兵庫県豊岡市役所の採用担当者へのインタビュー記事です。城崎温泉や出石など全国有数の観光地を有し、コウノトリの野生復帰など独自の施策を進める豊岡市。
そんな同市が求めるのは「共感力」と「コミュニケーション力」を持つ人材です。演劇を用いたユニークな新人研修や、全国上位を誇る地域おこし協力隊の受け入れ背景、若手を支えるメンター制度など、柔軟な採用活動と充実の育成体制についてお話を伺いました。
城崎温泉からコウノトリまで。自然と文化が交差する豊岡市の魅力
ーまずは豊岡市の概要や、まちの魅力について教えてください。
豊岡市は兵庫県の北部に位置し、現在の人口は約7万3000人、正規職員数は一般行政職や消防職などで約870名体制となっています。 豊岡市と聞いて多くの方がイメージされるのは、やはり観光地やレジャー資源としての魅力だと思います。
開湯1300年の歴史を持つ「城崎(きのさき)温泉」をはじめ、近畿最古の芝居小屋「出石(いずし)永楽館」がある城下町などは非常に有名です。さらに、冬には「神鍋(かんなべ)高原」でスキーやスノーボードなどのウィンタースポーツ、夏には学生のスポーツ合宿が盛んに行われていますし、「竹野海岸」での海水浴やマリンレジャーも人気を集めています。


ー温泉から海、高原まで、本当に多彩な資源が揃っているのですね。
はい。そのため、学生時代に合宿や観光で豊岡市を訪れ、「自然豊かで良い場所だったから」という理由で当市の採用試験を受験してくださる方もいらっしゃいます。
また、豊岡市を語る上で欠かせないのが「コウノトリ」の存在です。一度は日本の空から姿を消したコウノトリを再び野生に返すという、世界的にも先進的な自然環境に配慮したまちづくりを進めてきました。この取り組みに連動した有機農業の推進など、環境と経済が共鳴する独自の政策に惹かれ、志望してくださる方も少なくありません。
SPI導入と通年採用。多様な人材を受け入れる柔軟な採用スケジュール
ー本年度の採用試験の全体スケジュールや募集職種について教えてください。
新卒の方を主な対象とした「通常試験」については、例年5月中下旬から募集を開始します。7月中旬に第1次試験、7月下旬から8月にかけて第2次・第3次試験を実施し、8月末から9月頭には最終合否を出すというスケジュールです。募集職種は年度によりますが、一般事務職、土木技術職、幼稚園教諭・保育士、消防職などを中心に幅広く予定しています。
ー中途採用など、社会人向けの選考も行っているのでしょうか?
はい、通常試験とは別に「通年募集」も実施しています。これは主に即戦力となる経験者の方を対象としており、例えば7月1日、10月1日、12月1日、翌年4月1日といった形で採用のタームを区切り、欠員や人材ニーズが生じた際にその都度募集をかけるという仕組みです。また、豊岡市を一度、退職した方をもう一度迎え入れるいわゆるカムバック採用も実施しています。
ー選考方法はいかがですか?
第1次試験では、いわゆる公務員試験対策をしていなくても受験しやすい「SPI」を導入し、事務処理能力や性格検査などを総合的に見ています。
その後、職種によっては作文試験を課して人柄や考え方を確認し、集団面接や個人面接へと進んでいただく流れになります。
「一緒に働きたいか」が鍵。豊岡市が求める「共感力」と「コミュニケーション力」
ー採用において、豊岡市が求める人物像について教えてください。
「共感力を持って、自ら考え、自らの言葉で語り、行動する職員」を本市の求める職員像として掲げています。
行政の仕事には、課題発見力や論理的な問題解決力、説明責任を果たす力など、多くの能力が求められます。しかし、それらすべての土台となるのは「コミュニケーション力」です。市民の皆様はもちろん、地元の事業者や他自治体など、多様な立場の方々と信頼関係を築き、円滑に物事を進める力は欠かせません。
ー面接などの選考過程でも、コミュニケーション力は特に重視されているのでしょうか?
面接では「この人と一緒に働きたいと思えるか」という視点を非常に大切にしています。 どれだけ論理的で能力が高くても、周囲との距離感や言葉の選び方、表現の仕方に課題があれば、チームとしてうまく機能しません。「一緒に働きたいか」という基準は、まさにその人の持つ雰囲気や人柄、そして相手を尊重する姿勢を見極めるためのものです。
ー相手を尊重する姿勢とは、具体的にどのようなことですか?
それが先ほど申し上げた「共感力」に繋がります。自分が正しいと思ったことを一方的に押し付けるのではなく、まずは相手の立場になって考え、相手の言葉にしっかりと耳を傾ける「傾聴」ができるか。その上で、より良い提案を行えるかどうかが重要です。
「演劇」でコミュニケーションを学ぶ!?独自の研修とまちづくりの結びつき
ー入庁後に、コミュニケーション力を育むために、豊岡市ならではのユニークな取り組みがあると伺いました。
採用担当: はい。豊岡市では「演劇」を用いたコミュニケーション研修を、新任職員向けに実施しています。

