「新しいものとか、何かが出来上がっていくのがいいなって思いました」——そう語るのは、有田市役所の建設部都市整備課で建築技術職として働く、入庁11年目の上野山さん。
有田市の出身で、建築を本格的に学び始めたのは大学から。ハウスメーカーで住まいの設計に携わったのち、地元・有田市へ。空き家の再生から学校の建て替えまで、まちの建物を幅広く携わってきました。
今回は、有田市の建築技術職を目指す方に向けて、その仕事内容や働く魅力、そして職場の雰囲気について、たっぷりとお話を伺いました。
- 「公務員にこんな仕事があるなんて」。地元・有田市という選択
- 空き家対策から学校施設まで。暮らしを丸ごと支える現場
- 「どう使うか」から考える。打ち合わせで形になっていく面白さ
- わからないことは、みんなで解決すればいい。相談しやすい職場
「公務員にこんな仕事があるなんて」。地元・有田市という選択
ーまずは、上野山さんのご出身と、建築の道を意識したきっかけについて教えてください。
上野山:有田市の出身で、市外に出たのは兵庫の大学に進学した4年間だけですね。建築自体は、実はそんなに早くから意識していたわけではないんです。大学受験のときも、どこに行こうかと迷っていたくらいで。
ただ、家族が建築関係の学校を出ていて、その影響で建物に興味を持ったので、大学もそういう方面に進もうかなと。今思えば、はっきりとした動機があったわけではなかったんです。
ー大学卒業後は、どんな道を歩まれたんですか。
上野山:ハウスメーカーで2年間、設計部にいました。主にインテリア設計で、プランが決まったお客さまに対して、キッチンや壁紙などの打ち合わせをしていました。お客さまの要望を聞きながら、住まいの中身を一緒に決めていく仕事でしたね。
ーそこから、なぜ公務員の道を考えられたんでしょう。
上野山:特に「転職したい」と思って公務員を目指したわけではなく、たまたま有田市で建築の仕事の募集があると聞いたんです。
それまで、公務員にそういう仕事があること自体、私は知らなかったんですよ。地元で働けるというのもあったので、受けてみようかなと思いました。

空き家対策から学校施設まで。暮らしを丸ごと支える現場
ー入庁されて最初の配属はどちらで、どんなお仕事をされていたんですか。
上野山:建設課の建築住宅係です。主に空き家対策と、建築確認申請の受付業務、それからリフォーム補助金の受付などをしていました。
空き家対策では、放置される空き家が多くて、近隣の住民の方からご意見やご要望をいただくことが多いんです。それに対して現地を見に行ったり、所有者を探したりします。見つかった場合は、適正な管理を依頼する通知文を送付します。
ー日々の業務はさまざまだったかと思いますが、中でも印象に残っている仕事はありますか。
上野山:そうですね。市のプロジェクトのひとつで、「一つの空き家を改修して活用していく」という取り組みがあり、私もそのメンバーに加わりました。最終的には、地域の暮らし体験などができる施設「くらしちゃる矢櫃」になったんです。自治会中心の協議会が運営して、ほかの市町村から地域を体験しに来る方を受け入れる場所になっています。
公務員にこういうクリエイティブな仕事があるとは、まず思っていなかったですね。入庁1年目で、何ができるかも分からない中でしたけれど、周りの協力を得てやり遂げたときは達成感がありました。
ーその後は教育委員会、そして現在の都市整備課へと異動されています。それぞれ、どんなお仕事を担当されてきたんですか。
上野山:教育総務課には5年いました。主に学校施設を管理する部署なので、学校の維持管理が中心ですが、市民会館や球場など学校施設以外の教育委員会の施設も対応します。「トイレが壊れた」「雨漏りしてきた」といった要望に応えて直したり、長期的に見て大規模な改修したりします。
今の都市整備課は昨年度からなので2年目です。昨年度より、施設の営繕等に関することが、都市整備課に集約され公共施設すべてを建築の技術職で対応していて、その中で私は引き続き学校施設を担当しています。
ー都市整備課に移って、新たに加わった仕事はありますか。
上野山:都市整備課への異動後は、災害時の対応が加わりました。私も先日の台風の影響でポンプ場に行き、たまった雨水を外へ排水する作業を担いました。こうした災害時の対応も、都市整備課や建設課といった部署の業務になっています。
台風が来れば、翌日には学校を見て回ります。雨漏りや飛来物があれば、自分たちでできることは直し、できないところはすぐに業者を手配するなど、「危なくないように整える」までが仕事です。災害対応は、自治体の建築職に欠かせない役割ですね。

