江田島市役所で働く名越(なごや)さんと室(むろ)さんのインタビュー記事です。民間企業で多様なキャリアを積んだお二人が、なぜ公務員へ、そして江田島市を選んだのか。現在の仕事内容ややりがい、そして気になるワークライフバランスまで、江田島市役所で働くリアルな魅力に迫ります。
多様な民間経験を経て、江田島市役所へ
ーお二人のこれまでの経歴と、江田島市役所に入庁された経緯を教えてください。
室:地元の銀行で6年勤めた後、半導体メーカーの経営企画、福祉事業を行う会社で秘書や営業を経験し、昨年の4月に江田島市役所に入庁しました。
名越:大学卒業後、東京の人材派遣会社に就職しました。その後、地元の広島市で働き、平成24年度に江田島市役所に入庁しました。
ー室さんはなぜ公務員へ転職を?
室:働き方を見直したかったのが一番の理由です。前職は全国出張が多く、将来の家庭生活を考えるとプライベートを充実させることが難しいと感じました。公務員ならワークライフバランスを大切にできるのではと考えたんです。
ー中でも江田島市を選んだのはなぜですか。
室:実は小学校まで江田島で育ったので、自分を育ててくれたこの場所に恩返しがしたい、という気持ちがありました。また、祖父が町の三役を務めていたりと公務員として努めており、仕事が身近な環境だったこともあり、住民の方と密着して働ける江田島市が自分に合っていると感じました。
ー名越さんが公務員を志したきっかけは何だったのでしょうか。
名越:民間企業で働く中で、「誰のために、何のために働いているのだろう」と深く考える時期がありました。その答えを探すうち「もっと直接的に人のために働く仕事がしたい」という想いが強くなり、地域住民の皆さんのために力を尽くす公務員という仕事に行き着きました。
市の根幹を支える「法制執務」という仕事
ー現在のお二人の仕事内容を教えてください。
名越:生活保護のケースワーカーや財政課などを経て、広島県庁への2年間の派遣で条例などを審査する「法制執務」を学びました。市役所に戻ってからは、その経験を活かして総務課で法制執務を担当しています。
ー法制執務とは、具体的にどのようなお仕事ですか?
名越:自治体が定める「条例」などが、国の法律に違反していないか、専門的な用語や構成は適切か、などを法的な観点から審査する仕事です。
室:私も昨年4月から名越さんの隣で、同じく議案の審査や法制執務に携わっています。また、交通安全に関する業務も担当しております。
ーいきなり法制執務という専門的な部署に配属されて、戸惑いはありませんでしたか。
室:正直、全く想像していませんでした(笑)。地方自治法すら知らない状態からのスタートでなぜ条例や規則があるのかという根本的なところから学ぶ必要がありました。最初は本を読んで勉強しようとしましたが、本に書かれている単語の意味が分からない、という状況で…(苦笑)。
そこからは、ほとんど名越さんに質問攻めでしたね。
未経験からの挑戦を支える、教え育てる職場風土
ー未経験からの挑戦、OJTはどのように進められたのでしょうか。

室:各課から上がってきた案件は、まず私が担当者とやり取りをして案を作成します。それを係の先輩に確認してもらい、さらに二人で検討を重ねた上で、最終的に名越さんにチェックしていただくという流れです。ダブル、トリプルとチェック体制が敷かれているので、安心して業務に取り組むことができます。
ー名越さんは指導する上で、どのようなことを意識されていますか。
名越:議会に提出する条例案は、市民の権利や義務に直接関わる非常に重要なものです。間違いは絶対に許されません。そのため、入庁年数や経験に関係なく、この仕事に就いた以上はプロとしての責任が求められます。その厳しさを伝えつつも、ただ答えを教えるのではなく、まずは自分で考えてもらう時間を大切にしています。
ー任せながら育てる、ということですね。
