香川県観音寺市役所建設課で土木技術職として働く、秋山さんと池田さんのインタビュー記事です。ゼネコンでの現場監督や鉄道会社での維持管理業務といった民間でのキャリアを経て、なぜお二人は「地元の公務員」という道を選んだのでしょうか。行政の土木技術職ならではの難しさとやりがい、そして若手が挑戦しやすい職場環境について、語っていただきました。
- ゼネコン・鉄道会社から「地元の公務員」へ。それぞれの決断。
- 道路、河川、そして「島」まで。観音寺市のインフラを守る。
- 「市民全員が見ている」。行政の土木技術職だからこそ味わう難しさと達成感。
- 「積極的な失敗」を歓迎する。観音寺市建設課が大切にする若手の育成。
- ワークライフバランスの実現。仕事も家庭も大切にできる環境。
ゼネコン・鉄道会社から「地元の公務員」へ。それぞれの決断。
ー自己紹介をお願いします。
秋山:観音寺市役所建設課土木係の秋山です。私は今年で入庁14年目になります。前職は民間のゼネコンで建築工事の現場監督を7年ほど経験していました。主に東京でマンション建設に携わっており、1年に1棟のペースで現場を回すような忙しい毎日を過ごしていました。平成25年に観音寺市役所に入庁してからはずっと建設課土木係に所属しており、令和3年から係長を務めています。
池田:同じく建設課土木係の池田です。私は入庁9年目になります。大学卒業後は鉄道会社に5年間勤務していました。そこでは線路の維持管理に関わる工事の発注や、現場の監督業務が主な仕事でした。その後、平成30年に観音寺市役所へ入庁し、現在は主に道路や河川、港湾などの工事発注および監督業務を担当しています。
ーお二人とも民間企業での経験をお持ちですが、公務員への転職を考えたきっかけは何だったのでしょうか。
秋山:香川県内の企業に就職しましたが、配属先が東京で、現場監督として働いていました。いずれはUターンしたいと考えており、30歳という節目を迎えた時にちょうど募集があったので決意を固めて受験しました。当時は土木技師の採用が毎年あるわけではなかったので、運命的なタイミングも感じました。
池田:私の場合は結婚が大きな転機となりました。前職では5年間で複数回の転勤を経験しており、転職前の1年間は週末婚のような生活を送っていました。これからの人生を考えた時に、生活拠点を固定して家族との時間を大切にできる「転勤のない職場」で働こうと決め、地元近くの市役所へ転職しようと考えました。
ー行政の土木職に対して、入庁前はどのようなイメージを持っていましたか。
池田:漠然と「道路工事の発注などをしているんだろうな」というイメージはありました。前職で市役所や県庁に行く機会が何度かあったので、雰囲気もなんとなくは掴んでいました。何より、鉄道会社で人の移動に携わる仕事をしていたので、道路といった交通インフラを支える市役所の土木職は、前職と根底にある目的が同じだと感じていました。その親和性の高さが、転職に踏み切る大きな要因になりました。

道路、河川、そして「島」まで。観音寺市のインフラを守る。
ー現在の具体的な仕事内容について教えてください。
池田:メインは道路や港湾施設の工事発注業務、そして施工業者さんと協力して進める現場監督業務です。ただ、それだけではなく、業務が多岐にわたるのが市役所の土木職の特徴ではないかと思います。例えば、道路に穴が開けば自分たちで補修に行く場合もありますし、木が倒れて通行に支障があれば緊急で切りに行くこともあります。
ー年間のスケジュールや業務量はどのくらいですか。
池田:昨年度の例で言うと、年間30件ほど工事を担当しました。同時に複数の工事を担当することもあり、年度末に近づくにつれて忙しくなるように感じます。
ー観音寺市ならではの業務の特徴はありますか。
池田:観音寺市は平野部や山間部があり、そして「伊吹島」という離島もあります。伊吹島の市道も私たちが管理しているため、定期的に島に渡って現場確認や工事発注することもあります。一つの市の中にこれほど多様なフィールドがあるのは、技術者として非常に面白い環境だと思います。
秋山:一つのことだけを突き詰めるのではなく、道路、河川、港湾、さらには島嶼部まで幅広く携わります。大きな自治体だと「道路課」「河川課」と細かく分かれていて一つの分野に特化することが多いですが、観音寺市のような規模感だからこそ、若いうちからあらゆる経験を積むことができます。
「市民全員が見ている」。行政の土木技術職だからこそ味わう難しさと達成感。