ー市役所の研修で演劇を取り入れているというのは、非常に珍しいですね!どのような背景があるのでしょうか?
実は豊岡市は、まちづくりにおいて「演劇」を積極的に活用してきた歴史があります。日本を代表する劇作家である平田オリザさんが豊岡市へ移住されたこともあり、小学校6年生と中学1年生の授業に演劇の手法を取り入れたコミュニケーション教育を行っています。
さらに、2021年には演劇と観光を同時に学べる県立の「芸術文化観光専門職大学」が開学しましたし、毎年9月には全国から演劇ファンが訪れる「豊岡演劇祭」も開催されています。このように、演劇の力を活かして地域のコミュニケーション能力を高め、まちづくりを進めていくという土壌があるんです。

ーなるほど。そうした背景があって、職員の研修にも演劇が取り入れられているのですね。
演劇の手法を用いた研修では、単に言葉を交わすだけでなく、表情や身振り手振り、相手との距離感など、非言語のコミュニケーションの重要性を学びます。「コミュニケーションの取り方には色々な形があり、相手に合わせることが大切だ」という気づきを得ることで、対人スキルの向上に繋げています。演劇を通じて相手の感情を読み取ったり、自分の想いを適切に表現したりする訓練は、日々の窓口業務や市民との対話において非常に活きてきます。
10年以上前からの「大交流課」設置と、全国9位を誇る地域おこし協力隊
ー豊岡市は移住者も多いと伺いましたが、市外出身の受験者も多いのでしょうか?
基本的には豊岡市や隣接する市町など、但馬(たじま)地域の出身者や、地元に貢献したいというUターンの方が多いです。しかし、中には「豊岡市の独自の政策に魅力を感じて」と京阪神エリアなどから受験してくださる方もいらっしゃいます。
ー移住への支援や受け入れ態勢も整っているのですか?
はい。実は豊岡市では、現在26名の「地域おこし協力隊」が活動してくださっています。これは全国第9位で、全国的に見ても非常に多い数字です。
その背景として、豊岡市では10年以上も前の2013年度に「大交流課」という専門の部署(現在は観光政策課に改称)を設置し、交流人口や観光人口の拡大に戦略的かつ積極的に取り組んできた歴史があります。
まだ全国的にも「地方創生」や「交流人口」という言葉が今ほど声高に叫ばれていなかった早い段階で、あえて専門の部署を立ち上げ、外の人を受け入れて地域の活力を生み出そうとしてきた土壌があるため、移住者の方にとっても非常に活動しやすい環境が整っているのだと思います。
もちろん、日本海側の雪国という地域性への理解は必要ですが、コウノトリの自然再生や演劇と観光を結びつけた独自のまちづくりなど、他の自治体にはない面白いフィールドがあることは間違いありません。
メンター制度や「採用サポーター制度」も。若手を全力で支える温かい職場環境
ー若手職員をサポートする教育体制はいかがですか?
現在は新任職員一人につき、同じ部署の先輩が「OJT指導者」として仕事の指導や精神的なフォローを行っています。しかし、同じ部署の人には人間関係などで相談しづらい悩みもあるかもしれません。
そこで2026年度からは、他部署の職員をメンターとして配置する「メンター制度」を本格的に導入しました。例えば同じ出身大学のOB・OGなどをメンターとして割り当て、仕事以外の悩みでも気軽に相談できる体制を整え、精神的なフォローをさらに手厚くしていきます。
ー部署の垣根を越えた繋がりができるのは心強いですね。
そうですね。制度化する前から、若手職員同士では休日に一緒に遊びに行ったり、数年上の先輩に仕事の相談をしたりと、自主的な交流の輪が広がっているとも聞いています。若手が孤立することなく、助け合いながら成長できる温かい風土は豊岡市の魅力の一つです。
ー最後に、これから豊岡市役所を受験される方へメッセージをお願いします。
2026年度からは、公務員を志望する学生に向けた「採用サポーター制度」を導入しました。これは、大学1・2年生といった早い段階から、豊岡市役所の若手職員(OB・OGなど)と直接面談したり、庁舎を見学したりして、生の声を聴いていただける制度です
豊岡市には、豊かなレジャー環境と、全国に誇れる独自の政策があります。「自ら考え、行動し、共感力を持ってまちづくりに挑戦したい」という熱意ある方のご応募を、心からお待ちしております。まずはぜひ、制度を利用して市役所の雰囲気を肌で感じてみてください!
ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年3月取材)



