尼崎市では、職員一人ひとりが仕事にポジティブな意欲を持ち、イキイキと挑戦できる組織づくりを進めています。その指標となる数値が、私たちの「ばいたり値ぃ」。「ばいたり値ぃ」とは、毎年実施しているストレスチェックの結果から、職員がどれだけ前向きに仕事に取り組めているかを数値化したもの。(「ばいたり値ぃ」の詳細は令和6年5月29日市長定例記者会見資料をご覧ください。)
この数値を分析することで、組織の元気ややる気の状態を見える化しています。分析の結果、ばいたり値ぃを高めるうえで特に大切なポイントとして浮かび上がったことの1つが、「成長支援」。
・チャレンジできる職場であること
・チャレンジを後押しできる信頼関係があること
強固な信頼関係のベースがあるからこそチャレンジできる環境がある、そしてそのチャレンジする気持ちがより良い市民サービスにつながります。この「成長支援」の考え方を制度にしたのが、令和6年度から始まった「ばいたり値ぃ異動制度」。
この制度では、職場間のマッチングを通じて、
・「こんな職員に来てほしい」と希望する受入側の部署と、
・「この職場で挑戦してみたい」と考える職員が、
直接面談を行い、異動を考えます。(採用から5年以上経過している係長・一般職のうち、現職に2年以上在課している職員が対象)
今回はそんな「ばいたり値ぃ異動制度」を使って、都市政策課に異動し、市制110周年事業で活躍する吉川真理子さんにお話を伺いました。
※「ばいたり値ぃ異動制度」については、効果検証を行う中で制度が変更になる場合がございます。

―― もともとは民間企業で経理をされていたとか。尼崎市に入庁するまでのキャリアを教えてください。
大学を卒業してから3年間、民間企業で経理をしていました。売掛金の管理とか、本当に普通のOLをしてたんです。
大学時代の歴史研究の面白さが忘れられなかったこともあって、3年民間企業に勤めた後に大学院に入り直したんです。そこから修士・博士と進んで、大学の非常勤講師や大阪市の歴史資料を収集する機関で史料整理を、その後、民間の出版社でアーキビストとして企業や学校のアーカイブズに関する仕事をしていました。
―― とても幅広いキャリアですね。尼崎市に入庁してからはどんなお仕事に携わったのでしょう。
私は令和2年(2020年)に事務(アーキビスト)採用で入庁しました。入庁後の配属は、まず自分の専門が活かせる、歴史博物館で、地域史料の整理や歴史的公文書の選別収集、公文書管理条例の整備などに関わりました。
『尼崎市史』を読む会(市民が尼崎市の市史を学び、地域への理解と愛着を深めるための学習会。)では運営のお手伝いをしながら尼崎の歴史について勉強していました。

―― 次に異動されたのが、あまがさき観光局(市外郭団体)への派遣なんですね。
専門職としての採用ではありましたが、プライベートでの事情もあってあまがさき観光局への異動という形で別の部署での勉強の機会ができました。私があまがさき観光局で主に関わったお仕事が、「教育旅行(修学旅行等の校外学習の中で様ざまな職業を知ることで、自分の興味・専門がどのように社会で活かせるかを具体的にイメージするもの)のプログラム醸成」だったんです。
教育旅行のプログラムを考える時って、市内の企業さんの強みをどうすれば学生たちに伝わるかを企業や旅行会社と話し合いながら企画をつくっていくんです。私は各企業の歴史に興味があるので、市内企業の歴史や創業者の思いも伝えられないかという思いを持って打ち合わせに臨んでいました。実際にプログラムを実施したときには、参加した学校の先生や生徒たちから「楽しかった」「生徒が生き生きしていた」といった感想が寄せられ、とてもやりがいを感じた経験でした。「歴史をどう社会に伝えるか」というテーマに改めて向き合うきっかけにもなりました。

