建設コンサル、研究員を経て釧路市役所へ。専門性を地域のためにいかす技術者のキャリア
釧路市役所
「型を破るような仕事、新しいことをしたい方にはとてもぴったりだと思います」
そう語るのは、釧路市役所都市整備部道路河川課河川係で働く戸村翔さん。建設コンサルタント会社で河川事業に携わった後、一般財団法人北海道河川財団への出向、北海道大学大学院での研究員を経て、2025年10月に釧路市役所へ入庁しました。
民間企業や研究機関で積んできた専門性は、自治体でどういかされているのでしょうか。今回は、釧路市をめざす方、なかでも専門技術を地域のためにいかしたいと考える方に向けて、戸村さんのこれまでのキャリアと今の仕事について、お話を伺いました。
- 建設コンサルから北海道河川財団へ。国内初の気候変動対策プロジェクトに挑んだ技術者人生
- 子どもの難病と向き合う。決断した釧路への帰郷
- 民間・研究機関の経験をいかして。地理情報システムで変える釧路の河川維持管理
- 「型を破りたい人」に向く職場。休みやすさと暮らしやすさを実感
建設コンサルから北海道河川財団へ。国内初の気候変動対策プロジェクトに挑んだ技術者人生
ーまず、土木を学ぼうと思ったきっかけと、これまでの経歴について教えてください。
戸村:地元は釧路で、父がガス関係の仕事をしていて、祖父は造園関係の仕事をしていました。小さい頃からその仕事を間近で見ていたので、自ずと土木に触れる機会がありました。気付けば大学も土木分野に進んでいて、大学卒業後は国の仕事を中心に手がける札幌の建設コンサルタント会社に就職し、河川計画や河川事業の仕事に携わることになりました。
これまで、釧路周辺では大きな水害はあまりなかったため、経験したことのない「洪水」という事象を扱うことに、「洪水と戦う」新鮮さを感じながら仕事をしていました。
ー建設コンサルタント会社で、どのようなお仕事を担当されていたのですか。
戸村:河川事業の計画を担う仕事を3年ほど担当していましたが、その後2年間、出向も経験しました。出向先の北海道河川財団は、国の河川計画・河川事業や自然再生事業等に取り組む一般財団法人であり、シンクタンク的存在です。出向後すぐ、気候変動の影響をどう治水計画に組み込むか検討する、国全体の治水計画を動かす気候変動適応プロジェクトに携わることになりました。国内の実績がわずかで、方針が定まっていない段階での検討だったので、欧米諸国の事例を参考にしながら手探りで進める難しさがありました。
気候変動適応の先進国であるオランダへ視察に行き、オランダの技術者や研究者から「真に」必要な情報を引き出すことにもとても苦労しましたが、大きなプロジェクトに携われたことやその後の両国の共同研究に発展したことは、今でも懐かしく、いい経験になったと感じています。

子どもの難病と向き合う。決断した釧路への帰郷
ー出向から戻られた後、どのように過ごされていたのですか。
戸村:帰任してすぐに後任が体調を崩してしまい、再び同じ財団に出向することになり、出向期間満了後も財団関係のプロジェクトに携わっていました。ただ、ちょうど子どもが生まれたばかりの頃で、家庭や子育てとのバランスが厳しくなり退職を決意しました。
その後、財団時代からお世話になっていた北海道大学の山田朋人教授から声をかけていただいて、大学院で研究員として働くことになりました。大雨時の避難率や死者数を推定するモデル開発など、人命に関わるテーマに取り組んでいました。
また、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)では、「リスク情報による防災行動の促進」をテーマとした国家プロジェクトに参画し、社会課題の解決に向けて柔軟かつ迅速に取り組む、ミッション志向型・アジャイルな課題解決の考え方を学び、技術開発に取り組みました。
ー釧路市への入庁を決めた経緯を教えてください。
戸村:大学院にいた時期に、2人の娘のうち、長女が4歳の時に2つの難病にかかり、長い期間で入院が続きました。小さい子どもだったので、その都度私も付き添っていて、なかなか身動きが取れなくなる時期も多くありました。私の親が釧路にいたことや、札幌での子育てに限界を感じて、釧路に戻ることを決めましたが、山田教授と研究室に大きな迷惑をかけることやこれまでの「キャリア」を諦めることに対して、とても悩みました。
釧路市役所への入庁の決め手は、地元だからこそ自分のこれまでの専門性をいかせる場面があるということ、それから働き方の面で、家庭と安心してしっかり向き合える環境が釧路市役所にあると思い、入庁しました。

