「むしろ転職したくない、が正直な気持ちだった」好きだった仕事を離れて姫路市役所へ。民間出身職員が語る、決断の理由と、そのあとに見えたもの

姫路市役所

2026/10/26

「その仕事がものすごく楽しくて、むしろ転職したくないという気持ちのほうが強かったです」

そう語るのは、姫路市役所 政策局 秘書課の北原さん。

平成22年に保険代理店へ入社し、東京と神戸で約10年、損害保険の営業として働いたのち、令和3年に姫路市へ入庁しました。産業振興課 港湾振興室を経て、現在は秘書課で副市長のスケジュール管理などを担当しています。

前の会社に不満はなかった。仕事は楽しかった。それでも転職を決めたのはなぜだったのか。単身赴任先の東京で過ごした日々から、迷いの末の決断、そして市役所で働き始めて見えてきたものまで伺いました。

単身赴任先の東京で、いちばん楽しい仕事をしていた。来店型の保険ショップに出向した2年

ー前職では、どんな仕事をされていたのですか?

北原:東京本社の保険代理店で、自動車保険や火災保険といった損害保険を、法人や個人のお客様に提案する営業をしていました。営業といっても、企業訪問、個人訪問、来店型ショップでのご案内といろいろなタイプがあるんです。

北原:転職を考える直前の2年間は、東京で単身赴任をしながら、来店型の保険ショップに出向していました。

ーその仕事は、どうでしたか?

北原:ものすごく楽しかったです。だから正直、会社への不満はまったくなくて。むしろ転職したくない、という気持ちのほうが強かったですね。

ー働き方はどうでしたか?

北原:朝から晩まで、という感じでした。朝早く出て終電で帰るのが当たり前で、周りもみんなそうだったので、自分もそれが普通なのかなと思ってやっていましたし、働き方に不満はありませんでした。基本的には、ずっとその会社で働くつもりだったんです。

家の引き渡し直前に決まった転勤。半年、姫路の家に帰れなかった

ーそもそも、姫路との接点はどこで生まれたのですか?

北原:入社4年目に神戸支社へ転勤になり、5年ほど神戸で働きました。そこで妻と知り合い、子どもが生まれ、妻の実家が近いこともあって姫路に家を買ったんです。

北原:ただ、家の引き渡し直前に、また東京へ転勤が決まりまして。そこから単身赴任になりました。

ーそこで何が変わったのでしょうか?

北原:ちょうどコロナの時期と重なったんです。人の多い東京から、子どもが小さい家に帰るのは控えたほうがいい状況で、半年ほど家に帰れない時期もありました。

北原:そのなかで妻から「転職も考えたほうがいいんじゃない?」と言われたんです。それで、じゃあ考えてみようかなと。

「20代は自分のやりたいことを優先させてもらった」。次の10年をどう使うか

ー仕事は楽しい。でも家族は離れている。その葛藤はどうでしたか?

北原:すごく悩みました。前の会社でお世話になった方や、職場の方との関係が切れてしまうんじゃないか。

ーそれでも決断できた理由は?

北原:約10年勤めた20代は、自分のやりたいことを優先させてもらった時間だったなと思ったんです。だったら30代からの10年は、家族と過ごす時間も大切にできる働き方を考えよう、と。

北原:それで、迷いながらですけど、転職活動を始めました。

「それなら前の会社にいたほうがいい」と思ってしまう。民間と公務員、両方受けた末に

ー転職先はどう考えましたか?

北原:姫路の家から通える範囲で働く、というのが前提でした。家族からは「安定している」というイメージで公務員をすすめられて。自分としては、前職の経験が活かせる保険や金融の民間企業もいいかなと思って、両方受けていました。

ー最終的に姫路市役所を選んだ経緯は?

北原:民間のほうは、前職と同じような仕事内容で、条件面を含めて考えると転職する動機になりにくかったんです。同じ仕事なら、前の会社にいたほうがいいと思ってしまう。そんなときに姫路市に合格した、というのが正直なところです。給与面と将来的な安定、その両方で納得して決めました。

 

「公務員だけはなりたくない」と思っていた自分が、初日から書き溜めたメモ

ーもともと、公務員は選択肢にあったのですか?

北原:学生のときは、まったくなかったですね。親が公務員で、小さい頃から自分も「公務員が向いてるよ」と言われていたんです。でも逆に反発して、「公務員だけはなりたくない」と思っていました。

ーそんな方が、実際に市役所で働き始めて。最初はどんな感覚でしたか?

