「蛇口をひねれば水が出るのが当たり前。その維持は難しいけれど、すごくやりがいがある」袖ケ浦市役所で22年働いた電気職が選んだ、かずさ水道広域連合企業団という道
かずさ水道広域連合企業団
「自分たちの仕事は、あって当たり前なんです。蛇口をひねれば水が出てくる。それが日本では当たり前なんですけれど、維持している身としては、その維持はすごく難しい。でも逆に言うと、すごくやりがいのある仕事だと思います」
そう語るのは、かずさ水道広域連合企業団 施設管理課 施設維持班の宮﨑さん。2002年(平成14年)に袖ケ浦市役所へ電気職として入庁し、営繕、水道、ごみ処理施設と「止められない現場」を約22年間歩んできました。令和7年度に経験者採用で、かずさ水道広域連合企業団へ転職し、現在2年目を迎えています。
20年以上勤めた市役所を離れる決断の裏側から、水道施設を守る仕事のリアル、そして未経験の技術職でも飛び込める環境まで、じっくり伺いました。
水源から配水まで。浄水場・配水場・加圧ポンプ場を「止めない」施設維持班の仕事
ーまず、現在のご所属と、担当されているお仕事について教えてください。
宮﨑:施設管理課の施設維持班に所属しています。かずさ水道には、大規模な浄水場で用水供給事業を担う部署が別にあるのですが、私たちが担当しているのは、企業団が発足したときに4市から引き継いだ水道事業側の施設です。浄水場や配水場、加圧ポンプ場の維持管理がメインですね。それに加えて、施設から配水している水の水質管理も行っています。
宮﨑:用水供給の部署が大きな浄水場を軸に動いているのに対して、うちの施設維持班は、水源から配水までの一連の施設を扱っているのが特徴だと思います。
かずさ水道広域連合企業団は、木更津市・君津市・富津市・袖ケ浦市の4市の水道事業と、君津広域水道企業団の水道用水供給事業をひとつの事業体にまとめ、平成31年4月に事業を開始した団体です。施設管理課には、施設を守る「施設維持班」と、管路の保守点検や漏水修繕を担う「管路維持班」の2つの班があります。

営繕、水道、ごみ処理施設。袖ケ浦市役所で22年、「止められない現場」を歩いてきた
ーここからは、宮﨑さんのこれまでの歩みを伺わせてください。かずさ水道には、新卒ではなく転職で入られたんですよね。
宮﨑:そうです。2002年、平成14年に袖ケ浦市役所へ電気職として入庁しまして、令和6年度まで勤めました。令和7年度に、かずさ水道に転職しています。ですので、かずさ水道ではまだ2年目の新人です。
ー袖ケ浦市役所では、電気職としてどんなお仕事をされていたんですか?自治体の電気職の仕事は、なかなかイメージがつかない方も多いと思います。
宮﨑:20年以上いましたが、異動は2回だけで、在籍した部署は3か所でした。最初は営繕業務です。庁舎などいわゆる「建物」の建築や修繕ですね。次に異動したのが水道事業で、今とほぼ同じような施設の維持管理がメインでした。
宮﨑:その次がごみ処理施設です。プラント系の維持管理で、こちらも設計や修繕対応がありました。水道もごみの処理も、止めることがなかなかできない業務なんですよね。最終的には班長職になり、業務を行っていました。
ー技術系公務員の人材不足は全国的に言われていますが、当時はかなり忙しかったのではないですか?
宮﨑:そうですね。特にごみ処理の仕事をやっていた頃はやっぱり、帰りが遅い日が続きました。子どもがまだ幼稚園の頃ですが、子どもが朝起きる前に家を出て、帰ったら寝ている状況があり、休日に子どもから「久しぶり」って言われたこともありましたね。(笑)
「募集要項の年齢上限が、自分の世代までだった」。ギリギリまで悩み抜いた転職の決断
ー実は宮﨑さんは、かずさ水道への統合にも関わられていたと伺いました。
宮﨑:袖ケ浦市で水道事業に8年間従事していた時期に統合の検討が始まったのですが、その頃に携わっていました。自分が水道を離れてから統合の動きが加速していき、後任に託しました。
ー令和6年度いっぱいで袖ケ浦市を退職して転職する。20年以上働いた場所を離れるのは、かなり勇気がいるだろうなと思います。なぜ転職しようと思われたんですか?