ー民間と行政、同じ「土木」でも違いを感じる部分はどこですか。
秋山:常に見られているという「視線の広さ」です。ゼネコン時代はマンションの建設現場という限られたエリアの中で、周囲の住民の方々に配慮すればよかったのですが、市役所では、市民全員が私たちの仕事の対象になります。
工事で道路一つを通行止めにするにしても、それが誰の生活にどう影響するかを徹底的に考えなければなりません。時には厳しいご意見を頂くこともありますが、それだけ私たちの仕事が生活に密着しているのだと実感します。
池田:地域の方と会話する機会が多いことが、民間との違いだと思います。前職では社外の方と会話することが少なかったですが、今は地域の方と直接お話しする機会が非常に多いです。1年目、2年目の頃は緊張しながら地域の方と話すことも多かったですが、3年、4年と経験を積むうちに、緊張せずに自然と会話することができるようになったと思います。
ー地域の方との信頼関係を築くコツはありますか。
池田:工事の説明だけをするのではなく、たまに世間話を交えてコミュニケーションをとることが大切だと思っています。
秋山:工事の前の説明会をいかに丁寧に行うか、どこまで周知を徹底するか。そうした目に見えない配慮の積み重ねが、土木行政職の肝だと感じています。
「積極的な失敗」を歓迎する。観音寺市建設課が大切にする若手の育成。
ーこれから新しく入る方にとって、お二人は「上司」や「先輩」になります。どのような育成方針をお持ちですか。
秋山:私はよく部下や後輩に、「自分なりのストーリーを持って提案しよう」と伝えています。「自分はこうしたい。なぜなら、こういう理由があるからだ」という考えを持つことが大切です。これは私が民間時代の2年目に当時の上司から言われた言葉で、今でも大切にしています。
池田:私も若手職員には「失敗を恐れずチャレンジして欲しい」と思っています。間違ってもいいから自分の考えを持って業務を行い、もし失敗したら、それを次にどう活かすかを考える。私自身も、過去に失敗したことがありますがその失敗が今の糧になっています。
ー失敗した時のフォロー体制はどうなっていますか。
秋山:税金を扱っている以上、ミスはないに越したことはありませんが、萎縮してしまっては良い仕事はできません。若手が精一杯やった結果なら、上司として対策を一緒に考えるのが私の仕事です。安心してチャレンジできる環境は整っている自負があります。
ー職場の雰囲気はいかがですか。
池田:今は30代、40代が中心ですが、非常に風通しが良い職場です。仕事の進め方についても、個人の裁量に任されている部分が大きいので、自分なりに工夫して進めたい人には向いていると思います。

ワークライフバランスの実現。仕事も家庭も大切にできる環境。
ー働きやすさについても伺いたいのですが、残業などは多いのでしょうか。
池田:もちろん繁忙期や緊急対応が必要な時はありますが、普段はワークライフバランスを保ちやすい環境です。私は定時帰宅することが多く家族との時間もしっかり確保できています。
秋山:前職では、とにかく働いて、働いて、働きまくる生活でした。独身であったことや若さで乗り切れたのだと思いますが、必要な時に休暇が取れたり、時間までに仕事を終わらせて帰れる今の環境は本当にありがたいです(笑)。今はもう、前の生活には戻れませんね。オンとオフの切り替えがしっかりできるので、仕事にも100%の力で取り組むことができています。
ー最後に、観音寺市役所を目指す方へメッセージをお願いします。
池田:観音寺市は香川県の西側に位置し、気候は非常に温暖です。災害も少なく、住んでみると本当に住み心地が良いまちです。地元の方だけでなく、他県出身の方も馴染みやすい雰囲気がありますので、ぜひ挑戦してほしいですね。
秋山:技術者として「幅広い経験」と「深いやりがい」を両立したいなら、観音寺市役所は最高の場所です。少数精鋭だからこそ、一人ひとりの役割が大きく、自分がまちを作っているという実感を強く持つことができます。前向きで失敗を恐れず、一緒にこれからの観音寺市を支えてくれる仲間を待っています。
ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年4月取材)
今回のインタビューを通して、お二人から共通して感じられたのは「地元を守る」という強いプライドと、それを支える確かな技術力でした。民間での厳しい経験があるからこそ、現在の安定した環境と、市民に直接貢献できる喜びに深い感謝を持ってお仕事されている姿が印象的でした。



