「地元、宇陀市をなくしたくない」。その一心で市役所の門を叩いた藤井さん。大学時代、往復4時間をかけて神戸へ通う中で再認識したのは、生まれ育った街への深い愛着でした。
現在は観光課の職員として、イベント企画からSNS発信、時には「新規事業の立ち上げ」というハードな業務まで、アクティブに街を駆け回っています。地元出身だからこそ見える景色と、自らの手で未来を創る手応え。熱い「宇陀市愛」に溢れたお話を伺いました。
- 「やっぱり宇陀が好き」。往復4時間の通学路で見つめた郷土愛と、合格への決意
- 「公務員のイメージが変わった」ゼロから形を創り出す観光課の仕事
- 「宇陀出身なんです」その一言が魔法の言葉になる現場の喜び
- 若手に「任せる」信頼と、メリハリあるワークライフバランス
- 「宇陀市を、100年先もなくしたくない」。地元の魅力と未来を託すメッセージ
「やっぱり宇陀が好き」。往復4時間の通学路で見つめた郷土愛と、合格への決意
ーまずは藤井さんのバックグラウンドと、宇陀市役所を志したきっかけを教えてください。
藤井:私は生まれも育ちも宇陀市で、今も大好きなこの街に住んでいます。高校は奈良県内の別の市へ通い、大学は兵庫の大学に進学しました。
当時はコロナ禍でオンライン授業も多かったのですが、対面授業がある日は宇陀から片道2時間、往復4時間をかけて通学していました(笑)。
ー往復4時間はかなりの長旅ですね。その経験が地元への想いに繋がったのでしょうか?
藤井:そうですね。都会の華やかさも刺激的でしたが、毎日電車に揺られて宇陀に帰ってくると、どこかホッとする自分がいたんです。大学で一度外の世界を見たからこそ、「やっぱり私はこの街が好きなんだな」と再認識できました。
実は、小学校の卒業文集の「将来の夢」にも「公務員」と書いていたんです。両親が共働きで二人とも公務員として働いていて、幼いながらに「安定していて、地域のために働く姿」に憧れがあったのかもしれません。
就職活動の時期になり、奈良県内の別の自治体も考えましたが、最終的には「一番貢献したいのはどこか」と自問自答した時、迷いなく浮かんだのが宇陀市でした。
ー採用試験でのエピソードで、特に印象に残っていることはありますか?
藤井:自分の気持ちを奮い立たせるために、得意の習字で「宇陀市合格!」と大きく書いて部屋の壁に貼っていたことです。
最終の個人面接の際、提出書類にそのエピソードを書いていたところ、面接官の方から「今は部屋に何て書いた紙を貼っているんですか?」と質問をいただきました。「はい、『宇陀市合格!』と書いて貼っています!」と力強く答えたところ、会場がすごく盛り上がって(笑)。
試験は一次の筆記から論文、面接と続きましたが、常に「宇陀市が好きだ」という熱意を軸に走り抜けたことが、今でも心に残っています。

「公務員のイメージが変わった」ゼロから形を創り出す観光課の仕事
ー現在配属されている「観光課」での具体的な仕事内容を教えてください。
藤井:入庁前は、公務員といえば「窓口で申請を受け付けたり、デスクで事務作業をしたりする」というイメージを持っていましたが、観光課は全く違いました。
配属されてすぐに、課長から「新規事業を担当して、要綱(事業のルール)から作って」と頼まれたんです。新人の私は「要綱って何ですか?」という状態からのスタートでした。
業者さんを選定して、契約を結んで、スケジュールを組んで……。最初は右も左もわからず、正直かなりハードでしんどい時期もありましたね。
ー観光課のお仕事は、現場に出ることも多いのでしょうか?
藤井:はい、週の半分くらいは外に出ていますね。イベントの準備はもちろん、パンフレットの配布や、SNS・ホームページに掲載するための写真撮影も大切な仕事です。
例えば今の時期なら、市内の桜や紅葉の状況を自分たちの足で見に行きます。「又兵衛桜(またべえざくら)」など、宇陀には素晴らしい名所がたくさんあるので、その魅力をリアルタイムで発信することを心がけています。
ー事務職という枠に収まらない、クリエイティブな一面もありますね。
藤井:そうなんです。チラシのデザインを考えたり、インスタグラムの更新をしたり。あとは、観光業者向けの補助金事務や、観光施設の管理業務もあります。宇陀市には観光客の方が利用する公衆トイレもたくさんあるのですが、その水道光熱費の支払いといった地道な管理も私たちが担っています。
華やかなイベントの裏には、こうした街のインフラを支える地道な作業があることも、入庁して知った大切な発見でした。


