江田島市役所で働く、デジタル改革課の脊戸土井(せとどい)さんと坂本さんのインタビュー記事です。本年度から新設された課で、市のDXを推進するお二人。前例のない仕事への挑戦、住民からの嬉しい反響、そして子育てと両立できる働きやすい環境まで、江田島市役所で働くリアルな魅力とやりがいを語っていただきました。
- Uターンと子育ての両立。民間企業から市役所へ転職した理由
- ゼロからの挑戦。デジタル改革の旗振り役として始まった日々
- 住民の「便利になった」の声が原動力
- 全部署を巻き込むDX。本質はツール導入にあらず
- 「ないなら、創る」。自分たちの手で未来を描く面白さ
- 子育てとの両立も当たり前に。柔軟な働き方を支える職場環境
- コンパクトな組織だからこその一体感
Uターンと子育ての両立。民間企業から市役所へ転職した理由
ーお二人が江田島市役所に入庁されたきっかけを教えてください。
脊戸土井:私は前職ではメーカーに勤務していました。元々地元が江田島市で、Uターンを考えて転職活動をする中でご縁があったのが市役所でした。親が公務員だったので仕事のイメージはしやすく、民間から公務員になることへの抵抗は特にありませんでしたね。
坂本:私は印刷会社の営業をしていましたが、結婚・出産を機に一度退職しました。子どもが保育園に入れるタイミングで、子育てと両立できる働き方を軸に仕事を探す中で江田島市役所を選びました。私自身は隣の呉市在住ですが、祖母が江田島に住んでおり、昔からゆかりのある場所でした。
ゼロからの挑戦。デジタル改革の旗振り役として始まった日々
ーお二人とも民間企業からの転職なのですね。脊戸土井さんは、デジタル分野にはいつから関わっているのですか?
脊戸土井:入庁後、税務課を3年、総務課で選挙管理委員会事務局を4年担当しました。その後、総務課内に「デジタル推進室」が新設され、私も担当になりました。
それまでのデジタル関連業務はシステムの「保守」がメインでしたが、私が担当になったタイミングで「DXに力を入れる」という方針も加わり、計画策定などを担うことになりました。そこから3年経験を積み、今年度から独立した「デジタル改革課」に所属しています。

ー坂本さんはいかがですか?
坂本:私は入庁後すぐに産休・育休を取得し、復帰後は総務課や議会事務局を経験しました。その後異動した会計課で、デジタル推進室(当時)と連携して業務改善に取り組んだのが大きな転機になりました。現場の課題をデジタルの力で解決していく面白さを知る中で、今年度からデジタル改革課に加わることになりました。
ーまさに市のDXの黎明期から関わってこられたのですね。当時は何から着手されたのですか?
脊戸土井:まずは今後5年間の市の方針を示す「デジタルビジョン」の策定から始めました。ただ、計画だけでは市民の方には変化が伝わらないため、何か目に見える成果を出したいと考え、当時まだなかった市の「LINE公式アカウント」の立ち上げにも並行して着手しました。
ービジョンではどのような目標を掲げたのでしょうか。
脊戸土井:大きく3つの柱を立てました。一つ目はLINEなどを活用した「市民の利便性向上」、二つ目はRPAなどを活用した「市役所業務の効率化」、そして三つ目が市民向けのスマホ教室や子ども向けのプログラミング教室などを通じた「デジタル人材の育成」です。
住民の「便利になった」の声が原動力
ーLINEを立ち上げた際の反響はいかがでしたか?
脊戸土井:初めての試みだったので「本当に使ってもらえるだろうか」という不安はありました。最初は「ごみ出しカレンダー」や「確定申告の相談予約」といった機能から始めたのですが、市民の方から「すごく便利になった」といった声を直接いただけたんです。自分たちが作ったもので感謝の言葉をいただけたのは、本当に嬉しかったですね。