名越:はい。やってもらわないと成長できませんから。もちろん、検討が足りない部分や、より深く考えるべき点はフィードバックしますが、まずはどんどん任せています。そうして彼が力をつけていくことが、最終的に組織のためになります。私が異動したり、退職したりした時に、彼らが困らないように、今のうちにしっかりと知識と経験を積んでほしい。そのために、私が最終的な責任はすべて負う覚悟で、日々の業務に臨んでいます。
ー室さん、実際に指導を受けてみていかがですか。
室:仕事の進め方が非常にやりやすいと感じています。各課からの相談の中には、論点が整理されていないものもあるのですが、そこをまず名越さんが交通整理して、「ここを検討して」と的確に指示を出してくださる。何をすべきかが明確なので、思考を深める時間もしっかり確保できます。基礎からしっかり教えていただける環境は本当にありがたいです。
ー職場の雰囲気はいかがですか。
室:最初は怖そうでしたが、実際に話してみると本当に気さくで、何でも親身に教えてくれます。昨年は一緒にバスケットボールをする機会もあって、仕事以外の交流もあります。物理的にもすぐ隣の席なので、分からないことがあればすぐに相談できる、風通しの良い関係です。
オンとオフのメリハリ。理想のワークライフバランスを実現
ー転職のきっかけでもあったワークライフバランスについてはいかがですか。残業はありますか。
室:前職が特殊だったこともありますが、働き方は劇的に変わりました。選挙や議会がある繁忙期は残業することもありますが、それ以外の時期はほとんどゼロです。毎日17時15分の定時で帰れることがほとんどで、プライベートの時間がしっかり確保できています。
ー名越さんは子育てもされていらっしゃるとのことですが、仕事との両立はいかがですか。
名越:私も繁忙期以外はなるべく早く帰るようにしています。おかげで、土日はしっかりと休めています。子どもの習い事の送迎をしたり、家族で出かけたりと、子どもと過ごす時間を大切にできていますね。民間企業で働き続けていたら、今のような生活はできていなかったかもしれません。
広島市からのフェリー通勤も。江田島市ならではの働き方
ーお二人は広島市からフェリーで通勤されていると伺いました。
室:はい。広島港から江田島市の港まで高速船で約30分、そこからバイクに乗り換えて15分ほどで市役所に到着します。Door to doorで大体1時間くらいですね。
ー船での通勤は大変ではないですか。天候の影響なども気になります。
名越:江田島市と広島市の間は、通勤や通学で利用する方が非常に多いので、フェリー船は重要な生活インフラになっています。そのため便数も1日に20便以上あり、朝は6時台から夜は22時過ぎまで運航しているので、残業があっても帰れなくなる心配はほとんどありません。台風などで運休することも滅多にないですね。
室:万が一、船が止まったとしても、呉市側からは橋で繋がっているので、車で通勤することも可能です。災害時などは職員として対応が求められるので、どんな状況でも出勤できる体制は整っています。
縁の下の力持ちとして、市民の暮らしを支えるやりがい
ー最後に、江田島市役所で働くやりがいについて教えてください。
名越:私たちの仕事は、市のルールをミスなく整えることで市全体の業務を円滑にし、市民の皆さんの安心な暮らしに貢献できていると実感できる点です。庁内の職員から「助かりました」と感謝されることもあり、【縁の下の力持ちとして市を支えている実感】が大きなやりがいです。
室:市民の方の顔が直接見える仕事ではありませんが、条例案の審査を通して、故郷である江田島市民の暮らしに貢献できることを実感できます。それが日々のモチベーションになっています。
ー本日はありがとうございました。
民間での多様な経験を経て、今は信頼しあった先輩と後輩の関係性を築き上げて働けていること、そのチームワークが伝わるインタビューでした。全国出張の多い営業職から転職された室さんが語る、定時で帰れる日常と充実したプライベート。そして、お二人が実践する広島市からのフェリー通勤。これらは、江田島市役所が提供する「働きがい」と「暮らしやすさ」の両立を象徴しています。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年9月取材)