「がんばった分だけ、住民に還元できる」―― 電力会社からUターン、新上五島町役場で見つけた仕事のやりがい

新上五島町役場

2026/10/13

「がんばれば、がんばった分だけ、住民に還元できる」

 

そう語るのは、新上五島町福祉課子育てセンターで働く、入庁10年目の山下剛史さん。高校卒業後は電力会社に就職し、原子力発電所の保守管理業務を約6年間担当してきました。東日本大震災をきっかけに地元へUターンし、独学で試験勉強を重ねて町役場に入庁しました。

 

情報化推進室、健康保険課を経て、現在は子育て支援の分野で幅広い業務を担う山下さん。今回は、これまでの経歴や仕事のやりがい、島での暮らしについて伺いました。

 

 

 


 

電力会社からのUターン。厳しい環境を経て見つけた「安定」という選択

 

ー山下さんはどちらのご出身なのでしょうか。

 

山下:町内で生まれて、高校卒業まではずっとこの町で過ごしていました。

 

 

ー高校卒業後は、どのような進路に進まれたのですか。

 

山下:高校で電気関係を学んでおり、卒業後は電力会社に就職しました。大阪での研修を経て、原子力発電所のある地域に配属になりました。最初の1年は、発電を止めずに動かし続けるための巡回点検を担当していました。2年目からは日勤帯に移り、モーターや変電設備といった電気機器の保守管理を任されました。知らないことを知る面白さがあり、日々充実した時間を過ごしていましたね。

 

 

ーそこから状況が変わったきっかけは何だったのでしょうか。

 

山下:東日本大震災です。福島の原子力発電所の事故を受けて、国の規制が大きく変わりました。安全性を高めるための設備の作り直しが、何度も求められるようになりました。方針がそのたびに変わり、作ったものを壊してまた作り直すという状態が2、3年続きました。

 

その中で、だんだんとやる気を保てなくなっていきました。ちょうど同じ時期に実家の両親が体調を崩したこともあり、この機会に地元に戻ろうと決めました。

 

 

ー地元に戻られてから、すぐに今の役場に入られたのでしょうか。

 

山下:戻ってすぐは、太陽光パネル関連の会社に一度就職しました。ですが労働環境が厳しい職場で、結果的に3か月ほどで退職することになりました。

 

 

ーそこから、どのようにして公務員を目指すことになったのですか。

山下:せっかくなら、きちんとした環境で、土日祝日も休める安定した仕事に就きたいと思うようになりました。中途からの受験だったので、受かるか不安もありましたが、それでも参考書を買って独学で勉強し、翌年に町役場へ入庁しました。

 

 

情報化推進室から子育てセンターまで。幅広い異動で培った対応力

 

ー入庁後、最初はどのような部署に配属されたのですか。

 

山下:情報化推進室に配属となり、庁舎内のパソコンやネットワークの管理を担当しました。当時は町内でも通信環境が発展途上の部分があり、業者と連携しながら回線の不具合や故障箇所を確認して回ることもありました。

 

 

ー民間企業から役場に入られて、戸惑いを感じた場面はありましたか。

 

山下:書類の決裁の流れなど、事務的な部分は新鮮に感じました。また、それまでは業者とのやり取りが中心でした。役場では住民の方と直接やり取りする機会が増えたので、伝え方を変える必要があると感じました。一方で、働く環境という点では想像していた通り良かったです。忙しい時期に残業することはあっても、基本的にはきちんと定時に帰れる環境でした。

 

 

ー情報化推進室の後は、どのような部署に異動されたのですか。

 

山下:健康保険課、そして現在の福祉課子育てセンターへと異動しました。担当する分野もそのたびに大きく変わりました。

 

 

ー分野が変わるたびに、一から覚え直す大変さはありませんでしたか。

 

山下:民間で働いていたときは一つの分野に特化していたので、役場に入ってからの異動の幅の広さには驚きました。ただ、私は気になったことを自分なりに調べて理解したい性格です。覚えること自体は苦ではなく、新しい知識が増えていくことを楽しく感じています。

 

 

ー健康保険課ではどのようなお仕事をされていたのですか。

 

山下:高齢者の医療費や高額療養費の手続き、国民健康保険の各種手続きなどを担当していました。当時はマイナンバー制度の導入前で、紙の保険証を発行する作業もありました。また、島内のへき地診療所の会計処理も担っていました。

