「とりあえず地元に戻って公務員になってみて、ダメならそのとき考えればいい——そんな感じで受けた試験でした」
そう笑いながら語るのは、黒石市役所財政課で働く藤田さん。弘前市出身、仙台の大学を卒業後、新卒で黒石市に入庁しました。都市建築課での3年間、国土交通省東北地方整備局への2年間の出向を経て、今年4月から財政課へ。軽い気持ちで踏み出したはずのキャリアが、国と市町村の橋渡しという大舞台へと繋がっていました。
今回は、公務員・自治体職員として働くことを考えている方に向けて、黒石市での仕事内容、国交省出向で得たもの、職場の雰囲気について、たっぷりとお話を伺いました。
- バスケ漬けの学生生活、コロナ禍の就活。「とりあえず」の公務員試験
- 技術職っぽい部署に配属。都市建築課の3年間で身についたこと
- 「ワクワクの方が勝った」。国交省出向で見た、別世界のスピードと人材
- 少人数でも頼れる仲間がいる。財政課の仕事と、働きやすい環境
- 「あずましの里」で、あなたらしいキャリアを
バスケ漬けの学生生活、コロナ禍の就活。「とりあえず」の公務員試験
ーまず、入庁までの経緯を教えてください。
藤田:小学2年生からバスケを続けていて、大学もスポーツ特待で仙台に行ったんです。学科は教養学部の言語文化学科で英語や韓国語を学んでいたんですが、大学生活の9割くらいはバスケに費やしていました。
特にこれをやりたいという強い夢もなくて、就活のタイミングがちょうどコロナ禍と重なったこともあって……とりあえず地元に戻って安定した仕事に就こうと、大学3年生のときに公務員試験の対策講座を申し込んだのがきっかけです。
ー民間企業は受けなかったんですか?
藤田:受けなかったですね。性格的に「一旦やってみて、ダメならそのとき」みたいなところがあって。とりあえず公務員試験を受けて、受かったら入ってみようと思っていました。
黒石市を選んだのも、黒石市は1次試験がSPI3なので受けやすかったというのが正直なところです(笑)。ほかの町役場からも最終合格をいただいていたのですが、より幅広い行政分野を経験できる環境で社会人の基礎を身につけたいと思い、市を選びました。
ー入庁前後で、公務員へのイメージにギャップはありましたか?
藤田:入った当初は思っていた通りでしたね。ただ、出向を経て今振り返ると、公務員って堅苦しいとかルーティンワークが多いとか、前年と同じことをなぞるだけというイメージがあると思うんですが、実際は全然そんなことはなくて。自分で考えて動く余地が思っていたよりも大きくて、その点は向いているなと感じています。

技術職っぽい部署に配属。都市建築課の3年間で身についたこと
ー最初の配属は都市建築課だったんですね。
藤田:そうなんです。配属を知ったのは入庁1週間ほど前に封筒で届いた通知でして、「都市建築課」という字面を見てもまったくイメージが湧かなくて(笑)。
事務職で入ったのに技術職っぽい部署ですし、どう調べても自分が何をする仕事なのかなかなか出てこない。入庁後も、知らない単語が飛び交う環境に最初は不安を感じましたね。
ー具体的にはどんな業務をされていたんですか?
藤田:主には都市計画関連の窓口業務です。用途地域や建ぺい率・容積率の案内、建築関係の届出受付、公園使用申請の対応といった内容が中心でした。それに加えて、3年間を通して景観業務の主担当をさせていただきました。
建物や屋外の看板が景観形成基準に照らして黒石の町並みにふさわしいかどうかを確認したり、市内の小学校で景観学習教室を開くための調整役を担ったりと、結構やりがいのある仕事でしたね。
ーその3年間で身についたと感じることはありますか?
藤田:まず、専門用語が飛び交う部署だからこそ、窓口に来た方や電話の相手には専門用語を使わずに分かりやすく伝える力の大切さを痛感しました。
あとは、都市計画という仕事柄、目の前のことだけでなく、今の仕事が何年先にどう繋がるかという長期視点で物事を見る感覚。それから、目の前の相手にとっての最適だけが正解ではなくて、常にまち全体を考えて、みんなが納得できる落としどころを探す姿勢も、この部署での温かい環境の中で育ててもらったなと感じています。