宮﨑:きっかけは、かずさ水道の募集要項を見たことでした。経験者採用の年齢上限が、ちょうど自分の世代まででした。行くか行かないか、受かるか受からないかは別として、「まずは受けてみよう」という感覚でしたね。
宮﨑:ただ、実際に採用の連絡をいただいてからは、正直すごく悩みました。上司も部下もお世話になった人たちばかりでしたから。決断するまでは本当に時間をかけて、ギリギリまで悩みました。
ーこれまでは営繕もごみ処理も、いろいろな分野を経験できる働き方でしたよね。水道に特化した組織に移ることへの不安はなかったんですか?
宮﨑:かずさ⽔道にも知っている⼈間がいたので、どんな仕事があるのかは事前に聞いていました。自分が従事していた時と異なり、⽔道事業に特化している組織だからこそ、実務を担う部署が細かく分かれていて、仕事がより専⾨になっていると聞いていました。そういう組織だと分かっていたので、あまり不安はありませんでした。
宮﨑:ただ、⽔道事業からは11年離れていましたから、国の制度や法律の変わったところ、忘れてしまっている部分もあるので、⽇々新しい知識を取り⼊れています。
11年ぶりの水道業務。1年目は「統廃合等施設更新室」で設計と向き合った
ー転職にあたって、お引っ越しはされたんですか?
宮﨑:していないです。今までの通勤時間が5分、10分で着いていたところが30分になりましたが、苦になる距離ではないので。今は木更津市内の本庁舎に車で通っています。
ー入団1年目は、今とは別の部署にいらっしゃったそうですね。
宮﨑:はい。1年目は計画課統廃合等施設更新室という、設計と工事に特化した部署にいました。施設の更新計画や統廃合計画に沿って、老朽化した設備、たとえばポンプや電気盤を更新していく仕事です。設計委託で上がってきたものをもう一度精査して発注し、そのあとは工事管理をしていく、という流れですね。
宮﨑:戸惑いもありました。同じ自治体の仕事でも、団体が変わると考え方ややり方が所々違うんです。自分の知らない施設のことも理解して、委託管理しなければいけない。市町村が変わると施設の組み方も変わってきます。ただ技術職として、それはそれで面白いと感じています。

朝は前日の配水量チェックから。「17時15分に帰る日もあれば、現場次第で19時ごろまで」
ーここからは働き方について伺います。朝は何時に起きていますか?
宮﨑:6時45分に起きて、7時15分に家を出ます。自分は朝ごはんを食べないタイプなので、ギリギリに起きてます。子どもの方が早く起きているくらいで、学校に行く時間に合わせて一緒に出ていく感じです。通勤は30分ほどなので、8時ごろに職場に着くようにしています。
ー朝はどのような仕事から始まりますか?
宮﨑:担当地域の前日の日報のチェックと、夜間の配水量の確認をしています。配水量が増えていれば、もしかしたら浄水場の先のどこかで漏水しているかもしれないので、そういう兆候があれば、管路の維持管理を担当している隣の管路維持班に情報提供して、漏水調査や修繕につなげています。逆に管路維持班から「修繕後の作業を手伝ってほしい」と声がかかって、一緒に現場へ出ることもありますね。
ー日は、どんなふうに過ごされることが多いですか?
宮﨑:最近は修繕の案件が多いので、午前か午後のどちらかは現場に出ていることが多いです。戻ってきたら設計をしたり、国からの調査統計に対応したり、データの整理をしたり。帰る時間で言うと、定時である17時15分に仕事を終えることもあれば、現場に出ている日などは延びることもあって、それでも19時ごろには帰っていますね。
台風が来る前に、電源を借りておく。「起きてから動く」だけではない備えの仕事
ー今の部署で「これは大変だった」ということは、すでにありましたか?
宮﨑:施設管理課は、突発的な事象への対応を迫られる瞬間がどうしてもあります。そのような中でも、例えば台⾵では事前に来ることが予測できるので、自家発電設備がなく停電が予想される施設には⾃家発電機を借りてきて設置して備えたり、仮に井⼾が使えなくなっても⼤丈夫なように、事前に配水池の⽔位を上げて⽔を確保しておいたりします。
宮﨑:それでも突発的な事故が起きたときには給⽔⾞をお願いしなければならないこともあります。最近は各地で地震も続いていますから、地震への備えももっと深く検討していかなければと思っています。夜間や休⽇に突発的な故障で出なければいけないことも正直ありますし、昼から現場に出て終わったのが夜中だった、ということも場合によってはあります。ただ、これは当たり前を維持するためには無くてはならないことなのです。
ただし、時間外の対応には当然時間外手当が出ますし、代休制度もしっかり整っていますので、そこは安心してもらっていいと思います。

「業務が細分化されているから、プレッシャーは少ない」。経験ゼロでも飛び込める理由
ーかずさ水道は、水道業務の経験がない技術職の方もチャレンジできる採用をされています。一方で、水道への深い理解がないと難しそうだという印象を持つ方もいるかもしれません。実際のところ、未経験で入っても頑張れる環境なんでしょうか?
