
建築職を志した「意外な」きっかけ
ーまずは、建築職を志したきっかけについてお聞かせください。
M:実は、高校・大学時代は「公務員」という選択肢は全くありませんでした。
高校卒業後、フラフラしていた私に、建設会社の社長をしている地元の先輩が「何フラフラしてる?何がしたい?俺は、子どもが泣いている中でも資格の勉強してるぞ」と厳しく言ってくれたんです。
その言葉がきっかけで、「こういう大人になりたい」と強く思い、大学で建築学科に進みました。建築を学ぶ中で、建築設計の仕事がしたい、「建築設計の道に進みたい」という思いが芽生えていきました。
宮古島市役所へ。離島で建築職として歩んだ道
ー大学卒業後はどのようなキャリアを歩まれたのでしょうか?
M:大学卒業後は、まず公共建築物を手掛ける設計事務所に就職しました。ここでは役所からの依頼で、多くの公共建築物の新築や改修に携わったのですが、その中で「役所にも建築職があるんだ」と初めて知ったんです。
その後、一級建築士の資格も取得し、一度は関東の市役所に建築職として入庁しました。
ー宮古島市役所に入庁された経緯について教えていただけますか?
M:妻が宮古島出身、私が奄美郡島出身という離島出身者同士だったため、「いつかどちらかの島に戻りたいね」と話していたんです。そんな折、関東の市役所で働いていた時に、宮古島市役所で建築技術職の募集があることを知りました。
まさに絶妙なタイミングだったということもあり、宮古島市役所への入庁を決めました。
街の未来を築く!宮古島市「建築職」の仕事内容とスケール
ー宮古島市役所に入庁されてから、どのような部署で、どのような業務を経験されてきたのでしょうか?
M:宮古島市役所に入庁して最初の5年間は、振興開発プロジェクト局という部署に配属されました。
これは、当時の宮古島市の発展期に合わせて立ち上げられた特別なチームで、空港近くにある「JTAドーム宮古島」の建設など、大規模な建築プロジェクトに携わりました。
私たちは発注者として、設計事務所が作成した図面や工事費積算のチェックから入札手続き、工事監督までの一連の業務を担うんです。その他にも、国への補助金申請や予算確保、用地交渉など公共建築を1から建設する全ての過程を経験することができました。
一度、働きすぎて体調を崩したこともあり、半年間は工事のない契約検査課で、完成した工事の検査業務を担当しました。
その後、建築課に4年間所属し、児童館や野球場の屋内ドーム型練習場の建設に携わりました。例えば、児童館の建設は、子育て支援課から「児童館を作りたい」という要望があり、それに対して建築課が技術面で協力して計画を進める形です。


ー現在の教育施設課での具体的な仕事内容と、体制や案件の規模感についてもお聞かせください。
M:現在は、教育施設課の整備係に所属しています。ここでは主に学校施設の建設や改修を担当しています。
例えば、雨漏りが発生している体育館の改修工事や、プールのない学校にプールを新設する工事など、多岐にわたります。
教育施設課は、建設と維持管理の両方を担う部署なのですが、私は建設側にいます。現在の整備係は3名体制で、全員が建築職です。
教育施設課が扱う案件の規模はかなり大きく、今年度(半期)だけでも10件以上の工事を手掛け、その総額は半年間で10億円を超えています。
これは老朽化した学校施設が多いこともあり、子どもたちの安心・安全を守るため、非常にスピーディーな業務が求められます。

三者が一丸となる!宮古島市建築職の「やりがい」と「魅力」
ー宮古島市での建築職として働く中で、どのような時に「やりがい」や「魅力」を感じますか?
M:建築職の最大のやりがいは、私たち発注者だけでなく、設計者、そして施工者の【三者が一丸となって一つの建物を作り上げていく】過程です。
工事中は、「図面と違うぞ」「でも予算がない」「どうする!?」など、大変なことばかりです。しかし、関係者と密に連携を取りながら、それらの困難を乗り越え、建物が完成した時の達成感は格別です。
ー特に印象に残っているエピソードがあれば教えてください。
M:特に印象に残っているのは、城辺(ぐすくべ)地区の児童館建設ですね。
子育て支援課からの要望を受け、私も含め、設計者、施工者が同じ目標に向かって協力し合いました。完成時には、関わったメンバー全員で記念撮影をしたほど、達成感でいっぱいでした。
何よりも嬉しいのは、完成した建物が実際に使われている姿を目にすることです。
児童館の建設現場が学校の近くだったのですが、完成を待ち望む幼稚園児たちが、絵付きのお手紙を現場に届けてくれたんです。「早く児童館ができるの楽しみにしてます」と書かれていて、その期待に胸が熱くなりました。
役所の職員が市民から直接「ありがとう」と言われる機会はそう多くありませんが、この時は、子どもたちの期待や喜びがダイレクトに伝わってきて、本当にこの仕事に携わって良かったと心から思いました。
規模や予算の面だけでなく、人々の生活に貢献し、喜びを分かち合えることが、この仕事のかけがえのない魅力だと感じています。


風通しの良い職場環境と、建設職を目指す方へのメッセージ
ー宮古島市役所の職場の雰囲気について教えていただけますか?
M:役所の職場環境は部署によって様々です。以前に所属していた部署は、担当者が一人で業務を進める体制でした。それだけに責任も重く、かなり過酷だったというのが本音です。
ただ、今の教育施設課は非常に風通しが良く、協力的な雰囲気です。整備係は3名体制で、皆が建築職なので、お互いに協力し合いながら業務を進めています。
例えば、誰かが子どもの急な体調不良で休まなければならなくなっても、他のメンバーが迅速にフォローし、業務が滞ることはありません。
この助け合いの文化は、以前の職場で一人で全ての業務を抱え込み、苦しい経験をした私にとっては大変ありがたい環境です。
残業については、私自身は一切しません。残業が発生するような仕事は、そもそも人員配置に問題があるという考えで、日々のスケジュール管理を徹底しています。
休暇も計画的に取得し、プライベートも充実させています。
もちろん、現場の緊急時には24時間対応できるよう準備していますが、普段から業務を共有し、誰が休んでも対応できる体制を整えているため、問い合わせも少なくなっています。
ー最後に、宮古島市で建築職を目指す方へメッセージをお願いします。
M:宮古島市の建築職は、私たち発注者だけでなく、設計者、施工者といった外部の多くの関係者と連携しながら、街の未来を築いていく仕事です。
決して一人で抱え込むような仕事ではなく、多くの人と関わり、協力し合うことで、より大きな達成感を味わうことができます。
宮古島市で建築職を目指す皆さんには、ぜひ、この連携と達成感の喜びを経験してほしいと思います。私たちと一緒に、宮古島市の素晴らしい建築物を生み出していきましょう。
ー本日はありがとうございました。
取材前は「仲の良い総務課の職員に頼まれたから」とおっしゃっていたMさん。
しかし、お話をお聞きしていくと、建築職としての誇りと、人を信頼する温かさが感じられる、とても素敵なお人柄の方でした。
そして、児童館建設事業における幼稚園児からの手紙のお話は、建築職の仕事が、どれほど人々の日常の喜びや希望に直結しているかを教えてくれる、感動的なものでした。
以前の職場で「一人で抱え込み苦しい経験をした」というMさんが、今の職場の「助け合いの文化」を強調されていたことが印象的です。残業をしないという強い信念と、それを受け入れる協力的な体制こそが、宮古島市役所が持つ、職員を大切にする温かい風土なのだと感じました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年10月取材)



