地元を守ると決めた2人。西村山の若手消防士が語る、現場のやりがいと働き方
西村山広域行政事務組合
「住民の方から頼りにされている先輩を見ると、自分もあんなふうになりたいと思うんです」
そう語るのは、西村山広域行政事務組合消防本部・西村山消防署の本署第1課で消防士として働く、採用5年目の佐藤さん。
同じ第1課には、1年後輩の今野さんも勤務しています。西川町出身の佐藤さんと、寒河江市出身の今野さん。2人とも地元で育ち、高校卒業後すぐに消防の道へ進みました。
今回は、1市4町の暮らしを守る西村山消防本部の本署第一課で働くお二人に、仕事のやりがいや厳しさ、そして働き方について、たっぷりとお話を伺いました

きっかけは違っても、選んだのは地元。2人が消防士を目指した原点
ーまずは、お2人のご出身を教えてください。
佐藤:西村山広域行政事務組合は、寒河江市と河北町、大江町、朝日町、西川町、あわせて1市4町を管轄する消防本部です。私たちが勤める本署は寒河江市にあり、私はその隣の西川町の出身です。
今野:私は寒河江市の出身です。
ーお2人とも、まさに地元で働いているんですね。消防士を目指したきっかけは何だったのでしょうか。
佐藤:7歳のときに東日本大震災がありました。東北でも被害があり、ニュースで消防士や自衛隊の方々が活動する姿を見て、消防士になりたいと思うようになりました。
今野:私は中学・高校と柔道部でした。柔道はけがの多いスポーツで、練習でも大会でも救急車が来る場面をよく目にしていたんです。それで救急隊に興味を持ち、救急隊は消防が管轄していると知りました。柔道で体力を使ってきたので、それも消防に役立てられるのではと思い、この仕事に就きました。
ーそれぞれの思いで消防士を志したお2人。どこの消防本部を受けるかは、すぐに決まりましたか?
今野:働くとなっても山形県に残っていたくて、地元の寒河江市を管轄している消防本部を受けました。
佐藤:私も同じです。地元に残りたいという思いが強かったですね。高校を卒業して、18歳で採用されました。

半年間の寮生活から始まる。消防学校と救急科で身につける基礎
ー18歳で飛び込んだ消防の世界。訓練は厳しいイメージがありますが、実際はどうでしたか?
佐藤:体力的にも精神的にも、厳しさはもちろんあります。ただ、命に関わる現場ですから、その厳しさも含めて消防だと思っています。最初の半年間は消防学校に入りますが、厳しいだけではなく、仲間と一緒にやっていく。それも全部含めて消防士なのだと思います。
ーその最初の半年間を過ごす消防学校は、どんな場所なんでしょうか。
今野:山形県内の各消防本部で採用された人たちが県の消防学校に集まり、半年間寮に入って訓練や座学を受けます。そこで消防の基礎を教わってから、自分たちの消防本部に戻って、また訓練をするという流れです。
ー座学と訓練では、具体的にどんなことを?
佐藤:座学では、建築基準法から、火災をどう消すかという消防の技術、物がどう燃えるかといった仕組みまで勉強します。訓練では、まず基本的な道具の使い方を学び、その道具を使って救助現場や火災現場でどう活動するかを身につけていきます。
ー学校に通うのは、最初の半年間だけですか。
佐藤:本署に戻って少し経った後、救急隊員になるために救急科で2か月間学びます。こちらも寮生活なので、仲間とはすごく仲が深まりますし、今も交流があります。

