検査の先にある患者さんの人生を支えたい。臨床検査技師×糖尿病療養指導士としてのやりがい
宇和島市病院局
「医療ドラマの世界に憧れていたけど、人と関わるが得意ではなかった」と語るのは、正職員として令和2年度に入職した臨床検査技師の宮本さんです。大阪の専門学校を卒業後、地元である愛媛県宇和島市へとUターンし、市立宇和島病院で働き始めました。当初は、検査センターも検討していたという宮本さんですが、病院というフィールドで待っていたのは、患者さんや医療スタッフと深く関わる、想像以上に人間味溢れる毎日でした。糖尿病療養指導士の資格を取得し、患者さん一人ひとりの思いに耳を傾けながら、数値の向こう側にある命と向き合う宮本さん。そこで見つけた、臨床検査技師としての本当のやりがい、お互いを支え合う温かい職場環境について伺いました。
- 「医療への憧れ」×「実験好き」が繋いだ、臨床検査技師への道
- 地元・宇和島へのUターン、そして想定外だった「人と関わる」病院勤務
- 患者さんの言葉に救われて。糖尿病療養指導士の資格がもたらした自信とやりがい
- 検査の向こう側にある命を見つめて。顕微鏡から始まる医療とは
- お互いを支え合うチームワークと、オンオフを切り替える働き方
「医療への憧れ」×「実験好き」が繋いだ、臨床検査技師への道
ーまずは宮本さんが臨床検査技師という職業を目指されたきっかけについて教えていただけますか?
宮本:もともと医療系の分野に興味を持ったのは、小学生の頃にテレビで見ていた医療ドラマの影響だと思います。ドラマの中で、人の命を救う姿に漠然とした憧れを抱いていました。
昔から、学校の授業でも、顕微鏡を覗いたり、試験管を使って実験を行ったりする時間が好きだったので、自分の好きな実験や化学の分野を活かしつつ、医療の世界に関わることができる仕事はないだろうかと探していた時に、臨床検査技師という仕事を見つけました。
ー医療への憧れと、得意分野が結びついたのですね。その後はどのような進路を歩まれたのですか?
宮本:高校までは地元である宇和島市で過ごしたのですが、臨床検査技師になるということを決めていたので、高校卒業後は大阪にある臨床検査技師の専門学校へと進学しました。
地元・宇和島へのUターン、そして想定外だった「人と関わる」病院勤務
ー就職時に宇和島に戻るということは、もともと決めていたのでしょうか?
宮本:実を言いますと、学生時代はそのまま大阪に残って就職しようかなと、考えていた時期もありました。大阪には大きな病院や検査センターもたくさんありましたし、都会での生活にも少しずつ慣れてきていたからです。
しかし、ちょうど就職活動を控えた大切な時期に、親が体調を崩してしまったということもあり、生まれ育った地元である宇和島に戻ることを決意しました。
ー地元に戻られる際、働く場所として市立宇和島病院を選ばれた決め手は何でしたか?
宮本:私はもともと人と関わることが得意ではなかったんです(笑)そのため、就職活動当初は、患者さんと接する機会がほとんどなく、運ばれてきた検体を黙々と検査する「検査センター」で働きたいと思っていました。
しかし、市立宇和島病院の臨時職員の募集情報を見つけ、総合病院でチャレンジしてみるのもいいかもしれないと思い、受験することを決めました。
ー最初は臨時職員としてのスタートだったのですね?
宮本:そのとおりです。私が就職を希望したタイミングでは、正職員の募集はなかったため、臨時職員として約2年間、先輩方に仕事を教わりながら実務経験を積んでいきました。そんな中、正職員の募集が公表され試験に挑戦し、令和2年度から正職員として新しくスタートを切ることができました。
患者さんの言葉に救われて。糖尿病療養指導士の資格がもたらした自信とやりがい
ー現在、宮本さんが所属されている部門と、具体的な業務内容について教えてください。
宮本:私は現在、臨床検査科の中の「生化学・免疫・一般部門」というところに所属しています。主な業務としては、採血室で患者さんから採取された血液や、提出された尿などの検体を、高度な自動分析装置にかけて成分を調べることです。
その中でも現在の私は、糖尿病に関連する業務に携わっています。

ー糖尿病に関連する業務とは、具体的にどのようなことを行うのですか?
