江田島市役所で土木技師として働く、空(そら)さんと玉井さんのインタビュー記事です。一度キャリアを離れてからの再挑戦、そして未経験からのチャレンジ。それぞれ異なる経歴を持つお二人が、なぜ江田島市役所の土木技師を選んだのか。子育てと両立しながら働くリアルな日常や、イメージとは少し違う土木の仕事の魅力、そして江田島市というまちで働くやりがいについて、お話を伺いました。
多様なキャリアを経て、江田島市役所の土木技師へ
ーまずはお二人のこれまでのご経歴を教えてください。
空:農林水産課の空です。入庁7年目になります。前職はサービス業や営業職など、様々な仕事を経験しました。24歳の時にUターンで江田島に帰ってきた後、市の臨時職員として建設課などで働いたのが市役所との最初の接点です。
一度、結婚・出産で仕事から離れましたが、平成30年の西日本豪雨災害を機に再び臨時職員として働く中で、広報で土木技師の募集を見つけました。当時は災害復旧で土木技師がとても必要とされている状況で、土木の実務経験は全くありませんでしたが、入ってから覚えようと、挑戦することにしました。

玉井:私は建設課の玉井です。入庁して4年目になります。学生時代から土木を学び、新卒で岡山市役所に土木技師として就職し、4年間水道局で働いていました。結婚を機に退職し、夫の地元である江田島市へ。それから10年ほどは子育てをしながら、アパレル会社の電話オペレーターやホームページ関連等の事務員など様々なパートを経験しました。
子育ても少し落ち着き、フルタイムで働こうと考えた時、やはり自分には土木の仕事が合っているだろうと思い、再び技術職として江田島市で働いています。

未経験とブランクからの挑戦。学びを支えた職場環境
ー空さんは未経験、玉井さんは10年のブランクを経てということですが入庁当初はいかがでしたか?
空:私が入庁した時は、まさに災害復旧の真っ只中で、先輩方は本当に忙しい状況でした。このため、自分で本を読んだり、まずは事務作業から担当させてもらったりしながら、少しずつ仕事を覚えていきました。一人で現場の判断ができるようになるまでには、産休・育休期間も含めて3年ほどかかったと思います。
玉井:私は前職が水道局だったので、道路や擁壁(ようへき)などを扱う今の仕事は、同じ土木でも全くの別分野でほぼ新卒のような気持ちでのスタートでした。ただ、10年間のブランク期間に色々な仕事をしてきた経験が自分を助けてくれました。
常に「分からないこと」だらけの環境にいたので、「分からないのは当たり前」と良い意味で開き直れていたんです。リラックスして仕事に取り組めたのは良かったですね。
ー分からないことは、どのように解決していったのですか?
玉井:入庁してから3年間、同じ上司が隣の席で成長を見守ってくれました。手取り足取り教えるのではなく、「この基準書を読んでみたら?」とヒントをくれるんです。自分で調べて、「私はこう思うのですが、どうでしょうか?」と提案すると、的確なアドバイスをくれる。
間違えてもいいから、まず自分で考えて発信しやすい環境を作ってくださったので、とてもありがたかったです。
市民の暮らしを支える、土木の仕事
ー現在のお二人の具体的な仕事内容について教えてください。
空:私は農林水産課で、農林水産土木を担当しています。現在は、企業によるレモン栽培プロジェクトにおける農地整備の担当がメインです。その他、漁港にある桟橋や船の巻上施設など、水産関連施設の維持修繕工事も行っています。
玉井:私は建設課の工務係に所属し、主に道路や河川などの工事発注業務に携わっています。最近では、道路の穴を直すといった日々の維持管理も担当するようになりました。大きな工事では国の補助金を活用することもあり、国や県と調整しながら申請業務を行うなど、デスクワークも多いですね。

「土木技師は子育てしやすい」は本当?イメージを覆す働き方のリアル
ーお二人とも子育てをしながら働かれていますが、「働きやすさ」についてはいかがですか?
空:私は正規職員として入庁する前から、働きやすい職場だと思っていました。15分単位で休暇が取れるので、子どもの急な発熱や学校行事など、どうしても仕事を休んだり、早く帰ったりしなければならない場面で非常に使いやすいです。
実際に転職の際にはシフト制の仕事よりも、市役所で自分の仕事の段取りさえしっかりしていれば、休暇の融通が利きやすく、安心してフルタイムで働けるベストの選択肢だと思っていました。
ー実際に入庁してみて、子育てとの両立はいかがですか?
空:とても働きやすいです。特に私たち土木技師の仕事は、自分が担当する工事のスケジュール管理が基本になるので、個人の裁量にまかせられる部分が多いです。工事の発注期限や工程を守るためにしっかり段取りをしておけば、子どもの用事で「今日は1時間早く帰ります」といった調整がしやすい。
もちろん、会議の時間と参観日が重なってしまったり、子どものお迎えがあるので思う存分残業はできなかったり、という制約はあります。でも、子育てをしながら働くには、とても良い環境だと思います。
ー「土木」と聞くと、男性社会で大変なイメージを持つ人もいるかもしれません。
空:私が江田島市で初めての女性土木技師でした。でも、男性が多いからといって働きづらいと感じたことは一度もありません。むしろ、人間関係もよく働きやすいです。
玉井:一般的に「土木」というと、現場で作業する、というイメージが強いかもしれません。もちろんそういう
業務もありますが、実際は庁舎内で図面を作成したり、工事費を計算したりと、事務的な作業もかなり多いんです。業務内容は専門的ですが、仕事の進め方は事務職と近い部分も大きいと思います。
ー休暇制度なども、気兼ねなく利用できていますか?
空:できています。子どもが急に熱を出して休むことに、何のストレスも感じません。子育て世代にとって一番のネックである「休みづらさ」がないのは、本当にありがたいですね。
図面が形になる感動。街の変化に携わる面白さ
ー最後に、この仕事のやりがいや面白さを教えてください。
空:私たちの仕事は、道路の穴を埋めたり、舗装をきれいにし直したり、日々の小さなことの積み重ねです。でも、住民の方との距離が近いので、「ありがとう、きれいになったね」と喜んでいる姿を直接見ることができる。それが、この仕事の大きなやりがいになっています。
玉井:私は、街が少しずつ変わっていく、そのプロセスに携われるのがすごく面白いと感じています。紙の上の図面が、現場でどんどん形になっていく。普段何気なく見ている道路の側溝や擁壁が、どんな工程を経て完成するのか、その裏側を知ることができるんです。
2011年に移住してきたのですが、私もこの街がより良くなっていく変化に携わりたいという思いがありました。構造物という形で街づくりに貢献できていると感じられることが、今の仕事の一番の魅力です。

―ありがとうございました!
特に印象的だったのは、「土木の仕事は、実は子育てしやすい」という言葉。自分でスケジュールを管理できるからこそ、仕事と家庭のバランスが取りやすいという事実は、多くの子育て世代にとって大きな希望になり、新たな選択肢になるのではないでしょうか。この記事が、多様なキャリアを持つ人々にとって、江田島市役所の土木技師という新たな選択肢を発見するきっかけになれば幸いです。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年11月取材)