1日に何件も出動することも。少人数で火災も救急も担う本署の24時間
ーそうして基礎を身につけ、今は本署で勤務されています。1日はどんなふうに始まるんですか?
佐藤:出勤したらまずその日のメンバーや、誰がどの車両に乗るかを把握します。8時30分になったら前の当番から申し送りを受けて車両に不備がないかを点検し、続いて資機材を点検します。その後、30分間のミーティングでその日にやることを話し合い、各自が訓練や事務作業に入ります。そこに出動要請が入れば対応する、という形です。
ー『そこに出動要請が入れば対応する』とのことですが、本署の出動はどのくらいありますか?
佐藤:本署は、ほかの4町の分署に比べると多いです。救急は日によって異なりますが、昨年の平均は1日5〜6件ほど。多い日には10件ほど出動することもあります。管外への病院へ搬送することが多く、1件で1時間も2時間もかかることがあります。1日中出動して終わる日もあります。
ー1日中出動が続く日もあるとなると、救急や火災など、担当は分かれているのでしょうか?
佐藤:人数の多いところなら救急専門、消防専門と分かれますが、私たちは人数が少ないので、1人が出動も含めていろいろな業務を担います。火災があれば、ほぼ全員で出動します。本署第一課の職員は20人で、1日に勤務しているのは11〜13人ほどです。
ー少ない人数で、多くの現場を支えているんですね。そうした日々の中で、やりがいを感じるのはどんな瞬間ですか?
今野:私はやっぱり救急現場です。もしかしたら助からないかもしれない、という難しい症例の現場でも、みんなとてきぱき活動して、症状が改善したときにすごくやりがいを感じます。
佐藤:救急現場でご家族から「ありがとう」と言っていただいたり、ご本人が「助かった」と話してくださったり。火災現場でも、活動が終わった後に周辺の住宅の方から「お疲れさま」と声をかけていただくことがあって、やりがいを感じます。職員のほとんどは管内の市町の出身で、自分の町を守っているという意識が強く、地域の方とも密接に関わっています。

女性消防士として、経験の浅い隊員として。先輩の背中から学ぶ「頼れる存在」
ー住民の方の声が支えになっているんですね。一方で、難しさを感じる場面は?
今野:女性職員が少ないので、男性の中で仕事をしています。力はあるほうだと思いますが、やはり男性にはかなわず、ついていくのに必死です。火災の消し方なども、一つ一つ学ぶことが多くて難しいです。
佐藤:救急現場では、患者さんをご自宅や施設から救急車へ運びますが、症状や体の状態に合わせて、寝かせるより少し起こしたほうがいいかなどを判断し、慎重に搬送しなければなりません。症状に合わせた対応力が求められるのは難しくもあり、やりがいでもあります。
ー状況に合わせた判断力は、どのように身につけていくのですか?
佐藤:私たちはまだこの仕事について日が浅いので、先輩たちは見ているポイントが違うと感じることが多いです。火が危ないのは誰が見ても分かりますが、「ここまで行ったら危ない」、逆に「ここまでは行かないと火は消せない」という判断力が先輩たちにはあります。そこはまだまだ鍛えていかなければと思っています。
ー将来的に『こうなりたい』と思う先輩像はありますか?
佐藤:知識も技術も体力もすごい先輩ばかりですが、私がなりたいのは、親しみやすさのある先輩です。消防士は人に接する仕事で、現場には必ず助けを求めている人がいることがほとんどです。住民の方から頼りにされている先輩を見ると、自分もあんなふうになりたいと思います。
ー今野さんは先ほど、女性職員が少ないとお話しされていました。実際に入ってみて、想像と違ったことはありましたか?
今野:男性ではできないこともあるんだと気づきました。例えば若い女性の救急現場で心電図を貼るとき、男性だと抵抗がある方もいらっしゃいます。浴室からの救急要請もあり、女性が1人いるだけで安心して接してくださる方もいます。一方で、女性だからできない、というのを言い訳にはしたくありません。男性より重いものが持てないといった面はありますが、日々訓練をして、皆さんと同じことができるように近づけていきたいと思っています。
ー女性職員は何人いらっしゃるのですか。
今野:消防本部全体で3人で、育休中の方もいるので、現在消防署で働いているのは2人です。今は女性用の施設が本署にしかないため、女性は本署での勤務か、通信司令課や本部の警防課、総務課などで事務を担当することもあります。
ー地域の方と関わる機会もありますか。
今野:学校や幼稚園、福祉施設から依頼を受けて、避難訓練や救急講習、消火器の使い方の指導に行きます。イベントでなくても「救急車や消防車を見せてください」と、ふらっとお子さんを連れて来られる方もいます。すごく喜んでいる姿を見るのは、とてもいいなと思います。