宮本:実はこれが、私が最初イメージしていた「人と関わらない検査技師」とは、全く異なる想定外の仕事だったんです。
具体的には、糖尿病の患者さんに対して、ご自身で日々の血糖値を測定するための「自己血糖測定器」の使い方の指導や点検を行っています。また、病院内で定期的に開催されている「糖尿病教室」において、参加された患者さんの血糖値を実際に測定したり、検査技師の視点から血糖値の見方などについての講義を行ったりもしています。
最初は「え?患者さんに直接指導したり、講義をしたりするの?」と少々とまどいましたね(笑)
ー人と関わることが得意でなかった宮本さんにとって、最初は大きな葛藤があったのではないでしょうか?
宮本:確かに最初は、患者さんの前に立ってお話しすることに対して、ものすごい緊張と不安がありました。ですが、先輩方に教わりながら「まずは目の前の患者さんのために、とりあえず一生懸命やってみよう」と挑戦してみることにしました。
すると、実際に患者さんと直接お話ししていく中で、意外にも「この仕事はとても楽しいかもしれない」と思える瞬間が何度もあったんです。結果的に、もっと専門的な支援を行いたいと考え、日本糖尿病療養指導士の資格も取得しました。この資格を取ったことで、自分自身の知識にも大きな自信がつきましたし、患者さんに対してより深いアドバイスができるようになったと実感しています。
ーそれは大きな変化ですね。患者さんと関わる中で、特にやりがいに感じるのはどういった時ですか?
宮本:糖尿病の患者さんの中には、日々の血糖値の記録がなかなか面倒で、どうしても長続きしないという方もいらっしゃいます。そうした方に測定器の点検や指導をしながら、じっくりとお話を伺いました。単に数字の話をするだけでなく、普段の生活のご様子や、何に困っているのかという「思い」を丁寧に聞くことを意識したのです。
すると、その患者さんが帰り際に「色々と聞いてくれてありがとう。これからは頑張って記録を続けてみるね」と、非常に前向きな言葉をくれたんです。また、何度も顔を合わせるうちに「いつもありがとう」と、名前を覚えていただき笑顔で声をかけていただけることも増えました。
データだけを見つめるのではなく、こうして継続的に関わることで、患者さんの行動や気持ちが少しずつプラスに変わっていく姿を目の当たりにできることが、今の私にとっての大きなやりがいになっています。

検査の向こう側にある命を見つめて。顕微鏡から始まる医療とは
ー患者さんと関わる一方で、臨床検査技師としての専門性も問われるお仕事かと思いますが、検査業務で印象に残っていることなどはありますか?
宮本:私が担当している「一般検査」の部門では、患者さんから提出された尿を顕微鏡で細かく観察する業務があります。尿検査というのは、病院ではルーティンとして行われることも多く、いわばスクリーニングとして「念のために検査をしておこう」という位置づけで出されることも少なくありません。
ある日、いつものように提出された尿を顕微鏡でのぞいていると「異型細胞」を疑い、病理診断科の臨床検査技師にも確認してもらい、悪性細胞である可能性が極めて高いと判断しました。
すぐに医師へと報告し、詳細な精密検査が行われた結果、最終的に患者さんの早期の診断と治療へと繋げることができました。もし、あの瞬間に見落としてしまっていたら、その患者さんのがんの発見はもっと遅れていたかもしれません。
「自分の目で、小さな異変に気付くことができた」と実感した瞬間でしたし、何より医師の診断の第一歩を支えることができたという、大きな達成感がありました。臨床検査技師が導き出すデータや発見が、患者さんのその後の人生を大きく左右するのだという責任の重さを、改めて痛感した出来事でもありました。
ー単なる「検査」として処理するのではなく、その向こう側にいる患者さんを常に意識されているのですね。
宮本:そのとおりです。日々、大量の検体や数字を扱っていると、どうしても単なる「データ」に見てしまいがちなのですが、私は「この数字の向こう側には、一人の患者さんがいるんだ」ということを、常に忘れないように心がけています。

お互いを支え合うチームワークと、オンオフを切り替える働き方
ー職場の雰囲気についてもぜひ教えてください。やはり黙々と作業をされていることが多いのでしょうか?