―― 今まで歴史に興味のある市民の方とお仕事をされていた職場から、外から不特定多数の人を尼崎市に呼び込むという職場に変わったということで、何か変化はありましたか?
全く新しい分野だったので、とても勉強になることばかりでした。もちろん歴史博物館にいたときも歴史を伝える機会はたくさんありましたが、どちらかというと歴史にすでに興味がある方がターゲットになるものでした。観光局での経験を通して、興味がない人にも興味を持ってもらうことがいかに難しいかというところを身に染みて感じました。
ただ、私は「自分が学んだことをいかに市民や社会に還元するか」ということをテーマにずっと仕事をしてきたところがあるので、観光局での教育旅行プログラムの企画の経験で、改めて「一人でも多くの人が歴史に興味を持ってくれる機会を作りたい」という思いを改めて強く感じることができました。
―― そして、ばいたり値ぃ異動制度を使って都市政策課へ異動されたんですね。応募のきっかけはなんだったのでしょう?
周年事業というのは、10年に一度しかない大きな節目。「過去を知って未来を考える」というテーマに加えて、「今を記録すること」もできる貴重な機会だと感じました。
もちろん観光の仕事をもっとやってみたいという思いがあったのも事実です。
でも、自分の気持ちを声にできるのは、このタイミングしかないと思い、チャレンジしてみようと思ったんです。
―― 制度を使うにあたって、迷いはありましたか?また周囲の反応はどうだったんでしょう?
子どもがまだ小さいので、「大丈夫?」と心配もされました。でも、そこは自分でも正直に「どうしても家庭の状況で超勤などができない部分はあると思います。」と伝えました。
やる気はあるけれど、現実的な制約もある。そこを踏まえて面談の中で率直に話せる機会があったのは良かったと思います。

―― 都市政策課に異動してみて、今どんなお仕事をされてますか?
市制施行110周年を迎える来年度に向けて、市の歴史を振り返りながら、市民と一緒に「これからの尼崎」を考えるプロジェクトを担当しています。
主な仕事は、イベントの構成や展示テーマの立案、市民・企業・教育機関との連携調整、そして「記録を残す」ための仕組みづくりです。ここで私が「記録の型」をつくることが、次の世代へのバトンになるという気持ちで仕事に取り組んでいます。
110周年事業の中で市民の方にお話をお伺いして記録に残すという仕事もあるのですが、あまがさき観光局時代に企業の方と一緒に市内企業の歴史や創業者の思いを掘り起こした経験も活かせていると感じています。

――希望してみて、ギャップなどはありますか?
やっぱり、公務員としての公平性や手続きの壁は感じますね。手続きの壁を乗り越えないとどんな良い企画も実現できない。でも、それをどう乗り越えるかを考えること自体が、自分の成長につながっていると感じます。「何を優先して、どう形を変えて実現するか」を一つひとつ自分の中で整理していく過程が、すごく勉強になります。
私は、「ばいたり値ぃ異動制度」を使うときに、「もし採用されたら何があっても絶対にこの事業をやり切る!」と固く決意していたので、どんな壁にぶつかろうとも頑張ろうと思っています。

―― これから尼崎市の採用試験に応募しようとされている方にメッセージをお願いします。
私は、「こんな仕事がしてみたい」という気持ちももちろん大切ですが、同時に「その仕事の経験を通して自分がどう成長したいか」を考えることが大切だと思っています。現場では理想と現実のギャップもありますし、もちろん市役所のキャリアの中で思った通りの配置にならない時期もあると思いますが、この点を明確にしておくと、立ち止まったときも前を向いて仕事ができると思っています。
「ばいたり値ぃ異動制度」を使って、新たなキャリアを踏み出した吉川さん。その一歩が、市職員一人ひとりの「成長支援」に、そして市全体の「ばいたり値ぃUP」につながっています。尼崎市では、様々な側面からばいたり値ぃの分析結果を用いて、職員がイキイキと働ける環境を目指していきます。



