「壊れたものを直して、マイナスをゼロにする」綾瀬市の土木職が語る、下水道の維持管理と、まちに増えていく自分の足跡
綾瀬市役所
「大きな橋を架けるような仕事ではないんです。壊れたものを直して、マイナスをゼロにする。でも、その積み重ねで、市内に自分が携わった場所がどんどん増えていく。それが面白いなと思っています」
そう語るのは、綾瀬市 土木部 下水道課 管理担当の郡司さん。大学で土木工学を学び、平成30年(2018年)に土木職として新卒で綾瀬市に入庁しました。道路管理課で4年間、道路の維持管理を担当したのち下水道課へ異動し、現在5年目。入庁9年目を迎えています。
土木職を志したきっかけから、下水道の維持管理という仕事のリアル、そして綾瀬市内で共働き・子育てをしながら働く日々まで伺いました。
「研究室の先生が、公務員出身だった」。大学で初めて知った、公務員という選択肢
ー現在のご所属と、入庁までの経歴を教えてください。
郡司:土木部 下水道課の管理担当に所属していて、今5年目です。平成30年に新卒で綾瀬市に入庁して、最初の4年間は同じ土木部の道路管理課で道路の維持管理をしていました。そこから下水道課に異動して、今は下水道の維持管理をしています。入庁からは9年目に入りました。
ー大学では土木を専攻されていたそうですね。どんな学生生活でしたか?
郡司:土木工学科で4年間、土木を専門に学びました。サークルではアメリカンフットボールをやっていました。中学からずっと続けていた競技で、大学では部活ではなくサークルで楽しむくらいの距離感で活動していました。
ー民間企業という選択肢もあったと思いますが、なぜ公務員一本だったのでしょうか。
郡司:大学のゼミの教授が、公務員出身の方だったんです。研究室の活動の中で、実際に都内の自治体の職員の方と連絡を取って研究を手伝ってもらうといった機会があって、公務員の仕事を知るきっかけになりました。それが一番大きかったと思います。
親族に公務員はいなかったので、公務員という働き方を意識したのは本当に大学に入ってからです。周りの学生も公務員とゼネコン系や建設コンサルタントに行く人が半々くらいで、学内に公務員試験対策のコースもあったので、環境的にも自然な選択肢でした。

「綾瀬市の土地を踏んだのは、試験の日が初めて」。秋から始まった、まちとの出会い
ー神奈川県内にも多くの自治体がある中で、なぜ綾瀬市だったのですか?
郡司:元々は地元に近い自治体に絞って受験していたんです。ただそこはご縁がなくて、その結果が出たのが10月頃。周りからも心配されました。笑
そこから県内の他の自治体の採用情報を必死に探しました。公務員試験は年度内に1次、2次と複数回ある自治体が多いのですが、後半になるほど採用枠は少なくなっていきます。ただ綾瀬市は秋頃から応募できる枠があったので受験して、綾瀬市に入庁したという流れです。
ーそれまで綾瀬市との接点はあったのですか?
郡司:なかったですね。試験や面接で綾瀬市に来たのが、綾瀬市の土地を踏んだ初めての機会でした。今振り返ると、本当に運命的だったなと思います。
ー入庁後は、市内に住まれているそうですね。
郡司:内定が決まって通勤のことを考えたときに、実家から市役所まで1時間半くらいかかることがわかって、これは毎日だとしんどいなと。それで入庁と同時に市内で家を探して住み始めました。その後、実家の引っ越しに合わせて一度実家から通った時期もあるのですが、結婚を機にまた綾瀬市に戻ってきて、今は市内で暮らしています。
「1日ずっと市役所にいる日のほうが少ない」。下水道の維持管理という仕事
ー下水道課の管理担当では、どんな仕事を担当されているのですか?
