広大な大地、豊かな自然、そしてそこに息づく人々の営み。北海道庁という組織で働くことは、この壮大なフィールドの「演出家」になることかもしれません。今回お話を伺ったのは、入庁16年目の大西さん。現在は人事委員会で採用担当を受け持っています。
北海道庁では、現在「面接日時の自己選択制」や「夜間面接」など、受験者に徹底的に寄り添った試験改革を行っています。「飾らない自分の言葉こそが、相手の心を動かす」と語る大西さんから未来の仲間へ、熱く、そして等身大なアドバイスをお届けします。
- 北海道職員としての想い。地域という舞台を支える「演出家」の役割
- 受験者ファーストの採用試験へ。北海道庁が進める「採用試験改革」とは
- 大西さんの原体験。美瑛の景観に見た危機と使命
- 北海道庁でのキャリアとは?職員1万人以上の組織で「経験が繋がる」感覚
- 受験を考えている方へのアドバイス。飾らない「自分の言葉」こそが一番の武器に
- 未来の仲間へ。あなたに合う「挑戦の場」が必ず見つかる
北海道職員としての想い。地域という舞台を支える「演出家」の役割
-本日はよろしくお願いします。まずは大西さんが、北海道職員として大切にされていることがあれば教えていただけますか。
大西:よろしくお願いします。北海道職員となり、日々感じているのは、道庁職員は「主役」ではなく、地域というフィールドを輝かせるための「演出家」や「伴走者」のような存在であるべきだということです。
-「演出家」ですか。最前線で活躍するプレイヤーとは少し異なるのでしょうか?
大西:道庁には、北海道を牽引していく仕事も多くあります。
ただ、市町村職員の皆さんが、地域という最前線のフィールドで課題に直接アタックする主役だとしたら、どちらかと言うと私たち道庁には、必要な予算や情報を地域に繋ぎ、市町村や地域の団体が最大限に力を発揮できるような環境をプロデュースする役割が求められていると思っています。
市町村が壁にぶつかった時に、広域的な視点から「こういう解決策もありますよ」とアドバイスを出したり、伴走したりするなど、自分で成果をあげるのではなく、地域が、そして北海道全体が良くなっていくこと、そんな「黒子」的な役割にやりがいや喜びを感じられる方と一緒に働きたいと考えています。

-北海道全体を変える仕事は素敵ですね。一方で、特定の地域や自分の故郷に貢献したいという想いを持つ方でも活躍できるのでしょうか?
大西:それはもう、最大の武器になります。
「このまちが好き」「故郷の未来を守りたい」という純粋な想いは、どんなスキルよりも強い原動力になります。北海道には179もの市町村があり、地域によって魅力や課題も様々です。その地域に想いがあるからこそ、道庁職員として見えてくるものもたくさんあると思います。
個人の熱い郷土愛を、道庁という大きな組織の力でバックアップし、形にしていく。それこそが、この仕事の面白いところなんです。
受験者ファーストの採用試験へ。北海道庁が進める「採用試験改革」とは
-北海道庁の採用試験について、何か特徴的なところはありますか?
大西:北海道庁では、令和8年度に実施する職員採用試験から、大幅な試験改革を行います。
「北海道のために働きたい」という志を持っている方が、物理的な距離や今の仕事の忙しさを理由に、受験を諦めてしまうことだけは絶対に避けたいと思っています。その一心で、私たちは今、かつてないほど「受験者ファースト」な試験へと舵を切っています。
具体的には、大学生向け試験に「SPI試験」を導入し、民間企業への就職を検討している方もチャレンジしやすい試験制度としたほか、北海道を離れて生活している方などのために、東京会場でも試験を完結することができるようにします。
社会人向けには、同様に「SPI試験」を導入するほか、負担を軽減するために面接回数も2回から1回に減らします。そして自身の都合に合わせた受験時期や面接日時を選択できるようになります。
-現在働いている方にとって、自分の都合で試験日程を選べるのは心強いですね。
大西:そのとおりです。面接日時については、さらに夜間の面接枠も設ける予定です。
これまでは試験に合わせて予定を調整してもらうことが当たり前でしたが、これからは皆さんの普段の生活や働き方の中に、道庁の試験を組み込んでもらうという形にしたいと考えています。
今の会社で責任ある仕事を任されているから、なかなか休みをとって試験を受けることができない、という優秀な方にこそ、ぜひ道庁でチャレンジしていただきたいんです。
そのためのハードルは、私たちが試験制度という面から支えていきたいと思っています。

大西さんの原体験。美瑛の景観に見た危機と使命感
-話が変わりますが、大西さんご自身、そもそも北海道庁という場所を選んだきっかけは何だったのでしょうか?
大西:私は、本当に理屈抜きで北海道という場所が大好きなんです(笑)
出身は札幌なのですが、両親が旅行やアウトドア好きだったということもあり、幼い頃から道内各地を旅して育ちました。自分の中に「札幌出身」ではなく「北海道出身」という強い誇りが、ごく自然に根付いていたんです。
そんな中、道庁を志すきっかけとなったのは、大学時代のフィールドワークでした。美瑛町(びえいちょう)を訪れた際、あの美しいパッチワークのような景観が、農家の後継ぎ不足という深刻な問題で維持できなくなっている現実を知り、大きなショックを受けたんです。

