「正解のない仕事だと思います。それでも、今できる最適解を探し続けています」——そう語るのは、北広島市役所保健福祉部福祉総合相談室で社会福祉士として働く、入庁10年目の岩澤さん。
北広島市出身の岩澤さんは、大学で社会福祉を学んだのち、民間企業での営業職を経て、平成29年度に北広島市役所へ入庁。以来、高齢者や障がいのある方への相談支援や権利擁護に関わる業務を担い、現在は福祉総合相談室でも同様の業務に携わっています。
今回は、社会福祉士を目指す方に向けて、仕事内容ややりがい、職場の雰囲気について、たっぷりとお話を伺いました。
- 地元への愛着。営業職から北広島市役所・社会福祉士へ
- 名称は変われど、一貫して担ってきた相談支援。入庁10年目で見てきた組織の変遷
- 留置所での15分間。誰かの人生が変わる瞬間に立ち会う仕事の重みとやりがい
- 連携のしやすさが北広島市の強み。福祉の心を持つ仲間を待っています
地元への愛着。営業職から北広島市役所・社会福祉士へ
ーまずは、岩澤さんのご経歴について教えてください。
岩澤:出身は生まれも育ちも北広島市で、大学は北海道内の私立大学の社会福祉学部に進学しました。
社会福祉という分野に強い思い入れがあったわけではなく、「人の役に立つ仕事がしたい」という漠然とした思いから進路を考える中で福祉分野に触れる機会があり、社会福祉士という国家資格があることを知りました。学びを深めたのは、大学に進学してからです。
ー大学卒業後は、どのようなお仕事をされていたのですか。
岩澤:卒業後は、介護保険制度に基づく福祉用具のレンタルや販売、住宅改修を扱う企業で、3年間、営業職として働いていました。ケアマネジャーの方からご紹介いただいた高齢者の方のご自宅を訪問し、住みやすい環境をつくるお手伝いをする仕事です。
売り上げはもちろん求められますが、それ以上に、困っている高齢者の生活がより良くなるよう商品を提供させてもらうという感覚の方が強かったですね。
ーそこから、なぜ北広島市役所を志すことになったのですか。
岩澤:前職は好きな仕事だったので、続けていくつもりでいましたが、地元である北広島市で社会福祉士を募集していることを広報で知り、興味を持ちました。
社会福祉士としての実務経験はありませんでしたが、前職で培ってきた、ケアマネジャーや医療・福祉の関係者と連携しながら本人の生活を支えるという経験は、地元に還元できるのではないかと思い、応募を決めました。

名称は変われど、一貫して担ってきた相談支援。入庁10年目で見てきた組織の変遷
ー入庁後、最初の配属はどちらだったのですか。
岩澤:平成29年度に入庁し、最初は保健福祉部高齢者支援課に配属になりました。高齢者の方からの相談を受けることが主な仕事で、地域包括支援センターと連携しながら対応にあたっていました。1年目から、高齢者支援課の主務に加えて、高齢者・障がい者相談担当も兼務していました。
ーその後、部署の名称や体制はどのように変わっていったのですか。
岩澤:平成30年度からは高齢者・障がい者相談担当が主務になり、令和4年度には福祉総合相談室という名称に変わりました。
福祉総合相談室が立ち上がったことで、子どもから高齢者まで、障がいの有無に関わらず様々な相談を一元的にワンストップで受けられる体制になりました。
ー部署や係の名称は変わっていますが、岩澤さんご自身が担当されてきた業務は変わっていないのでしょうか。
岩澤:組織上の名称は変わっていますが、高齢者や障がいのある方の相談を受けるという業務内容そのものは、大きくは変わっていません。令和5年度に高齢者支援の事業を担当する係から障がい者支援の事業を担当する係に異動しましたが、相談支援そのものは、入庁以来、年代や障がいの有無を問わず幅広く担当しています。
また、虐待対応や成年後見制度の申立事務といった、社会福祉士としての権利擁護に関わる業務も、現在まで一貫して行っています。
ー相談は、どのような形で寄せられることが多いのですか。
岩澤:お電話でご連絡いただくほか、窓口に直接いらっしゃる方もいます。「話を聞いてもらえて気持ちがすっきりした」と言ってもらえることもあります。
地域包括支援センターや相談支援事業所などがすでに関わっている場合は、対応が難しい方や世帯について「一緒に訪問してほしい」「ケース会議に入ってほしい」とお互いに声をかけ合うことも多いです。

