滑川市役所の奥村さんのインタビュー記事です。民間企業でSEや営業として15年間活躍した後、2023年10月に中途入庁。「地域の人々と関わりたい」と飛び込んだのは、新設されたばかりのDX推進課でした。町内会アプリの導入やスマホ教室など、市民に寄り添うデジタル支援のやりがい、そして子育てと両立できる柔軟な働き方や温かい職場のリアルについて、語っていただきました。
- 「地域の輪」への憧れ。15年間のシステムエンジニアから市役所へ
- 新設のDX推進課へ。ビジネスパーソンから「一人の人間」としての対話へ
- 導入が目的ではない。市民の変化を一緒に喜べる「デジタル支援」のやりがい
- 穏やかな職場。時差出勤やテレワークで叶えるワークライフバランス
「地域の輪」への憧れ。15年間のシステムエンジニアから市役所へ
ーまずはご経歴を教えてください。
奥村: 私はいわゆるシステムインテグレーターと呼ばれる民間企業で、大学卒業後から約15年ほど働いていました。最初の4年間は関西の大阪で働き、その後は地元である富山にUターンしました。
システムエンジニア(SE)として13年、営業として2年ほど、システムの新規開発や運用保守、プロジェクト管理、新規サービスの提案などに携わっていました。お客様の業種も本当に幅広く、製造業から卸売、医薬品、保険会社、銀行など、多様な業界のビジネスをシステム面から支援する仕事をしていました。
ー長年勤めたIT業界から、なぜ市役所へ転職しようと思ったのでしょうか?
奥村:15年という仕事の節目を迎える中で、企業向けのBtoBの仕事だけでなく、もっと幅広い立場の方々、つまり地域で暮らす市民の皆さんと直接関わりながら、地域に直接貢献できる仕事に挑戦したいという思いが日に日に強くなっていきました。
ーなぜそう思われたのですか?
奥村:地域の結びつきが強い環境で育ったことが大きいです。例えば、畑帰りのおばあちゃんたちが休憩がてらよく私の家にお茶を飲みに来ていて、そのまま長い井戸端会議が始まって私も輪に混ざって会話することや、同じ町内の方は年齢関係なくみんな顔見知りで、地域の行事にもよく参加されることなど。そういった地域の中で人とのつながりや支え合いを実感してきた経験から、今度は地域の力になりたいと思ったんです。
そしてそのときに滑川市役所の求人を見て、自宅から通える、そして他の自治体に比べて人口あたりの職員数が少ないので、「何でも幅広くやらせてもらえるんじゃないか」と感じて応募しました。
あと、試験勉強はほとんどしていません。滑川市の中途採用試験は小論文と面接だけで、新卒の方が受けるような一般教養などの筆記試験はありませんでした。だからこそ挑戦しやすかったというのもあります。
新設のDX推進課へ。ビジネスパーソンから「一人の人間」としての対話へ
ー無事に入庁され、現在はどのような部署に配属されているのでしょうか。
奥村: 2023年4月に新設されたばかりの「DX推進課」に配属されました。入庁は10月で、これから本格的に施策を軌道に乗せていくぞというタイミングでした。課は7名体制で、DX係とSDGs係に分かれており、私は5名いるDX係の方に所属しています。
ーDX推進課では、具体的にどのような業務を担当されていますか?
奥村: 大きく分けて3つの業務を担当しています。 1つ目は、町内会向けの電子回覧板アプリ「結(ゆい)ネット」の導入支援です。これまで紙で回していた回覧板を電子化し、市内の町内会に広めていくための取り組みです。
2つ目は、デジタルデバイド(情報格差)対策です。スマホ教室の企画・運営や、スマホを持たない方や使えない方向けの「より簡単なデジタルデバイス」の実証実験などを行っています。
3つ目は、市の公式LINEの機能拡充です。オンライン申請機能をさらに充実させたり、これまで紙で配布していた高齢者や障害者向けの「福祉利用券」を、申請から利用、管理までLINE上で一元化する仕組みの構築などを行っています。
町内会とのやり取りや、住民向けの説明会の開催など、直接的なコミュニケーションが求められる場面が非常に多いですね。
ー前職でも顧客とのコミュニケーションは多かったと思いますが、民間企業と市役所とで、対話の仕方に違いは感じますか?