-当たり前にあると思っていた美しい風景が、実は存続の危機に瀕していたのですね。
大西:そうなんです。このままでは、大好きな北海道の景観が少しずつ失われてしまうかもしれない、という危機感こそが私の原点です。
大好きな北海道を守るために、自分にできることは何なのか、そう問い続けた結果が、道庁職員という選択でした。市町村単位では解決が難しい広域的な課題も、道庁という大きな組織なら解決の糸口が見つかるかもしれないと考えたんです。
あの時美瑛で感じた「なんとかしたい」という想いは、入庁から16年経った今でも、働く上でとても大切にしています。
-道庁職員として、その想いを形にすることはできましたか?
大西:入庁したばかりの頃は、自分の仕事を覚えるのに必死で、周りを見る余裕なんて正直ありませんでした(笑)。転機となったのは係長への昇任です。
その頃から、地域の課題を広い視点で見つめ、道庁としてどんなバックアップができるかを自ら考えられるようになりました。今は「自分の仕事の一つひとつが、地域貢献につながっている」という意識が、日々の大きな原動力になっています。
あの頃描いていた「やりたかったこと」のスタートラインに、ようやく立ち始めているような感覚ですね。
北海道庁でのキャリアとは?職員1万人以上の組織で「経験が繋がる」感覚
-北海道庁といえば、業務もフィールドも非常に幅広いイメージですが、大西さんご自身はどのようなキャリアを歩んでこられたのでしょうか?
大西:入庁後、最初の3年間は空知(そらち)総合振興局で、組織の土台となる内部管理を学びました。その後、本庁の建設部へ異動し、公営住宅の予算管理を担当しました。とても規模の大きい事業をもっていたため、財政部局と、時には100億円を超えるような規模の予算を巡ったやりとりも経験させてもらいました。
係長になって赴任したニセコや小樽を所管する後志(しりべし)総合振興局では、地域振興に関わる仕事を担当しました。ここでは現場に飛び込み、人手不足に悩む観光業のために「北海道職員の観光業における副業制度」を立ち上げるなど、自ら事業を切り拓く経験をしました。
-イメージ通りの幅広い経験ですね。この「異動」についてはどのように考えられていますか?
大西:私自身は、異動についてとてもポジティブに捉えています。
確かに全く新しい分野への異動や、時には引っ越しを伴うなど、大変な部分もあるかもしれませんが、面白いことにどんな分野であっても、道庁で培った経験はすべてが繋がってくるんです。
道庁には事務職だけでも約16,000人の職員がいます。多様な部署を経験する中で得た点と点が、ある日突然、太い線になって繋がることがあります。その瞬間こそが、この仕事の最大の醍醐味であり、大きな組織で働く本当の面白さだと感じています。
受験を考えている方へのアドバイス。飾らない「自分の言葉」こそが一番の武器に
-これから道庁を目指す方に向けて、大西さんから何かアドバイスはありますか?
大西:まずお伝えしたいのは、面接で100点満点の綺麗な回答をしようと、準備をし過ぎなくてもいいということです。
我々が面接の中で知りたいのは、予備校で教わったようなテンプレートの答えではありません。多少不器用な表現であっても構わないので、聞かれたことに対して、「あなたの言葉」で回答していただきたいですね。
多少言葉に詰まっても、噛んでしまっても、熱量さえ伝われば、私たちにはしっかりと響きます。

-志望動機や自己PRの考え方についてはいかがですか?
大西:これらも、背伸びをして考える必要はありません。
志望動機は、北海道庁で働きたいという率直な思いを伝えていただきたいと思っています。私自身、先程お話しした通り「北海道が好き」というのが一番の理由でした。志望動機って、本来そういうものだと思いませんか(笑)
自己PRについても、輝かしい功績や突出したスキル・経験がなければいけないというものではありません。学生生活や社会人経験など、自分のこれまでの人生経験を振り返り、何を学んだのか、それを北海道庁の職員としてどのように活かすことができるのかを教えてください。
-等身大であることが大切なのですね。逆に、ここだけは押さえてほしい、という点はありますか?
大西:そうですね。北海道庁のことを何も知らずに受験するということは避けていただきたいですね。
例えば、受験生の中で「振興局」の存在を知らない方が、希にいらっしゃいます。振興局は現場の最前線であり、道庁という巨大な組織が地域を支えるための「心臓部」でもあるので、道庁を志すからには、最低限、道内にある14の「振興局」の存在や、その役割については多少なりとも理解しておいてもらいたいです。
未来の仲間へ。あなたに合う「挑戦の場」が必ず見つかる
-最後に、これから受験を考えている方へメッセージをお願いします。
大西:北海道庁という組織は、皆さんが想像している以上に広く、奥深い業務に携わることができる場所です。今の時点でやりたいことが明確でなくても、多様な分野を経験する中で、必ず「これだ!」と思える仕事に出会えます。
そして、道庁にはあなたという個人をしっかりと守り、仕事や生活を支える制度、仲間が揃っています。安心して、この広大な北海道をフィールドに、思い切った挑戦をしてください。
「北海道を愛し、共に未来を創っていきたい」という熱意さえあれば、あなたはもう、私たちの仲間です。皆さんと一緒に働ける日を、心からお待ちしています!

-本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年12月取材)



