「子どもたちが『行きたい!』と思える場所であってほしい」
そう語るのは、宇陀市の榛原こども園で幼児クラスを担任する入庁4年目の森田さん。同じ榛原こども園で乳児クラスを担任し、入庁2年目を迎える天根さんは、子どもの「やりたい」という思いを一つひとつ拾いながら、日々成長を見つめてきました。二人はそれぞれ異なる立場から、子どもたちと真剣に向き合っています。
今回は、保育士を目指す方に向けて、宇陀市で働く仕事の内容や魅力・やりがい、職場の雰囲気について、たっぷりとお話を伺いました。
- 父の背中と、妹への想い。二人の保育士を育てた原点
- 3園がひとつになった榛原こども園。園舎に込められた工夫
- 1年目の奮闘と、そこから見えたやりがい
- 何でも言い合える職場へ。休暇の取りやすさも
- 「行きたい場所」をつくる保育士に。二人が見据える、これからの目標
父の背中と、妹への想い。二人の保育士を育てた原点
ー保育士を目指したきっかけは何だったのですか。
森田:父が保育士をしていて、僕が幼稚園の頃に育休を取って子育てに関わってくれていました。その姿を見て育ったので、中学校の職場体験も幼稚園を選ぶくらい、早くから保育士を志していました。
父の話では、当時は奈良県で初めての男性保育士だったそうです。本当かどうかはわかりませんが(笑)。
天根:私は妹が2人いて、生まれたときからお世話好きだったようです。親戚が集まるときも、自然と年下の子や赤ちゃんのお世話をする役目になっていて、そこから保育園の頃には保育士になりたいという思いを持つようになりました。

ー数ある自治体の中で、宇陀市を選んだ理由を教えてください。
森田:祖父母が宇陀市に住んでいて、小さい頃から馴染みのある土地でした。大学では自然を活かした保育について学んでいたので、自然豊かな宇陀市であれば、自分の強みを活かしながら働けると思ったことも理由のひとつです。
天根:私は地元に恩返しをしたいという思いが一番でした。教育実習や職場体験で何度も宇陀市に関わる中で、先生方の温かさをとても感じていて、自分もその一員になりたいと思い志望しました。就職活動は、併願をせず宇陀市だけを受けました。

3園がひとつになった榛原こども園。園舎に込められた工夫
ー現在勤務されている榛原こども園について教えてください。
森田:今年の4月に開設された園で、これまで市内にあった3つの園が統合される形でできました。子どもの数が減っていたこともあり、僕が以前勤めていた園でも、昨年度受け持っていたクラスは8人ほどしかいませんでした。
天根:園の隣にはこども家庭センターが併設されていて、子育ての相談ができる場所や、まだ園に通っていない親子が集まれる広場のような機能もあります。
市役所も近くにあるので、子育てに関する手続きなども含めて、通いやすい環境になっているのではないかと思います。

ー園舎の造りに特徴があるそうですね。
森田:建物がコの字型になっていて、一角が乳児棟、対面側が幼児棟、その間に職員のいる管理棟があります。外で遊んでいるときに、乳児の子が窓越しに幼児の様子を見に来たりして、自然と乳児と幼児が交流できる造りになっています。
天根:園庭を囲むように広いテラスがあって、乳児の子どもたちもテラスに出て外の空気に触れることができます。幼児のみんなが体操をしている様子を、乳児のみんなで見て真似をしたりする姿もあり、私自身、このテラスがとても気に入っている場所です。
森田:幼児側のテラスもかなり広くて、雨の日でも走り回れるくらいの広さがあります。乳児の子が窓越しに幼児を見ている姿を見るのも、僕にとって好きな瞬間のひとつです。

