広島県江田島市役所で働く佐々木さんと山根さんのインタビュー記事です。主任介護支援専門員の資格を活かして転職した佐々木さんと、高校卒業後に地元で就職した山根さん。高齢介護課の異なる係で奮闘するお二人に、新人ならではの体験や中途入庁からの苦労、地域に深く入り込む支援のやりがい、そして江田島市ならではのあたたかい職場の魅力について、語っていただきました。
- 高齢化率50%の島へ。資格を活かした転職と、19歳での地元就職
- 用語すら分からない手探りの1年目。先輩のマンツーマン指導で得た成長
- 中途入庁の壁。自ら動いて築いた、地域の事業者との「顔の見える関係」
- 島ならではの深い人間ドラマ。その人の「歴史」に寄り添う支援のやりがい
- 見える形で休む上司と、イベントに挑戦したい若手。それぞれの働き方と未来
高齢化率50%の島へ。資格を活かした転職と、19歳での地元就職
ーまずは簡単な自己紹介と、江田島市役所に入庁した経緯をそれぞれ教えてください。
佐々木: 福祉保健部の高齢介護課、地域包括支援センターに所属しています。入庁して3年目になります。 元々は広島県内の別の役場で事務職をしていましたが、私自身が「主任介護支援専門員(ケアマネジャー)」の資格を持っており、その資格をしっかりと活かせる地域包括支援センターで働きたいと考え、転職を決意しました。
江田島市は高齢化率が50%近くあります。これまで培ってきた専門知識や経験を、より高齢者支援のニーズが高く、必要とされている場所で還元したいという強い思いがあり、江田島市を選びました。現在も呉市から江田島市へ通勤しています。
山根: 同じく高齢介護課の介護支援係に所属している山根です。現在21歳で、入庁2年目になります。元々は警察官になりたいという気持ちもあったのですが、「やっぱり地元で働きたい」という思いが強くなり、高校卒業後に公務員専門学校で1年間学んだ後、19歳で江田島市役所に入庁しました。
ー市役所の仕事に対して、どのようなイメージを持っていましたか?
山根: 市民生活課で住民票やマイナンバーの受付をするような窓口業務のイメージはありましたが、今配属されている高齢介護課や、介護保険についての知識は全くなく、自分がどんな仕事をするのか全くイメージがついていない状態でのスタートでした。

用語すら分からない手探りの1年目。先輩のマンツーマン指導で得た成長
ー山根さんは現在、介護支援係でどのようなお仕事をされているのでしょうか?
山根: 1年目は、主に介護保険の「認定」に関する事務を担当していました。高齢者の方が介護サービスを使いたいとなった際に必要となる「要介護度」を決めるための仕事です。 具体的には、認定調査員の方が調べた体の状態の調査結果と、主治医の先生の意見書をもとに、介護認定審査会で介護度を決定していくプロセスを管理する事務になります。
2年目の10月からは担当が変わり、現在は介護保険料の業務を行っています。
ー全く知識がない状態から、どのように仕事を覚えていったのですか?
山根: 最初は本当に大変でした。そもそも「介護保険とは何か」すら分からなかったので。 でも、同じ係の先輩が私に一対一でついてくださり、「介護保険とは」という基礎の基礎から、申請を受け付けて結果が出るまでの事務の流れまで、一つひとつ丁寧に教えてくださいました。

ー用語や仕組みが分かると、仕事への向き合い方も変わってきそうですね。
山根: そうですね。意味が分かるようになってからは、市民の方からのご質問にも自分で説明できるようになり、少しずつ自信がついてきました。 2年目になり、去年の自分がやった資料を見返した時に「こういう意味で処理していたんだな」と深く理解できる瞬間があり、そこで自分の成長をしっかりと実感することができました。
一歩ずつでも着実に知識が身につき、地元の方々の生活を支える制度を運用できていることに、静かなやりがいを感じています。
中途入庁の壁。自ら動いて築いた、地域の事業者との「顔の見える関係」
ー佐々木さんは、地域包括支援センターでどのようなお仕事をされているのですか?
佐々木: 私は主に、住民の方からご相談を受けた際に、適切な部署やサービスへ「繋ぐ」仕事をしています。 江田島市の地域包括支援センターは市が直営で運営しており、保健師、社会福祉士、そして私のような「主任介護支援専門員」が必須の専門職として配置されています。要支援の認定を受けた元気な方への個別支援としてプランを作成したり、地域のケアマネジャーさんの後方支援を行ったり、担当の方とご自宅を訪問して回るなど、常に外に出ていることが多い仕事ですね。