「どう使うか」から考える。打ち合わせで形になっていく面白さ
ー大変な面も伺いましたが、逆に、この仕事のやりがいや魅力はどんなところにありますか。
上野山:改修を手がけていると、ものが新しく生まれ変わっていきます。「これはどういうものにしようか」と考えたり、学校や施設の管理者の方と打ち合わせを重ねながら、一つひとつ決めていく。その過程が、私はとても面白いと感じています。
例えば、中学校のカーテンです。建物を新しく建てる際は外部の設計士の方が入るのですが、その方と打合せするなかで、メディアセンター棟には窓が多くあり、すっきり見せるために縦型ブラインド(バーチカルブラインド)を採り入れました。そうした細部を決めていく時間も、楽しいものでした。
ーこれまでで、特に思い出深い仕事と、そのときのご苦労があれば教えてください。
上野山:大変でしたが、なんとかやり遂げられたという意味では、小学校の校舎移転が印象に残っています。中学校の統合で一つの校舎が空いたため、老朽化が進んでいた小学校をそちらへ移すことになり、中身を小学校用に改修する計画でした。
新学期の4月に合わせるのは難しく、夏休みの間に引っ越すという形をとり、工事はおよそ3〜4か月。ほかの現場もいくつか抱えていて、その案件だけに専念できる状況ではありませんでしたが、無事に終えられてよかったと思っています。
引っ越しには私も手伝いに入り、児童のみなさんは2学期から新しい校舎で過ごしています。先生方からも「過ごしやすい」「子どもたちも快適に過ごしています」という声をいただき、とてもうれしく感じました。

わからないことは、みんなで解決すればいい。相談しやすい職場
ー職場の雰囲気は、どのように感じていますか。係を超えた関わりもあるのでしょうか。
上野山:今は建築職がほかにもいるので、わからないことがあれば相談しますし、相談を受けることもあります。全体として、相談しやすい環境だと感じています。
同じ課には計画整備係という係もあり、計画道路や排水を担当しています。道路について教えていただくこともありますし、建物と周辺道路の兼ね合いがあるため情報を共有することもあります。そうしたやり取りも含めて、風通しのよい職場だと思います。

ー残業や休みの取りやすさなど、働き方の面はいかがですか。繁忙期はやはり夏でしょうか。
上野山:有給休暇は、取りたいときに取れていると感じています。月に1回ほどのペースですが、周囲も休みを取りますので、気兼ねなく休める雰囲気です。夏季休暇も5日あり、昨年度はすべて取得しました。
残業については、改修の現場がいくつか重なると増えることがあります。学校は夏休みに工事を行うことが多いため、その時期に集中しますし、災害対応で時間外勤務が生じることもあります。
ほかに忙しいのは年度始めですね。設計や仕様を固めて入札へ進める流れが5月ごろまで続きます。年度末も、年度内に終える工事や検査が重なると忙しくなります。それでも、落ち着いている時期には残業せずに帰れる日もきちんとあります。
ー最後に、有田市の建築職を目指す方へメッセージをお願いします。
上野山:私自身がそうだったように、分からないことが、おそらくほとんどだと思います。けれど、そうしたことはみんなで解決していけばよいので、興味があれば来ていただけたらと思います。
今私が担当している以外にもさまざまな仕事がありますので、そういった分野にもぜひ挑戦していただけるとうれしいです。

ー本日はありがとうございました。
終始穏やかに、一つひとつ言葉を選びながら話してくれた上野山さん。建築を本格的に学び始めたのは大学から、公務員に建築職があることも知らなかった——そんな出発点から、空き家の再生や学校の建て替えまでを手がける今へ。
「何も分からずに来た」という一言には、だからこそ次に続く人を信じられる、という温度がありました。新しいものが出来上がっていく現場で、まちの暮らしを支える。そんな仕事が、有田市の建築技術職にあります。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年6月取材)