 

最初は会計年度任用職員(1年ごとに任用される職員)のベテランの方に教えていただきながら覚えていきました。2年ほどでその方が異動されたあとは、残していただいたマニュアルのおかげでスムーズに引き継ぐことができました。

 

 

 

窓口で交わされる「ありがとう」。住民と向き合う仕事のやりがい

 

ー現在の福祉課子育てセンターでは、どのようなお仕事をされているのですか。

 

山下:児童手当や児童扶養手当といった各種手当の手続きのほか、保育所の入所管理や認定事務、保育所の運営費に関する業務なども担当してきました。会計年度任用職員の勤務管理や、子育てセンター・児童館の運営に関わる業務も担っています。

 

 

ーこれまでのお仕事を振り返って、やっていて良かったと感じる場面はありますか。

 

山下:窓口で困っている方に説明をして、利用できる制度を案内したときに感謝していただけると、やっていて良かったと感じます。特に、高齢者の方の手続きをお手伝いして直接感謝の言葉をいただいたときは、とても嬉しかったです。

 

 

ー一方で、厳しいご意見をいただく場面もあるかと思います。そうしたときはどのように向き合われていますか。

 

山下:至らなかった点は素直にお詫びして、次はどうすればよいかを考えるようにしています。どうしても難しい場面では、周囲の先輩や上司に助けていただくことも多くありました。これまで在籍したどの部署でも、周りの方がしっかりサポートしてくださる環境でした。

 

 

ー入庁から年数を重ねる中で、職場で求められる役割に変化はありましたか。

 

山下:福祉課では在籍が5年目になり、部署の中で一番長く勤めているメンバーの一人になりました。何かあったときに周りから頼ってもらえる場面が増えたと感じています。昨年は新規採用の職員のトレーナーを任され、教える側の立場を経験しました。

 

分かりやすく伝えることの難しさを実感しましたが、それでも教えた職員が優秀だったこともあり、今ではこちらが助けられる場面も多くあります。

 

 

船でつながる島の暮らし。がんばった分だけ返ってくる、この仕事の魅力

 

ー新上五島町での暮らしについても伺いたいのですが、都市部から戻ってきて感じる違いはありますか。

 

山下:時間に追われる感じがなく、自然をいかして遊べることは良いところだと感じています。一方で、島から出るには船が必要です。海が荒れると出られなくなったり、物資が届きにくくなったりすることは不便に感じる部分です。ショッピングモールやゲームセンターのような娯楽施設がないことも、都市部との違いとして感じています。

 

 

ー休日はどのように過ごされることが多いですか。

 

山下:まちの中心部から少し離れた実家に、自分のこどもと一緒に遊びに行くことが多いです。天気の良い日は、夏場であれば近くの川や海に連れて行って遊ぶこともあります。

 

 

ーこれまでのお仕事を通して感じる、公務員という仕事のやりがいを改めて教えてください。

 

山下:自分が仕事をがんばればがんばった分だけ、住民の方に還元できるところが、この仕事ならではの魅力だと感じています。窓口や電話で住民の方と直接向き合う分、日々の対応がそのまま感謝や反応として返ってきます。それが、やりがいにつながっていると思います。

 

 

ー最後に、民間企業で働く方や地元へのUターンを考えている方に向けて、メッセージをお願いします。

 

山下:戻りたいと思うのであれば、戻るべきだと思います。ただ、その前にある程度の準備をしておくことをおすすめします。私自身、戻った当初は税金の支払い方など知らないことが多く、実家暮らしをしていても金銭面で苦労した経験があります。

 

今の仕事を辞める前に、次にどう働いていきたいかを固めてから動くほうが、きっとスムーズだと思います。また、実際に一緒に働くとしたら、完璧である必要はないと思っています。何事にもとりくんでくれる方、自分なりのポリシーを持って働いてくれる方だとうれしいです。

 

ー本日はありがとうございました。

 

今回のインタビューでは、山下さんの飾らない言葉の端々から、地道に仕事と向き合ってこられた姿勢が伝わってきました。民間企業での経験を経て地元に戻り、幅広い部署を経験しながらも「がんばった分だけ住民に還元できる」と語る姿には、公務員という仕事の魅力がよく表れていました。Uターンを考える方にとっても、多くのヒントが詰まったインタビューになったのではないでしょうか。

 

 

取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年9月取材)

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