長崎県時津町役場で行政事務職として働く別所さんのインタビュー記事です。
大手住宅設備機器メーカーでの営業経験を経て、東日本大震災をきっかけに公務員へとキャリアチェンジ。町の広報として「人とのつながり」を大切にしながら、地域の魅力を発信するやりがいや、住みやすい時津町の未来をどう描いているのか、その情熱に迫ります。
- 【転機は東日本大震災】民間営業職から公務員へ歩んだ道
- 【自治体職員としての第一歩】「納税係」で学んだコミュニケーションの真髄
- 【町民の声を形に】「広報」で感じる、生み出す喜びと社会への貢献
- 【「住みやすい町」から「選ばれる町」へ】時津町の未来を拓く挑戦
- 【働きやすい職場環境】多様な経験を持つ仲間と育むチームワーク
- 【温かい人々と住みやすい町で】未来の仲間へのメッセージ
【転機は東日本大震災】民間営業職から公務員へ歩んだ道
ーまずは、これまでのご経歴を教えてください。
別所:長崎市出身で、県内の大学を卒業しました。卒業後は、住宅設備機器メーカーに入社し、営業職として働きました。
最初は研修で富山県にある本社工場に勤務し、その後、福岡支店に配属されました。福岡ではハウスメーカーと協力して、お客様の要望に応じた窓やインテリア、エクステリアを含む住宅設備の提案・販売を行っていました。

ー公務員への転職を考えられたきっかけについてお聞かせください。
別所:入社1年目の頃に東日本大震災が発生し、当時私は福岡にいましたが、本社のある富山や各地の営業所も被災し、全国的に大変な状況になりました。
特に、東北の復興のためにメーカーの全ての資材が投入され、住宅建設がストップするという事態が発生したんです。
営業職として、お客様の大きな買い物である「家」に関わることに大きなやりがいを感じていましたが、被災地では家どころではない、もっと根本的な支援を必要としている人々がいる中で、「果たして自分が本当にしたい仕事はこれなのだろうか」と深く考えるようになりました。
被災地に寄り添い、直接的に人の役に立てる仕事への意識が高まり、公務員という選択肢が浮かび上がったんです。この震災が、私のキャリアの大きな転機となりました。
ー数ある自治体の中で、なぜ時津町を選ばれたのでしょうか?
別所:前職の営業時代に、長崎支店が時津町にあった時期があり、長崎支店の職員と一緒に仕事をした経験があります。
当時はあまり時津町を深く知る機会がなかったのですが、地元ビルダーさんや町の方々と交流する中で、町の温かさや町民の皆さんの地元愛に触れることができました。
特に印象的だったのは、時津町で開催される伝統的な「ペーロン大会」です。町の人たちが真剣に船を漕ぎ、町を盛り上げようとする情熱を間近で見て、この町の魅力を強く感じました。
こうした経験から「時津町は良い町だな」という印象が強く残り、公務員を目指す中で、この町での仕事に興味を持つようになったのがきっかけです。

【自治体職員としての第一歩】「納税係」で学んだコミュニケーションの真髄
ー入庁されてから、どのようなお仕事を経験されましたか?
別所:入庁して最初の3年間は、税務課の「納税係」に配属され、税金を滞納されている方からの徴収業務に従事しました。
税金の徴収は、口座や給与の差し押さえ、さらには自宅への強制執行など、非常にデリケートな仕事でしたね。
ー徴収業務を行う中で、民間企業での経験とのギャップはありましたか?
別所:徴収業務は、私が前職で培った「営業職としての対人スキル」とは全く異なるアプローチが求められました。
営業では「お客様ファースト」が基本でしたが、納税係では「いかにして滞納されている方に税金を納めてもらうか」、そして「いかにしてその方の生活再建に寄り添うか」という点で非常に苦労しました。
中には感情的になる方もいらっしゃいますが、言葉を選びながらも毅然とした態度で接する必要があり、コミュニケーションの難しさを痛感しましたね。
そうした経験から、私はファイナンシャルプランナーの資格を独学で取得し、税金の知識だけでなく、滞納されている方の生活状況全体を理解し、根本的な解決策を一緒に探るようになりました。
単に税金を徴収するだけでなく、相手の立場に寄り添い、前向きな気持ちで納税を促すことで、次第に感謝されることも増えました。
ー納税係の他に、どのようなお仕事を経験されましたか?
別所:納税係の後は、会計課で税金の出納業務を担当しました。
その後、令和2年度からは教育委員会に配属されましたが、この時期はちょうど新型コロナウイルス感染症が世界的に流行し始めた頃で、学校現場はまさに「パニック状態」でした。
私の担当は保健部門で、配属された瞬間に「学校のアルコール消毒液がない!」という状況に直面し、ひたすらアルコールをかき集める日々が続きました。
学校関係者の中で感染が確認された時には、感染者の対応や濃厚接触者の特定、その後のフォローなど、教員の方々と密に連携を取りながら、未曾有の事態への対応に追われました。
この4年間は、まさにコロナ禍の最前線で働く大変な日々でしたが、学校の先生方とは強い信頼関係を築くことができ、今でも親交の深い先生方がたくさんいます。この経験も、私にとって大きな学びとなりました。
その後、企画財政課で広報業務に従事し、今年度からは、新たに創設された「戦略推進課」で引き続き広報の仕事を担当しています。