非番と週休が重なれば3連休。オンとオフがはっきりした職場
ー24時間をともに過ごす仲間とは、どんな雰囲気で働いていますか?
佐藤:かなりいい雰囲気だと思います。24時間一緒にいるので、普段からのコミュニケーションが現場活動にも生きてきます。20代から50代まで年代はさまざまですが、年齢に関係なく仲良くしています。
今野:まとまりがあって、皆さんオンとオフがあります。普段からコミュニケーションが取れているので、災害のときも話しやすく、言いやすいです。土日祝日には、みんなで食事を作ることもあります。
ー24時間勤務となると、休みはどんなサイクルで取れるのでしょうか。
佐藤:8時30分に出勤して翌日の8時30分まで勤務したら、次の8時30分までは「非番」で休みです。これに「週休」が組み合わさるので、非番と週休を合わせると3日間の休みになります。1日休暇を取るだけでもまとまった休みになるので、平日に働いて土日が休みという働き方よりも、まとまった休みは取りやすいと思います。
ーまとまった休みが取れると、過ごし方の幅も広がりそうです。お二人は休日、どう過ごしていますか?
今野:サウナが好きです。仕事中はネイルができないので、休みの日だけ自分でジェルネイルをするのも楽しみです。
佐藤:チームでよくご飯を食べに行きます。おいしいものを食べるのが好きなんです。先輩の中には一緒に畑をやっている人たちもいて、スポーツをしたり集まったりと、休みの日の交流もあります。
ー最後に、消防士を目指す方へメッセージをお願いします。
佐藤:人の命がかかっているので、もちろん厳しさもあります。でも、私たちは「絶対に助けるぞ」とプライドを持ってやっているので、新しい仲間が来てくれたら大歓迎です。プライベートの時間もかなり確保できますし、休みの時間を一緒に過ごせる仲間もできる場所です。ぜひ来ていただけたらと思います。
今野:女性の方には、女性だからできないと思わないでほしいです。女性がいるからこそ和む雰囲気もありますし、現場で活かせることもあります。訓練も、ただこなすだけでなく「こうやったらどうだろう」と検証しながら、楽しみながらみんなで学べます。感謝の言葉をたくさん伝えてもらえる、公務員の中でもとくにやりがいの大きい仕事だと思います。ぜひ一緒に活動しましょう。
ー本日はありがとうございました。
厳しさを隠さずに語りながら、休日のサウナや畑、仲間との食事の話も楽しそうに教えてくれたお二人。「地元に残りたい」と決め、日々の業務にまっすぐに向き合われていることが感じられる取材でした。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年10月取材)
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5つの市町を、ひとつの力で支える。 西村山広域行政事務組合は、寒河江市、河北町、大江町、朝日町、西川町の5市町で構成され、地域の暮らしを支える仕事をしています。 月山、葉山、朝日連峰。寒河江川や最上川。豊かな自然に囲まれた西村山地域には、ここで暮らす人たちの日常があります。 消防・救急、暮らしで出てくるごみの処理など、地域の安全・安心を守る仕事。行政事務を通じて、地域の仕組みや暮らしを支える仕事。 一つひとつの仕事は違っても、目指すものは同じです。 「この地域を支える」ということ。 地域のために働きたい。 人の役に立つ仕事がしたい。 地域の未来に関わりたい。 そんな想いを持つ方を、私たちはお待ちしています。
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