郡司:基本は事務所での仕事なのですが、下水道施設の維持管理に関する工事や委託の関係は全般的に私が担当しています。工事や委託を出すときには業者の方と現場で打ち合わせをしたり、工事の立ち会いをしたりするので、1日の半分は外に出ているような日もあります。
それから、市が発注する下水道工事以外の話もあります。たとえば家を建て替えるときに家の下水道をやり替えるとか、民間の方が道路を掘って下水道工事をするといった場合は、その都度、下水道課に申請を出して許可を得てもらう必要があります。そういった申請の窓口対応や審査も担当しています。
ー下水道課ならではの、少し意外な業務はありますか?
郡司:かなりマイナーなところで言うと、下水って何でも流していいわけではなくて、ある程度きれいに処理してから流さなければいけない基準があるんです。食品工場や機械の工場などには下水に流されては困る水があるので、それをきちんと処理しているかを審査、確認する業務もやっています。下水道の仕事には、こういう化学的な要素があるのが特徴かもしれません。
ー平均的な1日の過ごし方を教えてください。
郡司:日によって全然違うので難しいのですが、1日ずっと市役所の中にいる日のほうが少ないですね。業者の方との現場打ち合わせや立ち会いに加えて、市民の方から突発的に連絡があって「じゃあ見に行こう」となることも含めると、何かしら一度は外に出る日が多いです。


残業は月10時間前後。人の入れ替わりで、月30時間になった時期も
ー働き方について、残業はどのくらいありますか?
郡司:残業はあります。去年から今年くらいまでは、基本は月10時間いかないくらいでやっていました。ただ今年度に入ってから人の入れ替わりがあって、その影響でしばらくの間は、残業時間は増えました。ただ、それも今は落ち着いてきて、今月は多分10時間いかないくらいになってきたと思います。人が入れ替わった直後が一番大変でしたね。基本的に残業時間はコントロールできているので、それを苦に思ったことはありません。
「異動したとき、担当内の土木職は自分ひとりだった」。一番成長できた、下水道課1年目
ー土木職として「一人前になってきた」と感じたのは、入庁してどのくらい経った頃ですか?
郡司:5年目からですかね。最初の4年間は道路管理課で、先輩がいる中でいろいろやりながら覚えていきました。それから下水道課に異動したとき、下水道の管理担当内で土木職は私ひとりだったんです。
最初プレッシャーはありました。それでも前任者にいろいろ聞きながらやり方を覚えて、知識を付けていって。この1年はすごく成長できたなと、自分でも思っています。
ー仕事を進める上で、綾瀬市らしさを感じる部分はありますか?
郡司:綾瀬市は出先機関がほとんどなくて、基本的には市役所の庁舎で仕事が完結します。
それから、職員人数が多い自治体ではないので、5年目くらいからは庁内のどの課にも顔見知りがいる状態になってきました。土木部の職員もそれほど多くはないので、周りに聞ける人がいて、そういう関係性ができてきたのも仕事を進めやすくなった理由だと思います。

「大学の知識は、あるに越したことはない。でも、なくても」。土木系の学生に伝えたいこと
ー大学で学んだ土木の知識は、実際の仕事でどのくらい活かされていますか?
郡司:学生のときに勉強した土台はあるに越したことはないです。ただ実際に働いてみると、業者の方や市役所内部での調整が大切だとわかりました。本当に土木の専門知識でわからないことは、業者の方やコンサルタントの方に聞けばわかる。だから、大学で得た知識が不十分でも、働いていく中で身についていくもののほうが大きいなと思います。
座学で「コンクリートはこういうものだ」と学んでいたとしても、実物を見ているわけではないので、現場で実際に見たものとは全然違います。入庁してから勉強したことのほうが糧になっています。
「マイナスをゼロにする」仕事。知らなかったまちに、自分の足跡が増えていく
ー約9年勤めてきた中で、達成感や「いい仕事ができた」と感じたエピソードを教えてください。
郡司:大きな橋を架けるとか、立派な公園をつくるといった仕事は業務上あまりやったことがなくて。道路管理課のときも下水道課も維持管理なので、壊れたものを直すことでマイナスをゼロにする仕事が多いんです。ゼロから作り上げるものではないので、「これを作ってよかった」という感覚とは少し違います。
ただ、マイナスをゼロにするというのは、困っている人がいるからやること。問題を解決した時に、市民の方の安心や喜びを感じられることがモチベーションになっています。
それと、そういう小さな仕事をたくさんやっているので、市内のあちこちに自分が携わった場所がどんどん増えていくんです。入庁するまでは全然なじみのない土地だったのに、「ここは何年目のときに直したな」という場所が増えていく。大きなドーンとした功績ではなく、小さな足跡がまちについていく感覚は、これからもずっとあるんだろうなと。それがこの仕事の面白さだと思っています。

7時に起きて、8時に保育園へ。綾瀬市で暮らす、共働き子育ての毎日
ーここからは暮らしについて伺います。朝は何時に起きますか?