ー住民の方の反応がダイレクトに感じられるのは、大きなやりがいですね。
脊戸土井:そう思います。行政の仕事で、このように自分たちでサービスを開発して世に出し、市民の方から直接評価をいただくという経験はなかなかできません。前例のないことに挑戦するのはもちろん大変ですが、それ以上に大きなやりがいと面白さを感じています。
全部署を巻き込むDX。本質はツール導入にあらず
ー坂本さんが先に仰っていた、会計課でのデジタル推進室と連携された経験について教えて下さい。
坂本:会計課は手作業や紙でのやり取りが多く、異動してきた当初は本当に驚くほどでした。このため、連携後は気づいた課題を片っ端からデジタル推進室に要望として伝えていきました。そして1つずつそれを解決していき、業務が劇的に改善されました。

脊戸土井:実際にこの会計課の案件は、学びの多い経験でした。県の外部専門家(CIO補佐官)の方とも相談しながらRPAという自動化ツールを導入しましたが、重要だったのは単にツールを入れることではありませんでした。
例えば、長年続いていた行程はデジタル化を模索する中で最終的にそれ自体を廃止することもありました。「今までこうやってきたから」という理由だけで続いている業務は、どの組織にもあると思います。そういった無駄を削ぎ落とした上で、本当に必要な部分にデジタルツールを活用する。このプロセスがDXの本質だと改めて実感しました。
「ないなら、創る」。自分たちの手で未来を描く面白さ
ー坂本さんは現在、デジタル改革課でどのようなお仕事をされていますか?
坂本:市の公式LINEの機能構築などを担当する傍ら、次の5ヵ年計画となる「次期デジタルビジョン」の策定を主担当として進めています。今回はLINEも活用して市民アンケートを実施し、550件もの貴重なご意見をいただきました。皆さんの声を反映させながら、次の計画を作っている真っ最中です。

ー今後の計画で、特に力を入れていきたい分野はありますか?
坂本:「デジタル人材の育成」です。現在、民間企業と連携し、保育園から高校生まで一貫したプログラミング教育を提供するプロジェクトを企画しています。江田島市ならではの教育の強みを作っていきたいですね。
この仕事の面白いところは、決まった仕事をこなすのではなく、「何をするか」から自分で考えられる自由度の高さです。自分たちの想いを形にできる、非常にやりがいのある部署だと思います。
子育てとの両立も当たり前に。柔軟な働き方を支える職場環境
ー子育てとの両立を重視して入庁されたとのことですが、実際の働きやすさはいかがですか?
坂本:とても両立しやすいです。子育て中や子育て経験者がいる職場なので、子どもの急な体調不良などで休むことにも非常に理解があります。有給休暇やリモートワークも活用でき、「頑張って両立させている」という感覚はなく、ごく自然に仕事と家庭を両立できていますね。
脊戸土井:私も子の看護休暇などをよく取りますが、職場内の理解には本当に助けられています。今の企画業務は自分のペースで仕事を進めやすいので、そういった面でも働きやすいと感じています。
コンパクトな組織だからこその一体感
ー最後に、江田島市役所で働くことの魅力を教えてください。
坂本:江田島市は職員数がそこまで多くない分、職員同士の距離が近く、一体感があります。何気ない雑談から新しい仕事のアイデアが生まれることもあり、この風通しの良さは小規模な自治体ならではの大きなメリットだと思います。
脊戸土井:職員の意識改革など、まだ課題はありますが、この数年で各部署から寄せられる「もっと業務を良くしたい」という相談件数は右肩上がりに増えています。着実に変化が生まれていることを肌で感じています。
前例のないことに挑戦し、自分たちの手で地域をより良くしていく。そんなやりがいを感じたい方にとって、江田島市役所は最高の職場だと思います。
ー本日はありがとうございました。
先進的なDX推進と、子育てにも理解のある温かい職場環境が両立している点は、江田島市役所の大きな魅力だと感じました。変化を楽しみ、自らの手で未来を切り拓きたい。そんな想いを持つ方に、ぜひこの記事が届けばと願っています。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年10月取材)