宮﨑:一般的に自治体で同様の業務を行うときは、今みたいに部署が分かれていません。施設維持班がやっているような業務もやりながら、漏水修繕もやって、と本当にいろいろなことを同時にやる必要があります。一方で、かずさ水道は仕事が部署係ごとに細分化されていて、働きやすい環境だと思います。また、経験豊富な職員が多くいるので、安心できる体制です。
宮﨑:それに、運転管理は委託業者にもお願いしているので、故障があればどういう状況なのかを委託業者から情報を引き出しつつ、当然現場にも⾏って、修繕の⼿配を⾏います。また、バックアップを意識した体制を組んでいるため、未経験でも働きやすい環境です。
ー研修などの制度もあるんですか?
宮﨑:日本水道協会などが実施している外部研修を、受けることができます。自分も去年受けて、とても役立ちました。
沖縄と離島以外、バイクで走破。フェリーが欠航しても、九州へ
ーがらっと話題が変わりますが、プライベートの趣味や関心事はありますか?
宮﨑:学⽣の頃からずっとバイクに乗っています。近場のツーリングもしますし、県外へのロングツーリングにも出かけます。学⽣時代は北海道まで⾏きましたし、社会⼈になってからも⻑野の⽅へ⾏ったり。⼀番⻑いものだと、九州を1周してきたこともあります。
宮﨑:実はそのとき、前⽇に台⾵が来てフェリーが⽋航になってしまって、陸路で⾏かざるを得なくなったのですが、そのおかげで予定になかった四国を横断してから九州に⼊りました。
バイクなら、沖縄と離島を除いて⼀応⾛っています。
ー素敵ですね。通勤もバイクですか?
宮﨑:今は⾞ですね。ただ、バイクでも来たいなとは思っていて、休日に出るときなんかは、バイクで来たりしています。今は⼦どもがまだ⼩さいこともあって、バイクでの遠出はあまりできていなくて、週末は⼦どもの習い事の送り迎えをしながら過ごすことが多いですね。

「自分の意見を、どんどん出してほしい」。4市が統合した団体だからこそ、考え方が凝り固まっていない
ー最後に、宮﨑さんと同じように、どこかの団体でキャリアを積んで転職してくる方々へ、メッセージをいただけますか。
宮﨑:自分が転職して感じたのは、過去に同種の仕事をやってきた人にとっては、業務が細分化されている分、気持ち的な重圧は本当に少ないということです。不安な部分は確かにあると思いますが、研修制度もありますから、そういったものを活用して自分のスキルアップにつなげてもらえればと思います。
宮﨑:それと、かずさ水道は4市の水道が統合してできた団体なので、施設ごとに設計思想が違うという話をしましたが、言い換えれば、多角的にいろいろな物事を見られるということです。考え方が凝り固まっていない。だから、自分の考えをどんどん出していくことが、組織にとってもプラスになります。転職してきたとしても、自分の意見を率先して出していってもらえたら、こちらとしてはありがたいですね。
宮﨑:自分たちの仕事は、あって当たり前を支える仕事です。蛇口をひねれば水が出てくるのが日本では当たり前ですけれど、その維持はすごく難しいことです。やりがいのある仕事だと思いますよ。
ー本日はありがとうございました。
編集後記
取材の終わり際、宮﨑さんがぽつりと口にした「自分たちの仕事は、あって当たり前を支えている」という言葉。
始業前に前日の配水量を確かめる朝。台風が来る前に電源を借りておく備え。夜中までかかる突発対応。「当たり前」は自然にそこにあるのではなく、毎日誰かの手でつくられているものでした。その手応えを、宮﨑さんは「難しい。だからやりがいがある」と表現したのだと思います。
悩み抜いた末に選んだ新しいフィールドで、朝の日報に目を通し、休日はバイクにまたがる。そんな等身大の姿が、次の誰かの一歩を後押しするような気がしています。
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この記事は、2026年8月13日にパブリックコネクト編集部が取材した内容をもとに作成しています。
記載の内容・所属・数値は取材当時のものです。
この記事の官公庁・自治体
水道というライフラインを通じて、木更津市、君津市、富津市、袖ケ浦市をはじめとする約31万人の生活を支えています。 蛇口をひねれば水道水が出るという「あたりまえ」を50年後、100年後の次世代に紡いでいくことが私たちの使命です。 水道のスペシャリストとして、安心・安全な水道水を届けたい、地域貢献に携わりたい方をお待ちしております。
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