奥村: 大きく違いますね。前職時代は、あくまで「会社の人間」として接しており、お客様とは適切な距離感を保ちながら仕事をしていました。しかし今は、職員としての役割を持ちながらも、「一人の人間」として、あるいは「地域で生活する人の一人」として、町内会長さんや市民の方に向き合っている感覚があります。
導入が目的ではない。市民の変化を一緒に喜べる「デジタル支援」のやりがい
ー業務を進める中で、特に大変だったことや苦労したエピソードはありますか?
奥村: 「結ネット」の導入を町内会で合意形成いただくプロセスは、毎回大きなハードルであり悩むところですね。単に機能を紹介するだけでは導入には至りません。 まずは町内会ごとの状況や抱えている悩みをじっくりと伺い、どうすれば運用する役員の方の負担軽減に繋がるのか、どうすれば結ネットが町内で普及するのかを一緒に考えたりと、導入に向けた丁寧なすり合わせが欠かせません。デジタルを推進する仕事ですが、その第一歩は泥臭いアナログなコミュニケーションから始まるんです。

ーそうした苦労を乗り越えた先に、どのようなやりがいを感じますか?
奥村: デジタルの取り組みを通じて地域の方々と深く関わり、その「変化」を一緒に喜べることですね。導入後に良かったとお声を直接いただくと、この仕事の意義を心の底から実感します。
また、スマホ教室などでも、最初は「自分には難しい」と不安を口にされていた高齢者の方が、操作を重ねるうちに少しずつ慣れていき、「やってみてよかった」と笑顔で声をかけてくださる瞬間があります。そうした言葉が私の何よりの励みになっています。
ーまさに、奥村さんが求めていた「地域の人への貢献」が形になっているのですね。
奥村: はい。デジタル施策は、ツールやシステムを導入すること自体が目的ではありません。それが地域の負担軽減に繋がったり、情報がきちんと伝わったり、市民の皆様の暮らしが少しでも楽になって、はじめて意味があるものだと考えています。
私がやりたかった「地域住民と対話する」「地域のつながりに関わる」ということが今まさにできていて、あの時思い切って転職して良かったと思っています。

穏やかな職場。時差出勤やテレワークで叶えるワークライフバランス
ー職場の雰囲気や、人間関係についてはいかがですか?
奥村: 前職のIT業界は、ハードな環境だったのですが、今は本当に穏やかな雰囲気です。もちろん、市役所ならではの「決裁」のルールなど、行政特有の手続きを理解するのには少し時間がかかりました。
でも、分からないことがあっても、聞けば誰でも優しく丁寧に教えてくれます。 また、「こういうことをやってみたい」と上司に提案も受け入れられる、チャレンジに寛容な環境があるのも滑川市役所の素晴らしいところです。
ー残業時間やお休みの取りやすさなど、ワークライフバランスはどうでしょうか?
奥村: 残業はほとんどありませんし、有給休暇も自分の休みたいタイミングでしっかりと取れています。仕事の進め方として、まずは市民や町内会の方への対応を優先して予定を組み、空いた時間でLINEの構築や庁内の調整業務を行うようにしています。自分の裁量で計画を立てやすいのも働きやすさの一つです。
ー子育てをされながら働かれているとのことですが、制度の活用などはされていますか?
奥村: はい、小学生の子供がいるのですが、学童のお迎えの時間が早かった時期に「時差出勤」の制度を週に2回ほど利用していました。朝早く出勤する代わりに、夕方早く退勤できる制度です。
また、大雪で通勤に時間がかかりそうな時などは「テレワーク」も活用しています。市役所としてテレワークを推進する期間もありましたし、育児休業なども含めて、職員それぞれの状況に応じた働き方ができる制度がしっかりと整っています。制度があるだけでなく、実際に「活用しやすい雰囲気」があるのが本当にありがたいですね。
ー最後に、職員同士の交流などがあれば教えてください。
奥村: 公式な大宴会のようなものは少ないですが、仲間内で飲みに行ったり、同期で集まって「同期会」を開いたりすることは定期的にあります。 そうした場で仕事以外の話をして、「この人はこういう人なんだ」と人間性が分かると、普段仕事で関わらない他部署の職員とも仲良くなれますし、その後の仕事も進めやすくなります。こうした交流の場も、働きやすさに繋がる大切な時間だと思っています。
ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年1月取材)
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15年という長きにわたる民間IT企業でのキャリアを経て、「システムではなく、地域の人に寄り添いたい」という真っ直ぐな思いで滑川市役所へ飛び込んだ奥村さん。 その言葉からは、単なる機能の導入にとどまらず、市民の「不安」を「便利」や「笑顔」に変えていく、血の通ったデジタル支援のやりがいが感じられました。