ー前職と比べて、働き方に違いはありますか?
佐々木: 前職は車で10分走れば隣の町に着いてしまうような環境でしたが、江田島市は端から端まで移動するのに30分以上かかります。移動時間に取られる部分はありますが、「まずは現場に行ってみる」というフットワークの軽さを大切にしています。
ー中途採用で全く新しい環境に入り、人間関係を築くのは大変ではありませんでしたか?
佐々木: ぶっちゃけて言うと、最初は遠慮されているな、という時期がありました(笑)。私の前任者がいなかったこともあり、引き継ぎもなく自分で仕事を組み立てていく必要があったんです。
私たちの仕事は、自分一人では完結せず、地域の事業者さんや医療機関など、他の人に協力してもらって初めて成り立つ仕事です。だからこそ、庁内ではどんな仕事でも引き受けて顔を売り、「この人に頼めば何とかなるかも」と思ってもらえるようにあちこち顔を出しました。
ー地域の事業者さんとの関係はどのように築いていったのですか?
佐々木:私の中では、事業者や医療機関との関係を自ら深めていくことを目標に動いています。待っているだけではなく、自ら地域の中に飛び込んで「顔の見える関係」を作っていくことが、この仕事では何よりも重要だと感じています。
島ならではの深い人間ドラマ。その人の「歴史」に寄り添う支援のやりがい
ーお二人が働く中で感じる、江田島市ならではの魅力や仕事の面白さはどんなところでしょうか?
佐々木:江田島市に来て一番感じるのは「土地と人が深く繋がっている」ということです。 ご自宅を訪問してお話を聞いていると、その方の畑や、近所付き合い、海での生業など、「その人の歴史」に沿って今の生活があることが伝わってきます。
介護保険制度に当てはめることだけを考えるのではなく、「この方のこれまでの生活や歴史を大切にしながら、どうやって地域での暮らしに戻していくか」を深く考えるようになりました。

ーその方の人生そのものに寄り添うのですね。
佐々木: ええ。先日も、車も通らないような細い坂の上にある一軒家を訪問した際、何回か通ううちに、その方が「こっから見える景色がすごく好きなのよ」と、宮島の裏側や対岸の広島市が見渡せる、とっておきの美しい景色を私に見せてくれたんです。
生産年齢人口の減少など受け入れ先の確保という厳しい課題はありますが、だからこそ自分自身の「人間力」が試され、成長させてもらえる環境だと感じています。
ー山根さんは、職場の環境や雰囲気についてどのように感じていますか?
山根: 入庁前は「市役所=厳しくて硬い場所」というイメージがありましたが、実際に入ってみると非常に和やかな雰囲気で驚きました。 高齢介護課は私と佐々木さん以外は全員女性で、年齢層も私よりずっと上の方ばかりです。
時々ジェネレーションギャップを感じることもありますが(笑)、仕事の相談をすれば皆さん本当に優しく丁寧に教えてくださいます。人間関係の良さや、居心地の良さは強く感じていますね。
見える形で休む上司と、イベントに挑戦したい若手。それぞれの働き方と未来
ーお休みや残業など、ワークライフバランスについて教えてください。
山根: 残業はほとんどありません。月に数回、夜に行われる介護認定審査会に割り振られた時だけは残る必要がありますが、日常的な残業は少ないです。 有給休暇については、私自身がまだ「早く仕事を覚えたい」という気持ちや、効率的に業務を組み立てるスキルが不足していることもあり、あまり多くは取得していませんが、取りやすい環境であることは間違いありません。
佐々木: 私の場合は、日中は他の職員さんや事業者さんの話を聞いたり調整したりすることが多いため、夜に自分の事務作業をする時間がどうしても発生し、そこそこ残業はしています。ただ、強弱があるので全く負担には感じていません。
お休みに関しては、「この日は休むから!」と事前に宣言して、お互い様に支え合える空気づくりを心がけています。
ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年2月取材)
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年齢も経歴も全く異なるお二人ですが、それぞれの持ち場で「地域の人々のために何ができるか」を真摯に探求する姿が非常に印象的なインタビューでした。