宮本:確かに、みんなが黙々と、無言になって作業をこなしていることは多いです(笑)
ですが、決して冷たい雰囲気というわけではありません。私の部門では、所属しているメンバーの誰もが、すべての検査業務をマルチにこなせるような体制が整えられているため、忙しい時でも自発的に声をかけ合ってフォローし合う文化が根づいています。
チーム全体で業務を共有して助け合える環境なので、本当に心強いと感じています。
ー先輩や上司の方々との人間関係や、相談のしやすさはいかがですか?
宮本:私の部門では上の方々も、日頃からとてもフランクに接してくださいますので、業務の中で何か少しでも困ったことや、判断に迷うようなことが発生した場合には、すぐに声をかけて相談することができます。
ー臨床検査技師としての働き方や、ワーク・ライフ・バランスについてはいかがですか?
宮本:病院の性質上、24時間体制で急患などの検査に対応しなければならないため、私たちの仕事には「日直」や「宿直」という勤務がどうしても入ってきます。
具体的には、土日祝日の日直が月に1回程度、そして宿直が月に2回程度あります。平日の宿直の場合は、朝から通常の日勤をこなした後、そのまま病院に泊まり込んで翌朝の8時30分まで勤務を続ける形になりますので、体力的に「少ししんどいな」と感じる部分があるのは正直なところです。
ですが、宿直を終えた日は、職務が免除され、丸一日がお休みになります。有給休暇や特別休暇なども、周囲と調整をしながら取得できています。
ー最後に、これから臨床検査技師を目指す方にメッセージをお願いします。
宮本:当院の臨床検査科には生化学・免疫・一般検査以外にも血液検査、輸血検査、細菌検査、生理機能検査が、病理診断科には病理検査があり、それぞれの専門性を生かしながら診療を支えています。
入職前のイメージにとらわれず、幅広い経験にチャレンジしてみたい方にとって、市立宇和島病院はとても成長できる環境だと思っています。
検査業務の枠を超えて患者さんと関わる機会もあり、やってみることで初めて気づく楽しさややりがいがあります。
周囲がしっかり声を掛け合い、困った時はすぐに相談・フォローし合える環境ですので、安心してまずはチャレンジしていただければと思います。
ー本日はありがとうございました。
「本当は、あまり人と関わりたくなかったんです」と、過去の自分を振り返って笑う宮本さんの姿がとても印象的でした。データや数字の正確性を追求する臨床検査技師という専門職でありながら、宮本さんが現在もっとも輝いているのは、糖尿病療養指導士として患者さん一人ひとりの「思い」に寄り添っている瞬間です。顕微鏡のレンズ越しに見落とされそうな小さな異変を捉える鋭い視線と、患者さんの不安を優しく解きほぐす温かい対話の姿勢。その両方を併せ持つ宮本さんの存在は、1人の医療従事者として地域住民の安心を支えているのだと思います。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年6月取材)
この記事の官公庁・自治体
宇和島市病院局は、宇和島病院、吉田病院、津島病院、オレンジ荘、ふれあい荘の3病院2老健を運営しております。各施設概要は以下のとおりです。(R8年4月1日時点) ■宇和島病院■診療科:35科、病床数:395床、職員数:835人 ■吉田病院 ■診療科: 9科、病床数:74床、職員数: 81人 ■津島病院 ■診療科:10科、病床数:91床、職員数: 99人 ■オレンジ荘■1日平均入所者数:約68人、職員数:60人 ■ふれあい荘■1日平均入所者数:約53人、職員数:38人
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