和歌山県那智勝浦町役場で働く谷さん夫婦のインタビュー記事です。夫の谷さんは事務職、妻の谷さんは保健師として、2014年に同期で入庁。現在は3人のお子さんを育てながら、仕事と家庭の両立に奮闘されています。
子育て支援制度のリアルな実情から、それを支える職場の雰囲気、そして仕事のやりがいまで。那智勝浦町役場で働くことの「リアルな魅力」を、夫婦それぞれの視点から語っていただきました。
ー本日はよろしくお願いします。まずはお二人のこれまでのご経歴について、自己紹介をお願いします。
谷(夫):地元が那智勝浦であり、2014年に、妻と同期で入庁しました。職種は事務職です。最初の配属先は福祉課で、2年間在籍し、保健師の事務サポートとして支払処理などを行っていました。その後、建設課へ異動して6年間勤務し、現在は会計課で4年目になります。建設課では事務はもちろん、現場に出ることも多く、様々な経験をさせてもらいました。
谷(妻):私は隣町の出身ですが、保健師として毎年求人が出るわけではなく、ちょうど出たタイミングで受験することができ、那智勝浦町役場に保健師として入庁しました。
一貫して、福祉課に所属しています。合間で、3人の子どもを授かり、その都度、産休・育休を取得しました。1度目の育休明けから時短勤務で復帰し、現在も3度目の育休から明けて時短勤務で働いています。
ー谷(夫)さんは事務職として3つの部署を経験されていますが、仕事内容は大きく異なりましたか?
谷(夫):違いますね。福祉課では窓口事務が中心だったのですが、建設課では、町道の維持管理など実際に現場に出て、住民の方と直接やりとりをする機会が多かったです。今の会計課では住民の方と話す機会が少なく事務作業が中心です。それぞれ全く違う仕事内容ですが、その分、多様な経験ができていると感じます。
ー部署の異動は、新しい仕事や人間関係に慣れるのが大変な側面もあるかと思いますが、その点はいかがでしたか?
谷(夫):上司も同僚もそれぞれ違いましたが、居心地が悪いと感じたことは一度もないですね。年次の浅い頃から「こうした方がいいのでは」という意見を、相手が上司でも後輩でも、相談できましたし、課題に協力して解決できる環境であったと思います。
ーご自身の意見をしっかり言える環境なのですね。職場の雰囲気はいかがですか?
谷(夫):どの部署も雰囲気は良く、人間関係で悩んだことは特にないです。印象に残っているところでいうと建設課での6年間です。地域の方々と直接お話できて、地元出身でありながら知らなかった町の細かい部分や、地域の方々の生活を知ることができ、自分の仕事が町に直結しているという実感を得られました。
谷(妻):職場全体として、もともと地元の人も、町外や県外から移住して就職した人も、分け隔てなく友好な関係を築けていると思います。課や年齢に関係なく、一緒にスポーツをしたり、バーベキューをしたりといったプライベートでの交流も盛んです。もちろん強制的なものでは全くなく、有志で楽しんでいます。
ー部署や出身地に関わらず、職員間の交流が活発なのですね。では、谷(妻)さんの時短勤務についても教えていただけますか?
谷(妻):少しずつ形式が違うのですが、1人目の育休から復帰した際は、1年半ほど週3日の時短勤務を選択しました。その後、一度フルタイムに戻ってから2人目の産休に入り、復帰後は半年ほど、また週3日の時短勤務を利用しました。そして今回、3人目の育休から復帰したこの4月からは、毎日出勤で、勤務時間を15時15分までに短縮する形を選んでいます。
ーかなり柔軟に選べるのですね。
谷(妻):そうです。午前中だけの出勤、朝1時間遅く出勤という働き方を選んでいる方もいます。基本的には年度初めに希望を出すのですが、「子どもも私も慣れてきたので〇月からフルタイムで働きます」といったように、途中で変更することも可能です。私も1人目、2人目の時は、年度途中でフルタイム勤務に戻しました。
ー育休から復帰された方の多くが、そういった制度を利用されているのでしょうか?