【町民の声を形に】「広報」で感じる、生み出す喜びと社会への貢献
ー現在、広報担当として働く中で、特にやりがいを感じるのはどんな時ですか?
別所:今の広報業務が、私のキャリアの中で最もやりがいを感じる仕事だと断言できます。
広報紙や町のカレンダーなど、自分がデザインし、企画したものが形になり、世の中に発信されて、それがこの先ずっと残り続けるということに大きな喜びを感じます。
昨年度、広報の仕事に初めて携わり、町の大小様々なイベントに積極的に参加し、地域の方々と交流を深めました。
その中で得た情報や町の魅力を広報紙として発信する活動を行っていましたが、特に長崎県の広報コンクール写真部門で推薦をいただいた時は本当に嬉しかったですね。
全国大会での受賞には至りませんでしたが、自分が企画し、行動した結果が一定の評価を得られたことは、大きな自信となりました。

【「住みやすい町」から「選ばれる町」へ】時津町の未来を拓く挑戦
ー今年度新設された「戦略推進課」は、どのようなミッションを掲げているのでしょうか?
別所:今年度新設された「戦略推進課」は、まさに【時津町のブランディングとプロモーションを強化し、「住みやすい町」から「選ばれる町」へと発展させる】ことに取り組んでいます。
町長が掲げる「時津町のブランド化」という目標を実現するため、長崎県内だけでなく、県外、さらには世界に向けて時津町の魅力を発信していく部署です。
具体的には、総合計画や総合戦略と連携しながら、広報活動やふるさと納税の推進を通じて、時津町の知名度向上とブランド力強化を目指しています。
広報紙やSNS、ホームページなど、あらゆる媒体を駆使して、町の隠れた魅力を掘り起こし、多くの方々に「時津町に行ってみたい」「住んでみたい」と思ってもらえるような発信をしていくことが私たちの役割です。
ー広報の仕事として、今後、時津町をどのように発展させていきたいと考えていますか?
別所:時津町は現状、いわゆる「観光地」と呼べるような場所が少ないという課題があります。しかし私たちは、時津町ならではの「名所」を創造し、町の魅力を最大限に引き出すことに注力しています。
その一つが、町のシンボルでもある奇岩「継石坊主」です。国道沿いの小高い山に、絶妙なバランスで岩の上に岩が乗っているこの不思議な岩は、「落ちそうで落ちない」という特徴から、「合格祈願」ならぬ「合格祈岩」のスポットとしてPRしています。
受験生向けに、キャラクターグッズ化した合格祈岩キーホルダーを配布するなど、様々な取り組みを行っています。
さらに今後は、この「離れない岩」という特徴を活かし、「恋愛成就」のパワースポットとしてもブランディングを展開していく予定です。
また、これまで遠くから眺めることしかできなかった継石坊主を間近で見られるよう、現在、遊歩道の整備も進めています。これにより、さらに多くの人が訪れ、時津町の隠れた魅力を体験できるようになるはずです。

【働きやすい職場環境】多様な経験を持つ仲間と育むチームワーク
ー現在の職場の雰囲気や、ワークライフバランスについて教えてください。
別所:現在の職場は、抜群の風通しの良さだと感じています。
戦略推進課の職員は優秀な方が本当に多くて、皆が高い意識を持って仕事に取り組んでいます。そのため、困ったことや相談したいことがあれば、すぐに誰かに相談できる体制が整っています。
職員の年代構成も同年代が多く、子育て世代の職員も多いため、お互いの状況を理解し、助け合う文化が根付いています。
例えば、子どもの行事や体調不良で急な休みが必要になった際も、皆が快くフォローし合える雰囲気です。オンオフの切り替えもしっかりしており、休む時はしっかり休み、仕事をする時は集中するというメリハリのある働き方ができています。
広報の仕事はイベント取材などで土日出勤や残業が発生することもありますが、時間外手当がきちんと支給され、代休も取得できるため、ワークライフバランスはしっかりと保たれています。

【温かい人々と住みやすい町で】未来の仲間へのメッセージ
ー時津町役場で働く魅力について、改めて教えてください。
別所:時津町役場で働く最大の魅力は、「町民との距離が近い」という時津町ならではの特長を活かして、住民の方々と直接関わりながら、地域に貢献できることだと感じています。
職員数約190人のこじんまりとした役場だからこそ、職員一人ひとりが顔の見える関係性で仕事ができ、町民の皆さんの声がダイレクトに届きます。
町民の方々と密に関わり、その反応を肌で感じながら仕事ができることは、私自身の成長にも繋がり、大きなやりがいを感じています。
ー最後に、時津町の受験を考えている方々へメッセージをお願いします。
別所:時津町役場は、職員同士の仲も非常に良く、困ったことや悩みを相談しやすい雰囲気なので、安心して働くことができます。
また時津町は、お隣の長崎市出身の私から見ても、人々の温かさが際立っています。どの世代の町民も「町を盛り上げたい」という意識が高く、職員も町民も一丸となって地域を良くしていこうという熱意に溢れています。
そんな時津町に少しでも興味を持っていただけたなら、ぜひ勇気を出して挑戦してみてほしいです。
皆さんと一緒に働ける日を楽しみにしています!

ー本日はありがとうございました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年9月取材)