愛知県みよし市で保育士として働く山下さんのインタビュー記事です。
幼い頃の体験から保育士を志した山下さん。現在は0歳児の担任として、子どもたちの成長を間近で感じられることに大きなやりがいを感じているとのことです。
そんな山下さんに、主体的な保育を実践するまでのエピソードや、新人保育士を市全体で支える「トレーナー制度」など、みよし市ならではの働く魅力について、詳しくお話を伺いました。
- 子どもに救われた原体験からみよし市で保育士へ。
- 子ども主体の保育を実践。試行錯誤の毎日とやりがい
- 理想と現実のギャップ。それを乗り越える、みよし市の働きやすさ。
- 市全体で新人を見守る「トレーナー制度」と、温かい職場環境
- 子どもと共に成長する。未来の保育士へのメッセージ
子どもに救われた原体験からみよし市で保育士へ。
ーまずは自己紹介と、これまでの経歴を教えてください。
山下:生まれも育ちもみよし市で、大学は県内にある保育系の短期大学に進学しました。卒業後、新卒でみよし市役所に保育士として入庁し、今年で7年目になります。
一番最初に勤めたのが、みよし市の北部にある「みよし市立みどり保育園」で、そこで4年間勤務しました。その後、現在の「みよし市立わかば保育園」に異動となり、今年で3年目になります。
ー保育士を目指されたきっかけは何だったのでしょうか?
山下:元々子どもが好きだったというのもありますが、直接のきっかけは、中学校の頃に大好きだった祖母を亡くした経験です。
当時は本当に気持ちが落ち込んでしまっていたのですが、3歳くらいだったいとこが、屈託のない笑顔で笑いかけてくれたり、「一緒に遊ぼう」って誘ってくれたりしたんです。そのおかげで、沈んでいた気持ちが少しずつ晴れていって、「子どもに救われたな」と感じました。
その時、「子どもの力は人の心をこんなにも動かすんだ」と実感したんです。そんな子どもたちと深く関われる仕事がしたいと思い、保育士を目指すようになりました。高校も、県内にある保育科の学校に進学しました。
ーその頃から目標が定まっていたのですね。就職活動では、なぜ「みよし市」の保育園を選ばれたのですか?
山下:元々民間の園は考えておらず、公立園に入りたいと考えていましたので、就職活動の際も、民間の園は1つも受けていないんです。
私の家は両親も公務員だったこともあり、親から「公務員はいいよ」と勧められていたのが理由の一つです。
就職活動を進める中で、公務員の何が良いのかを自分なりに調べていく中で、やはり福利厚生がしっかりしていることや、給与が安定している点は大きな魅力に感じました。
女性として、結婚や出産を経ても長く仕事を続けていくことを考えた時に、公立の保育士という働き方が自分に合っていると感じました。
もう一つの大きな理由が「異動」があることです。みよし市の公立保育園では、3〜5年に一度、園を異動する機会があります。
ずっと同じ場所にいるよりも、定期的に環境が変わることで、色々な先生方に出会えますし、多様な考え方や保育の仕方に触れることで、自分自身も刺激を受けながら成長できると考えました。それが私にとっては大きなメリットに感じられたんです。
子ども主体の保育を実践。試行錯誤の毎日とやりがい
ー現在の1日の仕事の流れについて教えていただけますか?
山下:今は0歳児クラスの担任をしています。定員9人に対して保育士が3人という体制です。
まず朝は、子どもたちを笑顔で受け入れ、保護者の方からご家庭での様子を伺いながら、体調や怪我の有無などを一緒に確認します。その後は、子どもたちと室内で遊んだり、天気が良ければ外で水遊びをしたりと、日中の活動を楽しみます。
食事は、子ども一人ひとりと向き合えるように1対1で介助し、その後は午睡の時間です。
子どもたちが寝ている間は、私たちも休憩を取りますが、それと同時に事務作業も行います。みよし市では「コドモン」というアプリを導入しているので、タブレットを使ってその日の子どもの様子を記録し、保護者の方に伝える連絡帳を作成したり、月に一度の「ドキュメンテーション」という活動記録を作成したりしています。
子どもたちが起きたら午後のおやつの準備をし、降園の時間まで一緒に遊びながら保護者の方のお迎えを待つというのが、大まかな1日の流れですね。

ー仕事のやりがいや、保育士という仕事の魅力を感じるのはどんな時ですか?
山下:本当に些細なことなのですが、やはり子どもたちの「成長」や「変化」を間近で見られた時に、一番のやりがいを感じます。
0歳児クラスだと、昨日までできなかった「たっち」ができるようになったり、最初の一歩が歩けたりと、目に見える成長が毎日のようにあって、その度に感動します。
これが幼児クラスになると、今度は「心」の成長が見えるようになって、それもまた面白いんです。例えば、去年は「僕がやる!」と自己主張が強かった子が、年長さんになって年下の子が困っている姿を見て、「僕が貸してあげるよ」と優しく声をかけている。そんな場面に遭遇すると、本当に胸が熱くなりますね。
子どもたちが日々少しずつ成長する瞬間に立ち会えること、それが保育士という仕事の何よりの魅力だと感じています。
ー確かに毎日一緒にいる保育士だからこそ見える成長もありそうですね。これまでで、一番印象に残っているエピソードがあれば教えていただけますか?
