香川県丸亀市役所で働く重成さんのインタビュー記事です。民間施設での高齢者介護や東京でのヘルパー経験を経て、丸亀市初の「社会福祉士」枠で入庁。
地域包括支援センターや東日本大震災での石巻市派遣、障害福祉を経験し、現在はこども家庭センターで担当長として活躍しています。行政ならではの介入支援の難しさから、庁内を横断する連携、そして充実したワークライフバランスまで、福祉業務のリアルを語っていただきました。
「来てくれてありがとう」から「介入支援」へ。行政の福祉が担う最後の砦
ーこれまでのご経歴から教えていただけますか?
重成: 2010年入庁の16年目です。地元が丸亀市で、前職は、高齢者施設での介護やヘルパーの仕事でいくつかの職場を経験しています。特に東京にいた頃は、表参道を自転車で走り回って家庭訪問をするヘルパーの仕事もしていました。そうやって現場で5年ほど仕事をした後、地元である丸亀市に戻ってくることになり、丸亀市役所に社会福祉士として入庁しました。
ー丸亀市初の社会福祉士として入庁され、最初はどのような部署に配属されたのですか?
重成: 最初は、高齢者の相談やケアマネジメントを行う「地域包括支援センター」に配属されました。そこは保健師や主任ケアマネージャーの先輩方がいらっしゃる、専門職ばかりの環境でした。
丸亀市としても社会福祉士を採用するのが初めてだったので、先輩方は「社会福祉士が来て、何をするのかな」と思われていた部分があったかもしれません。でも、一緒に働く中で、たくさんのことを教えていただきながら、社会福祉士としての役割について認識してもらえるようになりました。
ー行政の福祉業務で、特に難しさを感じたのはどのような点でしょうか?
重成: 最も驚いたのは、「介入的な支援」が必要になるケースがあることです。これまでの介護現場の仕事では、利用者の方がサービスを希望してくださり、「来てくれてありがとう」と感謝されるのがほとんどでした。
しかし、行政の役割には、例えば虐待への対応など、相手が「関わらないでくれ」「来て欲しくない」と拒絶する状況でも、介入していかなければならない場面があります。ご本人の権利を守るための「権利擁護」の視点が求められるのですが、そうした厳しい対応を行政が担っているとは知らなかったので、最初はとてもびっくりしましたし、重みを感じました。
ー感謝されるだけではない、非常に責任の重い仕事ですね。そうした困難なケースにはどのように向き合っているのですか?
重成: 権利擁護や虐待対応の業務は、どの部署に行っても関わってくる行政の重要な役割です。ご本人が安心して安全に地域で生活できるように、時には環境を整えたり、いざという時には避難の措置を取ったりすることもあります。行政は法律で位置づけられた「最後の砦」として動かなければなりません。
そうした重い責任があるからこそ、職場の中で「絶対に自分一人で抱え込まないこと」を大前提としています。「みんなで考えよう」「チームで対応しよう」という方針がどの部署にも根付いているので、一人で抱え込まずに済んでいるのは本当にありがたいですね。

石巻市への派遣と広がるキャリア。社会福祉士同士の横のつながり
ー入庁されてから、どのような部署を経験されてきたのでしょうか?
重成: 地域包括支援センターで7年働いた後、東日本大震災の復興支援として、宮城県の石巻市へ1年間派遣されました。そこでは「生活再建支援課」に配属され、仮設住宅にいらっしゃる被災者の方々の再建支援業務に携わりました。 その後、丸亀市に戻ってきてからは福祉課の「障がい福祉担当」に5年在籍し、現在は「こども家庭センター」でこどもの相談や支援に携わって3年目になります。高齢者、障がい、こどもと、福祉の主要な分野を経験してきました。
ー幅広い分野を経験されているのですね。丸亀市役所の中で、社会福祉士の人数は増えているのでしょうか?
重成: はい。私が入庁した時は2人でしたが、その後は定期的に採用が続き、現在では10名以上の社会福祉士が在籍しています。20代から40代まで幅広い年代の職員がおり、高齢者や障がい、こどもの部署だけでなく、重層的支援を担う地域共生の部署など、様々な場所で活躍しています。
ー社会福祉士の方が各部署にいらっしゃることで、どのようなメリットがあると感じますか?
