富山県氷見市役所の広報戦略課で働く久保さんのインタビュー記事です。保育士、婚礼・イベント司会者という異色の経歴を持つ久保さんが、なぜ公務員の道を選んだのか。結婚・出産という人生の転機を経て、3人の子どもを育てながら「市政番組の演者」や「SNS発信」に奔走する働き方に迫ります。
- 保育士、そして司会者から公務員へ。
- 「公務員がここまで人と関わるなんて」――婚活担当での驚きと葛藤
- あえて「かたい仕事」を希望。窓口で気づいた「市役所の本質」
- 副市長は元テレビ局のプロデューサー。本格的な番組制作に挑む現在
- 仕事は「生き物」。挑戦を支える職場のチームワーク
- 「挑戦したい人こそ、市役所へ来てほしい」
保育士、そして司会者から公務員へ。
ーまずはこれまでのご経歴を含めて、自己紹介をお願いします。
久保:保育士として8年ほど勤務し、最初の5年間はフルタイムで働いていました。その後は働く時間を減らしながら、婚礼・イベントの司会の道を目指して下積みを重ねました。司会の仕事は本当に楽しく、自分にとっては「天職」だと感じていましたが、結婚と出産を機に転職しました。
子どもが生まれると、やはり土日の行事には一緒に出てあげたい、家族との時間を大切にしたいという気持ちが芽生えたんです。司会の仕事はどうしても土日がメインになりますから、家族のために「土日が休みやすい仕事」に就いた方がいいのではないかという話になりました。
ーなるほど。ご自身の中で公務員という選択肢は元々あったのですか?
久保:いえ、全くありませんでした(笑)。むしろ、私に公務員なんて務まるはずがないと思っていたんです。ただ、別の自治体で技術職の公務員をしていた夫の勧めで氷見市を受けました。公務員は決して「特別な人だけ」の仕事ではなく、休みも取りやすく、私に向いていると感じたようです。そして縁あって平成28年に入庁することになりました。
「公務員がここまで人と関わるなんて」――婚活担当での驚きと葛藤
ー入庁して最初に配属されたのはどのような部署でしたか?
久保:最初に配属されたのは「婚活」を担当する部署でした。氷見市の少子高齢化を止めるために、まずは結婚する若者を増やそうという仮説のもと、マッチングのお手伝いをしていました。
ー「公務員が婚活」というのは、意外な組み合わせに感じますね。
久保:本当に驚きました。当初抱いていた「難しい事務作業を黙々とこなす」という公務員像とは180度違っていましたね。「縁結びおせっかいさん」と呼ばれる婚活サポーターの方々と協力して、独身男女の面接をしたり、アドバイスを送ったり。カウンセリングのような業務も多く、心を開いてもらうための努力の毎日でした。
ーその後、育休を経て「商工観光課」に配属されたと伺いました。
久保:はい。そこでは企業支援や「食文化」の担当になりました。氷見は魚だけでなく、野菜や肉、米も美味しい。その魅力を広めるためのイベントを企画したり、市内の園児を対象にした料理教室の調整をしたりしていました。当日の朝に「想定していた魚が獲れない!」といったトラブルもありましたが、地元の鮮魚店やスーパーの方々と協力して乗り越える経験は、とても刺激的でした。
ー地元の皆さんと密に関わるお仕事だったのですね。
久保:そうです。外向けのPRだけでなく、市内の子どもたちに地元の食の豊かさを知ってもらう活動も大切にしていました。その後、自ら希望して「市民課」へ異動しました。
あえて「かたい仕事」を希望。窓口で気づいた「市役所の本質」
ーなぜ、市民課への異動を希望されたのでしょうか?
久保:これまでの部署は華やかで楽しい仕事が多かったのですが、一度「市役所らしい、かたい仕事」を経験しておかないと、自分のキャリアとして良くないのではないかと考えたんです。それで市民課の保険年金担当や、住所異動・マイナンバーカードを扱う担当を経験しました。
ー実際に経験してみて、イメージは変わりましたか?
