警察官志望から消防士へ。名張市消防署で見つけた「困っている人を助ける」仕事とやりがい
名張市役所
「困っている人を見つける、それだけの違いだよ」
そう教わった言葉が、進路を大きく変えるきっかけになったと語るのは、名張市消防本部名張消防署指揮調査室で働く田村さん。中学生の頃から抱いていた警察官への憧れを胸に地元の専門学校へ進学しましたが、ある出会いをきっかけに消防士の道を選びました。
今回は、消防士を目指す方に向けて、名張消防で働く仕事内容や魅力、やりがいについて、たっぷりとお話を伺いました。
- 「困っている人を見つける」その一言で決めた道。名張消防に惹かれた雰囲気
- 8か月の消防学校を経て、指揮調査室へ。24時間勤務のリアルな1日
- 救急デビューの苦しさを支えた家族の笑顔。女性隊員としての気づき
- オンとオフをしっかり両立。名張消防の仲間との絆
「困っている人を見つける」その一言で決めた道。名張消防に惹かれた雰囲気
ー消防士を目指したきっかけを教えてください。
田村:中学生の頃からずっと警察官に憧れていて、高校の就職を考える時期までその気持ちは変わりませんでした。ですが、高校3年生のときに警察の試験が不合格になってしまって。どうしようと思ったときに、専門学校に1年だけ行こうと考えました。
専門学校に通う中で、一度消防の方が話に来てくださる機会があり、なぜ消防を選んだのか質問したところ、「簡単に言えば、『警察学校は悪い人を捕まえる知識をつけろ』と教わり、『消防学校は困っている人を見つけろ』と教わる、そこの違いだけだよ」と教えてもらったんです。
その言葉が心に残り、その日から消防という仕事に強く惹かれるようになりました。
ー最終的に名張消防に決めた理由は何だったのでしょうか。
田村:後悔しないように、消防だけでなく警察や市役所などいろいろな職場を見学に行きました。京都や大阪、三重県内の消防の説明会にも参加して、一番良かったところにしようと思っていたんです。
その中で最後に見学したのが名張消防だったのですが、雰囲気を見て「めちゃくちゃいいな」と思って名張消防で受験することを決めました。
ー具体的に、名張消防のどのあたりの雰囲気が良いと感じたのですか。
田村:庁舎を見学させていただいた際、案内をしてくださったのは比較的役職の高い方だったのですが、その方が説明をしていると、若手の職員が「自分たちも教えますよ」と集まってきてくれて。
年齢を問わず和やかに話す様子がとても印象的で、良い意味で「気を張らずにいられる職場だな」と感じました。

8か月の消防学校を経て、指揮調査室へ。24時間勤務のリアルな1日
ー消防学校の8か月間はどのように過ごされましたか。
田村:消防学校では火災、救助、救急に関する基礎知識を一から学びました。体力訓練はもちろん、ホースを投げる操作訓練など基本的な内容を実践形式で身につけていきます。
入学式当日は名前を呼ばれて何度もやり直しをさせられるほどの厳しさで、初日は家に帰りたいと思うほど心細かったです。真夏に向けては重い装備で走り込みを行うなど体力的にも厳しい訓練が続きましたが、8か月間は充実した日々で、今でも印象深く思い出せるほどです。
同じ年代の同期およそ60人だけで過ごす環境で、同じ目標を持つ仲間同士すぐに打ち解けられたことが、楽しく過ごせた一番の理由だと思います。
ー消防学校卒業後の配属先を教えてください。
田村:名張消防署の指揮調査室、二係に配属されました。指揮調査室の業務は、市からの届出の受理や、花火・祭りの際の露店に関する届出の受理、道路の通行止めに関する準備、そして立入検査といって、市内の飲食店を訪問し、消火器や誘導灯が適切に設置されているかなど火災の危険がないかを確認することなどが中心です。
ただ24時間勤務のため、実際には出動や訓練にあたる時間のほうが多いと感じています。
ー24時間勤務の1日の流れを教えてください。
田村:8時頃に出勤し、まず車両点検を行います。異常がないか確認したあと全員で体操や筋トレを行い、9時15分頃からミーティングです。その後は各自の担当業務や出動、訓練に対応します。
12時から1時間のお昼休憩をとり、午後は訓練を行うことが多く、そのほかに立入検査や担当業務も進めます。夕方6時半からは1時間の夕食休憩、7時半から夜のミーティングがあり、そのあとは筋トレやランニング、救急訓練を個人で行う時間もあります。
0時から翌朝6時半までは仮眠時間ですが、出動要請があれば対応します。6時半に起床後は清掃や洗濯、事務作業を行い、8時半まで勤務して退勤する流れです。

