民間企業で培った接客スキルを、もっと直接的に、顔の見える誰かのために活かしたい。
福岡県篠栗町では、民間での多様な経験を地域づくりに活かす職員が活躍しています。今回は、大手衣料品メーカーから篠栗町役場に転職した消防防災係の吉川さんにお話を伺いました。
なぜ公務員を選んだのか、異業種からの挑戦で見えた景色、そして篠栗町ならではの「繋がり」の魅力。新たな一歩を考える方へのヒントが詰まったインタビューです。
- 「もっと近くで支えたい」異業種から公務員を目指した理由
- 篠栗町を選んだ理由と、人間性を重視する採用試験
- 「命と暮らしを守る」消防防災係での挑戦とやりがい
- 前職の経験を「公務員」の武器に変える
- 入庁1年目での災害派遣、そして未来へ
- 抜群のチームワーク。支え合う仲間と「同期14人」の存在
- 生活の変化と、未来の職員へのメッセージ
「もっと近くで支えたい」異業種から公務員を目指した理由
ー吉川さんは以前、民間企業で働かれていたそうですね。これまでの歩みを教えてください。
吉川:私は福岡県那珂川市の出身で、大学は佐賀県の理工学部に進学しました。卒業後は大手衣料品メーカーに入社し、約3年間、店舗運営やスタッフのマネジメントに携わってきました。
ー接客の最前線から、なぜ「公務員」という道を選ばれたのでしょうか?
吉川:前職では「服」を通じてお客様の日常を快適にすることに誇りを持っていました。ただ、もっと多角的に、そして住民の方々の生活を「根本から」支えていける仕事がしたい、と考えるようになったんです。
ちょうどその頃、公務員として働く友人の話を聞く機会がありました。住民に寄り添って町の課題解決に取り組む姿が、私にはとてもまぶしく映り、「これこそが私が求めていた働き方だ」と確信し、転職を決意しました。
ー実際に働きながらの転職活動は、かなりハードだったのではないでしょうか?
吉川:正直、かなり大変でした(笑)。前職は「遅番」が多く、11時過ぎに出勤して夜9時過ぎまで店舗に立つ毎日で……。
勉強時間を確保するために、出勤前の午前中や帰宅後の深夜を削って机に向かっていました。体力的にきつい時期もありましたが、「篠栗町で働きたい」という思いが私を突き動かしてくれました。

篠栗町を選んだ理由と、人間性を重視する採用試験
ー多くの自治体がある中で、なぜ「篠栗町」だったのですか?
吉川:一番の理由は、祖母が篠栗町に住んでいたことです。物心ついた時から何度も遊びに来ていて、私にとって篠栗町は【第二の故郷】のような場所だったので、転職を考えた時、真っ先に思い浮かんだのがこの町の景色でした。
また、福岡市のような大規模な自治体も魅力的ですが、篠栗町のような規模感であれば、住民の方々との日常的な接点があり、より深く、顔の見える街づくりに関われると感じたんです。
ー篠栗町の採用試験で、特に印象に残っていることはありますか?
吉川:3次試験の最終面接ですね。町長、副町長、教育長というトップの方々と直接お話しする機会だったのですが、想像していたような堅苦しい雰囲気ではありませんでした。
私の経歴や、前職でどんな思いを持って働いていたのかを、とてもフランクに、そして熱心に聞いてくださったんです。
「この町は、個人のスキルだけでなく、その人自身の【人間性】をしっかりと見てくれるんだ」と感じ、入庁への意欲がさらに高まりました。
「命と暮らしを守る」消防防災係での挑戦とやりがい
ー現在はどのようなお仕事をされているのでしょうか?
吉川:総務課の消防防災係に所属し、文字通り「消防」と「防災」の両輪を担当しています。
消防関係では、地域の安全の要である消防団の方々の支援や、出初式などの式典運営、公務災害の手続きなどを行っています。
防災関係では、町内の防災無線の管理や備蓄品の調達、さらには住民向けの防災講座の講師を務めることもあります。


