兵庫県相生市役所の地域振興課で働く神谷さんのインタビュー記事です。新卒で入庁し、現在5年目。地元の市役所を選んだ神谷さんが、配属されたのは、市の三大祭りをはじめとするイベントを担う部署でした。
想像していた事務職とは違う仕事の連続に戸惑いながらも、地域を盛り上げる最前線で奮闘する日々。仕事のリアルな姿や、そこで見つけたやりがいについて、詳しくお話を伺いました。
「転勤したくない」がきっかけ。地元・相生市役所への道
ーまずは、自己紹介と相生市役所に入庁された経緯を教えてください。
神谷:新卒で入庁し、5年目となります。相生市は地元で、親からの勧めが受験のきっかけです。民間も受けていましたが、全国転勤はどうしても嫌で、転勤のない働き方として地元相生市役所が魅力的に映りました。
ー公務員試験の対策はされていたのですか?
神谷:いえ、特にしていません。幸い相生市役所の試験は専門科目がなかったので対応できました。他の自治体は受けていないので、本当に相生市一本でしたね。
ー入庁前、市役所の仕事にどんなイメージをお持ちでしたか?
神谷:多くの人がイメージするような、市民課の窓口業務を想像していました。正直、具体的な仕事内容については、ホームページの先輩職員紹介を読んだ程度で、あまり深いイメージはないまま入庁しました。

華やかな祭りを支える地域振興課の仕事とは
ー現在所属されている地域振興課では、どのようなお仕事をされていますか?
神谷:地域振興課の商工観光係で、相生市の三大祭り「ペーロン祭」「もみじまつり」「かきまつり」の企画・運営を主に担当しています。その他にも、万博関連のイベントや関西空港での観光PRなど、年間を通して様々なイベントに携わっています。観光振興だけでなく、企業の奨学金や空き家活用の補助金を扱う商工分野の仕事もあります。
ー係の中での神谷さんの役割を教えてください。
神谷:係には私を含めて3名の担当者がおり、私以外の2名は中途採用で入庁された方です。係の中では私が一番長く所属しているため、観光と商工の両方の業務をフォローするような立ち位置で動いています。
ー常にイベントの準備に追われているような状況でしょうか。
神谷:そうですね。まさしく時期によって業務内容が大きく変わります。一つのイベントが終わると、また次のイベントの準備に取り掛かる、というサイクルの繰り返しです。
三大祭りのような大規模イベントは私たちが事務局として全体を動かすので準備も大変ですが、他のイベントへの出展などは1週間ほどで対応することもあります。イベントのない時期は、補助金の申請処理などのデスクワークが中心になります。

イメージは事務職。でも現実はテント運びから草刈りまで
ー実際に働いてみて、入庁前のイメージとのギャップはありましたか?
神谷:一番のギャップは仕事内容ですね。市役所の仕事は、涼しい部屋でスーツを着てパソコンに向かう事務職が中心だと思っていたのですが、今は、イベントでテントを運んだり、備品を設営したりといった肉体労働が想像以上に多くて驚きました。
ー体育会系でいらっしゃったとはいえ、驚きは大きかったのですね。
神谷:イベントの1週間前からは、ずっと作業着で過ごすことも珍しくありません。もみじまつりの前には、臨時駐車場のスペースを確保するために、職員自ら草刈りをすることもあります。こういう泥臭い作業も市役所の仕事なのだと、身をもって知りましたね。
ーそういった業務は、どのように覚えていかれたのですか?
神谷:幸い、先輩職員の方々が丁寧に教えてくれました。分からないことがあればすぐに聞ける環境だったので、業務を覚える上で不安を感じることはありませんでした。

前例なき挑戦?伝統の祭りで味わった洗礼
ーこれまでで、特に印象に残っているお仕事はありますか?
神谷:しんどさで言えば、やはりペーロン祭が一番です。昨年、私はメインイベントである「ペーロン競漕」の担当になったのですが、非常に大変でした。古くからペーロン祭に携わっている「ペーロン協会」と協力して進めていきますが、初めての担当したためにわからないことも多かったです。
正直に言うと残業することもあり、なんとか乗り切った形です。一度全ての流れを経験すると、今年は遥かにスムーズに準備を進めることができたと思います。