救急デビューの苦しさを支えた家族の笑顔。女性隊員としての気づき
ー働いていて、やりがいを感じるのはどんなときですか。
田村:日々の訓練が現場で活かせたと実感できたときや、去年の自分と比べて成長を感じられたときにやりがいを感じます。その積み重ねが次の現場につながると思うと、より一層頑張ろうという気持ちになります。
また、傷病者の方や市民の方から声をかけていただけることも、大きなモチベーションになっています。
ーこれまでで特に印象に残っているエピソードはありますか。
田村:消防学校を卒業した直後は、現場に慣れるために救急隊員として出動する機会が多くありました。デビュー初日に心停止の通報で出動した際は、何をすべきか分からず、非常に不安だったことを覚えています。
その後も同様の現場が8回ほど続き、次第に気持ちが沈み、自分に何か原因があるのではないかと落ち込んでしまいました。
そんなときに、初日に対応した方のご家族が消防署までお礼を伝えに来てくださったんです。あのときあれほど悲しんでいた方が元気になった姿と笑顔を見た瞬間に、気持ちが大きく切り替わりました。この出来事が、当時のつらさを乗り越える大きな支えになりました。
ー仕事をするうえで、大変だと感じることは何ですか。
田村:現場では人の命に関わるため、絶対に失敗が許されません。上司からも常に「準備が8割」と言われており、事前の準備がなにより重要だと感じています。現場での失敗が何より怖いため、準備には特に力を入れています。
ー女性だからこそ感じる大変さや工夫はありますか。
田村:体力面では男女の差を大きく感じるため、その分、声かけなど自分にできる形でフォローすることを意識しています。傷病者が女性の場合、女性隊員がいることで安心していただけることも多いです。
また、現場では男性隊員の中に女性が1人という状況が珍しいこともあり、驚かれたり「頑張れ」と声をかけていただいたりすることも、日々の励みになっています。

オンとオフをしっかり両立。名張消防の仲間との絆
ー職場の雰囲気について教えてください。
田村:名張消防はとても仲が良く、雰囲気の良い職場だと感じています。消防学校の頃から同期と研修の様子を話すたびに、名張消防の良さを実感してきました。
休日には食事に行ったり、野球やサッカーをしたりと、プライベートでも一緒に過ごすことが多く、訓練後の体力練成でも「みんなで頑張ろう」という雰囲気があり、チームワークの強さを感じています。

ー休みは取りやすいですか。
田村:24時間勤務のあとは必ず24時間の休みになり、このサイクルが最大3回続いたあとは、次の当務も休みとなるため、24時間の休みが3日続く3連休になります。
実際、休みは取りやすい職場だと感じていて、昨年度は有給休暇も夏季休暇もほぼ使い切り、11連休を取得したこともありますし、今年の5月にも同程度の休みを取らせてもらいました。
ー職場環境についてはいかがですか。
田村:庁舎は近年建て替えられており、女性用の設備も整っています。女性専用のスペースにはオートロックが設置されており、女性専用の浴室や洗濯機も別に用意されているため、働きやすい環境だと感じています。
ー最後に、名張市消防を目指す方へメッセージをお願いします。
田村:名張消防は上司の方々も優しく、働きやすい職場だと思っています。都会の消防ではないからこそ、自分の意見が通りやすく、若い世代を中心とした職場だと実感しています。
雰囲気の良さや仲の良さという点では、名張消防はどこにも負けないと思っています。消防を目指す方には、まずいろいろな職場をご自身の目で見ていただきたいですが、そのうえで名張消防のことも考えていただけたら嬉しいです。

ー本日はありがとうございました。
警察官を目指していた過去から、専門学校で聞いた一言をきっかけに消防士の道を選んだという田村さん。緊張の連続する現場のなかにも、仲間との絆や市民からの声かけが支えになっている様子が伝わってきました。
名張消防ならではの温かい雰囲気は、これから消防士を目指す方にとっても、大きな安心材料になるはずです。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年8月取材)
この記事の官公庁・自治体
名張市は、三重県の西部に位置し、近畿・中部両圏の接点にあることから、古くは万葉の時代から東西往来の要所、宿駅として栄えてきたところです。 日本の滝百選や森林浴の森百選に指定された赤目四十八滝や香落渓など自然豊かな景勝地にも恵まれています。昭和に入ってからは、近鉄大阪線が開通し、昭和40年代以降に大規模な宅地開発が進んだ結果、アクセスの便利さから、関西方面のベッドタウンとして急速に発展してきました。 里山の原風景が広がる農村集落と、成熟した住宅地が共存する街並みが広がっています。
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