久保:「公務員=事務作業」だと思っていましたが、実際はそれ以上に「対人」の仕事なのだと痛感しました。窓口には毎日多くの市民の方が来られます。丁寧な説明を求められることもあれば、時には厳しいお声をいただくこともあります。でも、パソコンに向かうだけの時間よりも、人と関わっている時間の方が私には向いていると感じました。意外かもしれませんが、市民課のような部署こそ、人との距離がとても近いんです。
副市長は元テレビ局のプロデューサー。本格的な番組制作に挑む現在

ーそして現在は、広報戦略課(旧・秘書広報課)で活躍されていますね。
久保:はい。SNS発信や市政番組の制作を担当しています。InstagramやFacebook、X(旧Twitter)、LINEなど、ウェブ全般の運用を任されています。特にInstagramの動画投稿は、氷見の美しい景色や素敵な場所を自分の足で撮りに行って編集するので、とても楽しいですね。
ー市政番組についても詳しく教えてください。
久保:地元のケーブルテレビで放送される番組なのですが、これが想像以上に本格的なんです。実は氷見市の副市長は元テレビ局のプロデューサーで、副市長が主導する「サンデーひみ」という1時間の月刊番組があるんです。私は出演するだけでなく、ロケの調整やナレーションも担当しています。
ー元プロデューサーが関わる番組となると、ハードルも高そうです。
久保:月3、4回はロケに行き、密なミーティングを重ねます。大変な重圧を感じることもありますが、取材先で「いつも(テレビを)見ているよ」と声をかけていただけると、本当に嬉しいです。スーパーで買い物をしていてもヒソヒソと「テレビの人だ」と言われることがあり、少し恥ずかしいですが(笑)。
仕事は「生き物」。挑戦を支える職場のチームワーク
ー様々な部署を経験されてきましたが、久保さんにとって「市役所で働く魅力」とは何でしょうか。
久保:仕事が「生き物」のように変化し続けるところです。3年に1回くらいのペースで異動があり、そのたびに新社会人になったような気持ちで新しい知識を吸収しなければなりません。それは確かに大変なことですが、正解がない問いに対して自分で考え、自分の思いを試してみることができる。若手でも、あるいは私のような立場でも、挑戦させてもらえる環境があるのが面白いですね。
ー仕事と家庭の両立についても教えてください。
久保:正直に言って、完璧に両立できていると胸を張れるわけではありません。でも、市役所には子の看護休暇などの制度が整っていますし、何より「子どもが風邪を引いたので休みます」と言った時に、周りが「どうぞどうぞ、代わりに出るよ」と快くカバーしてくれる雰囲気があります。これには本当に救われています。
ー地方ならではのメリットはありますか?
久保:駐車場が庁舎のすぐ近くにあることですね。都会のような満員電車も渋滞もなく、子どもの送迎がスムーズにできる。朝の忙しい時間帯において、この「通勤のしやすさ」は生活の質に直結します。氷見市の中心部に位置しているので、どこへ行くにも便利です。
「挑戦したい人こそ、市役所へ来てほしい」
ー最後に、自治体で働くことに興味を持っている方へメッセージをお願いします。
久保:公務員は決して「単調な事務作業」だけの仕事ではありません。むしろ、変化を求め、新しいことに挑戦したい人にこそ向いている職業だと思います。もちろん、私のように「生きるため、子どもを育てるため」に働いているというスタンスでも構わないと思います。でも、せっかく働くならやりがいが欲しいですよね。氷見市役所には、温かく支えてくれる先輩や、新しい感性を活かせるフィールドが待っています。ぜひ、一歩踏み出してみてください。
ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年5月取材)
インタビューを通じて、久保さんの「しなやかな強さ」が印象的でした。天職だと思っていた司会業を離れ、未経験の公務員の世界へ。戸惑いながらも、行く先々の部署で「人との繋がり」を見出し、自分の居場所を築いていく姿は、転職を考える多くの方にとって勇気を与えるものだと感じます。