重成: 近年は、一つの部署だけでは解決できない複合的な課題を抱えるご家庭が非常に増えています。例えば、「高齢の親の介護問題の裏に、障がいを持つこどもや、引きこもりの孫がいる」といったケースです。そうした時に、各部署にいる社会福祉士同士が中心となって連携し、情報を共有しながらスムーズに調整ができるんです。
社会福祉士は、地域資源を知り、新たな資源を作り出し、そして関係機関を「つなぐ」コーディネートの役割を持っています。庁内外の連携の要として、福祉的な視点からアプローチできるのが強みだと思います。
ー各部署に散らばっている社会福祉士の皆さんが、情報共有をするような機会はあるのでしょうか?
重成: 2、3ヶ月に1回、庁内の社会福祉士が集まる研修会を開き、情報交換の場を設けています。ざっくばらんに悩みを打ち明けたり、他の部署がどんな仕事をしているのかをリアルに共有したりしています。特に異動経験のない若手にとっては、他部署の業務を知る貴重な機会になりますし、顔を合わせておくことで、いざという時に「あの人に相談しよう」と言いやすい関係性が作れていると思います。
仕事のやりがいとワークライフバランス
ーお休みや残業など、ワークライフバランスについてはいかがですか?
重成: 目標は「定時で帰って、趣味も楽しむこと」です。部署や時期によっては忙しいこともありますが、基本的には自分で仕事の調整をして、あらかじめ「この日は休みたいです」と伝えておけば、しっかりと休みを取ることができます。
連休を取って旅行に行くことも十分に可能です。 また、小さな子どもがいる職員が急に休まなければならない時や、私のように親の通院などで休む時も、周りが「しょうがないよね、お互い様だよね」と支え合える雰囲気があります。あらかじめ予定を共有しておけば休めるので、とても働きやすい職場だと感じています。
ー行政の社会福祉士として働く中で、最もやりがいを感じるのはどんな時ですか?
重成: どの部署にいても共通して言えることですが、支援の対象となった方からポジティブなフィードバックをいただけた時が一番嬉しいです。 例えば、現在のこども家庭センターでは保護者の方のお話をじっくり聞くことが多いのですが、「子育てがすごくしやすくなった」「こうなって良かった」と言っていただけると、本当にやっていて良かったと感じます。
そして何より、最初は関係性が微妙だった方と少しずつ信頼関係が築けて、心を開いてくださり、その方の生活や育児の状況が良い方向へ変わっていった時ですね。私たちの仕事はすぐに結果が出るものではありませんが、その人らしい生き方を少しでも支えられたと感じる瞬間が、最大のやりがいです。
ー最後に、これから丸亀市役所の福祉職を目指す方へ、どのような方と一緒に働きたいかメッセージをお願いします。
重成: 私が大切にしている言葉に、「熱いハートと、クールな頭」というものがあります。福祉の仕事をしていると、どうしても対象者の方への思い入れが強くなり、感情だけで突っ走ってしまいそうになることがあります。しかし、行政として支援を行う以上、冷静な状況判断と的確な情報収集に基づいたアプローチが不可欠です。 相手に寄り添う温かい気持ちを持ちながらも、客観的な視点で物事を見極められる方と一緒に働けたら嬉しいですね。
私自身、突っ走ってしまいそうな時に「ストッパー役」になってくれる仲間に何度も助けられてきました(笑)。 難しいケースにも一人で立ち向かうのではなく、チームで助け合い、喜びも悩みも分かち合える温かい環境が丸亀市役所にはあります。皆さんと一緒に働ける日を楽しみにしています!

ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年1月取材)
民間での介護経験から、丸亀市初の社会福祉士として行政の世界に飛び込んだ重成さん。インタビューを通じて、行政が担う「介入支援」や「権利擁護」という責任の重さと、それに立ち向かうための「一人で抱え込まないチームワーク」の重要性がひしひしと伝わってきました。



