歴史を学び、平和を伝える。宇佐市役所で見つけた仕事のやりがい
宇佐市役所
「自分が思ったことがそこに反映されて、それを通してみんなが反応してくれる。そこに自分が関われることが、すごく嬉しいんです」
そう話すのは、宇佐市教育委員会社会教育課で働く、入庁5年目の永坂あかりさん。
出身は福岡県で、大学時代は大分県内の大学に進学し、考古学を専攻しました。小さいころから歴史が好きだったといい、卒業論文では出身地に近い福岡・大分の県境地域を対象に、古いお寺の配置から当時の権力構造を読み解く研究に取り組みました。新卒で宇佐市に入庁し、以来5年間、社会教育課に在籍しています。
今回は、平和学習をはじめとする担当業務や、宇佐市役所での働き方について、たっぷりとお話を伺いました。
- 友と語り合う暇もなかった就職活動。たどり着いたのは歴史を生かせる仕事
- 暮らしのすぐ隣に残る戦争遺構。子どもたちに届く言葉を探して
- 印刷会社と何度もやり取りしたフォトコンテスト。今も庁舎に残る自分の仕事
- 面接で話した趣味を今も覚えていてくれる上司。話しやすさが宇佐市役所の魅力
友と語り合う暇もなかった就職活動。たどり着いたのは歴史を生かせる仕事
ーまず、入庁までの経緯について伺います。ご出身はどちらになりますか。
永坂:出身は宇佐市ではなく、福岡県吉富町です。川を挟んで大分県中津市と隣り合っており、県境の地域で育ちました。
ー大学も福岡県内に進学されたのですか。
永坂:いえ、大学は大分県内の大学に進学しました。小さいころから歴史が好きだったので、考古学を専攻して、文字が残る前の古墳時代を学びたいと思ったんです。卒業論文では、出身地が福岡と大分の県境だったこともあって、その地域の古いお寺の配置を調べました。
お寺の位置から、当時の権力者の存在や道と地域の発展の関係性が見えてくることが分かって、時代の移り変わりを研究していました。
ー就職活動では、どのように進路を考えられましたか。
永坂:私が就職活動をしていた大学3、4年生のころは、ちょうどコロナ禍で授業もオンラインが中心になり、友人と就活の相談をする機会もあまり持てませんでした。それでも、歴史が好きという気持ちは学生時代を通じて変わらなかったので、文化財など歴史に関わりながら、それを地域の財産として生かしていける仕事を探しました。
実は、文章を書くことも好きで、印刷会社や出版社も考えたのですが、一つの趣味を仕事にしてしまうと、その趣味自体を嫌いになりそうな気がしたんです。結局、就職活動で受験したのは幅広く活動できる公務員でした。
ーその中で、宇佐市を選ばれた理由は何ですか。
永坂:歴史や文化財に力を入れている自治体を中心に、地元も含めていくつか受験しました。その結果、合格をいただいたのが宇佐市でした。あとから気づいたのですが、宇佐市にはたくさんの古墳もありますし、宇佐神宮の祭事に関わる神相撲を通じて、私の地元とは歴史的なつながりがあったんです。
今の仕事の中でもそうした話が出てくることがあって、地元とも縁のある場所で、自分がやりたかった仕事に就けたのは良かったなと思っています。

暮らしのすぐ隣に残る戦争遺構。子どもたちに届く言葉を探して
ー現在の業務について教えてください。
永坂:入庁してから5年間、ずっと社会教育課に在籍していて、文化財係と平和ミュージアム建設準備室を兼務しています。主な業務は3つあり、1つ目が平和学習の対応、2つ目が宇佐空(うさくう)の郷という施設や戦争遺構の維持管理、3つ目が空がつなぐまち・ひとづくり推進協議会の事務局です。
ー宇佐空の郷の維持管理とは、どのような仕事ですか。
永坂:宇佐空の郷周辺には、昭和14年から20年までの6年間存在した宇佐海軍航空隊の戦争遺構が今も複数残っていて、見学いただけます。私たちの係では、平和の大切さと命の尊さを伝える場所として見学対応や企画展を行っていて、子どもたちが訪れるときには職員がガイドを担当します。
私も1年目からガイドをしてきましたし、旅行会社との商談会に参加して、修学旅行の学習先として宇佐に来ていただけるよう働きかけています。
ーガイドをする上で、工夫している点はありますか。
永坂:私自身、祖母の世代でも戦争を直接経験していないので、事実を勉強しながら伝えるようにしています。最初は他の職員のガイドを見て学びました。皆さんそれぞれに特徴があって、子どもたちの関心を引くために問いかけを工夫していたんです。
平和学習というと長崎や広島の原爆が定番ですが、宇佐の特徴は、今の暮らしのすぐ隣に戦争遺構が残っていることだと思っています。遠い昔や外国の出来事としてではなく、自分が当時生きていたら巻き込まれていたかもしれない、と感じてもらえるように伝えるようにしています。
ー空がつなぐまち・ひとづくり推進協議会の事務局は、具体的にどのような仕事をしているのですか。
永坂:この協議会は、旧海軍飛行場にゆかりのある宇佐市や兵庫県姫路市など5つの自治体で構成されていて、令和5年度に事務局が宇佐市に移りました。私も入庁2年目からこの担当になったのですが、右も左も分からないまま、初めての総会に同席することになってしまいました。
それから、なぜ今の枠組みに至ったのか、経緯を一から勉強しました。次の会議まで半年近く、顔を合わせたこともない他の自治体の担当者とオンラインでやり取りを重ねる中では、正直なかなか感覚がつかめませんでした。
それでも10月に初めて直接会って話したことで少しずつ距離が縮まり、今では県をまたいで他の自治体の担当者と話せる、貴重な経験になっています。

