「歴史が好き」。その想いを仕事にしたいけれど、試験への不安や自信のなさから、一度は諦めかけた公務員の道。彼女の背中を押したのは、地元・南九州市でのある「実習体験」でした。
一般事務職として入庁し、現在は念願の文化財課で地域の宝を守る上赤さん。「数字が苦手」「ビジネスマナーも不安」という等身大の悩みをどう乗り越え、どんなやりがいを見つけたのか。
文化財保護の現場のリアルと、温かな職場の魅力に迫ります。
- 歴史への愛着と、公務員試験に挫折しかけた学生時代
- 南九州市への受験と、入庁前の等身大の不安
- 念願の文化財課へ配属。武家屋敷の保存管理からSNS発信まで担う多岐にわたる業務
- デスクワークだけではない「現場」の面白さと、「お堅い」イメージを覆す温かい職場
- 「自分には無理かも」と諦めないで。温かなサポートの中で成長できる南九州市
歴史への愛着と、公務員試験に挫折しかけた学生時代
ーまずは、上赤さんのご経歴と、公務員の道を意識したきっかけについて教えてください。
上赤:出身はここ南九州市です。実は中学生くらいの頃から歴史が好きで、漠然と「将来は博物館で働けたらいいな」と思っていました。
高校生になり、先生から「歴史や文化財に関わる仕事というのは、博物館だけでなく行政職の中にもあるんだよ」と教えていただいたことがあって、その頃から公務員の道を意識しました。
大学も県内の志學館大学に進学し、人間関係学部の人間文化学科で歴史地理コースを専攻しました。
そこでは主に日本史を専門的に学びながら、博物館学芸員の資格取得も目指して勉強に励んでいました。
ーでは、最初から一貫して、公務員として文化財に関わる仕事を目指して就職活動をされていたのですか?
上赤:いえ、実はそうでもないんです。大学に入っていざ就職活動の時期が近づくと、周りの学生が公務員試験に向けてものすごい熱量で猛勉強している姿を目の当たりにして、その雰囲気に正直圧倒されてしまったんです。
「自分にはちょっと無理かもしれない」と挫折しかけてしまって、大学3年生の頃は一時期、公務員ではなく民間企業への就職を考えたりもしていました。
ーそこから再び公務員を目指そうと決意されたきっかけは何だったのでしょうか。
上赤:大学3年生の時に参加した「学芸員実習」が本当に大きな転機になりました。
学芸員の資格を取るためには実習が必要なのですが、私は地元の南九州市にある「ミュージアム知覧」で実習をさせていただくことになったんです。そこで1週間ほど現場に入らせていただいたのですが、その経験が私の考えをガラリと変えました。
文化財そのものの魅力はもちろんですが、何よりそこで働いている職員の方々の姿がとても素敵だったんです。そこから迷いは消え、民間への就職はやめて、南九州市一本に絞って目指すことに決めました。

南九州市への受験と、入庁前の等身大の不安
ー南九州市の採用試験はどのような内容でしたか?
上赤:私は専門職としての採用ではなく、一般事務職として受験しました。
1次試験は9月に筆記試験(SCOA)があり、2次試験は10月末に集団討論と面接がありました。
面接は個人面接だったのですが、広い部屋に市長や副市長、教育長といった市のお偉い方々が5人くらいズラッと横に並んで座っていらっしゃって、その対面に受験者用の椅子が一つ置いてあるような状況でした。
あの時の緊張感はすごかったですね(笑)。
ーそれは想像するだけで緊張しますね(笑)。無事に合格され、入庁までの間はどのようなお気持ちで過ごしていましたか?
上赤:そうですね、嬉しさはもちろんありましたが、不安の方が大きかったかもしれません。
まず、市役所の一般事務職として採用されるので、必ずしも希望していた文化財課に配属されるとは限りません。3月末の辞令交付まで自分がどこの課になるのか分からないのが一番の不安でした。
それに、お恥ずかしい話なのですが、私は昔から数字やお金の計算がものすごく苦手で…(笑)。「もし財政課や税務課のような、数字を扱う部署に配属されたらどうしよう、絶対に迷惑をかけてしまう」と、入庁の日までずっとビクビクしていました。
ー学生の方にとって、配属先や実務への不安は尽きないですよね。社会人としての基礎スキルについてはどうでしたか?
上赤:そこもすごく自信がなかったです。パソコンのスキルも高くなかったですし、敬語の使い方やメールの書き方といったビジネスマナーなど、社会人として当たり前のことができるかどうか、本当に不安だらけでした。
期待以上に、「他の職員の方に迷惑をかけないか」「うまくやっていけるだろうか」というドキドキの方が強かったのを覚えています。