「ワクワクの方が勝った」。国交省出向で見た、別世界のスピードと人材
ー国交省東北地方整備局への出向は、どのように決まったんですか?
藤田:入庁3年目の11月ごろ、人事担当から「東北地方整備局に行ってみないか」と声がかかりました。大学が仙台だったので土地勘があったこともあり、性格的に「一旦やってみよう」という気持ちが強くて、不安よりワクワクの方が勝ったんですよね。
正直、配属先が何をする部署なのかも知らないままオッケーしたと思います(笑)。
ー業務の内容も教えていただけますか?
藤田:整備局のポジションは、霞が関の本省と東北各県庁・政令市の間に立つ役割です。まちづくりに関する補助金・交付金を要望するために各市町村が作る「都市再生整備計画」の中身を確認して、内容について助言したり、ほかにもさまざまな照会・調査における東北全体の取りまとめをして本省に返したりという業務を担っていました。
本省の意図と市町村の意図を両方くみ取りながら、うまく橋渡しする仕事でしたね。
ー実際に行ってみていかがでしたか?
藤田:行ってすぐは、1日に届くメールの量や業務の進むスピード感がまったく違って、圧倒されました。ただ、何より、飛び交っている会話すべてが学びになる感覚がありましたね。
本省からの出向、民間からの出向、各自治体からの出向とさまざまな立場の人が集まっていて、係が違っても互いの知識を持ち寄ってサポートし合う空気がすごくて。「こういう上司になりたいな」と思える人が本当にたくさんいて、毎日が楽しかったです。
また、広域をまとめる業務を経験したことで、市民と一番近いところで仕事ができる市町村職員の仕事の面白さが、以前より鮮明に見えるようになりましたね。
少人数でも頼れる仲間がいる。財政課の仕事と、働きやすい環境
ー現在の財政課での業務を教えてください。
藤田:財政課は、主に市の予算編成と決算のとりまとめを担う部局です。私は地方交付税の担当をしていて、市の財源の中で最も大きい割合を占める地方交付税をしっかり確保するために、さまざまな資料や制度を調べながら県をとおして総務省とやり取りをしています。
また、各課から相談を受ける場面も多くあり、予算外で突発的な支出が必要となった場合など、各課の事情をくみ取りながら、限られた財源の中で最善の手を一緒に考えています。
ー職場の雰囲気はいかがですか?
藤田:財政課は課長を入れて5人の少人数の課で、風通しがとてもいいです。数字に強くて知識の深い先輩ばかりで、業務で行き詰まったときにかしこまって相談しなくても、すぐに飛んできて一緒に考えてくださるので、何のストレスもなく取り組めています。
ー残業や休暇の取りやすさについてはいかがでしょう?
藤田:財政課は秋冬が一番忙しいピークなのでまだその時期を経験していないのですが、今の時点ではほぼ定時で、年次有給休暇もしっかり取得しています。先を見越して計画的に業務を進められれば、プライベートとメリハリをつけて働ける仕事だと感じています。

「あずましの里」で、あなたらしいキャリアを
ー最後に、黒石市や公務員を目指す方へメッセージをお願いします。
藤田: 黒石市には「あずましの里」というキャッチコピーがあって、「あずましい」は津軽弁で「居心地がいい」という意味です。私は黒石育ちではないからこそ、この穏やかでゆったりした空気を肌で感じていて、ぜひ一度来て体感してほしいと思っています。
地元かどうかは関係ありません。それと、大学で専門的なことを学んだ方であっても、自治体の仕事は想像以上に幅が広くて、どんな知識や経験も必ず活きる場面があります。「公務員は自分には関係ない」と思っている方こそ、ぜひ一度選択肢に入れて、黒石市の門を叩いてみてください。お待ちしています。

ー本日はありがとうございました。
「とりあえず」と軽く笑いながら話す藤田さんだが、話を聞き進めるうちにその言葉の裏にある思慮深さが伝わってきます。国交省での2年間を「本当に行ってよかった」と語る表情には、経験が確かな自信に変わったことへの手応えが滲んでいました。
地元でも専門外でも関係ない——そんな藤田さんの言葉は、就職先を迷うすべての人への、静かで力強いエールではないでしょうか。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年6月取材)



