広島県三原市役所土木建設課で働く大田石さんのインタビュー記事です。新卒で広島市役所に入庁し、豪雨災害の復旧などに尽力。その後、子育てを見据えて地元・三原市役所へUターン転職されました。
民間企業ではなく行政の土木職を選んだ理由や、新しい消防署の造成工事でのエピソード、そして行政だからこそできる「街の絵を描く」公共事業の魅力について、たっぷりと語っていただきました。
- 災害復旧の最前線から、子育てを見据えた地元・三原市へのUターン
- 防災拠点を守る。新しい消防署の造成工事で感じた強い使命感
- 現場監督だけじゃない!市民と対話し、街の「絵を描く」面白さ
- 「家族のような仲間意識」三原市役所の温かい人間関係とワークライフバランス
災害復旧の最前線から、子育てを見据えた地元・三原市へのUターン
ーこれまでのご経歴を教えてください。
大田石: 三原市役所土木建設課の大田石と申します。大学で土木を専攻し、2016年に新卒で広島市役所に土木技師として入庁しました。そこで4年間勤務した後、2020年の4月に地元の三原市役所へ転職し、現在6年目になります。
ー三原市役所へ転職されたきっかけは何だったのでしょうか?
大田石: 生活環境が変化したことが大きなきっかけです。結婚し、子どもが産まれたことで、家族と話し合って地元である三原市へ帰ることにしました。
ー三原市役所に移られてからは、どのような業務を担当されていますか?
大田石:道路や河川の工事発注と監督業務を行っています。三原市役所へ来てから最初の3年間は土木整備課に所属し、道路・河川の「維持修繕」と「改良」工事の両方を担当していました。その後の機構改革で土木建設課に所属してからは、道路・河川の改良工事に専念しており、年間約10本ほどの工事を発注しています。
ー「維持修繕」と「改良」の違いを教えていただけますか?
大田石: 「維持修繕」は、今ある道路の寿命を延ばしたり、壊れているところを元の状態に戻す工事です。一方「改良」は、今ある道路を広くしたり、元々道路じゃないところに新しく便利な道路を通したりと、いわゆる「道路をより良くする」工事のことです。 維持修繕や災害復旧の場合は、大小さまざまな工事を多数発注するため本数も多くなりますが、現在の改良工事は規模が大きいため、年間10本程度に落ち着いています。

防災拠点を守る。新しい消防署の造成工事で感じた強い使命感
ー三原市ならではの土木工事の特徴や、働く上での地域性はありますか?
大田石: 三原市は非常に面積が広く、市街地もあれば、かなり奥深い山林部もあります。現場を見に行くのに車で1時間ほどかかることも珍しくありません。その一方で、JRの山陽本線や新幹線が止まる駅があったり、空港があったりと、交通インフラの要所でもあります。
都市部のような大規模な工事から、山間部の生活を支えるインフラ整備まで、非常に幅広い現場に関われるのは三原市ならではの面白さかもしれません。
ーこれまで三原市で担当された中で、特に印象に残っている仕事は何ですか?
大田石: 新しい消防署を作るための、土地の造成工事ですね。平成30年の西日本豪雨の際、三原市でも河川の氾濫による浸水被害がありました。その時、防災拠点の一つである西消防署が被災してしまったんです。
そこで、災害に強い安全な場所へ消防署を移転させることになり、私はその新しい土地の造成工事を担当させていただきました。
基本は道路・河川工事が専門なのですが、この時ばかりは地域の防災拠点を作るということで、土地の安全性や緊急車両のアクセスなどを深く考えながら設計・工事に携わりました。最初から最後まで一貫して関わらせていただいたこともあり、非常に強いやりがいを感じましたし、深く印象に残っています。

現場監督だけじゃない!市民と対話し、街の「絵を描く」面白さ
ー行政の土木職として働く中で、どのようなスキルが身についたと感じますか?
大田石: 土木の専門知識はもちろんですが、それ以上に「交渉力」や「折衝力」といった対人スキルが身についたと思います。実際に働いてみると、業者さんとの協議以外にも、地元住民の方への説明や、ご要望に対する調整といった業務がかなりの比重を占めています。時には厳しいご意見をいただく場面もあるため、様々な立場の方々と向き合い、最適解を見つけていくコミュニケーション能力は、行政の土木職にとって必要不可欠なスキルだと感じています。
ー想像以上に人と関わる仕事なのですね。ギャップはありましたか?
大田石: そうですね。正直なところ、入庁前は現場で業者さんに指示を出す「監督員」というイメージが強かったですが、実際は多くの人と関わり、コミュニケーションをとりながら業務にあたります。だからこそ、工事が完成した時に一番最初に感謝の言葉をいただけるのもこのポジションです。それは大きなやりがいになっています。
ー公共事業に携わる行政職員として、大田石さんが感じる一番の魅力は何ですか?
大田石: 「目に見える形で仕事が残る」こと、そして「街の景色が変わる」ことです。特に私は三原市が地元なので、子どもの頃に通っていた狭い道を、自分の手で広く安全な道に作り変えることができるのは、本当に感慨深いです。 そして何より、民間企業ではなく行政側にいるからこそ、「壊れたものをどう直すか」「どこにどんな道路を作るか」という街の設計図=絵を描くことができるのが最大の魅力だと思っています。
コンサルタント会社から提案はいただきますが、根本となる方向性を決めるのは私たち行政です。ゼロから街の未来を考えることができるのは、公務員の土木職ならではの特権だと思います。

「家族のような仲間意識」三原市役所の温かい人間関係とワークライフバランス
ー職場の雰囲気や、人間関係について教えてください。
大田石: 非常に良好です。土木技術職のメンバーは特に団結力が強いと感じています。また、三原市では新しく入庁される職員さんをサポートするため、一人一人に先輩職員がメンターとしてついてくれる制度があり、新規採用の職員さんでも、安心して組織に馴染んでいけるフォローアップ体制があります。平日に職場のメンバーでご飯に行ったり、部活動を通じて交流を深めたりと、仕事以外でもフランクな付き合いができる温かい環境が整っています。
ー残業やお休みなど、ワークライフバランスについてはいかがですか?
大田石: 工期を考えた上でどうしても工事を発注しなければならない時期や、地元説明会の前などは残業することもありますが、そういった場面でも、皆で協力し乗り切っています。
監督業務は業者さんからの連絡も多く、一人で抱え込んでしまうと思われやすいですが、上司や周囲の先輩がしっかりサポートしてくれるため、うまくバランスを取りながら日々の業務に取り組んでいます。私自身、今年長になる子どもがいて、来年からは小学生になるのですが、必要な時にはしっかりとお休みをいただいて子育てに参加できています。
ー生活環境として、三原市での暮らしはいかがですか?
大田石: 子育てをする上で、市内に必要なものが何でも揃っているので困ることはありません。また、先ほども少し触れましたが、新幹線が止まり、空港も近く、公共交通機関が非常に充実しています。子どもが大きくなってくると、飛行機や新幹線を使って色々な場所へ遊びに行く機会も増えるので、そうしたアクセスの良さはとても便利だと感じています。

ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年3月取材)
「街の絵を描くことができる」。大田石さんのこの言葉には、公共事業の最上流で未来のまちづくりを担う、行政の土木技術職ならではの確かなやりがいを感じられるインタビューでした。