念願の文化財課へ配属。武家屋敷の保存管理からSNS発信まで担う多岐にわたる業務
ーそんな不安を抱えながらのスタートでしたが、配属先は希望通りの文化財課になったそうですね。
上赤:はい! 本当に幸運なことに、第一希望だった文化財課に配属されました。
現在は主に、国の重要伝統的建造物群保存地区にも選定されている「知覧武家屋敷群」の管理や保存活用に関わる業務を担当しています。
また、文化財の修理や工事に関する調整、国への補助金申請といった事務作業も重要な仕事です。
さらに最近力を入れているのが広報活動です。南九州市の公式LINEで毎週水曜日に「LINEミュージアム」というコーナーを担当していて、市内の文化財を紹介する記事を配信しています。
また、「日本遺産」のPRイベントがあれば県外へ出張に行って南九州市の魅力をアピールしたりもします。
ミュージアム知覧での窓口対応や、市民の方からの問い合わせ対応などもあり、業務内容は本当に多岐にわたります。

ー事務職といっても、ずっと座っているわけではないのですね。1日のスケジュールはどのような感じなのでしょうか。
上赤:日によって全く違うのですが、例えばある一日は、午前中は武家屋敷などの現場に出向きます。
そこで造園業者さんや工事業者さんと会って、庭木の剪定状況や、修復工事の進捗確認を行います。現場で実際の物を見ながら打ち合わせをするのはとても勉強になります。
そして午後は庁舎に戻ってデスクワークです。現場で確認した内容をもとに報告書を作ったり、国への補助金申請書類を作成したりします。
また、市民の方からのメールや電話での問い合わせに対応したり、先ほどのLINE記事の作成を行ったりもします。
お昼休みには交代でミュージアムの受付に入ることもありますし、本当に一日があっという間に過ぎていきますね。

デスクワークだけではない「現場」の面白さと、「お堅い」イメージを覆す温かい職場
ー実際に働いてみて、入庁前に抱いていたイメージとのギャップはありましたか?
上赤:はい、とても良い意味でのギャップがありました!
入庁前は、公務員の仕事といえば「朝から晩まで静かなオフィスでデスクに座って、黙々とパソコンに向かっている」というイメージを持っていたんです。
でも実際は、先ほどお話ししたようにかなり外に出ることが多いんです。現場確認に行ったり、地域の方と話し合いをしたりと、あちこち飛び回っています。
歴史ある現場の空気を肌で感じながら仕事ができるのは、私にとってすごく楽しい時間です。
ー職場の雰囲気についてはいかがですか? 入庁前に心配されていた「数字への苦手意識」や「ビジネスマナーへの不安」は解消されましたか?
上赤:それも良いギャップでした。役所ってすごく「お堅い」場所だと思っていたんですが、実際はすごくフランクで驚きました。
上司や先輩方も本当に優しくて、入庁したての私が不安そうにしていると、「何か分からないことがあったらすぐ言ってね」「大丈夫?」と頻繁に声をかけてくださるんです。
数字が苦手なことも、パソコン操作が未熟なことも、先輩方が一から丁寧に教えてくださり、安心して質問もできる環境があります。
また、文化財課だけでなく他課の方とも連携して仕事をする機会が多いのですが、皆さん協力的で、組織全体として風通しが良い職場だなと感じています。
入庁前のビクビクしていた自分に、「そんなに心配しなくて大丈夫だよ」と言ってあげたいくらいです(笑)。

「自分には無理かも」と諦めないで。温かなサポートの中で成長できる南九州市
ーそれは心強いですね。最後に、これから公務員を目指す方や、南九州市を受験しようと考えている方へメッセージをお願いします。
上赤:私自身、公務員試験の勉強に挫折しかけたり、入庁前にたくさんの不安を抱えていたりしました。でも、南九州市役所は、働く環境としても、そして暮らす場所としても、とても温かくて良いところです。
私のように「自分には無理かも」と自信がなくても大丈夫です。周りの先輩方が本当に優しくサポートしてくれますし、失敗を恐れずに挑戦させてくれる土壌がありますので、安心して飛び込んできてください。
「南九州市の良いところを多くの人に知ってもらいたい」「地元を盛り上げたい」という方と一緒に、この南九州市で働ける日を楽しみにしています!

ー本日はありがとうございました。
「歴史が好き」。上赤さんの語り口調から、そのことが切実に伝わる取材でした。
入庁前の不安を「ビクビクしていました」と笑顔で振り返ることができるのは、今の職場がいかに温かく、彼女を受け入れているかの証でしょう。また、デスクワークだけでなく、地域や県外に飛び回るお仕事について生き生きと話されている姿も、非常に印象的でした。
歴史という静かな時間の流れの中で、彼女自身が等身大で悩み、そして成長し続けることを心より願っています。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年11月取材)



