「入る前のイメージって、ただ机に座って決められたとおりに工事を発注するだけ、そんな流れ作業のようなつまらない仕事なのかなと思っていたんですけど、実際入ってみたら結構自分の考えを設計に反映できるんだと分かって」
そう語るのは、黒石市役所財産管理室で建築技師として働く入庁11年目の松元さん。青森県つがる市出身で、工業高校建築科を卒業後、地元の建設会社で約10年間にわたって施工管理(現場監督)の経験を積んだのちに黒石市に入庁したキャリアの持ち主です。
今回は、黒石市の建築技師の仕事内容・働く魅力・職場の雰囲気について、たっぷりとお話を伺いました。
- テレビの住宅番組が原点。大工を夢見た少年が歩んだ建築の道
- 流れ作業とは正反対。設計にも意見を反映できる自治体建築職のリアル
- 公営住宅の建て替え、新庁舎のオープン準備。印象に残る二つの大仕事
- 少数精鋭でも風通しは良好。部署を横断した連携で仕事を進める
- 建築が好きな方へ。一緒に黒石市の施設をつくっていきましょう
テレビの住宅番組が原点。大工を夢見た少年が歩んだ建築の道
ー建築の仕事を意識し始めたのは、いつ頃のことですか?
松元:本当に小さいときからです。保育園のころ、テレビで住宅番組を見ていて、ちょっと変わった家とか個性的な住まいを見ながら「自分だったらこんな家に住みたいな」って絵を描いていた記憶があります。
ものを作ることが好きだったこともあり、将来は大工さんになりたいと思っていて、そのまま工業高校の建築科に進んだ、という感じです。
ー卒業後はどのようなキャリアを歩まれたんですか?
松元:地元の建設会社に就職して、建築の施工管理、いわゆる現場監督の仕事をしていました。約10年ほどやっていましたね。
ーそこから公務員の道を選ばれた経緯は?
松元:最初は全然興味がなかったんです。誰でもできることを決められたとおりにやることが性に合わなくて。仕事柄、公共工事で役所の方と関わる機会もあったんですが、なんとなく真面目で堅いイメージがあって(笑)。
でも、施工管理の仕事は残業も多くて、休日も出ないといけないことがよくありました。「このままでいいのかな」と思い始めていたころに、高校時代の先生から「黒石市が中途採用で建築の職員を募集しているよ」と教えてもらったんです。
ー当時、黒石市はどんなイメージでしたか?
松元:自然が豊かで、歴史的な町並みがある地域だなという印象でした。先生に紹介してもらったのが黒石市だけだったので、他は受けずに一本で受験しました。

流れ作業とは正反対。設計にも意見を反映できる自治体建築職のリアル
ー現在の業務内容を教えていただけますか?
松元:市が保有する建物の工事に関わる業務で、「営繕」と呼ばれる業務です。平成28年4月に入庁して、最初は都市建築課に7年、その後、総務課財産管理室に2年、そして今の財産管理室営繕係に至るという形で、部署や課の名前は変わっていますが、ずっと同じ業務をやっています(笑)。
対象となる建物は、庁舎、小中学校、地区センター、病院など、さまざまです。年間で大小合わせて200〜250件ほどの工事を、現在は5名体制で担当しています。
ー1つの工事はどんな流れで進むんですか?
松元:まず前年度に予算取りのための金額を算出します。大きい工事は設計業務を設計事務所に委託することもあります。予算が確保できたら、当該年度に設計図書を準備して発注し、入札・契約を行い、工事が完了したら検査をしてクローズ、という流れです。
ー入庁前のイメージと、実際の仕事はどう違いましたか?
松元:入る前は「ただ机に座って決められたとおりに工事を発注するだけの流れ作業」みたいなつまらないイメージを持っていたんですが、実際は全く違いました。仕事のやり方は任せてもらえていて、設計に自分の考えを反映できますし、机の上だけでなく現場にも頻繁に出ます。
例えば照明器具の取り換えや庁舎の改修工事などは自前で設計することもあります。また、扉の修理や簡単なものであれば自分で作業もします。
ー設計に自分の意見を反映できるというのは、具体的にはどういう場面ですか?
松元:新築の建物を建てるとき、間取りや外観について設計事務所と打ち合わせをするんですが、そこで「こうしたい」「ここはこうした方がいいんじゃないか」という意見を交わしながら自分の考えを取り入れていくことができます。
ただ設計事務所に任せて終わりではなく、設計の段階からきちんと関われるところが面白いと感じています。