民間・研究機関の経験をいかして。地理情報システムで変える釧路の河川維持管理
ー現在のお仕事について教えてください。
戸村:釧路市が管理している河川の維持管理が中心の業務です。昨年、星が浦川の河川整備事業が終了したので、直近では大きな事業はなく、釧路地区の約50の市管理河川を対象に、どの河川のどの構造物がどの程度破損しているか、どこを優先して修繕する必要があるか、点検・評価する仕事が中心です。
ー民間企業から公務員になって、戸惑ったことはありますか。
戸村:仕事の進め方でギャップを感じることはありました。前職及び前々職では早くからペーパーレス化が進んでいたのですが、釧路市役所に来てみるとFAXも現役で使われていて、まるでタイムスリップしたような感覚がありました。ただ、それも含めて、ギャップを新しい環境として楽しみながら、それ自体も変えていく意気込みを持って仕事をすることが出来ています。
ー具体的にどのように仕事にとりくんでいますか。
戸村:現在は、地理情報システム(GIS)を活用し、業務の効率化と市民の皆さんへのより質の高い行政サービスの提供に取り組んでいます。これまで河川に関する資料は紙で管理されることが多く、必要な情報を探すだけでも時間がかかることが課題でした。そこで、資料を一から整理・データ化し、GISで一元管理することで、高度な解析や迅速な意思決定ができる仕組みを整備しています。
さらに、気象庁の降雨データや河川解析ソフト「iRIC」を活用し、天気予報や台風の進路予想の段階で過去の豪雨事例と照合し、事前に解析した氾濫シナリオを即座に確認できる仕組みの構築も進めています。これにより、雨が降った際に氾濫の危険性の高い河川や優先して巡視すべきルートを、経験だけでなくデータに基づいて迅速に判断できる体制を目指しています。
ー業務効率化や新しいソフトウェアの導入について、周りの方の反応はいかがですか。
戸村:「すごいね」と言っていただくことは多いのですが、一方で「何をやっているのかよく分からない」と思われている面もあるかもしれません。課内や係内では皆さんが前向きに受け止めてくださるので、良い意味で自由にチャレンジできる環境があります。その中で、「このシステムでこんなことができます」と少しずつ活用メリットを伝えながら、その先に実現したい姿を意識して取り組んでいます。
実は、民間企業で働いていた頃はGISを最低限しか使っていませんでした。ただ、データを整理・分析して活用するという考え方は当時の経験で培われたもので、その経験や知識が今の仕事につながっていると、最近特に実感しています。
ー河川の維持管理という仕事に、やりがいはありますか。
戸村:河川の維持管理は地味に見えるかもしれませんが、地域の人たちの安全を直接守っているという実感があります。特に、市で管理する河川は普段は少ししか水が流れていないのに雨が降った際には全く別の顔を見せて豹変します。大きな整備事業のような派手さはなくても、点検や見回りの精度を上げることが、そのまま暮らしの安心につながっていると感じる時に、この仕事のやりがいを強く感じますね。

「型を破りたい人」に向く職場。休みやすさと暮らしやすさを実感
ー職場の雰囲気はいかがですか。
戸村:今の係は私を含めて3人と少人数ですが、仕事の話もしっかりしながら、プライベートな話もできる、堅苦しくない居心地のいい職場だと思います。課全体で25人ほどになると、異動などの節目に懇親会もあって、明るい雰囲気を感じます。
ー働き方の面では変化がありましたか。
戸村:民間時代から比較すると、残業はかなり減りました。子どもが熱を出した時や、難病治療で月に1回日帰り入院する時なども、有給休暇を自由に取らせてもらえていて、周囲の理解にも大きく助けられています。また、夏季休暇として10月までに取得する4日間の休みも用意されていて、まとまってリフレッシュできる機会があるのもありがたいですね。
ー釧路に戻ってきて、ご家族との時間という面ではいかがですか。
戸村:子どもの通院や体調不良の時にもすぐ対応できる環境のおかげで、平日も含めて、以前よりも家族と過ごす時間を確保できるようになりました。家族との時間を大事にしながら働けている今の環境には、納得している部分も大きいです。
ー釧路の魅力はどんなところにありますか。
戸村:雪が少なくて、夏も涼しいところですね。札幌から来ると特にそう感じます。今のところ半袖を着る機会がほとんどないくらいです。また、地元のショッピングモールに行けば大抵のものが揃うので、地方ならではの安心感もあります。子どもたちもお出かけというとそのショッピングモールにまず行きたがるほどで、地元らしい暮らしを日々楽しんでいます。
ー最後に、釧路市をめざす方へメッセージをお願いします。
戸村:中途採用の方には特に、現状のやり方を変えるマインドを持った方や、新しい挑戦を楽しめる方にはとてもぴったりだと思います。実際、私がGISを取り入れた時も、最初は不思議に思われながらも、少しずつ受け入れてもらえました。そういう挑戦を認めて、盛り上げてくれる人が多い職場です。壁をぶち破りたい人は特におすすめですよ。

ー本日は、ありがとうございました。
戸村さんが淡々と語る言葉の端々から、専門性への誇りと、家族との暮らしを大切にする姿勢の両方が伝わってきました。離れた研究への思いを抱えながらも、今いる場所での挑戦にまっすぐ向き合うバランス感覚に、地に足のついた強さを感じました。
建設コンサルタントから研究員、そして釧路市役所へ。一見遠回りに見えるキャリアが、地理情報システムを使った河川維持管理という今の仕事にしっかりとつながっている点が印象的でした。積み重ねた経験を地域のためにいかしてみたいと考えている方にとって、釧路市はその一歩を踏み出す場所になるかもしれません。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年7月取材)
この記事の官公庁・自治体
北海道東部に位置する釧路市は、釧路湿原を含む広大な低地が南側の太平洋に展開する地形にあり、 森と湖、山、河川、湿原、海などの多彩で雄大な自然に恵まれています。 夏季は霧が発生し、最高気温平均が21.1℃と冷涼な気候が特色であり、冬季は日照時間が長く積雪量が少ないことが特徴です。 約16万人の人口を擁し、自然と都市とが調和した持続可能なまちづくりを進めており、 「つながる まち・ひと・みらい ひがし北海道の拠点都市・釧路」を掲げ、さらなる飛躍を目指しています。 ほどほど都会、ほどほど田舎の釧路市では、職員一人ひとりの力が市政に直接反映されることもあり、自分の力が地域の未来を創るという実感を持ちながら仕事をすることができます。また、その積み重ねが個人の成長にも大いに役立ちます。 道東の拠点くしろで私たちと一緒に働いてみませんか?
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