「出たら分かる、地元の良さ」隠岐の島で育ち、高卒で消防士に。隠岐広域連合消防本部・2年目職員が語るUターンと24時間勤務のリアル

隠岐広域連合

2026/10/12

「岡山にいたんですけど、『やっぱり地元いいな』って。出たら分かる良さがあるんです」

そう語るのは、隠岐広域連合消防本部 消防署 本署第2係の坂田さん。隠岐の島で生まれ育ち、高校3年間は柔道のために岡山県の高校へ進学して寮生活を送りました。高校を卒業した令和7年(2025年)4月に入庁し、現在2年目。中学生の頃から「消防で働きたい」と思い続け、その思いをかなえて島に帰ってきた、20歳の若手消防士です。

消防を目指したきっかけから、7か月間の消防学校、24時間勤務のリアルな1週間、そして「島に帰ってきてよかった」と思える瞬間まで伺いました。

「かっこいい」から始まった。柔道チームの監督は、いまの消防長

ー坂田さんは隠岐の島のご出身なんですよね。消防を意識し始めたのはいつ頃ですか?

坂田:中学生、高校に入る前くらいからですね。身の回りに消防の人が結構多くて、消防っていう職業がかっこいいなと、ただ思っていました。

ー身の回りに多かった、というのは?

坂田:小学1、2年生から柔道をやっていたんですが、そのチームの監督の先生が消防の職員でした。今の消防長です。それから、同級生のお父さんや後輩のお父さんも消防士で。自然と身近な職業になっていました。

ー小学生の頃を知っている方が、いまは同じ組織の消防長。感慨深いですね。

坂田:そうですね。今も出会う場面が多いです(笑)。

隠岐高校に進んだ友達は「出たい」。岡山にいた自分は「早く戻りたい」

ー消防士になるにしても、隠岐以外で働く選択肢もあったと思います。地元に戻りたい気持ちは強かったですか?

坂田:強かったですね。岡山にいたんですけど、ずっと「やっぱり地元いいな」と思っていました。出たら分かる良さがあるんです。ただ、隠岐高校に進学した友達は、「早く島を出たい」と言っていました。逆に自分たちは高校でもう島を出ていたので、「早く戻りたいな」という感じでしたね。

島根県の同期37人と松江で7か月。「厳しい」イメージとは違った消防学校

ー入庁1年目はどのように過ごすのですか?

坂田:1年目は消防学校に通います。4月から11月まで、島根県の消防に入った同期と一緒に松江の学校に入るんです。それが終わって隠岐に帰ってくるので、隠岐の消防の仕事としては、まだ1年経っていないんですよね。

ー消防学校は規律が厳しいイメージがありますが、実際はどうでしたか?

坂田:実際は結構明るくて楽しかったです。緩くはないですけど、メリハリがありました。同期は37人で、寮生活です。食事は食堂でちゃんと用意されていました。また、休日は寮ではなく、(隠岐消防が用意した)ホテルに宿泊するのですが、そこでは同期メンバーとゲームをしたり、外で遊んだり。不自由に感じることはあまりなかったです。

ー隠岐の消防署に直接配属されていたら出会えなかった同期ができた、ということですよね。

坂田:はい。楽しかったですし、大切な思い出です。今も連絡を取っていて、近々同期会で集まります。

 

握力は得意、シャトルランは最下位。体力試験の中身

ー受験を考える人が気になるのが体力試験だと思います。どんな種目があったのですか?

坂田:シャトルラン、握力、反復横跳び、長座体前屈、立ち幅跳びなどです。本当に学校の体力測定みたいな感じで、腕立て伏せや懸垂は自分のときはなかったと思います。

ー得意な種目、苦手な種目はありましたか?

坂田:柔道をやっていたこともあり握力は得意でした。シャトルランは、同期の中で最下位でした(笑)。速い人もいましたけど、いろんな人がいます。

ー同期の中で、坂田さんは身長181cmと大きい方ですよね。体格もさまざまなんですか?