印刷会社と何度もやり取りしたフォトコンテスト。今も庁舎に残る自分の仕事
ー印象に残っている業務はありますか。
永坂:入庁1年目に担当した、戦争遺構のフォトコンテストが印象に残っています。前任者から引き継いだ、当時2年目の事業で、募集開始が8月だったので、5月下旬にはもう係の中で内容を協議していました。
何が何だか分からないまま関わり始めた、初めての業務らしい業務でしたが、当時の上司や先輩に助けてもらいながら、チラシやポスターの構成を考えて、印刷会社とやり取りするのも初めてで大変でした。それでも、たくさんの応募をいただくことができました。
ーそのフォトコンテストは、今も何か形になって残っているのですか。
永坂:前年度からポスターのデザインは大きくは変わらなかったのですが、自分が制作に関わったものが市役所の廊下に掲示されて、自分の席からも見えたことがとても嬉しかったんです。今では入賞作品が職員の名刺の裏にも使われていて、名刺交換のときに話題になることもあります。
自分が考えたことが形になり、それを見た市民の方が実際に来てくれる。その一連の流れに自分が関わっていることが、今でもすごく嬉しいことだと感じています。
ー今、当時制作したポスターやチラシを見返すと、何か感じることはありますか。
永坂:そんなに自分がこだわってきたというほどのことはないんです。ただ、あの経験を通して、どんな言葉や見せ方だと伝わりやすいかを考えるようになりました。その中で自分の感じ方や考え方も少しずつ成長しているように思います。ガイドで子どもたちに話すときの言葉選びにも、あのころに学んだことが生きている気がしています。

面接で話した趣味を今も覚えていてくれる上司。話しやすさが宇佐市役所の魅力
ー働き方について伺います。休みの取りやすさや、部署内のコミュニケーションはいかがですか。
永坂:休みはとても取りやすいです。年次有給休暇が20日あるほか、6月から9月の間に取れる夏季休暇も6日あります。担当者でなければできない業務もありますが、みんなで分担しながら仕事を進めていく雰囲気があるので、休みを取りやすい環境だと思います。
入庁してから人事異動もあって課長は3人目になりますが、皆さん雑談のような形で気軽に話しかけてくださって、休みの相談もしやすい関係ができています。
ー職場の雰囲気については、どのように感じていますか。
永坂:採用試験の最終面接では、副市長や総務部長など、役職だけを見ると話しかけづらいと思う方々が面接官でした。でも、実際にはしっかり話を聞いてくださって、この人たちと働きたいと感じたのを覚えています。入庁後も、その印象は変わりませんでした。
面接で「文章を書くのが趣味です」と話したことを、当時の総務課長が覚えていてくださって、今でも私が書いた文章を読んで感想をくださることがあります。1年目で分からないことが多かった時も、他部署の担当者に何度聞いても優しく教えてもらえて、話しやすく、働きやすい職場だと実感しています。
ー最後に、読者へメッセージをお願いします。
永坂:何かを受験するときは、こういうことをしたいという思いを持って臨む方が多いと思います。私は一般事務採用なので、いずれ異動して違う仕事に関わることもあると思いますが、文化財や戦争遺構を通じた学びを、多くの人に知ってもらいたいという思いは変わらず持ち続けたいです。
市民の方々のすぐ近くで、自分の強い思いを持って仕事ができて、その頑張った結果が市の一部として感じられることが、市の職員としてのやりがいだと感じています。一緒に頑張りましょう。

ー本日はありがとうございました。
取材を通して伝わってきたのは、歴史や地域への静かな情熱と、言葉を丁寧に選ぼうとする姿勢です。平和学習という重いテーマに向き合いながらも、自分自身の実感を大切にしながら語る永坂さんの言葉には、5年間の仕事を通じて培われてきた芯の強さが感じられました。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年8月取材)
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