山下:一昨年に年長クラスを担任した時の「発表会」が、とても印象に残っています。
実は、その前に一度年長クラスを持った時、劇の発表会がどうしても「保育士主導」になってしまったという反省点がありました。みよし市では、子どもたちの「やってみたい」という気持ちを尊重する「主体的な保育」を大切にしているので、次こそは子どもたちが主役の劇を作りたいと強く思っていました。
ちょうどその時、隣のクラスの先生が、子どもたちのアイデアを形にするのが本当に上手な方だったので、その先生の姿から多くのことを学び、私も子どもたちの声にじっくりと耳を傾けるようにしたんです。
すると、「登場人物を増やしたい!」「大道具はこんな素材で作りたい!」と、子どもたちから次々と素晴らしいアイデアが出てくるようになりました。
発表会当日も、以前のように私が指示を出すのではなく、私が子どもたちの輪の一員になるような形で、一緒に劇を創り上げることができました。子どもたちも本当に楽しそうで、終わった後には「もう一回やりたい!」という声が上がるほどでした。
あの日、子どもたちの力で物語が進んでいく光景を目の当たりにして、改めて保育の面白さと、子どもたちの持つ可能性の大きさを実感しました。私の中で「主体的な保育」を本当に体現できた、思い入れのある経験ですね。
理想と現実のギャップ。それを乗り越える、みよし市の働きやすさ。
ー実際に働いてみて、働く前に抱いていたイメージとのギャップはありましたか?
山下:はい、たくさんありました(笑)一番は、やはり事務作業の多さですね。計画書や指導案の作成があることは聞いていましたが、学生の頃に想像していたよりも多くて、最初は戸惑いました。
ただ、みよし市では「働き方改革」が進んでいて、手書きだった書類がパソコンで作成できるようになったり、週案が簡素化されたりと、ICT化によって事務作業の負担がどんどん軽くなってきています。私が入庁した頃に比べると、今ははるかに働きやすくなっていると感じますね。
ー子どもたちとの関わりの中で感じたギャップはありましたか?
山下:それもありましたね。1年目に3歳児クラスを担任した時、子どもたちの前に立って「お話するよ」と声をかけても、全然私の方を見てもらえず、話も聞いてもらえなかったんです。
私の中のイメージでは、先生が話せば子どもたちはみんな注目して静かに聞いてくれるものだと思い込んでいたので「え?」という感じでしたね(笑)
どうしたら良いか分からず悩んでいた時、相談に乗ってくれたのが「トレーナー」の先生でした。「ただ話すだけじゃなくて、子どもたちの心が『楽しそう!』『面白そう!』って動かないとダメだよ」とアドバイスをいただき、ペープサートを使ってみたり、声のトーンを変えてみたりと、色々工夫するようになりました。
そうすると、子どもたちがパッとこちらに興味を向けてくれるようになったんです。保育は一方的に教えるのではなく、子どもたちの心をいかに惹きつけるかが大切なんだと学びました。
市全体で新人を見守る「トレーナー制度」と、温かい職場環境
ー先ほどお話に出た「トレーナー」について、詳しく教えていただけますか?
山下:トレーナー制度は、新規採用職員がスムーズに職場に慣れ、持っている力を最大限に発揮できるように、市全体でサポートする制度です。
新規採用職員一人ひとりに対して、年齢の近い先輩職員が「トレーナー」として一人つきます。このトレーナーが、仕事のことからプライベートなことまで、一番身近な相談役になってくれるんです。
私自身も1年目の時、トレーナーの先生に本当にお世話になりました。公開保育の計画書を一緒に考えてくれたり、電話の取り方のような基本的なことから丁寧に教えてくれたり。右も左も分からなかった私にとって、何でも相談できる先輩がすぐそばにいてくれることは、本当に心強かったです。
先生方は日々忙しそうなので、いきなり他の先生に相談するのは勇気がいりますが、まずはトレーナーの先生に相談し、そこから主任の先生や必要があれば園長先生に繋いでもらえるんです。この制度があるおかげで、新人の先生も安心して一歩を踏み出せる環境だと思います。
ーみよし市の保育園で働く上での、その他の特徴や強みはありますか?
山下:みよし市は比較的小さな市なので、園同士の横の繋がりがとても強いです。研修などで他の園の先生と顔を合わせる機会が多く、ほとんどの先生が顔見知りになりますね。
また、「わらび会」という保育士全体の会があって、みよし市のお祭りにみんなで参加して踊ったり、年に一度旅行に行ったりと、親睦を深める機会もたくさんあります。
そうした繋がりがあるので、職場の風通しはとても良いと感じます。人間関係に不安を感じる方もいるかもしれませんが、みよし市は世代の垣根を越えて気軽に話せる温かい雰囲気がありますし、楽しく働ける環境だと思います。
子どもと共に成長する。未来の保育士へのメッセージ
ー最後に、これから保育士を目指す方々へメッセージをお願いします。
山下:保育の現場は、毎日が新しい発見の連続です。決まった日常というのはなく、目まぐるしく変化する日々の中で、子どもたちから教わることも本当にたくさんあります。
子どもたちが成長していく姿はもちろんですが、それを見守る私たち自身も、日々成長させてもらえる。それが保育士という仕事の素晴らしいところです。
みよし市は、新人職員を市全体で育てていこうという温かい風土があります。充実した研修制度やトレーナー制度など、安心して成長できる環境が整っています。もし働く環境に少しでも不安を感じている方がいたら、ぜひ一度、みよし市を覗いてみてください。
子どもたちの笑顔に囲まれて、私たちと一緒に成長していける日を楽しみにしています!
ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年7月取材)