谷(妻):多いと思います。那智勝浦町では、子どもが小学校に上がるまで時短勤務制度を利用できます。また、育児休業自体は子どもが3歳になるまで取得可能です。
ただ、手当が出るのは最初の1年から1年半なので、私は早く復帰して時短勤務で働くことを選びましたが、3年間しっかり休む人もいます。
ーそうなんですね。一方で、時短勤務は業務の分担などでご苦労もあるのではないでしょうか。
谷(妻):正直に言えばその点は大変でまだ課題があります。日々、期日のある業務に追われていますし、制度があっても完璧に運用するにはまだまだ人員的な課題があるのが実情で、残って働くこともあります。
ただ、課長も気にかけてくださいますし、上司や同僚も「大丈夫?」と頻繁に声をかけてくれます。お互いに手が空いた時に「その仕事やるよ」と手伝ってくれることもあり、本当に助かっています。みんなで、より良くしていかなくてはいけないですね。
ー谷(夫)さんの働き方はいかがですか?
谷(夫):基本的に残業はなく、毎日定時には退庁できます。そのため、妻が残業するときは私が保育所へ迎えに行くこともあり、夫婦で協力し合えているので、両立はできていると思います。妻が時短勤務のときだけでなく、フルタイムで働くようになっても同じように
両立できればいいなと思います。
ー育児休業を取得されたともお聞きしました。
谷(夫):はい、3人目の時に1ヶ月ちょっと取得しました。男性の育児休業の取得実績はあまりなかったのですが、当時の上司が強く背中を押してくれたおかげで、気兼ねなく取ることができました。育児休業に限らず、職員同士が協力し合って休暇を取りやすい職場環境にしたいと思います。
―では、仕事そのもののやりがいや面白さについてはいかがでしょうか?
谷(夫):役場なので、町のことを知り、町のために働けることがやりがいだと思います。所属してきたそれぞれの課で、それぞれの目線で町のことを知ることができて、より一層町への愛着が深まりました。
また、今の会計課では、業務改善にやりがいを感じています。那智勝浦町役場は、若手であっても「こうしたらもっと良くなる」という意見を言いやすい雰囲気があると感じます。
会計課に来てからの4年間で、業務の効率化を進めてきました。その結果、1年目と今とでは、仕事の余裕が全く違い、残業もほとんどしなくなりました。今は、他課と協力し役場全体の事務効率を進めていこうと考えています。
谷(妻):新しい意見や提案は通りやすい職場だと思います。私が母子保健を担当していた時、子育て世代向けの情報発信に公式LINEを使いたいと提案したら、すぐに承認してもらえました。自分の考えを仕事に反映させやすいのは、大きなやりがいですね。
ー縦割り行政という言葉もありますが、部署間の連携などもスムーズなのでしょうか?
谷(夫):風通しは良すぎるくらいかもしれません(笑)。何か新しいことを始める時、会計課だけで考えるのではなく、総務課など関係する部署と協力して一緒に進めていくことができます。「予算がないからダメ」と一蹴されるのではなく、「どうすれば実現できるか」を一緒に考えてくれる雰囲気がありますね。
―では、子育て環境として那智勝浦町はいかがですか?
谷(夫):子どもたちと海や川などたくさんの自然と触れ合える点が良いですね。通ってる小学校では地元の方々との交流もあり、地域の方々が見守ってくれている印象もあります。
谷(妻):公園や買い物に行ったらいろんな人から子どもたちに声をかけてもらえ、温かい気持ちになります。赤ちゃんが生まれたら町からお祝い金をもらえる制度もありありがたいです。自然との距離が近く、市街地への利便性もほどよく、子育てしやすい環境だと思います。
ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年5月取材)