北原:やはり仕事の進め方には、私が経験してきた民間企業と自治体で違いがあります。「この場合はこうするんだ」と学ぶことは、初日から多くありました。忘れないようにメモしておこうと思って、日々書き溜めていましたね。

ー中途で入った方へのサポート面はどうでしたか?

北原:配属先で教えていただいた方が、業務知識も人柄もすごく良い方で、本当に丁寧に教えてくださいました。産業振興課は人数の多い課でしたが、誰に聞いても優しく教えてくれたのはありがたかったです。自分より年下の方も多かったのですが、みんな親切でしたね。

お堅い、融通が効かない。抱いていたイメージは、入ってみると崩れた

ー公務員のイメージと、実際に働いてみた印象は違いましたか?

北原:お堅いとか、融通が効かないとか、なんとなくそういうイメージがあったんです。身内の公務員も、なんとなくそんな感じの人だったので。でも入ってみると、全然そんなことはなくて。1人1人全然違って、そこは民間と同じだなと思いました。民間にも堅い人もそうでない人もいますよね。それと同じです。

港のイベント、排水機場の入札。営業10年では経験のなかった仕事

ー最初の配属は産業振興課でした。どんな仕事を?

北原:産業振興課のなかの港湾振興室というところで、港でイベントをやるときに業者さんと連携して進めたり、排水機場という設備の管理をしたり。排水機場は、台風などで水位が上がったときに川へ逆流しないよう止める設備で、毎日確認が必要なものです。

北原:業者さんとのやり取りは毎日ありましたね。イベントの仕事は前職ではまったくやっていなかったので、初めての経験でした。当日は現地に行って全体を見て、何かあったときに対応する役割です。

ー大変だったことはありますか?

北原:今でも覚えているのは入札です。金額の大きさによって手続きが異なるのですが、排水機場は金額も大きいので、調整が大変です。業者選定も、簡単には進みませんでした。今なら「もっと上手くやれたんじゃないか」と反省する部分です。

副市長のスケジュールを預かる秘書課。「1個1個丁寧に記録しておけば」

ー現在の秘書課では、どんな仕事を担当していますか?

北原:姫路市には副市長が2人いるのですが、そのうち1人の副市長を担当しています。スケジュールの管理や、出席する会議の資料を各課から取り寄せることがメインです。

北原:ほかに、秘書課として対応するイベントもあります。例えば、他の市の市長さんが1泊2日で来られて、いろいろな場所をご案内する、といったこともありますね。そういうときは緊張します。

ー1日の流れも教えてください。

北原:朝は5時半に起きます。小学生のころから「寝ているのがもったいない」と思っていて、昔から変わらない時間です。通勤は歩いて20分。自転車ならすぐ着くのですが、一人で歩くこの時間を大事にしています。

北原:午前中は「この日に来てもらいたいのですが」「相談に上がりたいのですが」といった日程調整が多いですね。日中は、来月のイベントの現地の下見や、業者さんとの連絡をしています。

ー残業はどれくらいありますか?

北原:平均すると月10時間くらいでしょうか。イベントの準備や、議会の本会議で議員さんから質問があったときの対応などがあると残業になりますが、それがなければ定時近くに帰れることが多いです。

朝の送り出しまで一緒にいられる。転職して手に入ったもの

ー「家族と過ごす時間も大切にできる働き方を」と考えて転職されました。実際、どう変わりましたか?

北原:前の会社では、みんなが寝ている間に家を出て、帰りも22時、23時、もっと遅くなることもありました。今は朝の送り出しまで一緒にいられますし、早いときは19時に帰って、子どもが寝るまで2、3時間を一緒に過ごせます。土日も基本的に仕事はありません。月並みですが、それはすごいメリットだなと思います。

ー姫路というまちについては、どう感じていますか?

北原:住んでいるのが駅から近いところで、駅とお城の周辺がすごく栄えているんです。必要なものは全部駅の近くに揃っていて便利な反面、山も海も島もあって自然も豊か。いろいろな要素があるまちだと思います。新幹線に乗れば東京まで行けるのも、ありがたいですね。

ー本日はありがとうございました。

この記事は、2026年8月21日にパブリックコネクト編集部が取材した内容をもとに作成しています。

記載の内容・所属・数値は取材当時のものです。

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~世界一の城下町をつくる~ 国宝・世界遺産「姫路城」をシンボルに兵庫県南西部に位置する姫路市。 古くから交通の要衝であり、播磨地方の政治・経済・文化の中心都市として栄えてきました。 その姫路市で私たちは世界一の城下町を目指して日々の業務に取り組んでいます。

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