郡司:朝は7時に起きます。娘がこの4月から保育園に通い始めて、同じタイミングで妻が復職したので、今は共働きで保育園の送り迎えを分担しています。妻は勤務時間を1時間前倒しした時差出勤にしていて、先に家を出ます。私はそのあと子どもの保育園の準備と自分の準備をして、8時くらいに家を出て保育園に送ってから出勤します。
ー8時に家を出て8時半に出勤というのは、かなりタイトですね。
郡司:毎日大変です。ただ、家から職場までの道中にある保育園に入所できたので、行きがけに子どもを預けて、自転車でそのまま職場に行けています。これが逆方向だったら、私も時差出勤で調整することになっていたと思います。迎えは妻が担当です。
ー仕事を終えたあとは、どのように過ごしていますか?
郡司:今は、子どもを寝かせたあとにドラマや映画を見る時間を大切にしています。娘は寝るのがすごく早くて、遅くても8時くらいには寝室に連れて行って、絵本を読んだらそのまま寝てくれるんです。そこから朝まで起きないので助かっています。笑
ー綾瀬市に住んでみて、暮らしはどうですか?
郡司:まずは通勤がとても楽なのがいいですね。それから、災害があったときにすぐに職場に出られるというのも、自分の中では安心材料です。
綾瀬市は駅がないのですが、路線バスがあって、隣接する市の駅も使えます。家賃は安く感じます。あと海沿いでもなく大きな崖もないので、肌感覚ですが災害には強いまちなのかなと思っています。
ー本日はありがとうございました。
編集後記
「志望動機っぽく言うと」。取材の序盤、郡司さんはそう前置きしてから綾瀬市を選んだ理由を話し始めました。最初に受けた自治体とはご縁がなく、秋から探し直して見つけたのが綾瀬市。試験の日が、初めてこのまちの土地を踏んだ日だったといいます。正直に言えば、その時点では「行き当たりばったりだった」と、郡司さん自身が笑いながら振り返っていました。
けれど話を聞き進めるうちに、その偶然の出会いがまったく違う意味を持って見えてきました。市内で暮らし、家庭を持ち、道路と下水道を9年かけて直し続けてきた郡司さんは、「知らなかった土地だからこそ、自分の足跡がついていくのが面白い」と語ります。なじみのなかったまちが、誰よりも細部を知っているまちに変わっていく。維持管理という「マイナスをゼロにする」仕事は、その変化を静かに積み重ねていく仕事なのだと感じました。
大きな橋を架けなくても、まちには残るものがある。取材を終えて、綾瀬市の道路の下を流れる下水道管のことを、少しだけ想像してしまいました。
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この記事は、2026年8月19日にパブリックコネクト編集部が取材した内容をもとに作成しています。
記載の内容・所属・数値は取材当時のものです。
この記事の官公庁・自治体
綾瀬市は都心へ約40km、横浜へ約20kmの首都圏域にあり、西に大山、丹沢連峰を望み遠く富士を仰ぐ相模野台地に位置しています。幾つかの中小河川が丘陵をぬうように流れ、緑豊かな自然環境に包まれています。
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