1年目の奮闘と、そこから見えたやりがい
ーそれぞれの1日の仕事の流れを教えてください。
天根:乳児クラスは8時半に登園し、9時半のおやつまでは自由に遊ぶ時間にしていて、その間にトイレや手洗いなどの生活面も見ています。給食のあとは午睡の準備をし、15時ごろに起きておやつ、16時までは各クラスでゆったり過ごすという流れです。
森田:幼児クラスは登園時間が子どもによって異なり、9時ごろまでに全員が集まります。朝の体操のあと、製作活動やプール、色水遊びなどをして過ごし、給食のあとは降園の準備をする子と、午睡の準備をする子に分かれて対応しています。
ー1年目は担任を持つと伺いましたが、当時はどうでしたか。
天根:去年のことなのですが、1年目の4月5月は記憶がないくらいバタバタしていました。それでも、迷ったときには「1年目だから」と安心させてくれる先輩方がたくさんいて、すぐに聞きに行くことができました。
忘れっぽいのが自分の弱みなので、たくさんメモを取るようにして、少しずつ力をつけてきたと思います。
ー男性保育士として、大変だった面はありましたか。
森田:1年目は、周りが全員女性の先生だったこともあって、肩身が狭いような感覚がありました(笑)。ただ、それも1、2か月くらいのことで、先生方はみんな優しく、本当にアットホームな雰囲気で受け入れてくれました。
仕事以外の面でもアドバイスをもらうことがあり、働きやすい環境だと日々感じています。これから保育士を目指す男性の方には、最初は心配でも、働き出せば大丈夫だと伝えたいですね。
ー印象に残っているエピソードはありますか。
森田:以前担当していた子が、「先生に憧れて家でピアノを弾いたり、僕の真似をする遊びをしている」と、保護者から聞いたことがありました。しんどいこともありましたが、子どもとちゃんと向き合ってきたことが伝わっていたのだと実感して、とても嬉しかったです。
天根:単語しか言えなかった子が、最後には私の名前を呼んでくれるようになったり、今日は誰がお迎えに来るのか会話ができるようになったりしたときは、成長をとても感じました。
保護者の方から「家でも先生の名前を言っているんです」と言われたこともあり、心が温まる出来事として、今でも鮮明に覚えています。

何でも言い合える職場へ。休暇の取りやすさも
ー職場の雰囲気について、どのように感じていますか。
天根:今年度は4月に全部が新しくスタートし、ベテランの先生方も含めてみんな慌ただしい中でのスタートでした。
それぞれが持っている経験や知識を持ち寄って、「みんなで園を作っていこう」という空気があり、乳児と幼児関係なく、何でも言えるような雰囲気に少しずつなってきていると感じます。
森田:統合したばかりの頃は、初めて顔を合わせる先生も多く、不安が大きかったのですが、日を重ねるごとに話し合いの時間を持つようにしてきました。今は職員間でも話しやすくなり、自分の保育に集中できる環境になってきていると思います。
ー大変だったときは、どのように支えてもらいましたか。
天根:ペアの先生に聞くのはもちろんですが、職員室に行くと園長先生や副園長先生をはじめ、先輩方が「最近どう?」と気にかけてくれることが多く、こうしたきっかけがあったからこそ、一人で抱え込まずに過ごせたのだと思います。
ー休暇や残業についても教えてください。
森田:休みはカレンダー通りに取らせてもらっています。長期休みのときは、「できるだけ有休を取ろう」と先輩方が声をかけてくれるので、決められた日数の休みは、それぞれ計画的に取らせてもらっています。
天根:行事前は多少残業がありますが、残って作業しようかなと思うときも、先輩が「また明日にしよう」「もう帰ろう」と声をかけてくれるので、そのままみんなで駐車場へ向かう、なんてことも結構ありますね。

「行きたい場所」をつくる保育士に。二人が見据える、これからの目標
ー今後、保育士としてどのような姿を目指していますか。最後に、保育士を目指す方へメッセージをお願いします。
天根:私の理想は、子どもの「やりたい」という思いを叶えてあげられる保育士です。1歳児クラスの子どもたちはまだ言葉で自分の思いを伝えられない子もいるので、ちょっとしたサインを見逃さないよう心がけています。今後もどのクラスを担当しても、子ども小さなサインに気づき、子どもの気持ちに寄り添っていける保育士になっていきたいと思います。
森田:僕は、幼稚園やこども園が、【子どもたちが『行きたい!』と思える場所】であってほしいと思っています。そのために保育士がいると思っていて、子ども自身がやりたいことや知りたいことを見つけるきっかけになれる存在になれたらいいなと思います。

ー本日はありがとうございました。
榛原こども園という新しい環境の中で、それぞれの立場から子どもと向き合うお二人の姿がとても印象的でした。
統合という大きな変化のなかでも、日々の対話を重ねながら少しずつ環境を築いていく姿勢や、子どもの小さな成長を大切に見つめる眼差しから、宇陀市の保育の温かさが伝わってきました。
これから保育士を目指す方にとって、お二人の言葉が一歩を踏み出すきっかけになれば嬉しく思います。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年7月取材)