坂田:ピンキリですね。180cm台が5、6人いて、それ以外はいろいろ、という感じです。

8時半から翌朝8時半まで。「連勤は絶対にない」24時間勤務のリズム

ー今の係の体制を教えてください。

坂田:第1係と第2係があって、仕事内容は同じです。うちの係は12人で、1日8人が泊まり勤務に入ります。朝8時半に出勤して、翌朝8時半までの24時間勤務です。連勤はありません。

ー24時間勤務の夜は、どう過ごしているんですか?

坂田:交代で通信指令室に入って電話番をします。それ以外の時間は仮眠を取ったり、事務をしたりです。

ー朝8時半に勤務が終わって帰ったあとは?

坂田:帰ってきたばかりの頃は、もうずっと寝ていましたね。最近は先輩に釣りを教えてもらったりして、「仕事明けに釣り行こうぜ」「カラオケ行こうぜ」と誘ってもらうことも多いです。

まだ本物の火事に出ていない。人数が少ないからこそ、一人の重み

ー12月に配属されてから約9か月。振り返ってみて、どんな日々でしたか?

坂田:覚えないといけないことがたくさんある、というイメージです。体力だけでなく、覚えたり、勉強することも多い。でも皆さんも同じ道を通ってこられているので、サポートしてもらったり教えてもらったりできる。ありがたいです。

ー隠岐ならではの環境はありますか?

坂田:災害は松江などと比べると少ないと思います。自分はまだ本物の火事に出たことがなくて、それはいいことなんですけど、いずれ必ず起きることだと思って、できる限りの準備をしています。

 

それと、多人数の体制ではないので、一人ひとりの重みが大きい。だから頑張らないといけない、というのはあります。ただ、隠岐という狭い島の中なので知り合いがすごく多くて、自分の父親世代の方と一緒に泊まり勤務をすることもあるんですが、みんなすごく良くしてくれます。楽しいです。

「病院に無事届けられた」。感謝の言葉がなくても分かる、良かったという瞬間

ー消防という仕事を選んでよかったと思いますか?

坂田:思っています。

ー自分の仕事に誇りを感じる瞬間はありますか?

坂田:出動は救急が多いんですが、しんどい状態の方を病院に無事届けることができたときですね。搬送中に少し良くなる方もいて、苦しさが和らいだのが分かると、良かったなと思います。

地域が好きな人へ。1年目から「地域のため」に関わることができる仕事

ー最後に、隠岐の島に生まれて消防を目指すか悩んでいる方、消防士になりたいと思っている方へ、メッセージをお願いします。

坂田:いろんな職種があると思いますが、消防は本当に物理的に「地域のため」という言葉につながる仕事だと思います。しかも、1年目からそこに関わることができる。地域が好きとか、地域のために働きたいという気持ちがある人には、本当にやりがいを感じられる仕事だと思います。

ー本日はありがとうございました。

編集後記

取材は坂田さんの連休初日。休みの日に署まで出てきてくださったことに恐縮しつつ、「基本オンオフなので、連勤は絶対にないんです」と勤務表を見せてくれた坂田さんの説明が、この仕事の見え方を変えてくれました。

「シャトルランは同期の中で最下位でした」と笑って話す姿は、ごく自然な20歳の姿でした。けれど、救急の話になったときの声の落ち方や、「いずれある火事に備えて、準備をしておきたい」という言葉には、島の一員として引き受けようとしているものの重さがありました。

「出たら分かる良さ」。柔道チームの監督だった消防長のもと、先輩職員達と泊まり勤務をする。帰ってきた島で、幼い頃に「かっこいい」と見上げた人たちの隣に立っている。そういう地元の続け方があるのだと、教えてもらった取材でした。

今回、多くの写真素材を提供いただいたため、最後は消防の素敵な写真をお届けします。

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この記事は、2026年9月17日にパブリックコネクト編集部が取材した内容をもとに作成しています。

記載の内容・所属・数値は取材当時のものです。

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隠岐広域連合は島根県と隠岐4町村で構成された特別地方公共団体です。 病院事業(隠岐島前病院、隠岐病院)、隠岐の島町内の診療所の運営、介護保険事業、消防事業、障がい者福祉サービス事業(仁万の里)、隠岐航路事業、宿泊施設事業(レインボープラザ)など、島の生活基盤を支える事業を実施しています。

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