留置所での15分間。誰かの人生が変わる瞬間に立ち会う仕事の重みとやりがい
ーこの仕事の大変さは、どのようなところに感じますか。
岩澤:福祉総合相談室に寄せられる相談は、悩みが深いものが多いと感じています。困っている方の気持ちに寄り添いすぎたり、引っ張られてしまったりすると、自分自身も疲弊してしまうので、感情労働としての側面が大きい仕事だと思います。
目の前の方をなんとかしてあげたい、助けてあげたいという思いが強すぎると、かえって解決に結びつかないことも多いので、最善を目指すというより、「今の段階で目指せる最適解」を探るように心がけています。
ーそれでも、この仕事にやりがいを感じるのはどのような時ですか。
岩澤:市民である限り、生まれてから亡くなるまで、誰もが相談支援の対象になり得ます。さまざまな立場の方から相談をお受けする中で、すぐに解決できる相談はほとんどありません。何年も状況が変わらないままお付き合いする方もいれば、数年越しに再び連絡をくださる方もいます。
時間のかかることだと受け止めて、本人や家族に伴走し続ける忍耐力が必要だと感じる一方で、気持ちが変わるタイミングを見極め、適切な機関につなぐ判断力や瞬発力が求められる場面も多くあります。
大変な仕事だと感じることもありますが、目の前の出来事に真摯に向き合い続けることで信頼関係が築かれていき、事態が好転した時に本人やご家族から「あの時は本当に助かりました。ありがとうございました」と言っていただけることがあります。その瞬間に、この仕事をしていて良かったと心から思えます。
ー特に印象に残っているエピソードがあれば教えてください。
岩澤:これまで、警察署に留置されている方や刑務所に服役中の方、精神科の閉鎖病棟に入院中の方のところへ会いに行かせていただいたこともあります。この仕事に携わっていなければ、きっと行くことはなかった場所です。
あるとき、逮捕された方に面会に行った際、面会時間が15分しかない中で、初対面の相手に、これから必要になるであろう支援について、本人が不快にならないよう伝え方に気を遣いながらお話ししました。
その後、実際に医療につながり退院された時に、「あの時わざわざ留置所まで会いに来てくれて本当に心強かったです」と、感謝のご連絡をいただいたんです。
私たちが出会うのは、その方の人生の中で落ち込んでいるタイミングであることが多いのですが、そこから次のステップに進んでいくターニングポイントに関われることに、大きなやりがいを感じています。

連携のしやすさが北広島市の強み。福祉の心を持つ仲間を待っています
ー職場の雰囲気について、上司や同僚、他部署との関係性はいかがですか。
岩澤:所属部署の上司や同僚だけでなく、高齢者支援課や障がい福祉課など連携する課、教育委員会や子ども家庭課の職員など、関わる方はみんな市民の方に対して一生懸命な職員ばかりです。
連携する外部の関係機関の方々も協力的なので、職場の人間関係にはとても恵まれていると感じています。

ー休暇の取りやすさや残業についてはいかがですか。
岩澤:休暇は取りやすい環境です。年間スケジュールの中で長期休暇の予定を立てられるので、私自身も数か月先の旅行を楽しみに、日々の業務に励んでいます。
残業は基本的に多くありませんが、緊急の相談対応が必要になることや、関係機関との会議が夕方以降に設定されることで、月に数回、時間外の対応が発生することはあります。それでも、一人の職員に負荷がかからないよう配慮してもらえていると感じています。
ー最後に、北広島市役所の社会福祉士を目指す方へメッセージをお願いします。
岩澤:北広島市は、福祉に熱心な方がたくさんいる街だと感じています。専門職が所属する部署だけでなく、他の課の事務職員も福祉総合相談室と積極的にやり取りをしてくれますし、外部の関係機関の皆さんもいつも協力的です。社会福祉士として働く上で、職場内外を問わず連携のしやすい環境だと胸を張って言えます。
私自身、社会福祉士としての知識や技術は、この職場で培ってきました。経験を積むための土壌が整っていると思いますので、福祉の心を大切に、誠実かつ真摯に市民の方と向き合える方をお待ちしています。

ー本日はありがとうございました。
今回のお話から強く伝わってきたのは、答えのない仕事に、答えを探し続ける姿勢そのものが、誰かにとっての支えになっているということでした。
地域や生活の場だけではなく、時には留置所や刑務所、精神科病棟にも足を運び、僅かな面会時間にも心を尽くす。その積み重ねの先に、市民の新たな一歩があります。福祉の心を持つ方を、北広島市はきっと歓迎してくれるはずです。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年7月取材)