鵜呑みにしない勇気。関係者と築く信頼関係のコツ
ーペーロン祭りは担当が分かれているそうですが、チームで協力して進めるのでしょうか。
神谷:情報共有は行いますが、基本的には一人一担当制です。担当者個人の頑張りに頼らざるを得ない側面はありますね。私はすべての担当を経験しているので、後輩からよく相談を受けます。
ー後輩にアドバイスをする際、特に心掛けていることはありますか?
神谷:私たちの部署は外部の人と関わることが非常に多いので、「相手の言うことを何でも鵜呑みにしないように」と伝えています。経験の浅い職員は、関係者から言われたことを「はい、分かりました」と全て受け入れてしまいがちですが、それを続けていると自分の首を絞めることになります。
ー相手の要望に応えようとすることが、かえって負担になってしまうと。
神谷:その通りです。ですから、「その提案が本当にイベント全体にとって良い結果をもたらすのか」「自分の力量で実現可能なのか」を一度立ち止まって考えるように言っています。時には、「それはできません」とはっきり伝える勇気も必要です。むしろそれこそが、より良い関係が築けると考えています。
「ありがとう」の一言が原動力。イベント成功の先に得られるもの
ー様々な苦労がある中で、この仕事のやりがいはどのような時に感じますか?
神谷:やはり、何か月もかけて準備してきたイベントが無事に終わった時ですね。終了後、一緒に準備を進めてきた関係者の方々から「お疲れさん」「ありがとう」と声をかけてもらえると、それまでの苦労が報われます。
良いものを作るために真剣にぶつかり合ったからこそ、終わった時に一体感が生まれるのだと思います。地域の方々と密接な関係を築きながら仕事ができるのは、この部署ならではの魅力ですね。
やるときはやる、休むときは休む。メリハリのあるワークライフバランス
ー職場の雰囲気や、ワークライフバランスについてはいかがですか?
神谷:職場は賑やかで風通しの良い雰囲気だと思います。普段は定時後30分~1時間ほどで退庁していますが、祭り直前は残業することもあります。また、イベントで土日に出勤することもありますが、その分、振替休日はしっかり取れるので、ワークライフバランスに関して特に不満はありません。
ー職員さん同士のプライベートでの交流もあるのでしょうか。
神谷:はい、部署で食事に行くこともありますし、部活動も盛んです。私はフットサルクラブに所属しているほか、最近は若手職員有志でソフトバレーも楽しんでいます。仕事以外での交流も良いリフレッシュになっていますね。

これからのキャリアと、未来の仲間へのメッセージ
ー今後のキャリアについてはどのようにお考えですか?
神谷:今の部署は大変なこともありますが、やりがいも感じています。もし異動するとしたら、自分の生活にも直結する知識が身につく、税金関係の部署に興味がありますね。もちろん、最終的にはどこに配属されても、そこで全力を尽くすつもりです。
ー最後に、相生市役所への入庁を考えている方へメッセージをお願いします。
神谷:市役所の仕事には、民間企業のような営業ノルマなどのプレッシャーはありません。もちろん責任は重いですが、精神的な負担は少ないかもしれません。私がそうだったように、市役所の仕事に「事務」や「窓口」というイメージを持っている方も多いと思いますが、実際は部署によって全く仕事内容が異なります。ぜひ、私たちと一緒に相生市を盛り上げていきましょう。
―ありがとうございました。
「市役所の仕事は事務作業」という漠然としたイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。実際には、テントを運び、草を刈り、時には地域のベテランと丁々発止のやり取りを繰り広げる。その姿は、安易に想像する「公務員」の姿とは異なります。
この記事を読んで、市役所の仕事の幅広さ、そして地域を盛り上げる最前線に立つことの面白さを感じられたならば、是非相生市役所へのチャレンジをしてみてください!
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年9月取材)