ー民間企業とは全く異なる業務ばかりかと思いますが、やりがいを感じる瞬間を教えてください。
吉川:一番のやりがいは、自分の仕事が「誰かの安心」に直結していると実感できることです。
以前、防災士の資格取得を目指す住民の方の補助金手続きをサポートしたことがありました。不慣れな書類作成に苦戦されている様子だったので、何度も窓口にお越しいただき、一から丁寧にご説明したんです。
後日、その方がわざわざ町長に「吉川さんが本当によくしてくれた」と伝えてくださったと聞き、胸が熱くなりました。
ー人づてに感謝の声が届くのは、公務員冥利に尽きますね。
吉川:本当にそう思います!直接お礼を言われるのも嬉しいですが、回り回って自分の評価を耳にする時、この仕事をしていて良かったと心から実感します。
私の仕事が、住民の方の生活の一部として役に立っているんだなと。
前職の経験を「公務員」の武器に変える
ー異業種からの転職で、苦労したことはありましたか?
吉川:入庁当初は、まさに「右も左も分からない」状態でした(笑)。業者さんとの折衝や、役所特有の事務手続き、電話対応の言い回し。すべてが新鮮で、すべてが課題でした。
まずは聞いたことを一字一句逃さずメモすることから始め、家ではYouTubeを見てビジネスマナーや行政の仕組みを猛勉強する日々でした。
ー前職の「接客スキル」が活きていると感じる場面はありますか?
吉川:大いにあります。前職で培った「お客様の立場になって考える」という姿勢は、今の私のバックボーンです。
行政の手続きや制度は、住民の方にとっては難しく、近寄りがたいものに感じられることが多い。だからこそ、相手の表情を見ながら、いかに分かりやすく、柔らかい言葉で伝えるかを常に意識しています。
相手に寄り添う姿勢は、どの業界でも共通する最高のスキルだと思っています。

入庁1年目での災害派遣、そして未来へ
ー入庁1年目に能登半島地震の災害派遣に行かれたと伺いました。
吉川:はい。発生から約1ヶ月半後、石川県穴水町へ17日間派遣されました。
主な任務は住宅被害の認定調査です。震災の爪痕が深く残る現場を目の当たりにし、改めて「防災」という仕事の重みを痛感しました。
同時に、町中に溢れる「みんなで乗り越えよう」という温かなメッセージに、私自身も深く勇気づけられました。
ーその経験を、今どのように篠栗町に還元していますか?
吉川:被災地で撮ってきた写真を使い、地域での防災講座に活かしています。実際の現場を知っているからこそ伝えられる「日頃の備えの重要性」があります。
住民の方々の防災意識を高めるきっかけ作りを、これからも継続していきたい。それが、派遣を経験した私の使命だと思っています。


抜群のチームワーク。支え合う仲間と「同期14人」の存在
ー異業種からの転職だと不安もあるかと思いますが、職場の雰囲気はいかがですか?
吉川:入庁して一番驚いたのは、本当に「優しい人が多い」ことです!課内はもちろん、他部署の方々も驚くほど親身になってくれます。
業務上、他部署との連携が不可欠で、私自身「1週間のうちに行かない週はない」というくらい頻繁に足を運びますが、どこの部署へ行っても温かく迎えてくださいます。
こうした関係性が築けているのは、篠栗町役場全体に、町の課題を「自分事」として捉える文化があるからだと思います。自分の担当業務だけでなく、町全体を良くするためにどうすべきかという視点を皆が持っている。
だからこそ、部署の垣根を超えて協力し合える【一体感】があるのだと感じています。
ー横の繋がりの強さを感じますね。
吉川:そうなんです。特に心強いのが「同期」の存在です。私の代は同期が14人もいて、これは篠栗町としては比較的多い方だと思います。
部署はバラバラですが、他部署のことで何か聞きたいことがあったとき、その部署に同期がいれば、まずは同期に相談できるのが本当にありがたいです。同期だと、やっぱり気軽に相談できますし、とても心強いですね。
また、プライベートでもたまに飲みに行ったり、町のイベントがあれば一緒に行ったりと、公私ともに仲が良いんです。

生活の変化と、未来の職員へのメッセージ
ーワークライフバランスについてはいかがでしょうか?
吉川:基本的には残業がほとんどなく、定時で帰れる日が多いです。前職は夜遅くまで仕事だったので、明るい時間に帰れることが最高の贅沢に感じます。
プライベートの時間も確保できるようになり、最近では料理を始めるなど、生活の質がグッと上がりました。
年度当初などは忙しい時期もありますが、係内で共有しておけば休みも非常に取りやすい環境です。
ー最後に、篠栗町役場を目指す方へメッセージをお願いします。
吉川:篠栗町役場は、この町をより良くしようという熱い想いと、仲間を思いやる優しさに溢れた職場です。
「自分に何ができるだろう」と不安に思う必要はありません。私もそうでしたが、一歩踏み出せば新しい景色が必ず見えてきます。
一人ひとりが町の課題を「自分事」として捉え、熱意を持って働けるこの環境で、ぜひ皆さんと一緒に【未来の篠栗町】を作っていけることを楽しみにしています!

ー本日はありがとうございました。
吉川さんとお話しして感じたのは、その言葉の一つひとつに宿る「誠実さ」でした。
大手民間企業でのキャリアを脱ぎ捨て、新たな世界に飛び込んだ勇気。そして、慣れない業務にYouTubeまで駆使して食らいついた努力。彼の瞳は、篠栗町の未来を真っ直ぐに見据えていました。
「住民との繋がり」を大切にし、公務員としてのやりがいを噛みしめるその姿は、転職を迷う方にとって何よりの道標になるはずです。優しい風が吹く篠栗町で、また一人、頼もしい職員が町を支えています。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年1月取材)