「宇陀出身なんです」その一言が魔法の言葉になる現場の喜び
ー地元の自治体で働く中で、特にやりがいを感じる瞬間はどんな時ですか?
藤井:地域の事業者さんや市民の方とお話しする際に、「私、宇陀出身なんです」と言うと、相手の方の表情がパッと明るくなって、グッと距離が縮まるのを感じます。
また、市内の地理をある程度把握していることも強みです。観光客の方からお電話で「どこそこの道が通りにくい」といったお問い合わせをいただいても、すぐに頭の中で地図が浮かぶので、スムーズに対応できます。
ー特に思い入れのあるプロジェクトはありますか?
藤井:1年目から担当している「宇陀ソムリエ検定」です。宇陀市の歴史や文化、最新の施策などをクイズ形式で出題する事業なのですが、これもゼロから立ち上げた新規事業でした。
問題を作る時は、歴史の専門知識だけでなく「今の宇陀」も大切にしています。市内の新しい施設のことなど宇陀市の新規事業について、あるいは「室生山上公園に植栽されている木の品種は何か」といったマニアックな問題まであるんです(笑)。
昨日も、合格者の方々を集めた交流会を開いたのですが、宇陀を愛する皆さんと一緒に「どうすればこの街をもっと盛り上げられるか」を語り合える時間は、本当に刺激的でした。

若手に「任せる」信頼と、メリハリあるワークライフバランス
ー職場の雰囲気や、上司・同僚との関係性について教えてください。
藤井:観光課の課長は、一言で言うと「スパルタ」です(笑)。でもそれは、若手にどんどん任せて成長させてあげようという信頼の裏返しだと思っています。
「これはお前に任せたぞ」と背中を押してくれるので、失敗を恐れずに挑戦できる環境です。もちろん、丸投げというわけではなく、迷った時には「ここはこう進めたらいいんじゃないか」と行政のプロとしての視点で的確なアドバイスをいただけます。
課のメンバーも明るく前向きな人ばかりで、困った時は常に相談しながらチームで動いています。

ーワークライフバランスの面ではいかがですか?
藤井:残業はほとんどありません。会議が夜にある時以外は、定時で帰れることがほとんどです。観光課はイベントが多くて土日出勤も頻繁にありますが、その分、平日にしっかりと振替休日を取ることができます。
休暇の取りやすさも魅力ですね。夏休みは6日間あるのですが、課内でも「誰がいつ休むか」を調整して、全員が100%消化しています。しっかり休んでリフレッシュできるからこそ、ハードなイベントシーズンも乗り切れるのだと思います。
「宇陀市を、100年先もなくしたくない」。地元の魅力と未来を託すメッセージ
ー地元出身であり観光課に所属する藤井さんにこそお尋ねしたいのですが、改めて「宇陀市の魅力」とは何でしょうか?
藤井:一言で言えば、自然豊かで歴史もあり、観光のポテンシャルが計り知れない街です。外から来た業者さんには、榛原(はいばら)駅に降りた瞬間に「空気が違う、美味しい!」とよく言われます。
空気がきれいで、水もきれいで、ゆっくりと時間が流れている。都会の喧騒を離れて、身も心も「デトックス」できるような場所なんです。
それから、美味しい水で育ったオーガニック野菜や、古くから伝わる「薬草」も有名です。観光課になってから、私自身も知らないスポットがまだまだたくさんあることに気づき、知れば知るほど面白い街だと実感しています。
この豊かな自然や歴史を、100年先もずっと残していきたい。そのために、観光を通じて「宇陀に住みたい」と思ってくれる人を一人でも増やしていくことが、私たちの使命だと思っています。
ー最後に、これから宇陀市役所を目指す方々へメッセージをお願いします。
藤井:宇陀市が好き、この街を一緒に盛り上げたいと思っている方に、ぜひ仲間になってほしいです!宇陀市の採用試験や日々の仕事において、一番の武器になるのは「宇陀市愛」だと私は確信しています。その熱意さえあれば、どんな困難も乗り越えていけるはずです。
宇陀に住んでいる方はもちろん、まだ来たことがないという方も、一度訪れてこの街の空気感を肌で感じてみてください。きっと「いいところだな」と思ってもらえるはずです。
皆さんの熱い想いを試験でぶつけていただけるのを楽しみにしています。一緒に宇陀の未来を創っていきましょう!

ー本日はありがとうございました。
インタビュー中、藤井さんが何度も口にされた「宇陀市愛」という言葉。それは決して抽象的なものではなく、往復4時間の通学路で感じた安らぎや、習字で書いた合格への執念、そして現場で出会う市民の方々への敬意に裏打ちされた、とても手触り感のあるものでした。
「スパルタ」と笑いながら語るその瞳には、高い壁に挑む楽しさと、街を支える責任感が同居していました。藤井さんのような若い力が、宇陀市の豊かな歴史と未来を力強く結びつけていく。そんな希望を感じさせてくれる、清々しい取材の時間でした。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年3月取材)