公営住宅の建て替え、新庁舎のオープン準備。印象に残る二つの大仕事
ーこれまでで特に印象に残っている仕事はありますか?
松元:まず入庁直後に関わった公営住宅の建て替えですね。最初は先輩が担当していたんですが、自分が引き継いで担当になってから約3年かけて完成まで見届けました。
古いものを壊して新しいものを建てていく計画を立て、それが形になっていくのは、やったことがなかった分、大変でしたが本当に楽しかったです。
ーもう一つはどんな工事ですか?
松元:約2年前に完成した黒石市役所わのまちセンターという庁舎の新築工事です。途中から担当として引き継いだのですが、オープンまでに工事を完了させなければならない中、入居する職員との調整、引っ越しの準備、必要な備品の手配など、とにかくバタバタとしていました。大変でしたが、オープンを迎えたときの達成感は大きかったです。
ー建物が古くなることで難しい場面もあるとか?
松元:はい、市の建物も古くなってきているので、工事件数は年々増えています。その中でも特に難しいのが、不具合の原因が特定しにくいケースです。
「ここかな、ここかな」って一つずつ確かめていく、まるで宝探しのような地道な作業になることもあります。

少数精鋭でも風通しは良好。部署を横断した連携で仕事を進める
ー職場の雰囲気はいかがですか?
松元:関係性は良いですね。何でも話せますし、コミュニケーションも取りやすいです。仕事柄、現場に出たり業者さんとの打ち合わせがあったりと外に出る機会も多いので、在席しているときは工事発注のための書類作成に追われることも多いですが、空いた時間には気軽に話せる雰囲気があります。
ー財産管理室以外との連携もあるんですか?
松元:はい、私が所属する財産管理室以外にも、建設部や教育委員会にも建築技師の職員がいて、部署を横断しながら連携して仕事を進めています。
今年度から財産管理室に新しく営繕係が設置され、その係長になりましたが、今のところ係員は私1人という少数精鋭の体制です(笑)。
ーワークライフバランスはどうですか?
松元:工事発注の件数が集中する年度始めと、予算算出の時期は忙しくなりますが、それ以外の時期は比較的落ち着いています。完全にゼロという月はなかなかないですが、1月・2月あたりは残業が少ない時期ですね。
休暇は自由に取れていて、夏季休暇の5日間もきちんと消化できます。

建築が好きな方へ。一緒に黒石市の施設をつくっていきましょう
ー最後に、黒石市の建築技師を目指す方へメッセージをお願いします。
松元:大前提は、建築が好きな方にはぜひ来てもらいたいです。また、クリエイティブな発想力を活かしてみたい、ものづくりや人に喜んでもらうことが好きという方もウェルカムです。私自身、入庁前は「役所の仕事は流れ作業でつまらない」というイメージを持っていましたが、実際はそんなことはありません。
自分のやりたいことや考えを取り入れやすい職場ですし、周りのみんなもサポートしてくれます。一緒に連携しながら、楽しみながら、黒石市の良い建物をつくっていけたらと思っています。

ー本日はありがとうございました。
幼少期に住宅番組に夢中になり、大工を目指して建築の世界に飛び込み、10年の現場監督経験を経て黒石市へ。そのキャリアの積み重ねが今、市内の多様な施設を守る力になっています。
設計への関与、現場での作業、部署を横断した連携――自治体の建築職には、想像以上に広い守備範囲と、手触りのある「ものをつくる」喜びが残っています。「役所の建築職はつまらなそう」と感じている方ほど、松元さんのお話はきっと響くはずです。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年6月取材)



